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調査官が何を見ているかを知っている——国税15年から独立、税務調査に強い名古屋の小久保亘税理士事務所

調査官が何を見ているかを知っている——国税15年から独立、税務調査に強い名古屋の小久保亘税理士事務所

小久保 亘(こくぼ わたる):小久保亘税理士事務所 代表/税理士

高校卒業後、公務員を志して国税の職員となり、名古屋国税局および管内の税務署で15年ほど税務の「執行側」を歩む。税務署の一般部門から、調査が難しい業種・相手先を担当する特別調査部門へ、さらに国税局調査部へと進み、法人調査の現場を重ねた。在職中に税理士試験に合格し、退職後は法人顧問を主とする税理士法人で実務を経験。2026年6月、名古屋市熱田区に小久保税理士事務所を開業した。税務調査の緊急対応に特化したサイトも自ら運営する。freee会計 上級エキスパート、freee人事労務エキスパート。税理士(登録番号 第158731号)、名古屋税理士会熱田支部所属。

名古屋を拠点に、クラウドで全国へ——業種を選ばず、経営者と直接向き合う

まず事務所の輪郭から伺わせてください。現在の体制と、どのようなお客様が中心でしょうか。

小久保:
現在は私一人で、自宅を事務所として運営しています。業種については特に縛りを設けておらず、基本的には何でもお受けするというスタンスです。規模についても、今のところは年商5,000万円未満の方が中心ではあるものの、上限を決めているわけではありませんので、お受けできるところはお受けしていきたいと考えています。エリアについては、ホームページをご覧になると地域密着の事務所に見えるかもしれませんが、freeeをメインにしていますので全国どこでも対応できます。実際、今のお客様は名古屋の方が中心とはいえ、熱田区にいらっしゃるのはお一人だけです。場所そのものには、あまりこだわっていません。
両親を安心させたかった——高校卒業後、国税の道へ

ここからはご経歴を伺わせてください。国税に長くいらっしゃいましたが、そもそもその道に進まれたきっかけは何だったのでしょうか。

小久保:
きっかけと言われると少し照れくさいのですが、学生時代はテスト勉強もろくにせず遊んでばかりいるような真面目からは程遠い人間でした。両親にもいつも心配をかけていたことから、今後は親を安心させたいという気持ちで、安定している公務員を目指すことにしました。そんな中で合格したのが、国税の職場です。正直、就職するまでは国税局がどんな職場でどんなことをしているのか、よくわかっていませんでした。(笑)どちらかというと、これで両親を安心させられるなという気持ちの方が大きかったです。

特別調査官というお仕事について、恥ずかしながら私もあまり把握できていません。どのような業務で、どのような道を歩まれてきたのでしょうか。

小久保:
特別調査部門というのは、通常の調査よりも重要度・専門性・困難性の高い納税者を対象として、税務調査を企画・実施し、適正な課税を実現することを目的に税務調査を実施する部門です。ただし、そこに15年いたわけではありません。私の場合は、法人課税系統の一般部門から特別調査部門を経て、国税局の調査部という道を歩んできました。
手に職を持たなければ——コロナ禍の勉強、税理士法人での2年、そして30代最後の独立

安定した職を離れることを考え始めたとき、何が背中を押したのでしょうか。

小久保:
辞めることを考え始めたときに、我が家で長男が誕生しました。そのため、もし今の職場を去るとしても、妻と子供を食べさせていくためには、自分の手に職を持っておかなければいけないと思いました。税理士を目指したのもそれがきっかけです。もともと国税の職場にいますから、税理士という職業は近いところにありましたし、税理士が価値のある仕事であるとも感じていました。その後、コロナ禍等で時間ができたことで、自分で勉強を進めて合格することができました。合格した当時は調査部にいて、合格後も数年間在籍しいろいろな経験をさせて頂きましたが、自分自身の力を試してみたいという思いが強くなり退職を決めました。

いきなり独立ではなく、税理士法人を挟まれています。2年で独立というのは、タイミングを決めていらっしゃったのでしょうか。

小久保:
国税を辞めたあと、主に法人を扱う税理士法人に2年と少し勤め、そこからそのまま独立しました。時期については、もともと決めていたわけではありません。ただ、もうすぐ40歳になるということもあって、30代のうちに独立しようと自分のなかで思うようになりました。ちょうど子どもが小学生に上がる頃でもありましたので、いろいろな意味で区切りが良かったのだと思います。
意見が食い違うとき、間に入って整理する——調査官の目線を知るということ

