「おもてなし税理士」を全国へ ──税務調査150件超の税理士と×接客マーケティング 夫婦で挑む業界変革

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三宮大輔(さんのみや だいすけ)|税理士 サンアップ税理士事務所 代表

中央大学経済学部卒業後、神田憲次税理士事務所に勤務。その後ASKコンサルティング株式会社で専務取締役、ASK税理士法人で代表社員を歴任し、2018年に愛知県岡崎市でサンアップ税理士事務所を独立開業。税務調査対応150件以上の実績を持ち、「税務調査の駆け込み寺」として経営者の税務リスクに向き合う。経営理念は「守り、繋ぎ、お客様に明るい笑顔の種を蒔こう。」常勤4名・非常勤2名を含む8名体制で、法人約7割・個人約3割の顧客150件を支援している。

三宮りさ|サンブリッジ株式会社 代表取締役 / サンアップ税理士事務所 運営企画部長

歯科衛生士として10年間勤務し、チーフを経験。第二子出産後約8年間の専業主婦を経て、2018年の夫・大輔氏の独立開業に合わせ約8年ぶりに職場復帰。医療業界で培った接遇と人材育成のノウハウを会計業界に持ち込み、「接客マーケティング」を確立。2023年にサンブリッジ株式会社を設立し、会計事務所専門の接客マーケティングコンサルティングを展開。「おもてなし税理士」の商標を取得し、一般社団法人日本おもてなし推進協議会の理事・愛知会長も務める。

開業8年目──毎年20〜30%成長を続ける事務所の「今」

インタビュアー: 本日はよろしくお願いします。サンアップ税理士事務所は開業から8年目とのことですが、事務所の現在地を教えてください。

大輔様:
よろしくお願いします。おかげさまで顧客件数は約150件以上になりました。売上ベースでは毎年20%から30%の成長を続けています。毎年、年の初めに売上目標をみんなに提示するんですが、その目標は毎回超えることができています。体制は常勤4名、非常勤2名、私と部長を含めて合計8名です。

インタビュアー: 順調な成長ですね。顧客層はどういった方が中心ですか。

大輔様:
特定の業種や層には絞っていません。法人が約7割、個人が約3割で、業種特化もしていません。大事にしているのはお客様との相性です。お互いに合えば契約、というスタイルですね。

元々名古屋の税理士法人で代表をしていた関係で、独立当初は名古屋(尾張地区)の顧客が8割ほどでした。愛知県は「尾張」と「三河」で文化も風土も考え方も全然違うんですよ。岡崎は三河なんですが、最初は尾張のお客様が圧倒的に多かった。でも岡崎に拠点を置いたことで、今は三河地区のお客様が6割に逆転しました。地域に根差した事務所に変わってきたという実感があります
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転機は「接客マーケティング」──電話1本かかってこなかった開業当初

インタビュアー: 開業8年の中で、大きな転機はありましたか。

大輔様:
3〜4年前ですね。実は開業から3〜4年目ぐらいまでは、人前では「うちは紹介1本でやってます」みたいな感じで話していたんですけど、正直に言うとHPからの問い合わせがゼロだったんです(笑)。

ホームページもちゃんと作っていたし、ブログも最初のうちは頻繁に書いていました。でも、1件も問い合わせが来ない。電話が1本もかかってこないんですよ。かかってきても業者からの営業電話だけ。「ちょっと相談したいんですけど」という問い合わせすらない。それが開業当初の状況でした。

ところが、3〜4年前にある施策を始めたら、問い合わせが一気に増えまして。今は紹介と問い合わせからの顧客がちょうど半々ぐらいになっています。

インタビュアー: その施策というのは。

大輔様:
妻が推進している「接客マーケティング」です。

インタビュアー: りささん、接客マーケティングについて詳しく教えてください。

りさ様:
もともと代表から「お客様へのおもてなしをしてほしい」と言われたのがきっかけです。私は7〜8年前に「開業を岡崎でやるから、手伝ってよ」と突然言われて入ったんですが、簿記とか税務の知識は全くないし、正直好きでもない(笑)。入力作業のような仕事は自分には向いていないと自分でも思っていましたし、代表からもそう言われました。

じゃあ自分の活かせる強みは何かと考えた時に、歯科医院での10年間の経験があったんです。チーフとして人材育成や、ホワイトニング事業の立ち上げなどを担当し医院の売り上げに貢献することに喜びや生きがいを感じていました。

