「伴走するチーム」が実現する、経営者と共に成長する税理士事務所の在り方

e_zeirishi

吉川正明:株式会社イワサキ経営 代表取締役社長

1973年生まれ。静岡県三島市出身。平成8年に現在の会社の前身である岩﨑一雄税理士事務所に新卒で入社。入社10年目、32歳の時に突然後継者指名を受け、専務に就任。平成25年、40歳の時に代表取締役に就任した。

社員満足度日本一のワンストップコンサルティンググループというビジョンを掲げ、また、顧客ニーズの多様化に合わせたサービスの拡大や、DXなども積極的に推進することにより、売上も増加を続けており、就任当初から従業員数が2倍の121名となっている。

4人から始まった会計事務所が、120名規模の組織へ。創業者のビジョンと組織化への道

――まず、イワサキ経営様の成り立ちについて教えていただけますか?

吉川氏:
もともとは4人から始まった小さな会計事務所だったんです。私が入社したのが平成8年で、その時点で創業から20数年が経過していて、社員数は30名ほどでした。当時としては、地域内でかなり大きな事務所だったと思います。

――その頃から何か特徴的な考え方があったのでしょうか?

吉川氏:
はい。創業者の岩﨑が、その頃からすでに「税務会計の時代は終わった。これからは中小企業の支援をしていかなければならない」と語っていたんです。今でこそ当たり前のように言われることですが、当時としてはかなり先進的な考え方でした。

それともう一つ、象徴的だったのが呼び方です。会計事務所というのは、所長のことを「先生」と呼ぶのが一般的ですよね。でも岩﨑は「社長」と呼ばれていました。これは、会計事務所を単なる個人事業ではなく、企業として組織化して成長していかなければならないという強い意志の表れだったんです。この考え方が、今も私たちの組織の根底にあります。

――その「企業として組織化する」という考え方が、現在の120名規模につながっているわけですね。

吉川氏:
そうなんです。お客様の要望に応えていくためには、体制づくりが不可欠でした。それも、トップダウンで決めるのではなく、社員からの声も積極的に集めながら、どんどん事業領域を広げていったんです。

その結果、今では複数の法人を抱える組織になりました。極論を言えば一つの会社でもいいとは思っているんですが、独立していないと成り立たない法人もあります。たとえば保険・証券業務は、もともとイワサキ経営の中でやっていたんですが、コンプライアンスの問題や管轄の関係で色々と厳しい規制があって、一社で運営すると本業にも支障をきたすことがあったんです。結果として、必要に応じて分社化してきました。

そして今、規模が相当大きくなってきたので、ホールディングス化を進めていこうと考えています。現在は全て私が代表を務めていますが、これからはグループ経営として、それぞれの法人が専門性を発揮しながら連携していく体制を目指しています。創業者が描いた「企業として成長し続ける」というビジョンを、次の段階に進める時期に来ているんです。
iwasaki
「静岡県No.1ワンストップコンサルティング会社」を目指して。地域密着と成長戦略

――現在の顧問先の規模や特徴について教えていただけますか?

吉川氏:
法人で730社、個人の申告ペースで1,500件ほどですね。合計すると2,000件くらいになります。ただ、申告をしていないお客様や相続のスポット案件を考えると、正確にはもっといらっしゃると思います。

業種や規模で特にこだわりを持っているわけではないんです。ただ、私たちは「価値あるサービスを適正価格で提供する」というバリューアップ戦略を掲げていまして、その結果として、必然的に規模の大きめの法人様が増えてきているという状況です。

――規模の大きめの法人、というのは具体的にどのくらいでしょうか?

吉川氏:
以前は売上1億円から3億円くらいの企業様が多かったんですが、最近は5億円以上の企業様が増えてきています。これは、単なる税務会計だけでなく、経営のことも含めて多面的に見てもらいたい、というニーズが高まっているからだと思います。

私たちは120名の組織で、様々な専門家がいますから、そういった多面的な支援ができる。それが評価されて、規模の大きい企業様からもご相談いただけるようになってきたのかなと感じています。

――対応地域に限定はあるのでしょうか?

吉川氏:
基本的には静岡県東部が中心ですが、中部にもお客様が増えており、今後は県内全域でより多くの企業を支援していきたいと考えています。

私たちは「静岡県を元気にする」というミッションを掲げているんです。地元が好きなんですよ。沼津は高校が13校もあって、1万人以上の高校生がいて高校生の街と言われることがあります。でも大学がなく東京にも近いので、みんな外に出ていってしまう。そこをなんとかしていきたいという想いもあります。

静岡を都心に負けない地域にしたい。給料の面でも、働く環境の面でも。そのためには、地元の企業が成長しなければならないし、それを支援する私たちも成長しなければならない。そういう循環を作りたいんです。
heartland

――「地域No.1」というお話がありましたが、社内的にはどのような目標を掲げているのですか?