独立された今、どういった強みで事務所をやっていきたいとお考えですか。

小久保:
税務調査をずっとやってきましたので、現場の目は分かっています。その視点で何ができるかというところが、私の強みだと思っています。実際に「とりあえず調査をお願いしたい」というご相談をきっかけに、そのまま顧問としてお付き合いさせていただくこともあります。税務調査を受けると社長側はやはり不安になるものですが、私が立会いさせて頂いた社長からは「先生にお願いしてよかった」などのお言葉も頂いていますので、不安を解消できていると感じております。

調査官の目線が分かっているというのは、具体的にどの場面で効いてくるのでしょうか。

小久保:
調査の場面では、税務署と会社で互いの意見が合わない場面が出てきます。そのときに現場を知っていると、税務署と会社側で意見が何故違うのか、どうすれば互いに納得できる結論になるかを間に入って整理することができます。さらに、進め方が分かっているぶん調査そのものもスムーズに終わりますし、出してほしい資料がどういったものか、どういった点を見ているのかも、ある程度は見当がつきます。ですから「今この書類を見ているけれど、どういう意味で見ているのだろう」と社長が不安に思われたときにも、「これはこういうところを見ているんですよ」とご説明ができます。社長からすれば「なぜこんなことを聞くのだろう」という不安は必ずありますので、そこで安心していただけるのではないかと思います。
決算のときだけ会う関係にしない——過去を見る税理士と、未来を見る経営者

日頃の顧問業務ではどのようなスタンスでいらっしゃいますか。

小久保:
経営者の方と、できるだけ同じ目線に立って会社のことを考えることを大切にしています。そのためにも、定期的に面談の機会を設けて、会社の状況や今後やりたいことについて、しっかりと意思疎通を図るようにしています。

税理士はどうしても、過去の数字を見て「昨年はこうでした」「税金はこれくらいです」と説明する仕事になりがちです。ただ、経営者の方が考えているのは、これから会社をどうしていくかということですよね。

だからこそ、現在の数字だけを見るのではなく、「これから何をしたいのか」「どんな会社にしていきたいのか」というところまでお話を伺い、そのうえで税務や会計の面から何ができるのかを一緒に考えていきたいと思っています。

そのためには、決算のときだけお会いするのではなく、普段から話をすることが重要だと考えています。経営者の方が考えていることを理解していれば、数字の変化についても、単に「利益が増えました、減りました」という話ではなく、その背景まで踏まえてお話しできます。

最終的には、「税金のことを相談する相手」というだけではなく、会社のことを気軽に相談できる存在になれればと思っています。
AIで整理し、自分の経験を足す——一人で続ける発信

お客様はどのように増やしていこうとお考えですか。ブログもかなりの頻度で更新されていますね。

小久保:
今は、実際に人とお会いすることを大切にしながら、ホームページからもお問い合わせをいただけるように、発信にも力を入れています。最近では、ホームページを見たという方からお問い合わせをいただく機会も少しずつ増えてきました。

ブログの記事作成にはAIも活用しています。ただ、AIに記事を書いてもらっているというよりは、自分の中にある知識や経験をAIとのやり取りの中で整理して、文章として形にしていくという使い方です。

特に税務調査の記事などは、一般的な情報だけでなく、実際に国税の現場で仕事をしてきたからこそ分かることがあります。そういった経験や、自分自身が「ここは伝えたほうがいい」と思う部分については、自分で内容を考えて加えています。

AIは文章を整理したり、別の視点を出してくれたりするので、そういう意味では非常に便利です。ただ、最終的に何を書くのか、どこを伝えたいのかという部分は、自分自身で考えることを大切にしています。

せっかく自分がこれまで経験してきたことを発信するのであれば、単にネット上にある情報をまとめるだけではなく、自分だからこそ書ける内容にしたいと思っています。今は特に税務調査に関する記事を増やしていますが、こうした記事が少しずつ検索やAIを通じて必要としている方に届くようになってきているのは、面白いなと感じています。
専門性を持つ人が集まる事務所へ——経営者に笑顔になってもらうために

