「徹底的な社長支援」を掲げて──七つの士業が一体となり、経営者の”全ライフイベント”に伴走する
山田直輝|公認会計士・税理士 ストラーダ税理士法人 代表
中央大学商学部卒業後、有限責任監査法人トーマツに入所し、監査業務に従事。その後、同法人内のコンサルティング部門に異動し、経営コンサルティングを経験。30歳で独立開業し、現在に至る。現在はストラーダグループとして税理士法人のほか、行政書士法人・司法書士法人・社会保険労務士法人・不動産会社・コンサルティング会社などを展開。東京・日本橋を拠点に、社員60名弱(業務委託含む約80名)体制で、「徹底的な社長支援」をミッションに掲げる。
インタビュアー: 事務所名「ストラーダ」の由来から聞かせてください。
「ストラーダ」はイタリア語で「道」という意味です。税理士法人と聞くと、どうしても「決算を組んで終わり」という単発の関係を想像される方が多いと思うんですよね。でもうちがやりたいのは、それとは真逆の関係性で。経営者と一緒に、長い道のりを歩いていく。そういうスタンスを名前に込めたかった。
実は名前を決めるとき、音の感覚も結構こだわっていて。語尾に「タ」という音があると、人の記憶に残りやすいという話があって。それで候補をいろいろ探していたら、ストラーダにたどり着いたんです。意味も良い、音も良い。これだ、と。

インタビュアー: 「伴走型」という言葉を大切にしているわけですね。
そうですね。「お客様と共に同じ道を歩む」というのが私たちの経営理念で、それはストラーダという名前を決めた瞬間から一貫しています。経営者の隣に立つというのは、税務の申告書を作るだけじゃなくて、その人の会社がどういう状態にあって、次に何が必要かを一緒に考えること。それが私の言う「伴走」です。
インタビュアー: 山田さんが今のような仕事観を持つに至った原点を、少し遡って聞かせてください。
正直に言うと、高校時代はほとんど学校に行けていませんでした。重度のアトピーで、体が思うように動かなかった。同世代の友達が部活や受験勉強に青春を燃やしているころ、私はずっと家にいた。勉強もできない、青春も送れない。そういう時期が長くありました。
その頃の感情って、一言で言えば「悔しさ」なんですよ。誰かを恨んでいたわけじゃないけれど、何もできない自分への強烈な焦りと、絶対に這い上がってやるという気持ちが、ぐるぐると混在していた。
体調が回復して中央大学に入学したとき、周りの友人がみんな資格の勉強をしていたんですよ。「負けたくない」と思いました。あのとき失ってしまったものを取り返したい、という気持ちが、勉強へのモチベーションになった。よく「グリッド力」という言葉を使うんですが、諦めずにやり続けられる力って、楽しいことからは生まれにくい。苦しさや悔しさ、そういう負のエネルギーの方が、エンジンとしてはずっと強い。問題は、それをどこに向けるか。私は幸い、周りの環境もあって、その力を前向きな方向に持っていくことができた。あの病床の経験がなかったら、今の自分はないと思っています。
インタビュアー: 会計士を目指したのは、どんな背景からですか。
大学に入る前、もともとは薬学部を目指していたんです。自分の病気が漢方薬で治った経験があって、西洋医学と東洋医学の違いに強い興味を持っていた時期があって。でも、いつのまにか経営に引き寄せられていった。当時って、堀江貴文さんや藤田晋さんといった経営者がメディアに出ていて、「経営ってこんなに面白いのか」と刺激を受けた記憶があります。
中央大学の商学部で経営を学びながら、公認会計士の資格を取ることができました。そのまま会計士として監査法人に入ったのも、父から「会計士になれば経営のことがもっと分かる」と言われていた影響があって。監査を通じて経営を学ぼうと思っていました。
インタビュアー: 監査法人での経験はいかがでしたか。
トーマツで監査をやっていたんですが、入って少し経ったころから、違和感が積み重なっていきました。監査の仕事って、要するに企業の議事録を読むんですよ。でも、議事録を読むだけでは、そこに至るまでの議論や判断が見えない。経営者たちがどんな葛藤を経て意思決定したか、そういうものが伝わってこない。