吉川氏:
「静岡県でNo.1ワンストップコンサルティング会社」というのが、私たちの目標です。質も量も、そして成長し続ける。人数も増やし続けるというメッセージを明確に掲げています。

なぜ人数を増やすのかというと、理由はいくつもあります。まず、人数が増えれば社員一人ひとりの成長機会にもなりますし、対応できる幅も広がります。それから給料のベースアップもできるし、トラブル対応なども手厚くできる。

中小企業の成長を支援する立場として、私たち自身が成長しなければいけない。それが私たちの信念です。お客様に「成長しましょう」と言っている以上、自分たちが成長を止めるわけにはいきませんから。

――スポット案件や相続案件では、他地域からのご相談もあるとお聞きしましたが。

吉川氏:
そうですね。特に相続案件は、地元だと相談しづらいケースもあるので、他地域からご相談をいただくこともあります。あと、私たちがやっている経営塾には全国から経営者の方がいらっしゃいます。

地域の活性化という観点で考えると、外から人が来てくれれば町にお金も落ちますよね。だからあえて東京ではやらないんです。会計についても、リモートで対応しているお客様もおり、それで良ければ全国対応も可能です。でも基本は、静岡を拠点にして、静岡を元気にするというのが私たちの軸ですね。
決算検討会と黒字化支援。会計事務所の常識を超えるコンサルティング力

――実際にどのような業務サポートをされているのか、具体的に教えていただけますか?

吉川氏:
私たちが力を入れているのは、決算検討会です。実は、自分たちにとっては当たり前のことだと思っていたんですが、意外と世間ではそうではないと気づいたんです。

決算検討会では、決算の着地予想をして、このくらいの税金がかかりそうだとか、今からできる節税対策は何かとか、そういったことをお客様と一緒に考えます。多くの経営者の方が、決算が終わってから「こんなに税金がかかるのか」と驚かれるケースが多いんですよね。そういった不満の声を聞いて、これは絶対に必要だと確信しました。

――決算検討会は、どのくらいの頻度で実施されているんですか?

吉川氏:
全取引先に対して、決算の2ヶ月前には必ず開催しています。やり方は特に決めていなくて、お客様の状況に合わせて柔軟に対応していますが、「必ず実施する」ということは徹底していますね。

それともう一つ、社内で定期的にやっているのが「案件共有会」です。お客様の事例をみんなで共有して、「このお客様にはこういう支援をしよう」とか、「こういうアプローチが効果的だった」とか、そういった情報交換をしています。課にもよりますが、月1~2回くらいは開催しています。

――黒字化支援にも力を入れていらっしゃるとお聞きしました。

吉川氏:
そうなんです。私たちは取引先の黒字化割合70%を目標として掲げています。国税庁の平均が35%ですから、倍以上ですね。

会計事務所というのは、結果を作ることに集中しがちなんです。つまり、決算書をきちんと作るとか、申告書を正確に仕上げるとか。もちろんそれも大切なんですが、業績を作る部分、つまり「どうやったら黒字になるか」という点は、後回しにされてしまうことが多いんです。

でも、経営者が本当に求めているのは、そこじゃないですか。だから私たちは、黒字化のために何をしたらいいのか、というところまで踏み込んで支援しています。

――具体的には、どのような支援をされるのでしょうか?

吉川氏:
たとえば、マーケティングやブランディングをサポートする部署もあります。補助金のサポートもしていますし、単なる会計や税務の枠を超えて、経営全般に関わる支援をしているんです。

これは会計事務所としては、少し特殊かもしれません。でも、お客様の本当の課題を解決しようと思ったら、会計や税務だけでは足りないんです。売上を上げるためにどうしたらいいか、コストをどう削減するか、そういったことまで一緒に考える。それが私たちの役割だと思っています。

――相続支援にも強みがあるとお聞きしましたが。

吉川氏:
はい、業界的には「相続に強い」と言われています。実際、全国の会計事務所の方が、私たちの相続への取り組みを学びに来られるんですよ。勉強会を開催すると、全国から参加者が集まります。

相続というのは、税務の知識だけでなく、不動産の知識や法律の知識、それに何より、遺族の方々の気持ちに寄り添う力が必要です。私たちは長年、そういった総合的な支援を積み重ねてきたので、ノウハウが蓄積されているんだと思います。そのノウハウを、惜しみなく他の会計事務所にも共有しています。

業界全体が良くなれば、最終的にはお客様のためになりますから。
iwasaki
「伴走するチーム」「高め合うチーム」。クレドが体現する組織文化と差別化ポイント

――他の税理士事務所との差別化という点で、イワサキ経営様の強みはどこにあるとお考えですか?