これから、どのくらいのペースで、どのような事務所にしていきたいとお考えですか。

小久保:
まずはゼロからのスタートですので、一歩ずつお客様を増やしていきたいと考えています。その先には、社員を雇って、いろいろな専門性を持った人が集まる税理士事務所にしていきたいですね。

税務や会計はもちろんですが、例えば融資や資金繰り、経営支援、ITなど、それぞれの分野に強い人がいて、一人の税理士だけですべてを抱えるのではなく、チームとしてお客様を支えられるような事務所が理想です。

私自身も国税の現場で仕事をしてきた経験がありますが、自分一人ですべての分野に精通することには限界があります。だからこそ、それぞれの分野で経験や専門性を持った人が集まることで、一人ではできないことができるようになると思っています。

そして、事務所の規模を大きくすること自体が目的ではありません。専門性の高い人たちが集まることで、経営者の方が困ったときに「ここに相談すれば何とかなる」と思ってもらえるような存在になりたいです。

最終的には、税金の計算や申告をするだけではなく、経営者の方が安心して経営に集中できる環境をつくり、「この事務所に相談してよかった」と笑顔になってもらえるような事務所にしていきたいと考えています。

最後に、事務所として伝えたいことをお聞かせください。

小久保:
一番伝えたいのは、経営者の方に笑顔になってもらいたい、ということです。

会社を経営していると、税金のことだけでなく、資金繰りや従業員のこと、これからの事業のことなど、いろいろな悩みが出てくると思います。そうしたときに、一人で抱え込むのではなく、「まずこの人に相談してみよう」と思ってもらえるような税理士でありたいと思っています。

会社を守ることはもちろん大切ですが、守るだけではなく、そこから会社を大きくしていく。その結果として、社員の方々の生活も良くなり、経営者ご自身も豊かになっていく。私は、それが会社経営の一つの理想だと思っています。

税理士という仕事は、過去の数字を確認して、税金を計算するだけではありません。これから会社をどうしていくのかを経営者の方と一緒に考えて、そのために税務や会計の面から何ができるのかを考えることも、税理士の大切な役割だと思っています。

だからこそ、私は経営者の方とできるだけ近い距離で仕事をしたいと考えています。会社が成長していく過程を一緒に見ながら、困ったときには支え、うまくいったときには一緒に喜べる。そんな関係を築いていきたいですね。

最終的に、「税理士に頼んでよかった」だけではなく、「この税理士と一緒にやってきてよかった」と思ってもらえることが、私にとって一番うれしいことです。

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取材後記

「調査する側」に15年いた税理士は、決して多くありません。それも小久保さんの場合、税務署の一般部門から、調査が難しい相手を担当する特別調査部門、そして国税局の調査部へと、調査の最前線を歩き続けてこられました。それでいて語り口はどこまでも淡々としていて、ご自身の経歴を誇るような素振りがまったくないのが印象的でした。

お話を伺っていて感じたのは、税務調査への強さだけが、この事務所の特徴ではないということです。定期的な面談を通じて経営者と意思疎通を図り、会社の現状だけでなく、「これから何をしたいのか」「どんな会社にしていきたいのか」まで共有する。過去の数字を確認するだけではなく、その数字をこれからの経営にどう生かすかを一緒に考える。小久保さんが目指しているのは、そうした距離感で経営者に寄り添う税理士なのだと感じました。

そして、その先に描いているのが、さまざまな専門性を持った人が集まり、チームとして経営者を支えられる事務所です。税務や会計だけではなく、それぞれの分野の知識や経験を持つ人が集まることで、一人ではできないことができるようになる。開業されたばかりで、現在は一人でのスタートですが、話を聞いていると、目の前のお客様を大切にしながら、その先の事務所の姿もしっかりと見据えていることが伝わってきました。

「経営者の方に笑顔になってもらいたい」という言葉は、今回の取材を通じて何度も出てきたお話の集約なのかもしれません。税務調査の不安を和らげることも、会社の数字を早く届けることも、経営者の相談相手になることも、その先にあるのは、会社を守り、成長させ、経営者自身の人生も豊かにすること。そのために税理士として何ができるのかを考え続ける姿勢に、小久保さんの静かな熱を感じた取材でした。

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