医療業界では接客・接遇は当たり前ですし、旅館や観光業でも「おもてなし」はメジャーです。

でも、税理士事務所に「おもてなし」となると、ちょっと「?」がつくと思うんですね。どちらかというとドライな印象がある。そこに付加価値をつけていくことで、お客様がより安心して通ってくださるし、リピートにもなるし、紹介もしてくださるようになるんじゃないかと。そこを追求してずっとやってきています。

インタビュアー: 具体的にはどんな取り組みをされているのですか。

りさ様:
お客様満足度と事務所のブランディング向上のために、接客の仕組みを根付かせるように取り組んできました。従業員教育を徹底して、電話対応、来所時のお迎え、面談中のカウンセリング、お見送りまで、すべての接点で「任せてよかった」と思っていただける環境を作っています

その結果、リピートもいただけるようになったし、ご紹介も加速し以前よりも多くいただけるようになったし、成約率も上がりました。それで自分たちの事務所だけでなく、この思いをもっと業界全体に広げていきたいという気持ちが出てきたんです。
税務調査150件超──「駆け込み寺」の税理士が語る、現場のリアル

インタビュアー: もう一つの大きな転機として、税務調査への専門特化があったそうですね。

大輔様:
はい。経営をしていく中で、いろんな経営者や税理士の先生とお話しする中で、やっぱり「強みを見つけなきゃいけない」とずっと言われていたんです。AIの発展で、税務会計の分野の単純作業は代替される可能性も高い。何かしらの強みを打ち出さないと、今後の税理士業界で生き残れないと。

じゃあ何を軸にするか。私としては相続・資金調達・税務調査の3本柱が軸だと思っていましたが、岡崎には資産税関係で有名な大手がすでに3〜4件ありますし、全国区の税理士法人も含めると、相続では後発組なんですよ。資金調達もやっている人はいっぱいいる。

でも税務調査は、調べてみると意外と手をつけている方がいなかった。前職時代から通算150件ほど対応してきた経験と自信があったので、「税務調査」を専門分野にしようと決めました。

インタビュアー: ただ、税務調査を前面に出すことには躊躇もあったと。

大輔様:
正直ありました。私自身も税理士なので、税務署からどう見られるかという立場はよく分かるんです。ホームページを税務署の方が見たらどう思うだろうか、とか。それに税務調査の対応って、どうしてもハードな業務なので大変だよな、と。そういうマインドブロックがずっとあって、二の足を踏んでいました。

そんなときに妻である部長から「代表の強みは、税務調査です。迷ってないで税務調査を強みにしたらどうですか?」とアドバイスをもらいました。

インタビュアー: りささんからの一言だったんですね。

りさ様:
シンプルにそう言っただけなんですけどね(笑)。
大輔様:
まあ確かにそうだなと(笑)。あの一言がなかったら、今の方向性はなかったかもしれません。

インタビュアー: 税務調査の立ち会いの中で、特に印象に残っているエピソードはありますか。

大輔様:
「受けてよかった」エピソードと「受けなくてよかった」エピソード、2つあります。

受けてよかった方は、ある個人事業主の方のケースです。税務調査というのは、統計でいうと個人事業主に入る確率は60年に1回ぐらいと言われているんです。だから一生に1回来るか来ないか。その方も初めての税務調査で、しかも当時は税理士もつけていなかった。お客様のご紹介で、立ち会いをお願いされたんです。

実際に調査に入ると、ご自身でやっていた帳簿にはミスもありましたし、売上の計上の仕方についても税務署から「これは売上除外じゃないか」と厳しく突っ込まれました。でも、150件以上見てきた私からすると、それは税務署としては当たり前の基準だけれど、納税者にとっては全く常識ではないということが分かるんです。むしろ、納税者のやり方の方が一般的な感覚に近い。

そこで私は税務署に対して、「この方は意図的にやったわけではない。一般の納税者にとってはこれが常識的な考え方なんです」と説明させてもらいました。当初はこちらの言い分に難癖をつけていた税務署も最終的には「分かりました。今日はこの辺で終わりにします」と帰っていった。

その後、社長さんがめちゃくちゃ泣き出したんですよ。「先生がそういう風に言ってくれて本当によかった」「このまま自分で対応していたら、すごく悪いことをしてしまったんじゃないかと押しつぶされていたと思う」「先生がいてくれたから、別にそんなに悪いことはしていないんだと分かった」って。

税務調査で泣いて喜んでいただいたのは、あの方が初めてでした。でもこの経験から改めて実感しました。民間の考え方と税法の考え方の間には、大きなギャップがある。そこの「駆け橋」であり「通訳」であること──それが税理士の本質的な役割なんだと。

