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会計事務所、ゲーム会社、飲食専門税理士法人——3つの現場を渡り歩いた税理士が200社と築く「全体最適」の関係

会計事務所、ゲーム会社、飲食専門税理士法人——3つの現場を渡り歩いた税理士が200社と築く「全体最適」の関係

安藤貴史(あんどう たかし)|安藤貴史税理士事務所 代表 税理士

明治大学商学部卒業後、五反田の公認会計士事務所にて法人顧問業務を経験した後、ゲーム会社に転じ、経理・原価計算に従事する。買収・リストラの渦中で税理士資格の取得を決意し、本格的に学習を開始。飲食店専門の税理士法人にて財務を軸とした居酒屋支援を経験し、2014年7月に独立開業。新宿を拠点に約200の顧問先を抱える。法人・個人を問わず幅広い業種に対応し、全顧客とのLINEグループ運用やレスポンスの速さなど、きめ細やかなコミュニケーションを信条としている。

200先・全方位——業種を絞らず、「ご縁があった方」に向き合う事務所

まず事務所の概要を教えてください。

安藤:
私を含めて9名体制です。正社員5名と、パート・アルバイトが3名。この体制で約200先の顧問先を担当しています

200先というのはかなりの規模ですね。お客様はどのような層が多いですか。

安藤:
地域は東京、神奈川、千葉、埼玉の一都三県がメインです。それと福岡ですね。2017年頃にお客様からのご紹介で増えまして、2023年から2025年12月まで確実に毎月通っていました。さすがに毎月行くと身体がシンドイですが(笑)。

業種や年商の傾向はありますか。

安藤:
業種は本当に絞っていません。全方位です。1人でやっている個人事業主から年商数十億円の法人まで幅広くお付き合いさせていただいていますが、年商5,000万円から1億円ぐらいの規模が多いかもしれませんね。お客様の増え方も基本的にご紹介です。お客様からお客様へとつながっていく形で、気づいたら200先になっていたという感覚です。
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業務としてはどのようなご依頼が中心ですか。

安藤:
法人顧問と個人の確定申告が中心で、本当にオーソドックスです。相続や事業承継もできますが、積極的にやるとかなり時間を取られてしまうので、今は手を止めています。話が来たらやりますよ、というスタンスですね。

「部分最適ではなく全体最適」というコンセプトを掲げていらっしゃいますが、これはどういう思いから生まれたのですか。

安藤:
個人・法人問わず、多種多様なお客様を担当させていただく中で痛感したのは、税理士に対する期待の薄さでした。「税金計算はしてくれるけれど、それ以上のサービスはない」「連絡が取りにくかったり、意思疎通がうまくいかない」——私自身の話ではありませんが、正直、心苦しい意見を聞くことが多かったのが現実です。だからこそ、関わるお客様に対して「税金のこと以外にもいろいろとサポートしてくれる」「レスポンスは滞りなく、やり取りの意図を汲んでくれる」と感じていただけるようにしたい。税理士に悪いイメージを持っている方の概念を払拭したい。その思いを胸に創業しました。
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ゲーム会社の経理から税理士へ——買収とリストラが変えた人生の方向

安藤先生のキャリアは非常にユニークですよね。最初は会計事務所に入られて、そこからゲーム会社に転職されている。なぜ事業会社側に行こうと思われたのですか。

安藤:
会計事務所って、ワンマンだったりブラックと言われる世界じゃないですか。最初の事務所では個人・法人問わず顧客を担当していましたが、世間一般の会社で働いている人がどういう環境にいるのか、それを知りたかったんです。承認、稟議、上長——会計事務所にいると絶対に触れないワードや仕組みですよね。会計事務所にだけいると、そういうことを知らないんです。知れただけでも行った価値がありました。

ゲーム会社ではどのようなお仕事をされていたのですか。

安藤:
一般的な経理業務でしたが、歯車の一つというよりは全体の数字を管理させていただきました。原価計算なんかもやっていました。約3年間ぐらいですかね。ただ、ここで人生の転機が起きました。2011年に会社がとある法人に買収されたんです。

買収を経験されたんですね。

安藤:
正確には吸収合併ですけどね。2011年の3月に東日本大震災があり、それから一か月もしないうちに買収が決まりました。「上場会社でも買収されちゃう時代か」みたいな空気が社内に流れていて。実際に買収されると何が起きるかというと、リストラです。小学生の時に見ていたバブル崩壊の時と同じように、バンバン人が切られていく。真っ白な部屋に閉じ込められるとか、本当にそういう世界があるんですよ。ドラマの話じゃなくて。人事部長なんて1ヶ月で白髪になっちゃうぐらい。みんなどんどん追い詰められていきました。

壮絶な環境ですね。その中で安藤先生はどうされていたのですか。

安藤:
数字周りの担当者は、吸収合併の手続きを進める上で必要なので、すぐにリストラという形にはならないんです。いいか悪いか引き継ぎが終わるまでは残される。ただ逆に言えば、残されている間は時間がめちゃくちゃあった。正直に言えば暇だったんです(笑)。大学時代にも税理士の勉強を少しかじっていたんですが、本格的に始めたのはこのタイミングです。給料をもらいながら、とにかく勉強に集中できた。置かれた環境をネガティブに捉えず、逆に乗っかったという感じでしょうか。周りがリストラで追い詰められていく中で、自分はひたすら勉強してました。あの買収がなかったら、税理士には確実になっていないと思います
飲食専門税理士法人、そして独立——「自分でやらないと幸福度は上がらない」