吉川氏:
私たちが目指している姿として、クレドの中に「伴走するチーム」という言葉があります。お客様もチームの一員なんです。

税理士って、「先生、先生」と呼ばれて、お客様と相対する関係性に捉えられがちですよね。でも、それは違うと思っているんです。伴走なので、私たちも知らないことがあるし、お客様と一緒にキャッチアップして対応していく。知識が全てではなくて、寄り添う姿勢が大切なんです。

私たちのスタンスは、意思決定のサポートをすること、判断のための情報を提供することです。答えを押し付けるのではなく、お客様が最良の判断をできるように支援する。それが伴走するチームの意味です。

――「ワンストップコンサル」という言葉もよく使われていますが、これはどのように実現されているんでしょうか?

吉川氏:
いろんな専門家がそれぞれの部署にいるんです。税務の専門家、相続の専門家、マーケティングの専門家、補助金の専門家。そういった人たちが連携しながら、お客様の課題に総合的に対応できる体制を作っています。

私たちがよく言うのが、「個人の限界を組織の限界にしてはいけない」ということです。一人の税理士ができることには限界がありますよね。でも、組織として連携すれば、その限界を超えられる。お客様にとっても、窓口が一つで済むので、いろんな専門家にバラバラに相談する手間が省けます。

――そういった連携を実現するために、組織としてどんな工夫をされているんですか?

吉川氏:
クレドの中にもう一つ、「高め合うチーム」という言葉があります。これを実現するために、いくつかの仕組みを作っています。

まず、フリーアドレス制度です。固定席を持たないので、隣に座る人が別部署だったりするんですよ。そうすると、自然と部署を超えた会話が生まれます。「こういう案件があるんだけど、どう思う?」とか、「この分野は詳しい人いる?」とか。そういったコミュニケーションが、組織全体の知識の底上げにつながっています。
heartland

――委員会制度というのもあるとお聞きしましたが。

吉川氏:
はい、現在15個の委員会を置いていて、全社員が必ず何かに所属する必要があります。委員会も部署関係なく構成されているんです。

120名規模になると、他の部署の人と話したことがない、なんてことが起こりがちですよね。でも委員会活動を通じて、部署を超えた横のつながりができる。それに、委員会はボトムアップで立ち上がってきたものなので、社員たちが当事者意識を持って運営しています。

委員会の数は増えたり減ったりしていますが、今は15個ですね。

――具体的にどのような委員会があるんですか?

吉川氏:
たとえば「生活お役立ち委員会」というのがあって、これは2年連続で委員会賞を受賞しているんです。社員の生活に役立つ情報を提供してくれるんですよ。

地元のテイクアウト情報を共有したり、キッチンカーに出店してもらったり。キッチンカーは近所の方も買いに来てくださるので、地域貢献にもなっているかもしれません。こういった活動が、社員の満足度向上にもつながっていますし、結果的にお客様へのサービス向上にもつながっていると思います。

――クレドや理念の浸透については、どのように取り組まれていますか?

吉川氏:
理念経営には相当力を入れていて、PMVV、つまりパーパス・ミッション・ビジョン・バリューを明確にしています。そして、口酸っぱくなるくらい言い続けているんです。

特にバリューの中にクレドがあって、これが行動指針になっています。クレド自身は、社員の中でワークショップをやって決めていったものなので、トップが勝手に決めたものではないんです。だから社員たちも当事者意識を持っています。

自分たちで決めた行動指針だからこそ、日々の業務の中で「これはクレドに沿っているか?」と自然に考えるようになる。それが組織文化として根付いているんだと思います。この文化こそが、私たちの最大の差別化ポイントかもしれませんね。
iwasaki
経営者の成長を支援する「経営塾」と、次世代への展望

――今後、イワサキ経営様として力を入れていきたい分野について教えていただけますか?

