福岡市

「キャリアも、家庭も、挑戦も、諦めなくていい」――福岡で女性中心のチームを率い、業種を問わず経営に伴走するアテナ税理士法人

キャリアも、家庭も、挑戦も、諦めなくていい――アテナ税理士法人 代表 池田祐香

KPMGあずさ監査法人で大手商社の監査に従事した池田祐香さんは、夫の福岡開業を機に、2013年に独立。個人事務所として11年間続けたのち、2024年にKPMG時代の同期である杉田税理士とともにアテナ税理士法人を設立しました。

現在は福岡を拠点に、女性中心のチームで業種を問わず多くの経営者に伴走されています。京都大学EMBAでの学び直しを経て、税理士の役割を「教え、導く存在」から「対話の伴走者」へと再定義する池田さん。離職という痛みを経て自らのマネジメントを問い直し、AI活用と人間ならではの価値の両立を模索する現在地、そして「キャリアも、家庭も、挑戦も、諦めなくていい社会をつくる」という個人の理念を伺いました。

 

池田 祐香(いけだ ゆか):アテナ税理士法人 代表社員/公認会計士・税理士

熊本県出身、中央大学商学部卒業。在学中の2007年に公認会計士試験に合格し、2008年にあずさ監査法人(KPMGジャパン)東京事務所に入所。国際部に配属され、大手総合商社の監査およびリファード業務を中心に従事。IFRSコンバージェンス案件においてKPMG Chairman’s Awardを受賞。2013年に同法人を退職し、同年5月に福岡で池田祐香公認会計士・税理士事務所を開業。2024年5月、KPMG国際部の同期である杉田税理士とともにアテナ税理士法人を設立。京都大学EMBAプログラム修了。福岡県行政改革審議会委員ほか公職多数。freee認定5つ星アドバイザーとして、創業期から成長期までの中小企業経営を伴走支援する。

福岡で女性中心のチームを率い、業種を問わず経営に伴走する

まず、アテナ税理士法人の現在の体制や顧問先の特徴を教えてください。

池田:
現在は11名の体制で、代表の私と社員税理士の杉田が税理士資格を所持しています。多くは女性ですが、最近は男性の所属税理士も加わり、多様なメンバーが在籍していますが、特定の属性を意図的に選んでいるわけではなく、自然と現在の構成になっています。

顧問先の規模感やご業種はいかがですか。

池田:
100社を少し超えるぐらいで、業種には特化せず、幅広くお付き合いをさせていただいています。美容室、IT、製造業、最近はライバーの方なども含めて、本当にさまざまな業種の方をご支援しています。地域は福岡にゆかりのある方が中心で、本社が福岡で支店が他地域にあるお客様や、リモート対応で遠方のお客様もいらっしゃいます。

規模感でいうと、最近は「会社を設立しようかな」という方のご相談が増えています。最初の手続きや報酬設計のところからご相談に乗るケースが多くなっています。福岡市も福岡県も創業を後押しする施策に力を入れていますので、その流れもあって活発になっていると感じます。

サービスの中心は何になりますか。

池田:
法人顧問がメインです。私自身が公認会計士・税理士のダブルライセンスで、税務だけでなく会計監査や企業法務の素養を備えていますので、財務・税務のデューデリジェンスや株価評価を単発でお引き受けすることもあります。最近は、私が京都大学のEMBAプログラムで学んだコーチングやコンサルティングの要素を、経営支援サービスとして少しずつご提供し始めているところです。
アテナ税理士法人
法人化は「面白いことが起きるかも」という期待から——同期・杉田との再会

2013年に池田祐香公認会計士・税理士事務所として福岡で開業されてから、11年経った2024年5月にアテナ税理士法人として法人化されました。何が法人化のスイッチになったのでしょうか。

池田:
法人化は、ずっと気になる存在ではありました。個人事務所として売上と経費がある程度安定してきた頃に、「法人化している事務所はかっこよさそうだな」という憧れのような気持ちが芽生えていました。戦略的に詰めきったというよりは、今と違うことをしたら、何か面白いことが起きるかもしれないという期待のほうが強かったように思います。

個人事務所のままですと、税理士報酬をお支払いいただく際にお客様側で源泉所得税の手続きが発生します。創業間もないお客様には事務的なご負担をおかけしている感覚があり、法人化すればその負担をなくせるという想いもありました。このまま目の届く範囲で続けるのか、少しチャレンジしてみるのか——その問いが頭のどこかにあったように思います。

