暗号資産税務の最前線 – 「技術・法律・実務」の三位一体で挑む、カオーリア会計事務所

藤本 剛平(ふじもと こうへい)|カオーリア会計事務所 代表 税理士
武蔵野美術大学で映像を学んだ後、品川区役所に勤務。在職中に税理士資格の取得を志し、約6年をかけて全科目に合格。大阪の会計事務所で実務経験を積んだのち、資格取得から半年で独立開業した。暗号資産の税務が未開拓であることに着目し、DeFiの台頭とともにブロックチェーンエンジニアとの協業体制を構築。現在は税理士1名・エンジニア3名の少数精鋭体制で、年間50〜60件の暗号資産損益計算を手がける。元国税OBの泉絢也氏との共著『事例でわかる!NFT・暗号資産の税務』(中央経済社)をはじめ、税経通信・税務弘報(いずれも中央経済社)への寄稿多数。自らも暗号資産のトレーダーとして市場に参加しており、お客さんと同じ目線で税務に向き合う姿勢を大切にしている。
インタビュアー: 暗号資産の税務を専門にされていますが、一般的な税務と比べてどのあたりが違いますか?
根本的に違うのは、損益計算の難しさですね。普通の税務だと、通帳や帳簿を見ればだいたい取引の中身がわかります。でも暗号資産の場合は、そもそも取引データの把握自体に専門的な技術が必要なんです。
お客さん一人あたりの取引件数でいうと、年間で5,000件から3万件くらいが平均的なボリュームです。多い方だと200万件を超えることもあります。しかもそれは取引所のデータだけではなく、ブロックチェーン上の取引——DeFiの流動性提供やNFTの売買、ウォレット間の移動など——まで含まれてきます。これを正確に損益に落とし込むには、技術と税法の両方がわかっていないと対応できないんですよ。
うちでは年間50〜60件の損益計算をやっていますが、11月・12月から処理を開始しても、今の時期でもまだ完全には終わりきらないくらいのボリュームがあります。それでも昔に比べたら処理量は10分の1くらいまで減らせたレベルですね。前例がない中でノウハウを少しずつ積み上げてきたからこそ、ここまで来れたんだと思います。
インタビュアー: それだけ複雑だと、お客さんが自分で計算するのは難しいですか?
難しいですね。他の事務所さんだと、損益計算はお客さん自身にやらせて、その数字をそのまま使うというケースもあります。でもそれだと、適当に処理した結果、お客さんの想定と全然違う税額が出てしまうことがあるんです。
具体的に言うと、暗号資産の取引というのは一つひとつにコメントを入れてもらわないといけないんですよ。「この取引は何だったのか」を指定してもらう必要があります。たとえば1年間何も処理してこなかった取引が7万件あるとして、それを確定申告が近づいたので1か月でやってくださいと言ったら、さすがにきついじゃないですか。
だからうちでは税理士が責任を持って損益計算をやる体制にしています。預け入れ、流動性提供、入金先不明——こういう複雑な処理も全部うちで対応します。適当にやるとお客さんの思った金額にならないけれど、ちゃんと処理すれば正確な金額になる。その過程がすごく面白いんですよ。
お客さんと苦労しながら正しい取引内容を確認していって、最終的にお客さんが納得のいく損益額が出た瞬間——高かろうが安かろうが、適切な数字が出たときは複雑なパズルを解き終えたような感覚ですね。お客さんとの連帯感みたいなものも感じます。あの瞬間が一番やりがいを感じるところです。
インタビュアー: カオーリア会計事務所の強みを教えてください。
大きく3つあります。技術、法律知識、実務経験です。この3つが揃っているところが、うちの一番の特徴だと思っています。
まず技術面ですが、うちは3名のブロックチェーンエンジニアと一緒に、オーダーメイドの損益計算ソフトを開発・運用しています。一般的に使われている市販のソフトは、取引所から出てくるデータを取り込んで処理するという設計が主流なんですが、うちのソフトはブロックチェーン自体を読み込んでNFTや流動性提供まで処理することをベースに設計してあるんです。
「こういう取引を処理したい」という要望があったら、エンジニアに依頼して対応機能を追加できますし、ロジックも最新の税法に合わせて柔軟にアップデートしていけます。お客さんの状況に合わせてソフトをカスタマイズできるというのは、うちならではの強みだと思いますね。
インタビュアー: 法律知識の面ではいかがですか?
