台東区

医療専門×クラウド会計——経理をシンプルに、数字をタイムリーな経営判断へつなげる

医療専門×クラウド会計——経理をシンプルに、数字をタイムリーな経営判断へつなげる

鈴木 貴之(すずき たかゆき):ハナメディカル会計事務所 代表/税理士

1992年、神戸生まれ横浜育ち。明治大学商学部卒業後、事業会社を経て寺井税務会計事務所へ。飲食店や工務店などの顧問を担当しながら、勤務5年で税理士資格を取得。その後、税理士法人山田&パートナーズの医療専門部門で5年間、医療法人の月次顧問に加え、医療法人設立、事業承継、認定医療法人申請、税務デューデリジェンスまで担当した。2026年、東京・上野にハナメディカル会計事務所を開業。医療機関に特化し、クラウド会計を掛け合わせた支援を行う。

クリニックと医療法人だけを見る——ハナメディカル会計事務所の輪郭

まず、どのような事務所なのかというところから伺わせてください。現在の体制と、どんな先生方に向けたサービスなのでしょうか。

鈴木:
開業したばかりですのでスタッフは雇っておらず、私一人で運営しています。対象は医療機関に絞っていて、クリニックや医療法人の先生方が中心です。そこにクラウド会計を掛け合わせるという形を取っています。クラウド会計を使う目的は、経理業務や資料のやり取りをできるだけシンプルにし、経営に必要な情報をタイムリーに確認できる環境を整えることだと考えています。これから開業される先生はもちろん、すでに開業されている先生方でも、紙資料の受け渡しや保管、経理業務に負担を感じておられれば、ご利用いただきたいと思っています。

医療機関以外の業種からご相談が来た場合は、いかがされているんですか。

鈴木:
現在は、クリニックと医療法人への支援を中心に考えています。対象を医療機関に絞ることで、医療業界の制度や動向、他のクリニックで起きている課題や事例を継続的に蓄積できます。その情報を、それぞれの先生への具体的なご提案に生かすことが、医療専門を掲げる意味だと考えているからです。手を広げるよりも、まずは医療機関への支援にしっかり集中したいと思っています。

医療の中でも、介護や福祉といった領域までは対応されるのでしょうか。あわせて、対応エリアについても教えてください。

鈴木:
障害者向けのサービスは、正直あまり詳しくないので専門外としております。ただ介護は、介護報酬で事業運営されていて、医療機関と共通する部分や考え方が多いため、事業内容を伺いつつ対応したいと思っています。対応可能エリアについては、地域による制限は設けていません。クラウド会計とオンラインでの面談を活用することで、全国の医療機関に対応できます。対面でのご相談をご希望の場合は、東京近郊が中心になりますが、地域にかかわらず、まずはご相談いただければと思います。

サービスのラインナップと、開業をお考えの先生にはどの段階から関わっていかれるのかを教えてください。

鈴木:
開業段階での資金繰り表の作成や事業計画のご支援からスタートして、その後の税務顧問、資金繰りに悩まれている方へのスポットでのサポート、それから医療法人の設立と、認定医療法人の申請ですね。開業場所や内装、医療機器の選定などは、それぞれの専門家へ相談される先生も多いと思います。私は税理士として、開業時の計画が数字の面から無理のないものになっているか、開業後も安定して経営を続けられるかを確認する立場で関わります。
「若いんだから、税理士くらい取れるよね」——資格までの5年

ここからは鈴木さんご自身のことを伺わせてください。税理士を目指されたのは、いつ頃だったんですか。

鈴木:
一番最初の事務所に入ってからです。もともとは全然違う事業会社に10ヶ月だけいたんですが、当時は特にやりたいこともなく、なんとなく入ってしまって。案の定続かず、辞めてしまいました。そのタイミングで、あらためて世の中にどんな仕事があるのかを調べ直したんです。恥ずかしい話ですけど、会計事務所という仕事があることを、その時に初めて知りました。当時は経理ができれば潰しが効くという考えもありましたし、会計事務所なら、いろいろな会社の経理を経験できるのではないか。そんな発想で入ったのが最初の事務所でした。

