税理士の枠を越えて、経営者の「右腕」へ ――社外CFOとして届けたい「人生ごと支える」伴走支援

二田水 尚(にたみず なお):税理士事務所aoitokei 代表 / 株式会社ビズワク 代表取締役
早稲田大学商学部卒業後、税理士試験5科目に1年ずつ合格。G.S.ブレインズ税理士法人で中小企業の法人顧問・財務コンサルを経験した後、マイナビにて税務マネージャーとして税務課の立ち上げに従事。2021年に独立し、税理士事務所aoitokeiを開業。現在は約20社の法人顧問を務めるかたわら、社外CFO業務を行う株式会社ビズワクの代表取締役として、経営者の伴走支援に力を注いでいる。
宮田:二田水さんは税理士事務所とビズワクという二つの事業を運営されていますね。それぞれの役割と、なぜ二つに分けているのかを聞かせてください。
税理士事務所aoitokeiでは、法人のお客様を中心に顧問税理士として決算、月次相談、税務調査対応、記帳代行などを行っています。現在は約20社を一人で担当していて、今後はスタッフを採用して、よりスピーディーかつ正確な対応体制を作っていきたいと考えています。
もう一つの株式会社ビズワクは、社外CFO業務を行う会社です。掲げているのは「お金の不安を安心に、経営者のビジョンを形にする」というミッション。税理士の仕事が「過去の数字」を扱うものだとすれば、ビズワクは「現在と未来」の数字、そして経営者の想いと行動をサポートする存在です。経営者のやりたいこと・ビジョンを数字に落とし込み、「今、何にいくら使えるか」「どうすれば理想の状態になれるか」を右腕として一緒に考えています。
二つに分けた理由は明確で、税理士としてのサービスに限界を感じたからです。「もっと経営者に寄り添いたい」と思ったとき、経営者の悩みはお金の話だけではなく、今と未来のこと――資金繰り、採用、事業の方向性――が気になるものだと痛感しました。税理士の範囲内でも財務コンサルやコーチング的な関わりはしていましたが、すべて無償でやっていて、できることに限界がありました。
もう一つの動機は、「自分たち自身も枠を越えたい」という想いです。「チャレンジしたい人をサポートすると言いながら、自分たちがチャレンジしていないのではないか」。その問題意識が、ビズワク立ち上げの背中を押しました。現在は共同経営者と2人体制ですが、今月末から仲間を増やしていく予定です。