2つ目の強みは、元国税OBの泉先生との協力体制です。泉先生は暗号資産の税法の研究者として国内でも第一人者と言える方で、一緒に書籍も出版しています。私自身も税法論文を書いていますが、泉先生と組ませていただいていることの意味は非常に大きいですね。
暗号資産の税務というのは、そもそもルールが決まっていない部分がとても多いんです。既存の税法をどう解釈して適用するかを、一から考えなきゃいけない場面がしょっちゅうあります。私自身も税法論文執筆時に培った税法解釈の知見はありますが、やはり税法研究を専門に行っている方に比べたらそこは敵いませんね。ただ、実務の知見も税法解釈時には不可欠なのでお互いカバーしあっているという感じです。
税務調査が入ったとき、最終的に行き着くのは裁判なんですよ。裁判で参照されるのはあくまでも税法ですから、税法をしっかり理解した上で処理しているかどうかが非常に重要になってきます。泉先生は元国税OBですから、税務調査の実態にも精通されていますしね。法律面での裏付けについては、しっかりとした体制を築けていると感じています。
インタビュアー: 3つ目の実務経験については?
開業初期は本当に大変でした。できるかできないかもよくわからない状態で、難易度の高いお客さんの取引に向き合っていたんです。ソフトの性能もまだ発展途上でしたから、足りない部分を人力でなんとか補うという日々でしたね。暗号資産の税務って、当時は「ネットで調べても何も出てこない」という世界だったんですよ。全部、自分で税法から読み解いていくしかなかった。
その一つひとつの積み重ねがあるから今があるんだと思います。この3つのうち、どれか1つでも欠けると難しいんですよ。技術がなかったらブロックチェーンの解析や読み取りができませんし、法律知識がなかったらどう処理していいかわからない。実務経験がなかったら、技術と法律の知識を正しい損益計算に落とし込むことができません。この3つが揃って初めて、正確な税額の算定ができるというのが、暗号資産税務の難しさであり、面白さでもあると思っています。
ありがたいことに、この3つを兼ね備えた体制で長年やらせていただいているので、どんな複雑な案件でもお受けできるという自負はあります。
インタビュアー: お客さんとのお付き合いの仕方について教えてください。
基本的に月次面談でお付き合いしています。スポットの依頼はほとんど受けていません。
暗号資産の取引って、月ごとにどんどん積み重なっていくものなんですよ。それを年末にまとめて処理しようとすると、お客さん自身が「この取引は何だったっけ」と思い出せなくなってしまいます。だから毎月の面談で、記憶が新しいうちに一つずつ確認していく。これが正確な損益計算のためにもとても大事なことなんです。
それに加えて、毎月お話しすることでお客さんとの信頼関係ができてきます。「この取引、大丈夫ですかね?」「ここちょっと怪しくないですか?」みたいな相談が気軽にできるようになるんですよね。暗号資産の世界は詐欺も多いので、万が一詐欺に遭いそうなときにすぐ「ここはやばいよ」とアドバイスできる。いつでも相談できる相手がいるというのは、お客さんにとって大きな安心感になると思います。
インタビュアー: どんなお客さんが多いですか?