資格取得は、所長からの一言がきっかけだったと伺いました。

鈴木:
入所したのが23歳だったんですが、そこの所長が私と同じ大学の出身だったんですね。それで「若いんだから税理士くらい取れるよね」と。「採用してやるから税理士を取れ」というくらいのテンションで言われまして(笑)。ですから、熱い思いがあって目指したわけではないんです。いい言葉で言えば、ご縁ですね。ただ、始めてみると学んだことがそのまま仕事に活かされるので、学校の勉強よりも意味を感じながら取り組めました。そこが楽しみながら続けられた理由かなと思います。資格が取れたのは入所から5年後でした。

その5年間は、どのような案件を担当されていたんですか。

鈴木:
イメージされるような、街の工務店や、個人でやられている飲食店の経理ですね。いわゆる「街の税理士さん」の仕事を通して、さまざまな業種の経営者と近い距離で接しながら、税務・会計の基礎と、お客様との向き合い方を学ばせていただきました。現在は医療機関に専門分野を絞っていますが、経営者がどのようなことに悩み、税理士に何を求めているのかを知るうえで、この時期の経験が土台になっています。
思いがけない配属から、医療専門へ——大手税理士法人での5年

その後、税理士法人山田&パートナーズへ移られます。転職のきっかけと、その事務所を選ばれた理由を教えてください。

鈴木:
資格が取れたことが一つと、これまでとは異なる業務をしてみたいと思って転職しました。選んだ理由は、規模が大きそうで様々な案件に関われそうだったことに加え、当時、相続をやったことがなかったので、興味があったところですね。ただ、相続をやりたくて入ったのに、結果として配属されたのは医療専門の部門でした。結局は、その配属が今の開業につながっています。

医療専門部門では、どのような業務を担当されていたのでしょうか。

鈴木:
クリニックや医療法人の先生を対象とした月次顧問を中心に、常時15件ほどを担当していました。毎月の税務・会計に加えて、医療法人の設立、事業承継、認定医療法人への移行、税務デューデリジェンスなどのスポット業務にも携わりました。また、医療機関の顧問をしていると、先生ご本人の資産や相続に関するご相談へつながることもあります。そのため、医療機関の日常的な税務・会計だけでなく、先生個人の相続も含めて、幅広い業務を経験することができました。

5年在籍されて、独立されます。決め手は何だったのでしょうか。

鈴木:
組織の中で働き、多くの経験を積むことができた一方、雇われの立場だとどうしても「回ってきた仕事をやる」という形になりますし、自分で切り開くとか、お客さんと一から関係を作って長くお付き合いしていくということが、あまりできなかったんです。せっかく資格を取ったのであれば、一番最初からきちんとお付き合いをして、その先もずっと関係が続いていく。そういう王道の税理士としての役割をやりたかった、というのがあって、一人でやろうと決めました。

事務所のお名前は、どういう由来でつけられたんですか。

鈴木:
「メディカル」は、ご想像の通り、医療機関向けのサービスに特化してやっていきたいという意図です。特化することのメリットは、その会計事務所に、その業界の情報がより濃く集まってくることだと思っています。特定の業界に関する情報をより深く蓄積できれば、その中から目の前のクライアントの方に役立つ情報をお伝えできると思います。

ですから、できれば規模を大きくして取引先を増やし、濃度の高い情報をより多く集めたい、というのがあります。「ハナ」の方は、いずれ従業員を雇うことを想定して、その方たちとのコミュニケーションの一つとして付けました。真面目な話ではないんですが、8月7日が私の誕生日なんです。将来従業員が増えた際に、自分の誕生日を祝ってくれたら嬉しいな、という野望を込めた遊び心ですね(笑)。
担当者ではなく、私が向き合う——数字を絞って伝える月次

