育児と両立しながら、自分の人生を切り開く。脇田弥輝税理士の選んだ「働き方の自由」

e_zeirishi

脇田弥輝(わきた・みき)
二児の子育てと両立しながら、通信教育や講座通学を経て税理士試験に合格。都内の税理士事務所や税理士法人で実務経験を積んだのち、2016年に自宅開業。現在は小規模法人を中心に、美容・飲食・IT・医療系など幅広い業種の顧問業務を全国対応で行う。「確定申告カフェ」や「経費精算カフェ」など、税理士をつけていない個人事業主の不安を解消する活動にも注力。大学の非常勤講師も務め、税理士を目指すママ向けにブログ・オフ会等の情報発信も行っている。

子育てのすきま時間から始まった挑戦。税理士という道への一歩

インタビュワー:本日はよろしくお願いします!まずは、脇田さんが税理士を目指されたきっかけについて教えていただけますか?

脇田さん:
はい、きっかけは、長男が1歳4ヶ月の頃でした。専業主婦として育児に向き合う毎日だったのですが、夜の8時ごろには子どもが寝てくれるようになって、その後の時間がぽっかり空いたんです。「この時間、何かに使えないかな」と思って、資格の取得を考えるようになりました。

最初はユーキャンで見かけたカラーコーディネーターやテープ起こしなど、趣味の延長のようなものをいろいろと調べていました。でも、どれもいまひとつ気持ちが乗らなくて。「何かにのめり込みたいけれど、何に本気になれるかわからない」というような感覚でしたね。

そんなときに見つけたのが「税理士資格」でした。国家資格なのに科目合格制で、育児と両立しながら少しずつ進められると知って、「これなら私にもチャンスがあるかもしれない」と思ったんです。軽い気持ちで資料請求したのがTACさんで、たまたま案内されていた無料セミナーに足を運びました。

そのセミナーで登壇されていたのが、若い女性の税理士の先生だったんですが、とてもキラキラしていて、自分らしく生きている姿に衝撃を受けました。「私もこうなれたら、きっと世界が変わる」と思ったんです。あのとき、心の中で何かがはっきり動いた感覚がありました。

インタビュワー:実際にそこから勉強を始めてみて、どうでしたか?

脇田さん:
勉強は通信制からスタートしました。子どもが寝たあとに少しずつ取り組むつもりで、夫にも「家事や育児には支障を出さないから」と伝えていました。でも、実際に始めてみると、思っていた以上に難しくて。次第に「夜だけじゃとても足りない」と思うようになりました。

講義を受けるようになり、試験直前期には週末に自習室に通うようにもなって、気づけば土日も勉強に費やす日々に。最初は驚いていた夫も、私の本気度を感じて、徐々に協力してくれるようになっていきました。

その間に第二子も授かって、妊娠中も机に向かっていました。育児と勉強の両立は決して簡単ではありませんでしたが、「ここでやめたくない」という気持ちのほうが強くて。隙間時間を縫うように、少しずつ前に進んでいきました。

そうして試験を続ける中で、約7年かけて3科目に合格し、大学院にも進学して税法2科目の免除を得ました。税理士試験をすべてクリアできたのは、ちょうど下の子が小学校に入る少し前、30代半ばの頃だったと思います。

最初はただ「何かをしたい」という思いから始めた挑戦でしたが、気づけば「自分でも本当に税理士になれるかもしれない」という確信に変わっていました。今振り返ると、あのときの決断がすべてのはじまりだったんだなと感じています。

ブランクを埋める実務経験。失敗と迷いの果てに見えた開業の道

インタビュワー:実務経験はどのように積まれていったのでしょうか?