インタビュアー: 一方で、「受けなくてよかった」というエピソードも。

大輔様:
ある社長さんが相談に来たんです。相談は無料なので「来てください」とお伝えしたんですが、来た瞬間からもう汗だらだらなんですよ。ハンカチでずっと拭きながら話している。真冬で、コートを着るぐらいの時期なのに。

よくよく話を聞いたら、ほぼほぼ黒の話だったんです。本人もしどろもどろで、指も震えていて。これはうちでは相談自体が難しいですとお帰りいただいたら、1〜2週間後に報道に出てしまったんですよね。

インタビュアー: 税務調査で困っている経営者に向けて、アドバイスはありますか。

大輔様:
「地域に根差した税理士」に相談することです。税務調査専門を謳っている事務所でも、実は相談窓口はその事務所だけど、実際に税務調査に対応するのは別の税理士の先生が来る、というケースがあるんです。

最終的に私のところに来るお客様の中には、「相談した先生と実際に来た先生が違った」ということで困って来られる方がいます。だったら最初から、その地域に根差した、自分自身で見極めた信頼のおける先生で、相談したその先生ご自身が最後まで担当してくれるか──そこを必ず確認してほしいですね。

インタビュアー: 税務調査の相談で来られるお客様に、りささんが関わることもあるんですか。

りさ様:
実務のところはありませんが、最初のカウンセリングや導入のところですね。事務所としてのお客様への受け入れの仕組みには関わっています。
大輔様:
やっぱり、初めて税理士事務所に来る方は、税理士事務所イコール税務署だと思って来られる方もいるんですよ。「恐ろしいところ」みたいなイメージで。そういう方が最初に代表に接してもらうと、安心されるんです。
「突然、手伝ってよ」から始まった──夫婦経営のリアル

インタビュアー: お二人は夫婦で経営されていますが、日々の意思決定はどのようにされていますか。

大輔様:
正直、日常会話の7〜8割は事務所の話です(笑)。ご飯食べながらもそうだし、旅行に行く車の中でもそんな話ですし。
りさ様:
夫婦経営を始めた当初は、ジレンマを抱え、争いがゼロですとは言えない状況でした(笑)。でも、最終的な思い──会社をさらに良くして、従業員さんや関わってくれる方たちを豊かにしたいという思いは同じなんですよ。私は代表に雇われているという感覚ではなくて、一緒に経営をやって良くしていきたいという気持ちがすごく強い。だから「何のためにやってるんだ」と思い返すと、「良くなるため」に一致するので、試行錯誤しながらも「頑張ろう」ってなれるんですよね。今では本当に毎日が楽しく、生きがいを持ってお仕事できているなと実感しています。
大輔様:
もちろん意見が割れることはあります。でも、第三者との関係だとお互いの利害が交わらなくて平行線のまま終わることもあり得る。夫婦の場合は、利害が一致しないとお互い倒れてしまう。家でも会うし、家庭も破綻してしまいますからね。最終的には「サンアップを良くしていく」という共通の目標に帰ってきて、着地点を見つけるようにしています。

インタビュアー: 大輔さんから見て、りささんの存在はどのように変わっていきましたか。

大輔様:
独立前から、妻が歯科医院でチーフを任されていたことは知っていました。パートなのにチーフクラスで、院長も彼女の能力を買っていた。だから、入力作業とかに彼女のリソースを使うのは「もったいない」というのはずっと思っていたんです。

最初は人がいないから雑用的なことも手伝ってもらっていましたが、従業員が1人、2人と増えてきたタイミングで、「おもてなしをやってくれないか。お客様に対する接客と従業員教育、お願いします」とシフトしていきました。さすがに他の税理士事務所の先生にも教えさせてもらうところまで行くとは、私自身も思っていませんでしたけど
「おもてなし税理士」を全国へ──魚ではなく、釣り方を教える

インタビュアー: 「おもてなし税理士」という商標も取得されたそうですね。

りさ様:
はい。自分たちの事務所で成果が出た時に、自分のところだけでなく業界全体に広げていきたいという気持ちが出てきたんです。同じ業界で頑張っている方の気持ちは分かるし、役に立てるんじゃないかと。おもてなしを実践すると決めた時には、将来的に今の形になるというビジョンはずっと描いていましたね。

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他の事務所さんに対しては、まずやり方よりも「あり方」──働く側のお客様との向き合い方、仕事への向き合い方。そういったマインドセットのところから入って、実際の電話対応の仕組み、カウンセリングのやり方、コミュニケーション指導と、全般的なサポートを行っています。

