5拠点・110名・顧問先1,000社ー みそら税理士法人が実践する「おせっかい経営支援」の全貌

廣岡隆成(ひろおか たかしげ)|みそら税理士法人 公認会計士・税理士
兵庫県姫路市出身。2003年、23歳で公認会計士試験に合格し、有限責任監査法人トーマツに入所。M&Aやバリュエーション、IPO支援を行う部署で4年間経験を積んだ後、アクセンチュア㈱戦略グループへ転じ4年間従事。その後、㈱企業再生支援機構(官民ファンド)でハンズオン型再生支援に4年間携わる。東京で約15年のキャリアを経た2014年、父・廣岡純一が1990年に創業したみそら税理士法人(旧 廣岡会計事務所)に参画。現在は5拠点・110名体制、顧問先約1,000社を擁する組織の経営に携わり、M&A・事業承継支援とチャネル開拓を中心に事務所の成長を影で支えている。
みそら税理士法人の現在の体制を教えてください。
スタッフは110名で、姫路を本拠地に大阪・神戸・明石・名古屋の5拠点を構えています。顧問先は約1,000社で、売上3億から10億円ぐらいの法人がボリュームゾーンです。業種は様々ですが、その売上帯だとサービス業や飲食業は少ないかもしれません。個人のお客様であればクリニックが中心です。ありがたいことに、お客様の黒字率は70%ぐらいあります。業界平均が40%弱ですから、相当高い水準だと思います。

5拠点の配置にはどういう考え方があるのですか。
新快速(関西)——関東でいう東海道線が止まる駅に拠点を置いていくという考え方です。新しい拠点を作っても、最初は仕事がありません。でも新快速の沿線なら人の行き来がしやすくて、他拠点の仕事を手伝いやすい。今後もその考え方でいきたいですが、正直なところ出たとこ勝負ですね(笑)。
東京で15年働いていて、関西に帰る時に友人から「都落ちだな」と言われたんです。帰ってきて12年経ちますけど、未だにちょっと心にグサッときていて。もう1度上京する機会があればいいですけどね(笑)。
各拠点で専門分野を分けたりはしていますか。
特に分けてはいないです。全拠点で共通のサービスを提供していて、お客様がどこの拠点に近いかで担当オフィスが決まるイメージです。
みそら税理士法人ならではの支援スタイルの特徴はどこにありますか。
「お客様のため」と「おせっかい」、この2つです。仕事への向き合い方(ベースの部分)として、弊社にも18個の価値観をまとめたクレドがあるんですが、4〜5年前にスタッフみんなで集まって作ったものです。みんなで作ったから18個に増えちゃった(笑)。削ろうとすると「これも大事」「あれも削れない」と話がややこしくなるので。でも逆に、みんなで作ったから良かったなと思っています。
具体的な仕組みとしては、社内で「決算検討会」をやっています。決算が近いお客様を1社ずつ、担当者と上長、さらに役員まで入って、このお客様にとって良い提案は何かを検討する。年に1回、全てのお客様に対して実施します。役員が5名いるんですが、この検討会を取り仕切っているのは高橋税理士です。私自身はM&Aやコンサルの領域を担当しているので、税務に関しては高橋税理士を中心としたメンバーに信頼を置いています。

23歳で公認会計士に合格された後、トーマツ、アクセンチュア、企業再生支援機構と歩まれています。それぞれどんな経験をされましたか。
2003年は会計士の就職氷河期のど真ん中で、たまたまトーマツの東京に拾ってもらいました。トーマツでは監査部隊ではなくて、M&A領域やIPO支援を行ういわゆるFAS部隊にいました。ここでの4年間は今にも活きています。
アクセンチュアに移られた理由は何ですか。
ビジネスが入口だとすると、会計は出口なんです。会計に行き着くまでの意思決定を見たかった。それでコンサルファームに入りました。ただ、正直もう2度とやりたくないですね(笑)。「ここまでやると精神を病むんだな」というストレス耐性の壁が見えた。結構キツい時期で、泣きながら車を運転して湘南まで海を見に行ったこともありました。
でも一方で、どんな案件であっても頑張ればなんとかなるという変な自信がつきました。なんとかなる精神みたいなものが鍛えられました。
その後、企業再生支援機構に移られた理由は。
コンサルは結局、第三者であり「高給な派遣社員」と言われることもあります。それに対してファンドは自分でお金を出して、役員・社員として出資先に送り込まれるから、実際に自分で業務をやれる。実務をやってみたいという思いがありました。
製造業の案件に送り込まれた時は、従業員と一緒に検品作業をしました。プレス機については「素人が触ると指が挟まれる」と止められましたけど(笑)。検品なら怪我しないからと。ファンドから外部の人間が役員・社員として入っていくと、もともといるスタッフからすれば「何者だ」となりますよね。40代、50代の従業員からすると、30代の若造が乗り込んでくるわけです。でも一緒に検品していると、少しずつ心を開いてくれるんです。そうやってみんな現場に溶け込んでいきました。
4年ずつのキャリアですが、意識されていたのですか。
4年ぐらいで次のステージに行きたくなる性格なんだと思います(笑)。みそらの12年が一番長いですね。