もっとビジネスの現場に近いところに行きたい、と思い始めていたころ、戦略系のコンサルへの転職も考えました。でも、実際にはなかなか難しかった。そこで上司に相談したら、「じゃあトーマツのコンサル部門に行ってみたら」と言ってもらえて。社内異動でコンサルティングの仕事をするようになりました。
インタビュアー: コンサルの仕事で、何が変わりましたか。
監査や税務と大きく違うのは、「何をするか」が最初から決まっていないということなんです。監査は監査をする、税務申告は申告書を作る。でもコンサルは、お客さんが困っていることに向き合うところから始まる。プロジェクトが始まった瞬間には、まだゴールが見えていないことも多い。だから必然的に、「相手が何を求めているか」を起点に考える癖がつく。
これが「マーケットイン」という考え方で、独立してから本当に役に立っています。自分が提供したいものを売ろうとするのではなく、相手の状況を見て、相手に合わせて自分を変える。税理士業界に限らず、仕事の根本だと今も思っています。

インタビュアー: 独立のきっかけを教えてください。
20歳のころに経営的なことをやりたいという夢を持って、でも知識がなかった。それで会計士の道を選んで、トーマツでコンサルを経験して。気づいたら10年が経っていた。「20歳のころに思い描いていたことが、まだ実現できていない」という感覚が、じわじわと積み重なっていって。30歳という節目に、やるなら今しかないと思ったんです。
独立の決意はすごく明確でしたが、最初の3ヶ月は本当に大変でした。仕事が来ない。どこに行けばいいかも分からない。でも、諦めなかった。高校時代に培った「負けたくない」という感覚が、あのときも発動したんだと思います。
インタビュアー: 独立初期の苦しい時期を、どうやって乗り越えましたか。
3、4ヶ月経ったころに、「考え方を変えないと結果は変わらない」と自分に言い聞かせました。それまでは、どうやってお客さんを見つけるかばかり考えていた。でも、それを変えた。「紹介してくれる人を探す」に切り替えたんです。
そもそも「今すぐ税理士を探している人」なんて、街を歩いていて出会えるものじゃない。だから顧客を直接探すより、紹介してくれる人を増やすことの方が、ずっと合理的だと気づいたんです。
そこで徹底したのが、「絶対に断らない」ことです。自分でできない案件が来ても、まずは勉強する。どうしてもできなければ、できる人につなぐ。「山田さんに頼めば、何とかなる」という感覚を持ってもらえると、紹介が紹介を呼ぶようになる。これは今も変わらない、うちの文化の根っこになっています。
仕事を振ってくれる人が、どういう気持ちで連絡をくれているのか。その心理をしっかり想像できると、自然と対応も変わってくる。相手が求めていることを先回りして叶えると、関係が深まっていく。その積み重ねが、今のビジネスの土台になっています。

インタビュアー: 現在のグループ体制と、税理士業界への問題意識を教えてください。
今のストラーダグループは、七つの士業が在籍しています。税理士法人に加えて、行政書士法人、司法書士法人、社会保険労務士法人、不動産会社(タクスリアリティ)、コンサルティング会社(ストラダビジネスサポート)、そして組合と。社員は60名弱で、業務委託の方を含めると80名ほどになります。
なぜこういう形にしたかというと、経営者の課題って、税務だけじゃないからなんです。会社を立ち上げたら会社設立の手続きが必要で、人を雇えば労務の問題が出てくる。事業が大きくなれば資金調達やM&Aの話も出てくる。私たちのところに来れば、弁護士と弁理士以外の士業はほぼカバーしているので、基本的にできないことはない。経営者が「どの専門家に相談すればいいか分からない」という悩みから解放される、それがワンストップサービスの本質だと思っています。
そしてもう一つ、業界への問題意識として強くあるのが、「うちの税理士は提案をしてくれない」という経営者の声です。相談しても「それは難しいですね」「リスクがあります」という返しばかりで、じゃあどうしたらいいのか、というところまで踏み込んでくれない。なぜそうなるかというと、担当者によって提案の質がバラバラだから。同じ情報を持っていても、Aさんは補助金の提案をするけれど、Bさんはしない。これって、会社として大きな機会損失です。だから私たちは今、「こういうインプットがあったら、こういうアウトプットをする」という定義付けをセールスフォース上で追求しています。提案の均一化です。