その時に、一緒にやろうと決めた方がいらっしゃったのですね。

池田:
はい、社員税理士の杉田です。KPMGの国際部の同期で、同じクライアント先のメンバーとして非常に長い時間を共に過ごしてきました。杉田は現在も海外を拠点に仕事をしていますが、あるとき株価評価の案件をご一緒する機会があり、「一緒にできたら楽しいね」という話を自然にするようになりました。

杉田は現在も海外におりまして、年に2回ほど日本に帰国するペースです。事務所では総務的な部分や申告書のチェックを担ってくれており、お客様の前に出る機会は多くはありませんが、信頼できるパートナーがいるというのは大きな支えになっています。

税理士法人は無限連帯責任ですから、一緒にやるパートナーには相当の信頼が必要ですよね。

池田:
そこはやはり悩みました。双方の信頼関係が本当に重要になりますので、慎重に検討しました。ただ、杉田となら大丈夫だという確信がありました。女性で独立された方は、個人事務所でお一人で続けられる方が多い印象なのですが、全てが整うのを待つよりまずチャレンジしてみよう——というぐらいの感覚からスタートした形です。
公認会計士という道——中央大学「炎の塔」で見えた、かっこいい先生の背中

そもそも公認会計士という道を選ばれたきっかけは何でしたか。

池田:
熊本高校から中央大学に進学したのですが、高校時代は会計士という職業をまったく知りませんでした。中央大学は資格取得を推している大学で、「炎の塔」という場所で皆さんが必死に勉強されているような環境があり、そこで初めて会計士という世界に触れました。

学力には多少自信があり、中央大学ならトップが取れるという気持ちもありましたが、「このまま勉強ばかりで楽しいのだろうか」と迷う時期もあり、1年ほどはアルバイトやサークルなどさまざまな経験をしてみました。2年生になる頃に「このまま就職したらどうなるのだろう」と自分の未来があまり明るく見えなくなってきまして、改めて会計士を目指すかどうかを考え始めました。

その時の決め手になったものはありましたか。

池田:
ゼミの先生が、KPMGのニューヨークで35年ほど働かれていた会計士の方でした。その先生が本当にかっこよく映り、自分もこのようになりたいと思いました。

1年次から4年次までかけて学ぶコースに2年生から途中合流する形で入り、最初は遅れを取り戻すのに大変苦労しましたが、3年生のときに合格することができました。

学生のうちから、すでにKPMGとつながりがあったのですね。

池田:
学生非常勤として、入社前から働かせていただいていました。途中、一時EYに在籍した時期もありましたが、最終的には新卒でKPMGに入社しました。当時お付き合いしていた方から「会計士に受かったら結婚しよう」と言われていまして、実際に合格して結婚したら、その日のうちに父からの仕送りが止まったのは、今でも忘れられない出来事です。

KPMGではどのような業務に携わられたのですか。

池田:
国際部に配属となり、大手総合商社の監査とリファード業務がメインでした。2007年に合格し、2008年から2013年までKPMGで経験を積ませていただきました。
独立、そして「経営者」への目覚め——ホームページ一つから育ってきた事務所

2013年にKPMGを退職されて、福岡で開業されます。独立の背景を教えてください。

池田:
監査法人を退職するタイミングで、「資格を返納するか、個人で開業するか」という選択がありました。実質的には退職にあたり、子育てに時間を割きたいという気持ちが強かったように思います。

監査はチームで動く仕事であり、一人ではなかなか難しい世界ですので、税理士登録をして事務所として立ち上げるという選択をしました。ちょうど夫も医師として開業したタイミングでしたので、そちらのサポートもしながらのスタートとなりました。

軌道に乗るまではどのような道のりでしたか。

池田:
ホームページを作りましたら徐々にお問い合わせをいただくようになり、採用も重ねるなかで、気づけば組織として動くようになっていた——という流れでした。軌道に乗ったと実感できたのは、本当にごく最近です。ようやく自分が経営者になってきたのではないかと思えるようになってきました。