東京で15年キャリアを積む中で、お父様の事務所に戻ることは意識されていましたか。
全く考えていなかったですね。ずっと東京にいるものだと、地元を出ていった瞬間から思っていました。ただ、所長——父が65歳ぐらいになって事務所の中で資格を持っているのが所長だけの状態ということを知って、ふと「この事務所、どうするんだろう?」と思ったんです。ちょうどファンドの案件の切れ目だったのもあって、父に電話一本入れました。「来月帰るわ、父のところ手伝うわ」と。「帰ってこい」と言われたわけでもなく、僕も「帰るぞ」と宣言したわけでもなく。あまり深く考えず、まずは状況を見てみようぐらいの気持ちでした。なので、履歴書・職務経歴書も提出していないし、面接を受けたこともないし、まだ試用期間中だと思います。もう12年間の長い試用期間中です(笑)。
当時は結婚していて、妻が同じ地元の人だったので先に地元に帰らせて、僕だけ東京の仕事が残っていたから1年間ビジネスホテル暮らしでした。セブンイレブン、ファミリーマート、ローソン——コンビニ飯は全て食べ尽くしましたね(笑)。
戻ってからすぐに会計事務所の仕事がメインになったのですか。
それが、帰ってきて事務所の決算書を見たら、自分の給料が出せないことがわかりまして。当時5人の事務所だから当然なんですけどね。それで前職のファンドに連絡して「何かお手伝いできる案件はありますか」と(笑)。ちょうど大阪の案件があったので、週3日はファンドの仕事でアルバイト、事務所には週2日だけ出るという生活をしていました。結婚していたのですが、その当時、月10万円前後の給料だったと記憶しています。
本格的にコミットし始めたのはいつ頃ですか。
帰ってきてから半年後、2015年からですね。きっかけは——トイレなんです(笑)。当時は雑居ビルの1室に入っていて、トイレが和式で男女共用だった。私は体が硬いから和式が苦手で、毎回近くのスーパーまでトイレを借りに行っていたんです(スーパーへの買い物のついでです)。「これはあかん、こんなところでは働けない、事務所を建てなあかん」と。たまたま姫路駅周辺に土地が出て、所長と相談してそこに事務所を建てました。それが今の姫路オフィスです。
きれいな建物にしたんですが、外見はきれいで中身はすっからかんという状態。見た目だけ立派で中身が伴わないのは意味がないので、外見を超えるほど中身(サービス品質)を上げていこうと決めました。それに、借金ができ、連帯保証したことでしっかりコミットする覚悟が固まりました。
5名の個人事務所から110名の組織へ、どう大きくされてきたのですか。
私のキャリアはM&Aやコンサルティング、企業再生が中心でしたから、税務申告や記帳・給与計算といった実務は経験がないんです。だから早い段階で、自分がやるべき仕事とメンバーに任せるべき仕事を明確に分けました。税務領域は父の時代から在籍してくれているコアの3人に委ねて、僕はM&A・再生案件、チャネル開拓など、自分のキャリアで培った領域に集中する。それぞれが得意な領域で力を発揮するほうが、組織として強くなれると考えたんです。所長を含めたこのコアの4名には本当に本当に感謝しています。

