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監査法人、福祉事業、ゲーセン経営、上場企業CFO ——「税理士ではなく経営者」と語る小笠原一郎氏の次なる展望

監査法人、福祉事業、ゲーセン経営、上場企業CFO ——「税理士ではなく経営者」と語る小笠原一郎氏の次なる展望

小笠原一郎(おがさわら いちろう):小笠原一郎公認会計士・税理士事務所 代表

1981年北海道伊達市生まれ。明治大学経営学部卒業後、KPMGあずさ監査法人に7年間勤務。2011年に札幌で独立。福祉事業やアミューズメント施設経営など自ら複数の事業を手がけ、現在は税理士業務に加え上場企業のCFOも兼務する。「北海道からワクワクを作っていきたい」が信条。

老舗企業の経営会議からスタートアップまで——”相談しやすさ”が強みの事務所

まず、現在の事務所の体制やお客様の特徴について教えていただけますか。

小笠原:
今はパートを含めると4名ほどの体制です。8月からもう1名増える予定で、今後さらに手厚い支援ができるようになると思います。お客様の層はかなり幅広くて、歴史のある老舗企業の経営会議にだけ参加させてもらうようなケースもあれば、立ち上げたばかりのスタートアップ系の会社もある。法人も個人も、売上規模もさまざまですね。

かなり幅広いですね。経営会議への参加というのは、顧問契約とは少し違うのでしょうか。

小笠原:
はい、申告業務はなくても「小笠原先生の経営会議だけ参加してもらえませんか」というお話をいただくこともあるんです。こういう形で関わっているのは、やはり税務の知識だけではなく、経営者としての経験を買ってもらえているからだと思います。

事務所としての強みは、どのあたりにあると感じていますか。

小笠原:
やっぱり一番はフットワークの軽さですかね。SNSは基本的に全部有料課金していて、ChatworkでもSlackでもFacebookメッセンジャーでも、パッと相談が来たらパッと返す。あとは、いろんな方面に興味があるので、「誰と誰をつなぐと面白いか」「この人お金出しそうだな」とか、そういうネットワーク的な情報に詳しいのも自分の持ち味かなと思っています。日常の税務業務はスタッフに任せて、自分は外回りや経営者との対話に注力する。そういう役割分担を明確にした体制でやっています。
偏差値43からの逆転劇——経営者一家に生まれた会計士の原点

北海道伊達市のご出身ですが、会計の道を志したきっかけを教えてください。

小笠原:
実家がゴルフ場を経営していて、親族も「カラカミ観光」というホテルグループの経営に関わっていた、いわゆる経営者一家なんですよね。子供の頃から「将来は経営者として跡を継ぐんだぞ」と言われていました。じゃあ経営者になるために何を勉強したらいいか——という話になったときに「税理士」というキーワードが祖母から出て、さらに「大学に行くなら会計士を取った方がいい」と言われて。それが出発点です。

高校3年の9月で偏差値43だったとお聞きしましたが、そこからの巻き返しがすごいですよね。

小笠原:
そうなんですよ(笑)。10月ぐらいの模試で偏差値43と出て、「これはまずい」と。でも私立文系の3教科に絞れば、4ヶ月あれば届くんじゃないかと。センター試験は無視して、1点に尖って突き抜ける。この発想は今にも通じているかもしれないですね。結果、明治大学経営学部に現役で合格して、入学後は大学に行かずTACに通い詰めて、卒業年度に公認会計士試験に合格しました。
小笠原一郎公認会計士・税理士事務所
KPMGあずさ監査法人の7年間——金融機関の「生命線」を査定してきた経験

あずさ監査法人ではどのような業務を担当されていたのですか。

小笠原:
最初の3年半は東京でIT系や石油系の会社の監査をやっていました。4年目に祖母が倒れたのをきっかけに札幌事務所に転勤して、そこからは銀行、通信、信用金庫などの金融機関の監査を担当しました。

金融機関の監査というのは、一般的な企業の監査とはだいぶ毛色が違うのでしょうか。

小笠原:
全然違いますね。特に私がやっていたのは銀行の自己査定の監査です。銀行が企業に融資する際の「この会社にいくら貸していいか」という評価——債務者区分と言って、正常先・要注意先・要管理先・破綻懸念先・実質破綻先・破綻先という段階があるのですが、その区分が妥当かどうかを銀行と議論するわけです。区分が下がれば貸倒引当金を積み増さなきゃいけないし、ニューマネーも出せなくなる。つまり、融資先の企業にとっては文字通り生命線になる査定を、金融機関と真正面から議論してきた。この経験は、今の税理士業務でも活きていますね。

経営者の資金調達の相談にも、銀行側のロジックがわかるという強みがあるわけですね。

小笠原:
そうです。普通の税理士先生は、金融機関がどういう基準でお金を出すか出さないかの判断をしているかまでは知らないことが多い。自分はその現場を内側から見てきたわけですから、経営者の資金調達の相談にも具体的に応えられる。これは確かに面白い強みだと思います。
福祉事業、ゲーセン、そして民事再生——「経営者の痛み」を知る税理士ができるまで

2011年に独立された直後に障がい者福祉事業所を設立されています。税理士として独立するタイミングで福祉事業も同時に始めるというのは、かなり異色ですよね。

小笠原:
周りからも珍しがられました(笑)。でも自分は経営者の血なんですよね。監査法人にいると自分のお客さんを持てないし、銀行の監査をいきなりやっていた人間が、独立して税理士のお客さんを1から集めるのも現実的じゃない。だったら自分で事業をやりながら、税理士業務も並行して育てていこうと。