医療機関に特化された税理士事務所はほかにもあります。そのなかで、どういう強みで戦っていこうとお考えですか。

鈴木:
医療特化の事務所は、税理士法人として長くやられているところが多いんです。そうすると、担当者と先生、というマッチングになる。業界に詳しくない担当者になる可能性もある。そこが弊所とは根本的に違うところですね。私が先生と直接向き合います。前の法人にいた時もそうでしたが、ある程度の規模の税理士法人は、教育の観点や離職などで、担当者は定期的に変わってしまうことがあるんです。それを不満に思われる先生は、結構いらっしゃるんだろうなと思っていました。あとは、私が若いということもあります。クラウド会計を使いこなせている事務所は、医療特化のなかではまだ多くはないんだろうなと思っています。医療機関への専門性とクラウド会計を組み合わせ、経理や資料のやり取りをシンプルにし、数字をタイムリーに確認できる環境を整えます。

医療以外の業種に特化するという選択肢は、あったのでしょうか。

鈴木:
会計事務所を開業することを考えた時に、業種を絞らなければいろいろなお客さんと接することで視野が広がるという面はあると思うんです。ただ、クライアントが本当に知りたいのは、同じ業界の他社の事例だったりします。であれば、何に特化するかはさておき、業種に特化した会計事務所が本当はたくさんあるべきなんだろうなと思っています。その時に、私のバックグラウンドから特化すべきは医療業界だった、ということです。

月次の数字は、先生方へどのように整理してお伝えするのでしょうか。

鈴木:
試算表に並んでいる数字を、上から順番にすべて説明することはしません。診療で忙しい先生が、毎月すべての勘定科目を細かく確認する必要はないと考えているからです。まず、クラウド会計を活用して、直近の経営状況をできるだけ早く把握できる環境を整えます。そのうえで、前月や前年と比べて変化があった数字や、今後の経営判断に影響する数字を絞ってお伝えします。クリニックの売上を見る場合も、売上額だけを確認するのではありません。患者数、患者一人当たりの診療単価、季節による変動などに分けて見ることで、売上が増減した理由を把握しやすくなります。数字をただお渡しするのではなく、「今、何が起きているのか」「次にどこを確認すべきか」を整理して、先生と共有することが月次支援の役割だと考えています。

前職で、伝え方を変えたことで先生の反応が変わったご経験はありますか。

鈴木:
担当に入ったばかりの頃は、前の担当者がやっていた通りの内容を踏襲していたんです。ただ、あまり伝わっている気配もなく、同じ質問をされたりしていて。そこで伝える数字を徐々に絞っていったら、「ああ、そういうことだったんだ」と言われたことがありました。数字をたくさん見せることよりも、相手にとって必要な数字を選び、その意味を伝えることが重要だと考えるようになりました。
2040年を見据える——診療報酬と開業規制が変える医療経営

ブログでは医療法人化やMS法人、賃上げの原資など、現場寄りのテーマを扱われています。いま医療機関の経営環境について、特にお伝えしたい論点はありますか。

鈴木:
税務的な話題というよりは、経営環境でしょうね。人口が減って高齢化が進んで医療費が大変だ、という話はずっとされていると思いますが、今見えている範囲でも、2040年ごろには東京のような大都市でも、外来患者数が頭打ちになると言われているんです。地方はすでに進んでいて、もう始まってしまっています。つまり、これまで通りにやったとしても、やっていけないということです。自院の患者数や診療単価の変化に加えて、地域の人口構造や医療需要を確認しながら経営を考える必要があります。

そのなかで、2年に1回、診療報酬制度が見直されています。毎回、少ない財源をどう振り分けるかが変わっていきますから、そこをきちんと把握しながらやっていかないと難しい。それが大前提にあります。