税務の実務を経験せずに事務所を率いることに対して、周囲との関係で難しさはありませんでしたか。
むしろ良い方向に働いたと思います。私自身が税務の現場にいない分、メンバーの専門性を素直に尊敬できるんです。「この領域はみんなのほうがプロだから任せます」と言える。後継者の中には、「自分が全部わかる」「自分の方が上だ」という前提で入ってしまい、既存スタッフとぶつかるケースも少なくない。私の場合は最初から「お願いします。教えてください。」というスタンスだったので、チーム全体で役割を補い合う文化が自然にできあがったんだと思います。ハンズオン型と同じですね。
チャネル開拓はどのように進められたのですか。
地銀・信金にひたすら会いに行きました。兵庫県の地銀さん・信金さんと関係性を作れたことが一番の転機ですね。ファンドで働いていた経験が活きたので、本当に運が良かったと思います。
ありがたいことに順調に伸びていったのですが、スタッフが20名ぐらいの時期が一番辛かったですね。採用も少ないし応募も少ない。入ってきてくれて、いいなと思った人が辞める——そのショックが大きくて、毎回毎回心や身体が切り刻まれていく感じでした。2〜3人が一気に辞めた時期もあって、しかもそのメンバーは私がみんなの反対を押し切って「この人がいい」と採用した人たちが含まれていたのです。
その経験から、採用のやり方を変えられたのですか。
はい。今は「全員面接」をやっています。110名全員とはさすがにいかないので、最終的には時間が合う50名ぐらいに参加してもらって、みんなの多数決で決めます。私に「ヒトを見る目がない」というレッテルが貼られてしまったので(笑)。多くのスタッフが参加する面接なので、もちろん「君は何ができるのかね」みたいな圧迫面接にはならないよう極力気をつけています。こっちも選ばれる立場ですからね。
応募者側の目線でもいい仕組みだと思っていて、実際に一緒に働くメンバーの顔が事前に見られるから、入社前後のギャップを埋められます。みんなと面接して質問してもらうと、嘘がないですから。なので、離職率も低い(5%前後)と思っております。

事業承継支援の実績について教えてください。
兵庫県では案件数が一番多いんじゃないかと思います。年間20〜30件ぐらい支援しています。ただ、今は実務のほとんどをチームに任せています。こなしている案件数が私より圧倒的に多くて、自分以上の力を持ったメンバーがいるなら任せるのが一番お客さまのためにい良い。これも組織としての強みだと思っています。
ご自身もまさに親子での事業承継を経験されていますが、顧問先の事業承継を支援する際、その経験は活きていますか。
活きていると思います。私自身が経験しているからこそ、承継する側の気持ちがわかる。そういった経験を踏まえて、お客様の状況に合わせたアドバイスができていると思います。
事業承継は圧倒的にソフト面が難しいと思っています。ハード面は事業承継の型が一定あるので、そこに当てはめるかどうかの話です。
最近よく聞くのは、先代が「うちの子が継ぐかわからない」とおっしゃるケース。でも僕から言わせれば、「社長、あなたが自分の子に継がせたいと思うかどうかだ」と。継がせたいなら、今のうちに自社株式を渡しておきましょうと。そうすると前もって自社株式を移して結果的に節税にもつながったり、その過程を通じて親子の会話が発生して、継いでほしいという思いが伝わったりします。結果的に継がなかったらそれはそれでいい——そのぐらいの距離感でいいんです。

事務所としての将来像はありますか。
それは次のトップに託したいですね(笑)。次のリーダーが自分で考えて形にしていってほしいなと思っています。みそらを継ぎたいと思われるように、それまでバトンを磨いておきます。
そもそも、お客様にもそんな計画計画って言わないですよ、私は。「考えるよりもまずは行動する」。足元の業績が黒字だったらお客さまと一緒に喜んで、赤字だったら一緒に悲しんで、この赤字をどう直していくかを一緒に考えるスタンスです。
それで黒字率70%を維持されているのはすごいですね。
お客様がしんどい時に金融機関に電話一本で融資の相談ができるとか。そういう安心感がお客様との長い関係につながっているのかなとは思います。
最後に、税理士選びに悩んでいる経営者へアドバイスをお願いします。
まずは同世代の税理士やスタッフが在籍している事務所を選ぶことをおすすめします。パートナーである以上、何でも話せる関係でないといけない。年齢が離れすぎると、どうしても相談しにくくなりますから。
あとは、その会計事務所が持っているネットワーク——つまり人脈の広さですね。記帳や給与計算、税務申告のクオリティは、よほど大きなミスがない限りどこでもそう大きくは変わらない。だからこそ、その事務所が持つネットワークがどこかで必ず役に立ちます。そういう繋がりの多い事務所を選んでほしいですね。

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取材後記
「来月帰るわ」——電話一本で父の事務所に戻り、給料が出ないからファンドでアルバイトし、トイレが和式だから事務所を建てた。「こんな話で大丈夫ですか?(笑)」と話す廣岡さんのエピソードはどれも軽やかですが、その裏には12年間で培われた「なんとかなる精神」が一貫して流れているように感じました。
印象的だったのは、役割分担への徹底した割り切りです。自らの強みをM&A・コンサル・金融機関リレーションに定め、会計事務所の本業である税務領域はメンバーに委ねる。「お願いします」と素直に言えるからこそ、チームとしての総合力が生まれ、5名の事務所が110名の組織へと成長できたのだと感じます。
「黒字だったら一緒に喜んで、赤字だったら一緒に悲しんで」——その寄り添い方こそが、顧問先の黒字率70%という数字に表れているのかもしれません。
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