偉ぶらない、飾らない、専門特化もしない。それでも紹介が途切れないリフト会計事務所

水越 善起(みずこし よしき):リフト会計事務所 代表/公認会計士・税理士
1995年、奈良市生まれ。埼玉大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格し、大手監査法人で上場企業やIPO準備企業の監査に従事。その後、大阪市内の税理士法人で約4年間、税務実務を経験。2024年12月、大阪・南森町にリフト会計事務所を開業し、開業2年弱で約50社の顧問先を支援している。
宮田:まずは、いまの事務所の体制とお客様について教えてください。
私と正社員1名の、合計2名です。正社員の方は事務所ができて3ヶ月ほどの初期のタイミングで入ってくれた方で、お客様対応もばっちりこなしてくれています。
顧問契約いただいているお客様は50件前後で、内訳としては、そのうち法人が45件ほどで個人事業主が5件ほどです。規模でいうと売上1億円未満の会社様が多いです。一人社長の方も少なくありません。一方で、上場企業のグループ会社様もいらっしゃいます。そういう意味では、本当に幅広いお客様を支援させていただいてますね。
経営者様の年齢は、30代から40代の方が中心です。

宮田:業種や地域には、何か傾向がありますか。
業種も本当にバラバラで、「この業種は受けていない」というものは特にありません。強いて挙げるなら、大きな工場や設備を持たれている会社様は少ないですかね。パソコンさえあれば仕事ができる、インターネット環境をうまく使って身軽な事業環境で商売をされている方が比較的多いように思います。
地域は8割ほどが大阪府内のお客様です。ただ、狙ってそうしたわけではありません。ホームページでは全国対応とご案内していますし、実際にZoomだけで完結しているお客様も多くいらっしゃいます。
サービスの範囲としては、税務顧問を軸に、資金繰りや融資のサポートを行っています。相続税の申告にも対応していますし、お客様が「M&Aを検討したい」となった際には、財務や税務の状況を深く調べるデューデリジェンスもお受けしています。他にも、事業再生のご支援をさせて頂いたこともあります。
宮田:もともと数字がお好きで、会計士を志されたのでしょうか。
いえ、全然そんなことはないんです(笑)。数字が好きだったというより、成り行きに近いところがありました。
高校まではずっと野球をやっていまして、生粋の野球少年でした。大学も、本当は東京のキラキラした生活に憧れていたのですが、親から「国公立しかダメだ」と言われてしまいました。東京の国公立を探してみたのですが、自分の学力ではなかなか難しそうで、それで埼玉大学の経済学部に進みました。とはいえ、埼玉の中でもさいたま市ですから、田舎者の自分からすれば十分に都会で、少しは夢が叶ったのかもしれません(笑)。
1年生、2年生の頃は、フットサルサークルと野球サークルに所属し、ほとんど勉強はせずに大学生活をエンジョイしていました。ただ、帰省した時に、高校の野球部のメンバーの話を聞くと、みんな大学でも部活に入って野球を続けていて、しっかり成績を残している子も多かったんです。その話を聞いて、「自分は野球ではなく、勉強を頑張るか」と思ったのが、そもそものきっかけでした。他にも、当時、好きだった女の子に告白し、あえなく撃沈したのも勉強に打ち込む後押しをしてくれました(笑)。
そこで何を目指すかと考えたときに、経済学部の難関資格といえば会計士だろうと。本当にそれだけの、今思えば安直な理由です。正直、会計士が何をしている仕事なのかも知らないまま勉強を始めました。2年生の夏から資格学校に通い始めて、4年生の夏に合格できましたので、ちょうど2年間ですね。あのタイミングで受かることができたのは、本当に幸運だったと思っています。
宮田:新卒で入られた監査法人を3年弱で離れ、税務の世界へ移られています。何がその決断を後押ししたのでしょうか。
監査の仕事もやりがいは十分にありました。上場企業やIPO準備企業を担当させていただいて、貴重な経験もたくさん積ませてもらったと思っています。
ただ、監査というのは第三者的な立場でチェックをする仕事なんです。それを続けるうちに、「これが本当に自分のやりたいことかと言われると、少し違うかもしれない」と感じるようになりました。チェックをする側ではなく、経営陣と一緒になって、より良い経営を後押しできるような仕事のほうが、単純に楽しいんじゃないかなと思ったんです。
で、経営者を身近で後押しできる仕事は何かと考えたときに、それは税理士だろうと。監査も3年弱しかやっていませんので、業界からすれば本当にペーペーの状態で飛び出したことになりますが、そう思い立って税理士法人に転職しました。
宮田:そこでの4年間は、どのような時間でしたか。
法人顧問がメインの事務所でしたので、顧問税理士としての仕事を一通り、徹底的に吸収させていただきました。
実を言うと、入社して1年ほどで辞めようと思っていたんです。顧問税理士の1年間の動きというのは、一周してしまえば大体つかめますので。ただ、居心地がとても良くて、思っていたより長く在籍することになりました(笑)。
ちょうど私がいた時期に、従業員が20人から100人ほどへと一気に拡大していくフェーズを迎えていたんです。採用にも関わらせていただきましたし、税務以外にも本当にいろいろな仕事を経験させてもらいました。あの4年間があったから、いま独立してやっていけているのだと思います。