吉川氏:
まず、法人の税務会計と相続が事業の2大柱なので、ここはバランスよく拡大していきたいと思っています。どちらかに偏るのではなく、両方を伸ばしていくことで、より多くのお客様のニーズに応えられる体制を作りたいですね。

そして何より力を入れたいのが、人材育成です。経営塾や社内向けのオーダーメイド研修など、すでにかなり投資していますが、これをさらに強化していきたいと考えています。

――人材育成に力を入れる理由は何でしょうか?

吉川氏:
お客様により良いサービスを提供するためには、私たち自身が成長し続けなければならないからです。それに、一対多のモデルを作りたいんです。つまり、一人の専門家が、より多くのお客様を支援できる仕組みですね。

人数でレバレッジをかけていくためには、一人ひとりのスキルを高めることが不可欠なんです。ただ、これは単なる効率化の話ではありません。質の高いサービスを、より多くの経営者の方に届けたい。困っている経営者の方、もっと成長したいと願っている経営者の方に、私たちの支援を届けられる体制を作りたいという想いがあります。

静岡県には、まだまだ私たちの支援を必要としている企業がたくさんあります。でも、私一人でできることには限界がある。だからこそ、組織全体のレベルを上げて、より多くの経営者の方を支援できる体制を作っていきたいんです。

――経営者への支援という面では、どのような取り組みをされているんですか?

吉川氏:
私たちは「経営塾」というものをやっていて、これには全国から経営者の方が集まってくださいます。

実は、コンサルティングというのは、ある程度限界があると思っているんです。なぜなら、その人自身が変わらないとうまくいかないから。どんなに良いアドバイスをしても、どんなに的確な提案をしても、経営者自身が変わらなければ、企業は変わりません。

私たちができるのは、判断のための情報を提供すること、選択肢を示すことです。でも、最終的に決断するのは経営者ご自身です。だからこそ、経営者自身がもっと成長していける、経営者としての器を大きくしていけるような場を提供したいと考えて、経営塾を始めました。

ここでは経営の本質的な部分、経営者としての在り方や考え方について、深く学んでいただいています。テクニックではなく、本質を。そこを理解していただくことで、経営者の方々が自ら考え、自ら決断できる力を育んでいただきたいんです。

――経営塾は、あえて東京ではなく静岡で開催されているんですよね。

吉川氏:
そうなんです。これには明確な理由があって、地域の活性化ということを考えているからです。東京でやれば参加者は集まりやすいかもしれませんが、それでは静岡に人が来てくれないし、お金も落ちない。

全国から静岡に来ていただいて、宿泊もしていただいて、地元のお店で食事もしていただく。そうすることで、地域経済にも貢献できます。「静岡県を元気にする」という私たちのミッションに沿った取り組みなんです。

参加者の方からも、「静岡の良さを知ることができた」「また来たい」という声をいただいています。経営を学ぶと同時に、静岡という地域のファンになっていただける。それも私たちにとって、とても嬉しいことですね。

――研修を担当されるスタッフの育成についても、何か取り組まれているんですか?

吉川氏:
はい、私のセミナーを全て聞いてもらっています。研修スタッフには、私が培ってきた経営支援のノウハウを、余すことなく伝えています。そうやって、次の世代が同じレベル、あるいはそれ以上のレベルで経営者を支援できるようにしたいんです。

組織として成長し続けるためには、ノウハウを属人化させてはいけません。私が持っている知識や経験を、組織全体の財産にしていく。そのための仕組み作りにも力を入れています。

私がいなくても、イワサキ経営として質の高い支援ができる。それが本当の組織力だと思いますし、お客様にとっても安心していただける体制だと考えています。

――最後に、どのような経営者の方とお付き合いしたいとお考えですか?

吉川氏:
税金を安くしたいとか、そういった各論的なニーズではなく、経営者として志が高い方を積極的に応援していきたいと思っています。そういった方ほど、私たちと相性が良いと感じます。

「会社を成長させたい」「従業員を幸せにしたい」「地域に貢献したい」、そういった想いを持っている経営者の方と一緒に、伴走しながら成長していきたい。それが私たちの願いです。

私たちは単なる税理士事務所ではなく、経営者のパートナーでありたいと思っています。お客様の成長が、私たちの成長でもある。そういった関係性を築いていきたいですね。

私たちのミッションは「静岡県を元気にする」ことです。そのためには、一社でも多くの企業に成長していただく必要がある。志の高い経営者の方と出会い、一緒に成長していくこと。それが、静岡を、そして日本を元気にすることにつながると信じています。

――本日はありがとうございました!

📣 イワサキ経営グループ の詳細はこちら

記事URLをコピーしました
税理士紹介はこちら
税理士紹介はこちら