資格を取得されてからの流れを教えてください。

安藤:
買収元の法人を辞めて、2012年に飲食店専門の税理士法人に入りました。財務をメインでやっている法人で、自分の中でもゲーム会社で働いていた時に「財務って大事だよね」という思いがあったので。

税理士法人の現場ではどんな経験をされましたか。

安藤:
京都・広島・愛知がメインでしたが、全国の飲食店を担当していました。だいぶあちこち行きましたね。飲食の方って想いが熱い方が多いんです。サポートしていてやりがいがありました。当時担当していたお客様の中から上場した法人もあり、自分にとっても大きな成功体験でしたね。

一方で、環境としてはかなり厳しかったとも伺いました。

安藤:
なかなかの環境でしたね。新しい人が来ても1週間とか1ヶ月で辞めていくような職場で。自分の働き方という側面での限界が見えた時期でもありました。でも、税理士資格を持っているという矜持というか、自負があったんだろうと思います。直ぐには辞めずにやり抜きました。ストレス耐性は確実に鍛えられましたね(笑)。

そこから独立されたのが2014年7月。

安藤:
はい。正直に言うと、結局勤めていてもダメだなと思ったんです。収入面ではある程度の満足は得られるでしょうが、自分でやらないと精神的な自由というか、幸福度が上がらない。これまでのキャリアで飲食や相続はやってきたので、漠然とそこを強みにしようとは考えていましたが、一番の動機は「自由になりたい」でしたね。いろいろ経験したからこそ、お客さんへの理解も深まったことも強みになるとは思ってました。
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開業してからは順調でしたか。

安藤:
ありがたいことに、経営が厳しいと思ったことは実はないんです。収入がスポット型の先生は不安定な時期もあるかもしれませんが、私の場合は最初から法人顧問のお客様とのご縁に恵まれたので、わりと順調だったと思います。とはいえゼロスタートだったので、口座の残高が「あ、減らないな」と実感できたのは開業から1年後ぐらいでしたね。
レスポンスは「早すぎて嫌がられることはない」——200先との信頼の積み上げ方

200先のお客様と信頼関係を築く上で、大切にされていることは何ですか。

安藤:
一番はレスポンスの速さです。これはとても意識しています。早いに越したことはないし、早すぎて嫌がられることは絶対にないんですよ。2015年頃にお付き合いしていた方から、その考え方を教わりました。マナーの大切さとか、紹介してくださった方には必ず御礼をするとか。当たり前のことなんですけど、そういう基本を徹底するだけで、信頼は着実に積み上がっていくんですよね。

他にこだわっていることはありますか。

安藤:
マメさですかね。細かさ、と言ったほうがいいかもしれません。とにかく放置しない体制を作っています。例えば「納付書を送っておけば、あとは向こうが納税してくれるだろう」みたいな——そういう期待はしません。ちゃんと確認する、フォローすることが求められていると思ってます。

具体的にはどのようにコミュニケーションを取られているのですか。

安藤:
お客様全員とLINEグループを作って、日常的にやり取りしています。何かあればすぐにメッセージが来るし、こちらからも気軽に連絡できる。距離感が近いからこそ、税金のことだけじゃなくて「ちょっと相談したいんですけど」と声をかけてもらえる。それが結果的に、「税金のこと以外にもいろいろサポートしてくれる」という信頼につながっていると思っています。
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飲食の現場にもう一度——スタッフと共に歩む、これからの事務所

今後の事務所の展望を教えてください。

安藤:
まず一番は、働いてくれているスタッフに還元したいということです。給料を上げたいし、働きやすさも高めたい。自分自身がこれまで追い込まれてきた職歴だったので……同じ思いは絶対にさせたくないんです。

ご自身の経験があるからこその思いですね。

安藤:
そうですね。あとは、飲食の支援をもう一度やりたいと思っています。税理士じゃなくてもできることではありますが、特に融資などの財務関係は自分がやるべきだと思っていて。飲食の方は想いが熱い方が多いので、サポートしていて本当にやりがいがあるんです。当時は京都・広島・愛知まで飛んでいましたし、担当していたところが上場するという経験もできました。以前運営していた居酒屋創業のサイトも、いずれまた動かしていきたいですね。
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取材後記

レスポンスを早くする、放置しない、紹介には御礼をする——安藤先生が大切にされていることは、どれも「当たり前」のことです。しかし、200先の顧客を抱えながらそれを全員に徹底し続けるのは、並大抵のことではありません。

ゲーム会社の買収、リストラの渦中での資格取得、飲食業界の過酷な現場。逆境の連続を経てたどり着いた「自分でやらないと幸福度は上がらない」という確信が、今の事務所の土台を作っていると感じました。飲食の現場にもう一度戻りたいと語る安藤先生の表情には、静かな、しかし確かな情熱がありました。

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