松山市

税を通じて事業の成長と希望を支える——自動車工場の現場から松山で独立、freeeとAIで「経営の見える化」を届ける税理士事務所HRT

税を通じて事業の成長と希望を支える——自動車工場の現場から松山で独立、freeeとAIで「経営の見える化」を届ける税理士事務所HRT

平田 光司(ひらた こうし):税理士事務所HRT 代表/税理士

愛媛県松山市を拠点に、freee利用者を中心とした全国の中小企業・個人事業主を支援する税理士。高校卒業後、自動車部品メーカーの製造現場で約10年を過ごし、結婚を機に愛媛へ移住したことをきっかけに税務の道へ転身。地元の税理士法人で3年4カ月実務を積みながら簿記1級・税理士試験の科目を取得し、大学院を経て2025年8月に独立。クラウド会計freeeと、自ら開発した可視化ツールを武器に、数字を経営判断に使える形へと翻訳する「見える化」を強みとする。

松山から全国へ——freee利用者に寄り添う、ひとり税理士の現在地

まず、現在の事務所の体制と、お客様の傾向について教えていただけますか。

平田:
今はレンタルオフィスを拠点に、私ひとりで運営しています。お客様は3社からのスタートで、これから増やしていく段階です。特徴的なのは、地域にこだわらず、全国のfreee利用者の方をターゲットにしている点でしょうか。ZoomやMeetといったオンラインツールを使える方であれば、距離は問題になりません。記帳の入力も含めて私の方で対応していますので、お客様にはなるべく本業に集中していただける形を目指しています。

あえて全国を視野に入れているのには、何か理由があるのでしょうか。

平田:
freeeというクラウド会計が、場所を問わない働き方を可能にしてくれるからです。データさえオンラインで共有できれば、松山にいながら遠方のお客様の数字をリアルタイムで把握できます。地元・松山のお客様ももちろんこれから増やしていきたいのですが、「freeeで経営を見える化したい」という共通の課題を持つ方となら、全国どこでもご一緒できる。そこに可能性を感じています。
自動車工場の現場から税務の道へ——「手間に比例しない報酬」への違和感が独立を後押しした

税理士になられる前は、まったく別の世界にいらっしゃったと伺いました。どのような経緯だったのでしょうか。

平田:
高校を卒業してから、自動車の部品メーカーで10年ほど製造の現場にいました。ただ、納期に追われ続ける働き方が、正直なところかなりしんどかったんです。結婚を機に愛媛へ移ったとき、「次は自分で決めて動ける仕事がしたい」と考えました。経理であれば、ものづくりの現場とは違い、一定の時期を除いて自分で段取りを考えながら仕事を進めやすく、性格的にも数字を扱う方が向いているのではないかと思ったんです。


とはいえ、未経験でいきなり経理職に就くのは簡単ではありません。そんなとき、未経験でも応募できる税理士法人の求人を見つけました。税理士法人であれば、経理に近い仕事ができるのではないかと思い、思い切って入ってみることにしました。


そこで初めて税理士という資格を知り、会計や税務の知識を身につければ、将来的に独立してもやっていけると分かり、少しずつ道が見えてきました。

そこから、どのように実務を積まれていったのでしょうか。

平田:
愛媛の税理士法人に入りました。7名ほどの規模で、法人を中心に手広くやっている事務所です。ここに3年4カ月在籍しました。働きながら簿記1級を取り、その後に税理士試験の簿記論・財務諸表論を取得して退職しました。それから大学院に通い、不動産会社でパートをしながら消費税法を取得して、最終的に資格を得た、という流れです。回り道のように見えるかもしれませんが、一つひとつ積み上げてきた実感があります。

勤め続けるという選択肢もあったかと思います。独立に踏み切った決め手は何だったのでしょうか。

平田:
いくつか理由はあるのですが、一番大きかったのは報酬の決め方への違和感でした。前の事務所もそうでしたが、顧問報酬がどう決まっているのかが、自分にはどうしても腑に落ちなかったんです。私の考えでは、報酬は本来、かかる手間や責任に比例すべきだと思っています。でも実際にはそうなっていないことも多くて、そこに公平さを欠いているように感じていました。それに、紙ベースの非効率な業務の進め方も含めて、どこかに勤め続けてもいずれ揉めてしまいそうだなと(笑)。それなら、自分の納得できるやり方でやろうと決めました。
「HRT」に込めた、Hope Rise Tax——税を通じて事業の成長と希望を支える

事務所名の「HRT」には、どのような意味を込められたのですか。

平田:
「平田」をもじった部分もあるのですが(笑)、正式にはHope Rise Tax(ホープ・ライズ・タックス)の頭文字です。税の力で希望を届けたい、税を通じてお客様の事業が前向きに伸びていく後押しをしたい、という思いを込めました。

