エンジニアから税理士へ転身。3つの事業を経営しながら「挑戦の後押し」を追求する理由

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髙橋 徹|王子クラウド会計事務所 代表税理士

早稲田大学理工学部卒業。大手金融系SIerでJavaエンジニアとして6年間従事後、株式会社ベイカレント・コンサルティングを経てベンチャー企業に転職。30歳で人生の転機を迎え、IT業界から税理士への転身を決意。

大学院でMBA取得と並行して税理士を目指し、わずか2年間で税理士資格を取得。現在は家業のオフィスサプライ業・ITベンチャー・税理士事務所の3つを同時経営する異色の税理士として活動中。

「数字を武器に変える」伴走支援にこだわり、単なる帳簿作成にとどまらず、経営者が成長を実感できる未来志向の数字活用をサポートする。

エンジニアからの転機。30歳で迎えた人生の分岐点

――髙橋さんは税理士になる前はエンジニアをされていたとお聞きしました。どのような経歴をお持ちなのでしょうか?

髙橋氏:
新卒で大手の金融系SIerに就職し、銀行システムの開発を6年間担当していました。2〜3年かけてバグが1個も出ないぐらいまで品質を高めた上で作り上げていく、そういう大規模なプロジェクトでした。Javaのプログラマーからプロジェクトリーダーまで、下流から上流まで一通り経験させてもらいました。

その後、ベイカレント・コンサルティングに転職したんです。ちょうど在籍中に上場するという貴重な経験もしました。ただ、コンサルで上流とかマネジメント系の仕事が多くなって、キャリアとしての専門性に疑問を持つようになったんです。「これから30年、コンサルだけで食っていけるのかどうか」という不安がありました。

よりスキルを身につけるために、30歳の時にベンチャーに転職しました。そこで本物の技術者とたくさん巡り合って、プロジェクトを推進するという経験をさせていただいたんですが、プロジェクトはうまくいったものの、「この人たちを追い越すのは難しいだろうな」とキャリア的には心が折れてしまって。自分の専門性ってなんだろうと考え始めたのが30歳の時でした。

――その転機で、なぜ税理士という道を選ばれたのでしょうか?

髙橋氏:
最初から税理士を目指したわけではなく、とにかくIT以外の道を模索していました。起業にも興味があったので、MBAを取れる大学院にとりあえず行ってみようと。そのついでに、もしかしたら専門性の1つとして税理士を目指すかもしれないから、保険的に論文も書いておこうかなという感じで始めました。

実は実家がオフィスサプライ業をやっていて、その後継ぎの話もあったんです。オフィスサプライ業って、結局事務所がないと仕事になりません。ほとんどの取引先が地場の中小企業なんですが、やっぱり後継者問題とか廃業の問題があって。

新規の取引先を0から営業で開拓するのではなく、自ら生み出す側に回ってしまうことが結果的に家業の未来につながると考えたんです。開業や成長のサポート、つまり新たに事業を起こすことのサポートができなければ、オフィスサプライ業を継ぐことも難しいかなと。そういう意味で経営の伴走役として、一番適しているのは税理士だなと思いました。
「お前誰?」状態が生んだ、箔をつける必要性

――大学院卒業後は、どのような流れで現在の3つの事業体制になったのでしょうか?

髙橋氏:
大学院を卒業してITベンチャーを起業したタイミングで、実家の跡継ぎの話も本格化したんです。それが4、5年前の話ですね。実家のオフィスサプライ業では事務所に必要なものを販売していて、複合機の販売代理なんかもやっているんです。家業側で年配の方と関わることが増えて、そこで痛感したのが「お前誰?」状態になることでした。

エンジニアの専門性以外何もなく、エンジニアの肩書きが通用しないところで、会社の中では社長の息子みたいな存在として扱われる。家業側の名刺で語れるものがあんまりなかったんです。「ベンチャーの経営をしながら経理やってます」みたいな、なんとも言い難い状況でした。

そういったときに、ちゃんと箔がつく資格を取ろうと思い、大原で勉強することを決めたんです。それが34歳の頃でした。最終的に税理士に行き着いたのは、一番最短経路で最も箔がつく資格を取ろうと思った時に、大学院で論文を書いているのでアドバンテージが1個ありそうだったからです。
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2年で税理士資格取得。未経験での開業という選択

――税理士資格の取得から開業までの経緯を教えてください。

髙橋氏:
大原に通ったのは結局2年間でした。1年目に簿記論と国税徴収法を取って、2年目に財務諸表論を取って、取り終わったという感じです。

資格を取った後は、どこかで実務経験を積むということは一切やりませんでした。家業側の経理をずっとそれと並行してやっていたので、一応実務規定みたいなものは開業条件として満たせていたんです。ITベンチャー・家業と2つの会社の経営をやりながら実務経験も積ませてもらえる環境は他にないだろうなと思って、そもそも探さなかったというのがまずあります。

税理士事務所としての成長戦略は正直今も手探りなんですが、まずは開業してから考えようと覚悟を決めました。ありがたいことに私の友人が日本最大手の税理士法人で数年経験を積んでいて、今は事務所を手伝ってくれています。「ここってどうなんだろう?」といった実務的な話は彼にも相談しながら、二人三脚で進めています。
3つの顔が生む差別化。現役経営者だからこその強み

――現在の3つの事業を並行して進める意図は何でしょうか?