どういう点でご自身の変化を感じますか。

池田:
これまでは「プレイヤー気質」が強かったのだと思います。「先生という立場であるからこそ、しっかりお伝えしなければならない」という、良くも悪くも前のめりな姿勢でした。それが最近、少しずつ変わってきていると感じます。

具体的にはどんな変化ですか。

池田:
スタッフへの接し方や、相手への期待値の持ち方になります。正直に言いますと、これまで離職は少なからずありました。Xなどで事務所のことを見ていただいている中で応募をいただくケースが多いのですが、お互いの期待値がずれたまま進んでしまい、結果として離れてしまうこともありました。目標や期待値のすり合わせが本当に大切だと痛感する経験を重ねてきまして、ようやく自分の経営者としての姿勢が変わってきたと感じます。

スタッフ一人ひとりも、それぞれにキャリアや家庭や挑戦したいことを抱えて、アテナを選んでくれています。その人生の一部を預かっている以上、『ここで働いていて何かを諦めなければならない』状態にはしたくない——最近はそういう視点で組織を見るようになりました。
女性中心のチーム × AI活用——「楽しく数字に向き合える」環境づくり

「結果として女性中心」というチーム構成は、お客様との関係にどう活きていると感じますか。

池田:
女性の経営者のお客様や、経営者が男性でも担当者が女性のお客様などから、「女性とやり取りしたい」というニーズにはお応えできていると思います。「これまでの税理士とのコミュニケーションが合わなかった」というご相談をいただくこともありまして、相談しやすい環境としての価値があるのではないかと感じます。

私自身、出産や子育てとキャリアを並行させる難しさを経験してきましたので、同じように仕事と家庭の両方に向き合う経営者の方には、共通言語のようなものを持って話せる感覚があります。「キャリアも家庭も諦めずにやっていく」ということを、相談相手の側にも背負わせない——そういう環境としての価値は、私たちのチームの強みになっていると感じます。

事務所として大切にされている空気感はありますか。

池田:
嫌々数字と向き合うより、楽しく数字と向き合える——そのような環境にしたい、という想いはずっと持ち続けています。経営者の方にとっても、スタッフにとっても、数字との距離感が少しでも軽くなる事務所でありたいと考えています。

AI活用もホームページで発信されていますが、日々の業務ではどう取り入れておられますか。

池田:
全員でClaudeのチームプランに加入し、さまざまに試しながらスキルアップを進めています。スタッフが自発的にNotionやGASを使ってみたりもしていまして、私が主導するというより、それぞれがチャレンジしやすい雰囲気ができてきました。

具体的には、公式LINEに届いたお問い合わせを自動で保存・リネームするといった小さな自動化から始めています。現在は新卒のメンバーも加わりましたので、スキルアップの一環としてショートカット研修を行っていまして、Google Chatに研修チャンネルを作り、そこに気づきが流れてくるような運用としています。

AI活用を進めるうえで、意識されていることはありますか。

池田:
どこまでをAIに判断させるか、という線引きはずっと考えています。お客様に関わる部分は特に、機械的な自動化だけで完結させてはならない領域だと考えています。スタッフ一人ひとりがAIを道具として使いこなせるよう、引き続き試行錯誤を続けていきたいと思っています。
アテナ税理士法人
諦めなくていい社会を、数字の力で——アテナの理念

アテナ税理士法人の理念体系を整理されたと伺いました。最上位に「個人としての理念」を置かれているのが印象的です。

池田:
はい。アテナの一番上には、私個人の理念として「キャリアも、家庭も、挑戦も、諦めなくていい社会をつくる」という言葉を置いています。

個人としての理念

キャリアも、家庭も、挑戦も、諦めなくていい社会をつくる。

出産で監査法人を辞めるとき、福岡に移住するとき、独立するとき、法人化するとき——どの局面でも、何かを諦めなければいけないように感じる瞬間がありました。実際には、諦めずに進む道はあったのに、当時の自分には見えていなかったのだと、振り返って思います。

だからこそ、自分自身も、スタッフも、お客様の経営者も、業界の若い税理士・会計士も、そして子どもたちの世代も——それぞれが「諦めなくていい」と思える社会を、自分の場所からつくっていきたい。これが、アテナという法人を続けている根っこにある想いです。