開業のルールも変わってきていると伺いました。

鈴木:
その一端ですが、今年から東京都で新しく開業しようとした時に、これまでは「上野で内科をやります」と届け出を出せば「わかりました」で終わったんです。これからは、あまりにクリニックが多い地域では、少ない診療科をやってくださいと言われたり、ここは内科が多いので難しいですと言われたりする方向になり始めています。これまでは自由に開業できましたが、そんなことを許している国は、世界的にはあまりないんですね。ヨーロッパだと、事前に「この地域で内科をやりたい」と申請したら、その内科が本当に必要なのかを審議する国もあります。

そうした変化は、日々の数字の見方にも関わってきそうです。

鈴木:
この時代の流れや国側の要請まで理解していないと、「患者さんの数がこれくらいいますね、好調ですね」で終わってしまうんです。経営環境の変化も踏まえつつ、本当の意味で先生方のパートナーのような存在になりたいと思っています。

医療の知識は、どのようにキャッチアップされているんですか。

鈴木:
『日経ヘルスケア』という雑誌を読んだり、医療系の勉強会に参加したりですね。あとは医師会や厚生労働省のホームページ、それから福祉医療機構(WAM)という、医療機関向けの融資などを行っている機関がレポートを出していますので、その辺りを見ています。ときには有料の資料を購入することもあります
60日間、無料のセカンドオピニオン——最初の一社を迎えるために

「60日間、無料でセカンドオピニオン」というおためし顧問サービスは、かなり踏み込んだ設計だと感じました。どういう意図で作られたのでしょうか。

鈴木:
顧問税理士を変えるのは、ハードルが高いと思うんです。よほど不満があればすぐにでも、となるでしょうけれど、まだちょっと悩んでいるくらいだったら基本的には継続されると思うんですね。その時に、プレサービスのようなものがあってもいいのかな、という発想です。

60日の間は、どのようなことをされるんですか。

鈴木:
記帳代行をバリバリやるというよりは、今の税理士さんが作られている資料なども拝見しつつ、普段の面談だとハナメディカルではこんなふうに進めてくれるんだな、と見ていただくイメージですね。「こんな感じでやってくれるなら、変えても大丈夫かな」という部分を確かめてもらう。単なる1回の面談だけでは伝わり切らないことも多いと思うので、こういった設計にしています。

最後に、これからどのようなペースで事務所を育てていきたいとお考えですか。

鈴木:
具体的な数値目標はないんですが、数が多ければ多いほど他社の事例が集まって、お客さんにフィードバックできる情報は増えます。ですから、できるだけ早く、まずは一人で回り切れないくらいになりたいですね。それからは、サポートしてくれる方と一緒にやりながら、という想定です。まだ開業したばかりですが、だからこそフットワーク軽く動けますので、気軽にご相談いただければと思います。

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取材を終えて

インタビューを通して、鈴木さんが何度も口にされていたのは「絞る」という言葉でした。業種を医療に絞る。伝える数字を絞る。担当を自分一人に絞る。どれも、手を広げれば売上につながるかもしれない場面で、あえて狭めるという判断です。

そのどれにも理由がはっきりあるところが印象的でした。会計事務所には業界の情報が濃く集まるから、業種を特化する。院長先生は経理ではなく医療に集中したいのだから、数字を羅列せずピックアップしてお渡しする。担当者が変わることを不満に思う先生がいるから、自分が最後まで見る。すべて、目の前の先生にとって何が価値になるのかという一点から逆算されています。

2040年には東京でも外来患者数が頭打ちを迎え、診療報酬は2年ごとに姿を変え、東京では開業する場所さえ自由ではなくなりつつある。そうした流れを、有料の資料まで買って追いかけている税理士は、そう多くないはずです。クラウド会計の導入から医療法人化、その先の承継まで一人の相手に相談したいとお考えの先生にとって、心強い伴走者になるのではないでしょうか。

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