宮田:早稲田大学商学部に進学されていますが、税理士を目指したきっかけは何だったのでしょうか。
理由は二つあります。一つは、手に職をつけたかったこと。高校生のとき、離婚した母が専業主婦から就職活動をして、ものすごく苦労している姿を間近に見ていました。女性として生きていく上で、自分の力で立てるスキルがほしいと強く思ったんです。
もう一つは、人のためになる仕事がしたかったこと。学生時代から人に相談されることがとにかく多くて、それがすごく嬉しかったんですよね。税理士と会計士の違いを知ったとき、税理士は経営者の横に立ってサポートできる仕事だと聞いて、「手に職も持てて、世のため人のためにもなれる」。自分にぴったりだと思いました。
宮田:税理士試験は5科目を1年ずつ、しかも所得税の模試で全国1位。その集中力はどこから来るのですか。
ゴールを決めて、そこに辿り着くために何が必要かを分解して、ひたすらPDCAを回す。これは今のビズワクの仕事にもそのままつながっています。当時は朝から晩までずーっと勉強していました。大学卒業後2年間は勉強に専念したのですが、実は所得税は受かったと思ったら落ちていたんです。「法人税もやらないと」と切り替えて、結果的に難易度が高いと言われる法人税と所得税を同時期に取得しました。あの悔しさがなかったら、今の自分はなかったかもしれません。
宮田:G.S.ブレインズ税理士法人からマイナビへ。税理士法人から事業会社に移った理由と、そこで得たものを教えてください。
G.S.ブレインズに入ったのは、当時の税理士事務所には珍しくコンサルティングまで手掛けていて、ビジョンが素敵な会社だったからです。予算・実績管理の意味、組織の作り方、理念の重要性――税務を超えた経営の本質を学びました。
ただ3〜4年ほど経験を積む中で、一つの違和感が大きくなっていったんです。事業会社のことをわかっていないのに、事業会社にアドバイスしている。相手が何で悩み、社内の仕組みがどうなっているのかもわからないまま、外側からコンサルティングしていることへの疑問でした。
マイナビに入ってからは、まさに「税理士にとってのお客さん側」の体験ができました。税理士に何を求めたいのか、経営者がどんな情報をもとに判断しているのか、経理だけでなくいろんな部署がどう連携して会社が動いているのか。6〜7年の在籍で得たこの肌感覚が、今のクライアントとの向き合い方の土台になっています。
マイナビは新規事業がどんどん立ち上がる環境で、入社当時にはアナログだった部分の効率化や、部門横断での業務設計にも携わりました。クライアントの「中」を知っている税理士でありたい――その信念はこの時期に形づくられたものです。
宮田:2021年に独立されています。何がその決断の背中を押したのですか。
長女の出産です。娘にどんな後ろ姿を見せたいかを考えたとき、楽しく、やりがいを持って仕事している姿を見せたいと思いました。家族との時間を大事にしたいという想いもあって、自分で自分の時間をコントロールできる働き方を選びたかった。税理士法人に戻るのではなく、独立という道を選びました。
宮田:HPのVisionページに、第2子の景くんが生後2日で亡くなられたことが書かれていました。非常にデリケートなことですが、その経験が今のスタンスにどう影響しているか、お話しいただけますか。
2023年12月のことです。あの経験は、今のビジョンやスタンス、人生観のすべてにつながっています。
当時は本当に誰にも会えないような状態でした。そこからなんとか這い上がって、心から思うようになったのは、「自分の人生を自分らしく生きることの大切さ」です。
経営者の前に、一人の人間として向き合うこと。「経営は人生の一部であって、すべてではない」ということ。人生は一度きりで、何が起こるかわからない。だからこそ、「社会がこうだから」「一般的にこうすべき」という声に呑まれないでほしい。そう心から思っています。
事務所名の「aoitokei」は、娘の葵と息子の景――二人の名前から付けました。実はママ友がアイディアをくれたんです。突き詰めていくと、自分はなぜ働いているのか。それは子どもたちの幸せを願っているから。子どもたちが大人になったときに、良い社会であってほしい。その想いを事務所名に込めています。
宮田:ビズワクの社外CFOは、一般的にイメージする「財務のプロ」とは少し違う印象を受けます。二田水さんが考える社外CFOの役割とは。
社外CFOと聞くと数字側のイメージを強く持たれると思いますが、私たちがやっているのは、経営者のやりたいことに向かって右腕として伴走することです。財務もコーチングもスキルの一つ。経営者と同じ目線に立って、その方が成し遂げたいビジョンの実現を一緒に目指す。想いだけでもダメ、数字だけでもダメ。両方を大事にすることが成長の秘訣だと思っています。
ビズワクでは、お客様には「先生」ではなく名前で呼んでもらっています。常に隣にいる伴走者でありたいからです。

宮田:5年後、10年後に実現したい世界を教えてください。
「中小企業1社に、1人の社外CFO」。この世界を作りたいと思っています。
想いと数字の両軸のサポートが1社に1人ついていたら、中小企業はめちゃくちゃ良くなると思うんです。日本の8割は中小企業。中小企業が元気になれば、日本が元気になる。日本全体が明るくなると、子どもたちが大きくなったときに「日本ってめちゃくちゃ良いよね」と思ってほしい。
もう一つ、女性が活躍する場をつくりたいとも考えています。ライフスタイルの変化で「働きたいけど働けない」「自分なんて」と思っている女性たちが、自分らしく選択して働ける場所を提供したい。それもビズワクの使命だと思っています。
この事務所がある地域の税理士を探す
税理士事務所aoitokei・株式会社ビズワクの詳細はこちら
取材後記
二田水さんの話を聞いていて、何度も胸を打たれたのは、すべての原動力が「人のために」という想いに一貫していることでした。母の苦労を見て手に職を志した学生時代、事業会社の「中」を知りたいと飛び込んだマイナビ時代、そして息子の景くんとの別れを経て辿り着いた「人生の主役を自分で握る」という信念。税理士としての専門性と、社外CFOとしての伴走力、その根底にある人間としての温かさが、二田水さんの一番の強みだと感じました。「中小企業1社に1人の社外CFO」という未来が実現したとき、日本の経営の景色は確かに変わるのだろうと思います。
あなたに合った税理士、見つかります
インタビューで気になった税理士への相談も、他の税理士の紹介も、すべて無料。
良い税理士のコンシェルジュにお任せください。
※ 本インタビューの内容は取材時点のものです。事務所の体制やサービス内容は変更される可能性があります。最新の情報については各事務所に直接お問い合わせください。