髙橋氏:
もちろん、長期の目線で考えると家業が主軸になっていくと考えています。ただ、そのためには開業のサポートや挑戦の後押しができる存在を確立できるかどうかが1個手前で必要だと思っています。

ITベンチャーの方は、ベイカレント時代の延長線上の事業で、PMOや開発マネジメント・Webアプリ開発などを手掛けています。今は10名強ぐらいの規模で、インターンや新卒採用もやりながら、一人法人の延長線上ではなく、会社らしい人数で一人一人育成しながら運営しています。

生(なま)の経営の一次情報を持ちながら経営サポートをできるので、結果的に税理士事務所としても差別化できていると感じています。「人を雇って業績を伸ばす、ポテンシャル層がいつになったら会社として黒字化していくのか、それまでにベテラン勢がどうやって数字を作っていくのか」、そういうことを実際に経験しながら経営サポートをしているんです。

――今はどのような層のクライアントさんが多いのでしょうか?

髙橋氏:
独立前〜独立後3年目ぐらいまでの経営者やフリーランスの方が多く、特に小規模事業主の方々です。狙いとしては、先ほどお話しした家業につなげるという部分が一番大きいんですが、加えて私自身の起業経験が活かせる方を対象にすると、結果として「昔私もこうだった」といったリアルな会話が多くできるんですよね。そこを価値に感じていただけていると思います。
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売上4倍の実績も。法人化提案の秘訣

――この1年でご支援した中で、印象に残っている案件はありますか?

髙橋氏:
明確な実績として、もともと個人事業主だったデザイナーの方が法人化して売上が4倍になったケースがあります。その方のキャラクターや資質を見たときに、いわゆる受け身のデザインの仕事ではなくて、ブランドコンサルティングといった上流の高単価商材が売れるのではないかと思っていました。

法人化のご提案は私からしました。私の信条としてビジネスで取り組んだことを次の世代に受け継いでいこうよという考え方があります。

だからこそ、個人事業での開業ではなくて、いきなり法人化から始めようという提案を頻繁にしています。個人事業で数年やると飽きも出てきますし、40歳前後の年齢に近づくと体力的な限界も感じ始めます。そういった方に対して、社会貢献性なども交えて法人化を語っていくと、「確かに」と思っていただける方が多いんです。

健康リスクの観点も大きいですよね。個人事業主って自分が病気になったら売り上げがなくなるという、労働集約的な仕事をしている方がほとんどなので。「労働集約から脱却することって結構重要じゃないですか?」という言い回しに共感いただけることも多いですね。
自社開発アプリ「ミエトル」で数字を武器に変える

――独自で開発されたアプリがあるとお聞きしましたが、どのようなものでしょうか?

髙橋氏:
「ミエトル」というアプリをつい先日ローンチしていて、これがまさに長期目線で会社にお金を残していくことを目論んだアプリです。例えば10年経営したら5,000万円会社にお金が溜まっているような経営をするために、目標・タスク管理ができるアプリです。

これは私が実際に開発をしました。まずは顧問先の予実管理をしたいと思って開発したものです。多くの税理士が「数字を整理して説明する」にとどまりますが、私は「数字を経営の武器に変える」ことにこだわっています。単なる売上や利益の表示ではなく、「こう直すと良い」「次はここを目指そう」という示唆を与える仕組みです。点での評価ではなく、未来を描くための数字に変えることを目指しています。

数字を「怖いもの」から「面白いもの」に変えることで、経営者が自信を持って成長していける。そんな伴走をしたいという思いから、このアプリを開発しました。
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気軽な挑戦と努力を後押ししたい。未来の事務所像

――将来的に目指している事務所像や、力を入れていきたい分野はありますか?

髙橋氏:
目指している姿としては、やはり気軽に挑戦を後押しして、努力で積み上げたものが果実として実ってほしいと思っています。やはり今の時代、サラリーマンとして組織にぶら下がっているだけだと、環境要因でリスクが高いと思うんですよね。

副業や起業を通じていわゆるダブルインカムを作ることは、人生単位での豊かさにつながると思っています。新たなお財布の獲得のために、挑戦の後押しを幅広くやっていきたいと思っています。

起業初期は「自分にはできない」と感じることが多いものです。ですが、数字を整理しタスクを積み重ねることで「自分でもできる」という実感を得られます。その小さな積み重ねが、再び大きな夢を描く力になるんです。

数字が苦手でも大丈夫。むしろ怖がっている人ほど、理解すれば面白さに気づきます。私は、そんな転換点を一緒に作りたいと考えています。数字を「反省の材料」ではなく「未来を描く道具」に変えることで、経営者は安心感と成長実感を得られるんです。

確実に近づく仕組みを整え、「叶う確率の高い夢」を共に描き、10年後に驚く成果を迎える伴走者でありたいと思っています。特に女性の場合、出産などのライフイベントが挟まっても、しっかりとした基盤があれば乗り越えられる。そういう人生設計のお手伝いをしていきたいんです。

――非常に心強いパートナー像ですね。本日はありがとうございました!

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