インタビュアー: どのような事務所に広めていきたいとお考えですか。

りさ様:
開業から3年〜5年以内の若手の税理士で、これから従業員を増やしていきたいという成長意欲のある事務所さんです。全国の税理士事務所は9割ぐらいが10名以下なんですが、特にこれから組織を作っていこうという段階の事務所さんが一番効果を出しやすいですね。
大輔様:
例えば4〜5人のコアの人たちが私たちのプログラムを受けて、出来上がったものを次に入ってくる人たちに文化として伝えていく。その方が、いきなり30〜40人に教えるよりもずっと効率的に浸透していきますし、いい循環になる。

そして絶対的に大事なのは、所長税理士自身が本気でおもてなしに正面から向き合うこと。「おもてなし?俺はよく分からないけど、従業員さえ分かってればいいよ」というのは結果が出にくいですね。

最終的には「おもてなし税理士」という称号をお渡しすることになりますので、あくまでも「おもてなし税理士事務所」じゃなくて「おもてなし税理士」なんです。その税理士の先生が事務所を作り上げているという話。結局、魚を与えるのか、魚の釣り方を伝えるのかという話で、先生自身にちゃんと釣り方を染み込ませていただかないと、私たちが去った後に「もう魚が釣れません」となってしまう

インタビュアー: 事務所としての今後の目標を教えてください。

大輔様:
3年以内に税理士法人にして、「おもてなし税理士」を支店展開したいと考えています。おもてなしとは何かと聞かれたら、私たちが所属している団体の定義では「また会いたいなと思ってもらえる」こと。

士業もサービス業の端くれなんです。確かに国家資格としてポジションが高い業種なのかもしれませんが、だからと言って頭が高いわけにはいかない。お客様が相談しやすい空気感を作るためにも、おもてなしは欠かせません。そしてそれを対外的に発信していくためにも、ある程度の組織にしていかないと説得力がないと思っています。
りさ様:
私も想いは一緒で、サンブリッジを通じて全国に「おもてなし」の考え方を発信し、会計業界全体に貢献していきたいです。今の時代、AIの進化で数字だけの仕事では生き残れなくなってきています。お客様とコミュニケーションを取っていかないと生き残れない時代になっているからこそ、おもてなしの価値はこれからもっと大きくなると感じています。
「良い税理士」を見分ける二つの視点

インタビュアー: 最後に、税理士を探している経営者に向けて、良い税理士の見分け方を教えてください。

大輔様:
一番大事なのは、相談者をリスペクトして接してくれるかです。まずホームページを見て、先生の「思い」みたいなものがちゃんとあるか。興味を持ったらお電話をして、その対応がすごく丁寧か、心地良いか。実際に行ってみて、従業員の方がちゃんと自分に向き合ってくれているか。税理士の先生自体が親身になって話を聞いてくれるか。そこに事務所の本質が表れます。「この先生、ちょっとおかしいな」と思ったらやめた方がいい。違和感を感じたらやめた方がいいですね。
りさ様:
私からも、「違和感を無視しないこと」を大事にしてほしいと思います。税理士はコロコロ変えるものではないと思うんです。長く付き合えるかどうかがすごく大事。上から目線で接してくる、レスポンスがすごく遅い、大切に扱われていないんじゃないかと感じる──そういった小さな違和感は、長いお付き合いの中で歪みになって、必ず大きな問題につながります。

そしてもう一つ、税理士を選ぶ側の方にもお願いしたいのは、「どんな先生と付き合いたいのか」をご自身の中で具体的に明確にすること。ただ単に記帳代行をやってもらえる人でいいのか、しっかり経営の相談として話を聞いてもらえる人がいいのか、戦略的なアドバイスをしてもらえる人がいいのか。漠然と「顧問を頼みたい」ではなく、自分のニーズを持って会計事務所を訪ねてほしい。そうすることで、長く付き合える本当に相性の良い税理士に出会えるはずです。

取材後記

三宮大輔税理士とりささん。専門領域がまったく異なる夫婦が、それぞれの強みを活かして事務所を成長させてきた8年間のお話でした。

印象的だったのは、大輔さんが「開業3〜4年目まで電話が1本もかかってこなかった」と率直に語ったこと。そこから「接客マーケティング」と「税務調査の専門特化」──いずれもりささんの一言が背中を押した──という2つの転機を経て、紹介と問い合わせが半々になるまで成長した。その過程には、夫婦だからこその率直なやり取りと、互いの強みへのリスペクトがありました。

「おもてなし税理士」という言葉が二人の間で単なるスローガンではなく、事務所運営の根幹に根付いていること。税務調査150件超の実績を持つプロフェッショナルが、同時に「また会いたい」と思われる接客を大切にしている。その二つが揃っているからこそ、広告費ゼロでも紹介が生まれ続ける事務所が出来上がっているのだと感じました。

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