なぜ福祉だったのですか。

小笠原:
友人がやっている障がい者福祉の施設を見に行ったことがきっかけです。いろんな人がいて、いろんな人と関わる面白さを感じたのと、ちょうど行政が「施設から街へ」という方針でグループホームを増やすタイミングだった。会計士として事業計画を書くのは得意だし、福祉事業は計画書が比較的作りやすい。現場に詳しい知り合いが責任者をやって、自分が財務を見る。そういう形で始めました。

さらにアミューズメント施設の代表取締役もされていましたね。税理士がゲームセンターを経営するというのは聞いたことがないです。

小笠原:
会計士をやっていると、M&Aの話はいろいろ回ってくるんです。経営者仲間から話があって、一緒にやろうと。「北海道だし、トップは小笠原さんにやってもらえませんか」という流れで代表取締役を引き受けました。2019年は1億数千万円の経常利益が出て「さあ、これから」というタイミングで、2020年にコロナが来ました。苫小牧のイオンの中に800坪の店舗を構えていたので、休業補償では全然割に合わなくて。

コロナの影響をまともに受けてしまったと。

小笠原:
はい。最終的には民事再生手続きを経ることになりました。代表取締役の立場で民事再生をやった公認会計士は、たぶん自分だけじゃないかと思います。2023年頃に整理が終わって、そこからあらためて税理士業務に本腰を入れ始めた。だから実質的には2023年が再スタートみたいな感覚ですね。

この経験が、顧問先への向き合い方にどう影響していますか。

小笠原:
やっぱり経営者の痛みがわかるというのは大きい。資金繰りに苦しんだこと、従業員に申し訳ないと思ったこと、全部自分で経験していますから。「大変ですよね」と口だけで言うのと、実際に同じ立場を経験した人間が言うのとでは、説得力が全く違う。だからこそ、うちに来てくれる経営者は「この人なら自分の気持ちをわかってくれる」と感じてくれているのだと思います。
小笠原一郎公認会計士・税理士事務所
上場企業のCFOも兼務——「適法なら、基本やる」という行動原理

現在は税理士業務に加えて、東京の上場企業のCFOも務めていらっしゃるとか。

小笠原:
はい、ガーラという上場企業のCFOを引き受けました。社外取締役や社外CFOではなく、正式なCFOとしてディスクロージャー資料を作ったり、会社の会計的意思決定をまとめたポジションペーパーを作成して監査法人に説明したりしています。兼業で上場会社のCFOをやっている人なんて、世の中にほとんどいないと思います(笑)。

いろいろな話が舞い込んでくる中で、やるやらないの判断基準はあるのですか。

小笠原:
基本的にはご相談をいただいたら受けていますね。判断基準は「適法かどうか」と「自分でできるか」、ぐらいじゃないですかね。もちろんうまくいかなかったものもあるし、時間もかかる。でも、面白そうだと思ったらやってみる。この行動力が自分の一番の強みだと思っています。
「北海道からワクワクを作っていきたい」——素材の宝庫で描く未来

事務所の理念として「北海道からワクワクを作っていきたい」を掲げていらっしゃいます。具体的にはどんなことを考えていますか。

小笠原:
今は上場会社のCFOも引き受けているので、自分が主役で何かを立ち上げるというよりは、応援する側に回りたいと思っています。例えば、友人が南幌の大麦でモルトを作っているんですが、日本でモルトを作っているところってほとんどないんですよ。面白いなと思って、勝手に売り先を探して親戚のビール醸造所を紹介してみたり、契約書を見てあげたり。

自然と応援が始まっている感じですね。

小笠原:
あとは、うちの障がい者福祉事業の中で、北海道の鹿革を使った革製品のお土産を作れないかという構想もあります。お菓子のお土産だけじゃなくて、北海道の素材の付加価値を形にして持って帰ってもらえるものを作りたい。東京で仕事をしていると、何が世界で売れるかが見えてくる。その目線を持って北海道に戻ってきて、「ここにこんな面白い素材があるじゃないか」と気づける——それが今の自分のポジションだと思っています。

今後の事務所の方向性として、拡大は考えていらっしゃいますか。

小笠原:
無理に広げようとは考えていないです(笑)。無理に拡大して疲弊している税理士先生を何人も見ていますから、ああはなりたくない。それよりも、「小笠原さんのところにお願いしている会社だよね」というブランドを確立していきたいです。相談しやすい事務所であること、パッと聞いたらパッと返せること。規模じゃなくて質で勝負していきたいと思っています。

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取材後記

監査法人、福祉事業、アミューズメント施設経営、そして上場企業のCFO。これほど多彩な経歴を持つ税理士は、全国を見渡してもまずいないのではないでしょうか。

お話を伺っていて印象的だったのは、「経営者の痛みがわかる」という言葉の重みです。民事再生を代表取締役として経験し、コロナ禍で事業を畳む苦しさを知っている。だからこそ、顧問先の経営者が「この先生なら自分の気持ちをわかってくれる」と感じるのだと思います。

偏差値43からの逆転合格、「適法なら基本やる」という行動原理、北海道の素材でワクワクを作りたいという夢。一つひとつのエピソードに、小笠原先生の人となりが凝縮されていました。北海道に、こんなに面白い税理士がいます。

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