脇田さん:
試験勉強をしていた頃、妹の友人がたまたま税理士として開業していて、「入力業務だけでも手伝ってくれない?」と声をかけてくれたのが私の実務のスタートでした。週に3日、短時間のパートから始まりましたが、現場で数字に触れる経験は座学とはまた違う発見の連続でした。

もっと幅広く経験を積みたいという思いが芽生えてきたのは、第二子が少し手を離れてからです。より本格的に実務に携われる環境を求めて、税理士法人に正社員として転職しました。そこでは記帳や決算、法人税・消費税の申告など、幅広い業務を経験させてもらいました。2年間しっかりと働く中で、税理士登録に必要な実務要件も満たすことができました。

そのままその法人で働き続ける選択肢もありましたが、ある日、知人から「上場を目指しているベンチャー企業が経理を探している」という話をもらったんです。新しい環境でチャレンジしてみたい気持ちが湧いて、転職を決意しました。
ところが、実際に働いてみると、想像以上に過酷な環境で。仕事量も責任も重く、残業が月100時間を超えるような日々が続きました。人間関係にも悩むことが多く、心身ともに余裕を失ってしまって……結果的に、2ヶ月ほどで退職することになりました。

その後、しばらくは自宅でゆっくり過ごす時間を持つことにしました。久しぶりに子どもたちとじっくり向き合える日々が戻ってきて、上の子が中学2年生、下の子が小学4年生くらいだったんですが、「ママが家にいてくれるの嬉しい」と言ってくれて。

このとき、「無理をして働くことだけが正解じゃない」と素直に思えたんです。じゃあ、自分に合った形で、家にいながらでも続けられる働き方はないか。そう考えて、自然と「自宅での開業」という選択肢に気持ちが向いていきました。

2016年、ついに自宅での開業を決めました。たくさんのお客様を抱えて忙しくするというよりも、ひとつひとつ丁寧に対応しながら、家族との時間も大切にしたい。そうしたバランスを大切にした働き方が、私にとっての“税理士”としての理想像だったのかもしれません。

ご縁を大切に広がってきた顧客層。紹介中心で全国に対応

インタビュワー:開業後、どのようにして顧客を増やしていかれたのでしょうか?最初から順調でしたか?

脇田さん:
最初の1〜2年は本当に手探りでした。開業当初は、以前お世話になった税理士の先輩の業務委託を受けたり、確定申告の時期だけ短期でお手伝いに行ったりと、自分のお客様はまだごくわずかでした。

それが3年目くらいから、少しずつご紹介でお声がけをいただくようになって。気がつけば今は20社以上のお客様とお付き合いさせていただいています。本当にご縁に恵まれてここまで来た、という感覚が強いですね。

お客様の業種もバラバラで、たとえば美容系のサロン、飲食店、IT企業、コンサルティング会社、薬局、さらには猫の保護団体まで。みなさん個性豊かで、それぞれの業界特有の課題やお悩みに触れられるのも面白いんです。

インタビュワー:対応地域についても幅広くご対応されているそうですね。

脇田さん:
そうですね。もともと都内が中心でしたが、今ではZoomを使って、長野や大阪など、遠方のお客様ともやり取りしています。もちろん、税務調査などがあれば現地にも行きますし、必要に応じてフットワーク軽く対応しています。

一方で、税務の内容によってはお断りすることもあります。たとえば相続案件ですね。開業当初は「やってみようかな」とチャレンジしたこともあるのですが、依頼者の家族関係が複雑だったり、精神的な負担が大きくて……。いまは信頼できる他の税理士さんにおつなぎするようにしています。

“先生”ではなく“仲間”として。寄り添う姿勢が信頼を育てる

インタビュワー:お客様との接し方において、特に大切にされているスタンスや考え方はありますか?

脇田さん:
「外部の税理士」ではなく、「中の人」──つまり、まるで社内の経理担当のような存在になりたいと常に思っています。事務所としても、「お客様とともに事業の成長を目指す」というミッションを掲げていて、それが私の姿勢にも自然と染み込んでいるのかもしれません。

ありがたいことに、お客様からは「質問がしやすい」「話しやすい」と言っていただけることが多いです。税理士って、“先生”と呼ばれる存在だと思われがちですが、私はそういった距離感よりも「みきさん」「脇田さん」と名前で呼んでもらえるような関係を築きたいと思っています。

打ち合わせは、基本的に月に1回。対面やZoomで試算表を一緒に見ながら、現状の確認や課題の共有をしています。それとは別に、メールやチャットでのご相談は随時受けています。スピード感は意識していて、遅くとも1〜2日以内には必ず返信するようにしています。