法人としての理念は、その個人の想いをどう受け止めて言葉にされたのでしょうか。

池田:
法人としては、「数字の力で、経営者の意思決定を支える」ことを使命としています。

法人としての使命

数字の力で、経営者の意思決定を支える。

税金計算や決算書作成は、AIや自動化で十分に補える時代になりつつあります。だからこそ、税理士として残るべき仕事は、数字を渡すことではなく、その数字を使って経営者が次の一手を決められるところまで伴走することだと考えています。EMBAで学んだ管理会計の本質も、まさにそこにありました。数字は、相手と対話するための道具なんです。

「諦めなくていい社会」という大きな旗印を、私たち税理士法人は「数字の力で経営者の挑戦を支える」という具体的な仕事に翻訳して届けていく。個人の理念と法人の使命は、そういう関係でつながっています。

公職と5年後のビジョン——「かっこいい税理士業界」を次の世代へ

池田先生は福岡県行政改革審議会委員をはじめ、さまざまな公職を務めておられます。そこから見えてくる地域の経営課題や、事務所の仕事との相互作用はありますか。

池田:
これまでは、女性で若めの税理士というだけで、少し心配されるような場面もありました。公職や役職が見える立場をいただくことで、そうしたご懸念を和らげられる場面も増えており、仕事面でのプラスも感じます。

地域の動きでいいますと、福岡証券取引所がスタートアップに向けた施策を打ち出されていたり、上場準備企業の監査役をお引き受けする機会もいただいたりと、地域の成長フェーズを支える場面が増えてきました。福岡のスタートアップの流れは、今かなり活発になっていると感じます。

その延長線上で、アテナ税理士法人として5年後にどんな姿を目指しておられますか。

池田:
まずは、事務所として質の高いサービスを提供し続けていきたいと考えています。そのうえで、適切な方と組みながら、さまざまな分野で価値をお届けしていきたいと思っています。AIの台頭により、税金計算だけをしている税理士の価値はどうしても薄れていく時代になっていると感じます。だからこそ、人間ならではの価値を出せる事務所であり続けたいと考えています。

最後に、これから相談してみたいと思っている経営者の方、この記事を読んでいる若い方へ、メッセージをお願いできますか。

池田:
個人的な話になるのですが、中学3年生の次女が会計士を目指して勉強を始めてくれています。母として嬉しいと同時に、この業界をかっこいい存在にしておきたいという想いを強く持つようになりました。子どもにも、スタッフにも、若い税理士・会計士の方にも、かっこいい背中を見せていきたい——そのような気持ちで、これからも事務所を続けていきたいと思っています。

経営者の方には、数字と向き合う時間を、少しでも前向きに楽しんでいただきたいと願っています。そのお手伝いをさせていただける事務所でありたいと思っています。

アテナ税理士法人の詳細はこちら

取材後記

「この業界をかっこいい存在にしたい、かっこいい背中を見せたい」——取材の終盤に語られた池田先生の言葉が、今も強く印象に残っています。中学3年生の次女が会計士を目指し始めているという話が自然に出てきたとき、それは子どもへのメッセージであると同時に、業界全体への静かな意志表示にも感じられました。

アテナ税理士法人は、福岡で女性中心のチーム構成を意図的にセレクションしたわけではなく、自然とそうなったと池田先生は話されます。それでいて、女性経営者の方や「これまでの税理士とのコミュニケーションが合わなかった」と感じてこられた方にとって、相談しやすい環境という確かな強みとして機能しているように感じられました。KPMG国際部時代の同期で今も海外を拠点とする社員税理士・杉田先生との信頼関係、公認会計士・税理士のダブルライセンスを持つ代表・池田先生ならではの財務DDや株価評価への対応、京都大学EMBAで学ばれた経営支援の要素——職能の深さと、働き方の柔らかさが同居している事務所だと感じました。

職員の離職を経験しながら「プレイヤーから経営者へ」と自身のあり方が変わってきた、とご自身で率直に振り返られる姿勢も印象的でした。その真ん中にあるのは、「キャリアも、家庭も、挑戦も、諦めなくていい社会をつくる」という池田先生個人の理念と、それを「数字の力で経営者の意思決定を支える」というアテナの使命に翻訳する一貫した姿勢でした。女性中心のチーム、freee 5つ星、AI活用、そして公職や国際対応——アテナ税理士法人の広がりある営みに触れていただきたい経営者の方は、福岡のみならず全国にいらっしゃるはずです。

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