宮田:独立という選択は、いつ頃から意識されていたのでしょうか。
学生の頃からずっと考えていました。そもそも会計士の資格を取ったこと自体、「このまま普通に社会人になってしまうと、一生サラリーマンで終わってしまいそうだな。それは嫌だな」と漠然と思っていたからなんです。ですので、独立すること自体は、昔からずっと決めていました。
先ほど「1年で辞めようと思っていた」とお話ししましたが、本音を言えば、もっと早く独立したい気持ちはあったんです。ただ、居心地の良さと、事務所が伸びていく面白さで、結果的に4年在籍したという流れですね。
宮田:2024年12月に開業されて、立ち上がりの手応えはいかがでしたか。
ありがたいことに、最初から上手く軌道に乗りました。
「独立しました」ということを、学生時代の友人やこれまでお世話になった知人たちに伝えて回ったんです。そうしたら、「じゃあ、ちょっと顧問税理士お願いするわ」「ちょうど探していたところなんだよ」という声を、思いのほかたくさんいただけまして。正直なところ、独立してすぐに「これは食べていけるな」と感じられたくらいでした。
宮田:先ほど、大阪のお客様が8割になったのは狙ったわけではないとおっしゃっていました。それも、この流れの延長にあるのでしょうか。
そうですね。そこからも、ほぼ紹介でお客様が増えてきているんです。紹介ということになると、やはりこの辺りの、大阪の方がどんどん増えていくことになります。ですので、地域を選んで決めたというよりも、勝手にこうなったという感覚に近いですね。

宮田:お客様との向き合い方で、意識して変えていることはありますか。
典型的な税理士の関わり方ですと、毎月の数字はこうでした、とご報告して終わり、という形になると思うんです。ですがそれでは、私たちも楽しくありませんし、会社にとっても有意義な時間にはなりません。ですので、何でもざっくばらんにお話しできる場として面談機会を設けるようにしています。
そう考えるようになったのには、理由があります。前職時代、毎月試算表の数値をご報告していても、経営者様がポカンとされているというか。「この時間、お互いにもったいないな」と感じる場面が、多々あったんです。
それならば、本当はどんなことが知りたいのかを直接伺って、その方に合わせた資料をお出ししたほうがいい。そう考えて実際にやり方を変えてみたところ、毎月お会いするモチベーションも大きく変わりました。「ああ、こちらのほうが断然いいな」と実感できたんです。
宮田:具体的には、どのようなやり方をされているのでしょうか。
うちには、決まったフォーマットの報告資料というものがありません。お客様にお見せする資料は、一社一社バラバラです。「毎月こういう資料があると嬉しいな」とおっしゃっていただけたら、「では、ちょっと頑張って作ってみますね」と。オーダーメイドでレポートをご用意して、経営者様にとって役立つ情報提供ができればという考え方でやっています。
面談の頻度についても同じです。「毎月会うのは、そこまで必要ない」「数字は大体わかっているから、それなら少し安くしてくれたほうが嬉しい」とおっしゃる方も、実際いらっしゃいます。そう言っていただけたら、採算の合う範囲で頻度も費用も調整しています。ホームページには定型的な料金を掲載していますが、実際のところは結構前後していますね。