年齢で言うと20代から40代がボリュームゾーンですね。取引規模はまちまちで、数百万円から10億円くらいまでいらっしゃいます。
相談に来る方は、税務のことが全然わからない方と、かなり詳しい方が半々くらいです。特徴的なのは、取引の難易度が高いお客さんの比率がうちは高いということですね。DeFiやNFTをがっつりやっている方の案件は、やはり処理の難易度が上がりますので、そういった方がうちを見つけて来てくださるケースが多いです。
暗号資産の税務はかなり特殊な分野ですので、専門的にやっている事務所自体がまだ少ないんですよね。だからこそ、うちのように専門で取り組んでいる事務所の存在意義があるのかなと思っています。
インタビュアー: 柔軟な対応時間も特徴だと聞きました。
はい、夜間や土日祝日でも対応しています。23時くらいまで打ち合わせすることもありますよ。実は私、夜型なんです(笑)。30年間朝9時の出勤がずっと辛かったんですが、独立してからは好きな時間に起きられるようになりました。今は昼過ぎに起きて夜7時くらいまで仕事をするというスタイルですね。
暗号資産をやっている方は、本業を持ちながらの兼業投資家も多いので、平日の昼間に時間が取れない方も少なくありません。通常の会計事務所が対応していない時間帯にも柔軟に対応できるというのは、お客さんにとってメリットだと思っています。
AI時代において最終的に選ばれるのは、人柄とか、他では真似できない部分だと思っているんですよ。だから毎月税金の話をする必要がなくても、コミュニケーションの時間は大切にしています。
インタビュアー: 今後の展望を聞かせてください。
事務所としては小規模で専門性の高い状態を維持したいですね。大きな税理士法人を目指したいとは今のところ思っていません。
これからAIが発達していく中で、税理士業界は強烈に二極化すると考えています。一方は少数精鋭で専門性が尖った事務所、もう一方はブランディングとしての大規模税理士法人で、税務だけじゃない領域にも手を出していくタイプです。うちは前者でありたいですね。相続とか他の領域の案件が発生したら、その分野に強い外部の事務所と連携します。餅は餅屋と考えています。下手に自分でやるよりも、専門のところにお願いしたほうがお客さんのためになりますから。
もう一つやりたいのは、暗号資産の税務知識を広めることです。正直なところ、国税局ですらよくわかっていない論点がたくさんあるんですよ。そもそもルールが決まっていないものも多い。こうした情報を把握するには実務をやらないとわからないんです。計算の実務をやっていて、税法もわかっていて、ソフトも自前で作っているという人間はとても少ない。これまで暗号資産の領域に深く入り込んできた私だからこそ、そのミッションを果たしたいと思っています。
今、自分のブログで100本超、約50万字の記事を書いています。ただこれは一般の方向けというよりも、税理士に刺さるコンテンツを意識しているものでして、裁決事例の分析とか税法の解釈論とか、一般の方はまず読まないような内容ですね(笑)。書籍も出していますが、東大の学生に「今まで読んだ中で一番難しい本」と言われたこともあります。
インタビュアー: 暗号資産の市場自体が不安定なリスクについてはどうお考えですか?
それはありますね。暗号資産は毎年利益が大きく変動するので、儲からない年にはお客さんが減ります。赤字だと申告する必要がないので、損益計算の報酬を払ってまで毎年依頼する必要がないと判断される方もいらっしゃるんです。解約と増加数がプラマイゼロなら上出来で、上昇相場の年にどんどん増えるという波があります。
正直、暗号資産自体がなくなっちゃっている未来も全然ありうると思いますよ(笑)。30年後にどうなっているかなんて誰にもわかりませんからね。ただ、仕事が趣味みたいなものなので、もういいやと思えるまではやり続けたいと思っています。それは野望というよりは願望ですね。
インタビュアー: 最後に、暗号資産の税理士を探している方へメッセージをお願いします。
税理士を探すにあたって、費用感はもちろん大事です。ただ、各税理士には得意分野がありますから、暗号資産みたいな特殊なジャンルに関しては、専門性の高いところにお願いしたほうが費用対効果は高いと思います。
暗号資産の損益を正しく計算するには、技術・法律知識・実務経験の3つが揃っていることが不可欠です。どれか1つでも欠けると、正確な税額は出せません。
うちは元々自分自身がトレーダーとして暗号資産に触れてきたので、お客さんと同じ目線でお話ができるんですよ。「暗号資産の税金って何でこんなに高いんだろう?」——それが税法研究を始めたきっかけでしたから。元々の考え方はお客さんと一緒なんです。暗号資産の税金(というか税金全般)は高いなぁと思ってます笑。
暗号資産の世界がどこまで続くかわかりませんが、続く限りこの仕事を続けていきたいと思っています。お困りのことがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。
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取材後記
「どんな複雑な案件でもお受けできるという自負はあります」——藤本先生のこの言葉には、静かな確信がありました。
武蔵野美術大学で「自分よりすごい人たち」に出会い、勉強だけでは届かない世界があることを知ったという藤本先生。「学生じゃダメなんですよ。自分自身も研究者にならないと」と語るその姿勢は、暗号資産という未開拓の領域で税法を一から読み解き、ソフトを自ら開発してきた歩みそのものだと感じました。
オーダーメイドの損益計算ソフト、元国税OBとの協力体制、そして年間50〜60件を超える実務の蓄積。この3つが揃っているからこそ、どんな複雑なパズルにも向き合い続けることができるのだと思います。暗号資産の税務に悩む方にとって、藤本先生は心強い存在であり続けるのではないでしょうか。
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