そういう細かい積み重ねが、「この人なら任せても大丈夫」と思ってもらえる信頼につながっているのかなと感じています。私は一人で事務所をやっていますが、そのぶん柔軟に動けるのが強みです。誰かに確認を取る必要もないので、お客様にとっての最適を、自分の判断で即座に提供できる。もちろんプレッシャーもありますが、それ以上にやりがいを感じる部分ですね。

“税理士”の枠を超えて。伝えたいのは“安心”と“つながり”

インタビュワー:本業以外にも、積極的に情報発信や支援活動をされていると伺っています。どんな想いで取り組まれているんですか?

脇田さん:
私は「税理士だからできること」だけじゃなくて、「税理士だけどやってみたいこと」にもチャレンジしたいと思っているんです。その一つが、確定申告の時期に開催している“確定申告カフェ”や“経費精算カフェ”。税理士をつけていない個人事業主の方が立ち寄れて、質問したり、ソフトの入力を一緒に確認したりできる場です。

参加費はごくわずかですが、これはほとんどボランティア感覚。でも毎回、「来てよかった」「やっと不安が解消できた」と言ってもらえるのが本当にうれしくて。やりがいを感じる時間です。

インタビュワー:なるほど。“わかりやすさ”や“寄り添う姿勢”をとても大切にされているのですね。

脇田さん:
そうなんです。セミナーのご依頼もときどきいただくのですが、基本的には「なるべくやさしく、わかりやすく」を心がけています。とくに税理士をつけていない層や、初めて開業された方に向けて「専門用語なしで伝える」ことを大切にしています。難しいことを難しく話すのは簡単ですけど、私は“わかってもらえる税理士”でいたいんですよね。

もう一つ、大事にしているのが“税理士を目指すママたち”への支援です。私自身が育児と勉強の両立に悩んだ経験があるので、同じような境遇の方たちを応援したくて、毎年オフ会を開いています。ブログ経由で知って来てくれる方が多くて、気づけばこれまでに13回ほど開催しました。

オフ会では、「やっぱり来てよかった」「もう一人じゃないって思えた」といった声をたくさんいただきます。お金にはならない活動ですが、こうした“つながり”が、私の仕事のエネルギーになっているのかもしれません。

自分らしい働き方を実現して。すべての“ママ税理士”へ伝えたいメッセージ

インタビュワー:ご自身の働き方について、今どんなふうに感じていらっしゃいますか?

脇田:
今、私は自宅で一人で事務所を運営しています。もちろん楽なことばかりではないけれど、「自分のペースで、自分らしく働く」という意味では、いまのスタイルがとても合っていると感じています。

たとえば、日中に息抜きで出かけることもできますし、夜に集中して作業することもできる。お客様対応の時間さえ守れば、あとは自分の裁量で自由に動ける。それが、税理士という資格を手に入れたことで得られた一番の財産かもしれません。

振り返ると、私自身、資格取得の道のりは決してスムーズではありませんでした。育児との両立に悩んだこともあるし、仕事で挫折して退職したこともある。それでも、「もう一度やってみよう」と思えたのは、家族の支えと、自分の中の「諦めたくない気持ち」があったからです。

インタビュワー:同じように悩んでいる女性や受験生の方へ、メッセージがあればぜひお願いします。

脇田:
私のように、育児中でも、自宅でも、自分の想いを形にしていける。そんなロールモデルがもっと増えたら、税理士という仕事はもっと魅力的に映るはずです。

いま勉強中のママさんたち、あるいは働き方に悩むすべての女性たちに、伝えたいです。
「がんばれば、ちゃんとたどり着ける場所があるよ」と。

ぴったりの税理士を
ご紹介します

完全無料!最適な税理士が見つかる
🤝 税理士AI診断
3分で税理士選びがわかる
📄 資料をダウンロード

もっと気軽に相談できる税理士がいい
オンラインでやりとりできると楽
税理士費用、できるだけ抑えたい
補助金や融資にも詳しい人がいい
記事URLをコピーしました
税理士紹介はこちら
税理士紹介はこちら