宮田:昨今は「AIの活用」や「これからはコンサルの時代だ」といった話も多く聞かれます。その辺りは、どう捉えていらっしゃいますか。
AIについては、最低限は使えないといけないだろうと思っています。やはり、AIを使いこなすことで作業時間を大幅に削減できて、その分、頭を使う時間を確保できますしね。
コンサルティングに関しては、うちの場合は自然とコンサルになっているのかな、という感覚です。メンバーにも「もっと頑張ってコンサル業務に力をいれよう」というようなことは言っていません。お客様のニーズをきちんと汲み取って、その方に刺さることをやっていれば、結果的にそれはコンサルティングになっていると思うんです。ですので、「コンサルをやります」と大きく押し出すことは、あまりないかなと思っています。
宮田:他の事務所から乗り換えてこられたお客様も多いかと思います。「リフトさんはここがいい」と言われるのは、どんな点でしょうか。
一番よく言われるのは、相談しやすいという点ですね。レスポンスが早いということもよく言っていただきますし、「水越さんは相談しやすいので助かります」と言われることもよくあります。
ご相談いただく内容も税務に限りません。例えば、労務に関する質問をいつも私に相談してくださるお客様がいらっしゃいます。もちろん、社労士との契約が必要なレベルだと感じた場合には、提携している士業の仲間がたくさんおりますので、おつなぎして連携しながら対応しています。
あとは、単純に私の性格の問題かもしれませんが、そんなに偉そうにはしないので(笑)。その辺りも、話しかけやすさにつながっているのかなと思ったりします。
ただ、正直に申し上げると、経験がとりわけ長いわけでもありませんし、税務調査にめっぽう強いなど、尖った強みがあるわけでもありません。ですので、「何が強みですか」と聞かれると、いつも困ってしまうんです。いつもお客様には、「お話をしてみて、キャラクターが合うなと思っていただけたら、契約してください」とお伝えしているくらいで(笑)。
宮田:独立される際に、強みをどう打ち出すか悩まれることはなかったのでしょうか。
考えはしました。何かの分野に特化したほうがいいのだろうか、といったことも検討してみました。ただ、最終的には「一旦、素の自分でいってみよう」という結論になりました。ほぼノープランで独立したことになりますね(笑)。
というのも、顧問契約というのは長いお付き合いになります。だからこそ、最初から自分を大きく見せたり、無理なキャラづくりをしてしまうと、後からお互い苦しくなってしまうと思うんです。等身大の自分でざっくばらんに向き合うからこそ、お客様も本音を話してくださる。 結果的に、それがうまい具合に作用しているのかもしれません。取り繕わない分、例えば、お客様が税務リスクの高い取引を考えているときなんかは、「それはやりすぎですよ」とお伝えすべきことは、遠慮なくお伝えできていますしね。
宮田:一方で、公認会計士としての経験が活きていると感じられる場面はありますか。
ありますね。先ほど申し上げたM&Aの財務・税務デューデリジェンスや事業再生支援は、スポットでお受けすることがあるのですが、会計士の仕事をしていたからこそ捌ける仕事だと感じています。
もう一つは、監査を通じて大企業の経理部のさまざまなプロセスや仕組みを見てきた経験です。「どういうプロセスで仕事をすればスムーズに回るのか」という、内部統制の構築にあたる部分ですね。実際に、「経理担当者が辞めてしまって、少しまずい状況になっている」といったご相談をいただくこともありますし、「いまはこういう業務フローで回しているけれど、効率化できるところはないか」と聞かれることもあります。そうした場面で、自分の持っている知見からアドバイスや助言ができる。この辺りは、会計士としての経験が確かに活きていると思います。
宮田:今後、事務所の規模についてはどのようにお考えですか。
大きな事務所にしたいとは、まったく思っていないんです。
やはり質の高いサービスをご提供して、お客様に本当に幸せになっていただきたいという思いがあります。顧問税理士というよりも、経営パートナーくらいの距離感まで、すべてのお客様に入り込みたいんです。そのためにはお客様1社に対してある程度の時間をかける必要がありますから、必然的に、お客様の数はそこまで多く持てないということになります。
働いてくれるメンバーに対しても、想いは全く同じです。私自身の目が届く規模であれば、事務所の理念をしっかり共有できますし、誰かが困ったり悩んだりしているサインにもすぐ気づいてフォローできますから。メンバーひとりひとりと向き合える環境があってこそ、お客様も含めた「リフトに関わる全員」がハッピーでいられる。そう実感できる規模感を大切にしたいです。余計な間接コストをかけず、その分をメンバーやお客様に還元したいという想いもあります。
宮田:最後に、「リフト」という事務所名の由来と、これから目指される姿を教えてください。
「リフト」は、そのまま「持ち上げる」という意味です。顧問先の皆様が、私たちと関わってくださることで、より高みに行っていただけたなら、私たちとしてもこれほど幸せなことはありません。そういう会計事務所でありたいという思いを込めています。
目指す姿も、シンプルなんです。携わらせていただいたお客様には、皆さん幸せになっていっていただきたい。そんなお客様が、一社でも増えたらいいと思っています。関わってくださる方みんなが幸せになって、自分たちも幸せに働きたい。本当に、それだけですね。

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取材を終えて
「強みを聞かれると、いつも困るんです」と笑う水越先生ですが、取材を終えて感じたのは、それ自体が強みなのではないかということでした。飾らず、偉ぶらず、お伝えすべきことははっきり伝える。経営者がポカンとする試算表の報告をやめて、一社一社に合わせた面談へと切り替える。開業2年で50社という数字は、派手な打ち出しの結果ではなく、この「素のままの誠実さ」が紹介の連鎖を生んだ結果なのだと思います。肩肘を張らずに何でも相談できる相手を探している大阪の経営者の方には、ぜひ一度、話してみていただきたい先生です。
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※ 本インタビューの内容は取材時点のものです。事務所の体制やサービス内容は変更される可能性があります。最新の情報については各事務所に直接お問い合わせください。