あえてご自身の名前を事務所名に冠さなかったのには、理由があるのでしょうか。

平田:
これは、独立にあたって受けたセミナーで学んだことが大きいです。自分の名前を看板にしてしまうと、どうしても「先生本人が対応しなければ」という縛りが生まれてしまうという話を聞きました。今はひとりで運営していますが、将来お客様が増えて体制を広げていくことを考えたとき、個人名ではない方が事業として伸ばしやすい。そう考えて、あえて「HRT」という名前にしました。2025年8月の開業ですので、まだ歩み始めたばかりですが、名前には最初から少し先の未来を見据えた意味を持たせています。
なぜfreeeなのか——「狙い目」から始まり、AIで独自の見える化ツールまで作った

「なぜ当事務所はfreeeを使うのか」という記事まで書かれていますが、数ある会計ソフトの中でfreeeに絞った理由を教えてください。

平田:
正直に言うと、ソフトそのものへの強いこだわりが最初からあったわけではないんです。愛媛県で開業するにあたって地元の事務所を調べたところ、マネーフォワードを使っているところが多いという印象でした。一方で、freeeの税理士検索で愛媛を調べると、当時8件ほどしかありませんでした。それなら、ここは狙い目になるのではないかと考えたのが、率直なきっかけです。もちろん、年に一度の決算だけ記帳代行で対応したいというお客様には弥生会計を使うこともありますが、軸はあくまでfreeeに置いています。

単にソフトを使うだけでなく、ご自身で可視化のツールまで開発されていると伺いました。

平田:
はい。経営者の方は基本的に節税を意識されますが、「このお金を使って本当に経費になるのか」「使った結果、会社にいくら残るのか」が見えにくいという課題があります。節税のためにお金を使った結果、手元に残るお金が減ってしまっては本末転倒です。そこで、資金繰りや損益、キャッシュフローをグラフ化して、お金の流れを一目で分かるようにするツールを、AIのClaudeを使って自分で作りました。まだ本格的に活用できているわけではなく、これから現場で育てていく段階ですが、こうした形でお役に立てたらと思っています。ご要望があれば、AIを使ってお客様専用の簡単なアプリを作るといった対応もできると考えています。
法人は四国、個人は全国——「公平な報酬」へのこだわりを貫く

対応されるエリアやお客様について、どのような線引きをされていますか。

平田:
法人のお客様は、慣れるまでは四国圏内に限定したいと考えています。法人の場合、税務調査などで実際に足を運んで動く必要が出てくるからです。一方で、個人の確定申告であれば全国どこでも対応します。単発のご依頼でも構いません。基本はオンラインで完結する形を想定していますので、ZoomやMeetでやり取りできる方であれば、無理なくご一緒できると思います。

お客様と向き合ううえで、特に大切にされている考え方はありますか。

平田:
やはり、独立のきっかけにもなった「公平な報酬」という点です。負担の大きいお客様にはそれに見合った報酬をいただきたいですし、逆に手間がかからないお客様には、その分きちんと抑える。面談の回数や、資料をどういう形でいただくかによって、業務の負荷は大きく変わります。だからこそ、一律ではなく、お客様ごとの実態に合わせて報酬の形を変えるようにしています。自分が違和感を覚えていた部分を、自分の事務所では正したい。その気持ちが根っこにあります。
のんびりと、でも着実に——顧問先30社と「経営の見える化」のその先へ

これから、事務所をどのように育てていきたいとお考えですか。

平田:
まずは顧問先30社を、当面の目標にしています。地元・松山での顧客獲得はまだこれからで、商工会などの地域の活動にも参加しながら、少しずつ広げていきたいと考えています。組織を大きくするかどうかは、今のところあまり決めていません。人を入れることも視野には入れつつ、当面はのんびりと、自分の目の届く範囲で着実にやっていくつもりです。

もう少し先の、5年後・10年後に思い描く姿はありますか。

平田:
freeeにこだわりすぎず、お客様に合った会計ソフトを使いながら「経営の見える化」を支援して、事業の拡大に貢献できたら嬉しいですね。そのためには、私自身も新しい知識を取り入れ続けなければいけないと思っています。AIの活用もそうですが、お客様の役に立つ手段であれば、柔軟に取り入れていきたい。派手な成長を目指すというより、税を通じて事業の成長と希望を支える——事務所名に込めた思いを、一つひとつ形にしていく時間にできればと考えています。

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取材後記

平田さんとお話していて印象に残ったのは、「報酬は手間に比例すべきだ」という、ご自身が現場で抱いた違和感を、そのまま独立の原動力に変えてこられたことでした。自動車部品の製造現場で10年を過ごし、結婚を機に経理の道へ。決して最短距離ではないキャリアの一歩一歩に、自分の納得を大切にする実直さがにじんでいます。

freeeを選んだ理由を「狙い目だったから」と率直に語る一方で、節税で手元のお金が減ってしまう経営者の悩みに向き合い、AIで可視化ツールを自作してしまう。その柔軟さと手の動かし方こそ、これからの時代の税理士に求められる姿だと感じました。これからも平田さんのご活躍を見守ってまいりたいと思います。

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