これと並行して、5、6年前から「ストラダカルチャー」という社内冊子を作っています。価値観の統一と、全てのルールの明文化が目的で、今では150ページほどの分量になっています。組織が大きくなると、認識のズレが小さなミスコミュニケーションを生んで、それが積み重なると組織の歪みになっていく。そうならないために、共通の「言語」を作りたかった。
「5つの経営方針」の中でも「マーケットイン」の次に重視しているのが「学び続ける組織」という考え方です。誰かが失敗したとき、その失敗を一人のものにしない。PDCAのCの後にY(横展開)を加えた「PDCAY」という概念を社内では使っているんですが、失敗から学んで次の成功につなげ、チーム全体に広げる。この文化が、組織としての成長スピードを上げていると感じています。150ページのカルチャー冊子は、単なるルール集ではなく、「ストラーダとは何か」を全員が体現するための、いわば私たちの憲法です。

インタビュアー: 理想とする顧客像と、今後のビジョンを教えてください。
成長意欲の強い経営者が、一番うちの価値を活かせる方だと思っています。会社の成長には、さまざまなライフイベントがあります。設立から始まり、最初の採用、資金調達、補助金・助成金の活用、M&Aや事業承継、そして役員報酬の最適化や相続まで。それぞれの局面で、必要な専門家が変わる。私たちは、そのすべての場面に同じチームで対応できる。これが「徹底的な社長支援」という言葉に込めた意味です。経営者と一生付き合えるパートナーでいたい。最初は税務申告から始まっても、会社が成長するにつれて労務の相談が来て、不動産の話になって、最終的には相続の支援もする。「ストラーダに任せておけば大丈夫」という信頼を、そういう長い関係の中で築いていきたい。
直近の優先課題は、「提案型の事務所の確立」です。七つの士業のグループが有機的に連携して、税務・財務・労務・法務、あらゆる角度からお客様にアドバイスができるビジネスモデルを作り上げること。今はまだ、その仕組みを整備している途中です。中長期的には、海外展開の支援にも貢献したいと思っています。日本の国内市場が縮小していく中で、海外に出ていこうとする日本の経営者を支える。シンガポールや東南アジアへの進出支援は、今まさにニーズが高まっている領域です。
「ストラーダ」は道という意味。お客様と歩む道は、国境を超えても続いていく。そういうグループでありたいと思っています。
インタビュアー: 最後に、税理士を探している経営者へメッセージをお願いします。
「税理士は、選ぶ存在だ」ということを、まず知ってほしいんです。申告書を作ってくれればいい、と思っていると、もったいない。良い税理士との出会いが、経営の質を変える。それは本当にそうだと思っています。
私たちストラーダは、「徹底的な社長支援」を掲げています。税務の申告書だけでなく、経営のパートナーとして、経営者の傍らに立ち続けること。それが私の仕事の原点であり、これからも変えるつもりのないものです。一度、話を聞いてもらえると嬉しいです。
編集後記
「7士業がひとつのグループにいてワンストップ」というのは聞こえは良いが、実態は異なる専門家集団が社内に同居しているようなものです。それぞれの文化や常識が違う中で、バラバラにならずに動かすのは、相当難しいはず。SalesForceでの情報連携も、150ページのカルチャーブックも、そう考えると「すごい取り組み」というより「それをやらないと回らない」必然の産物なのだと腑に落ちました。
高校時代の病気の話を聞いてから、山田先生の話し方が少し違って聞こえました。あの経験から来る前向きなパワーが本物だからこそ、提案型事務所の確立も海外展開も、きっと本当にやってしまうんだろうな。そういう気がしています!
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