北海道

残業なし、繁忙期なし、属人化なしを目指して ──3人のミニマムチームが札幌で作る”働きたくなる”税理士事務所

残業なし、繁忙期なし、属人化なしを目指して ──3人のミニマムチームが札幌で作る”働きたくなる”税理士事務所

岩瀬 俊太(いわせ しゅんた)|税理士法人notte 代表社員

同志社大学経済学部卒業。中小規模の会計事務所や大手税理士法人での勤務を経て、2023年10月に個人事務所を開業。2025年1月に税理士法人notteを設立。北海道札幌市を拠点に、マネーフォワードクラウド特化とチーム対応制を武器に、スタートアップを中心とした中小法人を支援する。

「全国どこでも働ける」──税理士を志した理由

インタビュアー: 岩瀬さんが税理士を目指したきっかけを教えてください。

岩瀬様:
正直に言うと、「どうしても税理士になりたかった」という気持ちはなかったんです(笑)。大学3回生のとき、就職活動をするか資格を取るかの分岐点がありました。北海道出身なんですが、京都の暑さが本当に苦手でして。「この環境でずっと働くのは大変だな」というのが出発点でした。

そこに、もう一つの考えが重なりました。当時はまだ終身雇用が主流だった時代で、「ずっと同じ会社でこき使われ続けるのを耐えられるのかな」というのが正直なところでした。いざとなれば自分で会社を作れる選択肢を持っておきたかったんです。

そういう観点で「資格を持てば全国どこでも働ける」という発想になりました。司法書士、公認会計士、税理士を比べたとき、公認会計士は短期集中で受からなかったときに耐えられないと思いまして。税理士なら働きながら受けられる。北海道に帰れるし、将来違うエリアへも動ける。

あとは──こんなことを言うとあれなんですが(笑)──収入が良さそうだという期待もありました。税理士の仕事が何かも全然わかっていない状態での選択だったんですが。
働きながらの10年間

インタビュアー: noteで「資格取得に10年かかった」と書かれていました。どんな10年でしたか?

岩瀬様:
大学3回生から始めて、4回生で初受験したんですが、試験を完全に舐めていましたね。合格レベルに全然達せずでした。その後1年間勉強して1科目受かって就職したんですが、社会人の最初の数年はやっぱり余裕がなくて、最初の事務所に3年ほど勤めたんですがほとんど勉強できず、とりあえず試験だけ受け続けていた状態でした。

それで「1年だけ勉強に集中する年を作ろう」と決めて、その1年で法人税と消費税の2科目が受かったんです。「頑張ればいけるかもしれない」と初めて思えた瞬間でした。法人税に受かったことで自信がついて、次のステップへ。

インタビュアー: その後は大手税理士法人へ。

岩瀬様:
資産税をやりたくて、東京に本社がある大手税理士法人の札幌事務所に入りました。3年ほどいたんですが、当時はかなりの激務でして。大きな声では言えないんですが、定時が夜の10時ぐらいで、日付を跨ぐことも多々ありました。

資産税の経験値はすごく積めたんですが、勉強はほぼできませんでした。資産税だけで独立するのも難しいと思って、より広い業務を経験できる環境を求めて中規模の法人に移りました。そこがまた素晴らしい事務所でした。「勉強に2年集中したい」という私の意向を汲んでくれて、仕事量まで調整してもらえました。1年1科目ずつ受かって、10年目に合格することができました。
「この仕事、無駄が多いんじゃないか」──独立を決めた理由

インタビュアー: 独立しようと思ったのはどういう経緯でしたか?

岩瀬様:
最後にいた中規模の法人がとても良い環境で、「ここで社員税理士として続けてもいいかな」と思っていたくらいでした。実際そういうお話もいただいていたんですが、やはりまずは1回チャレンジしてみたい。失敗しても取り返せると思いまして。

インタビュアー: 独立への気持ちはずっとあったんですか?

岩瀬様:
それがはっきりとはなかったんです。でも仕事をしていく中で「この仕事、無駄が多いんじゃないか?」など、自分の考えで仕事をしてみたい気持ちが積み重なっていきました。また、税理士事務所はどうしても確定申告期が繁忙期になってしまうのですが、疲弊した状態でお客さんに良いサービスが提供できているのかな、と感じることもありました。

もっと効率化できるはずなのに動かせない。自分だったらこうする、をやってみたかったんです。

もう一つ、業界全体への危機感もありました。試験が難しくてコスパが悪いと言われており、人材不足で悩む事務所も多いです。特に先述の通り繁忙期に疲弊する環境では休みも取りづらく、人気がなくなっていく一方です。資格がなくても「この業界で働いてみたい」と思えるような環境を作れたらいい、というのも根底にありました。
3人の物語──縁が結んだチーム

インタビュアー: 税理士法人notteは岩瀬さんを含む3名体制ですよね。皆さんどういったご縁だったんですか?

岩瀬様:
3人とも、最後の中規模法人での同僚です。山田は僕の2歳下で、大原学園で7年ほど講師をやっていた人物です。吉田とは、大原で資格勉強していた頃に向こうから話しかけてきたんです。軽いノリで(笑)。同い年だとわかって仲良くなって、それからずっと付き合いが続いています。

インタビュアー: 3人で独立という話はどこから?

岩瀬様:
実は元々、前の事務所の代表が「子会社を作ってお前ら4人でやれ」と提案してくれたんです。4人で動こうとしていたんですが、吉田が先に退職することになって、その計画がなくなってしまいました。もう1人は目指す方向が少し異なったので、結果的に吉田と山田と私の3人でやっていこうということになりました。

3人とも、同じ思いを持っていたんです。「もっとやれることがあるんじゃないか」という。

インタビュアー: 2023年10月に開業されて。山田さんはいつから合流を?

岩瀬様:
吉田と2人でスタートして、山田は前の事務所での退職時期の関係から2025年1月から合流してくれました。そのタイミングで法人を設立した形です。

その最初の1年ちょっと、2人でやっていた頃は正直しんどかったですね。目の前の業務をこなすことで精一杯で、内部の仕組みを整える余裕がなかった。山田が入ってきてから、ようやく業務の効率化に力を注げるようになりました。山田は仕事を回すのが上手くて、チームとしての型がぐっと整った感じがします。

吉田はシステム周りがとにかく強くて、知識とセンスが抜群です。3人それぞれが違う強みを持っているのが、notteの土台になっています
「チーム対応制」と「MFクラウド一本」──武器を絞った理由

インタビュアー: 税理士法人notteの特徴として、チーム対応制とマネーフォワード特化を掲げていますね。最初から決めていたんですか?

岩瀬様:
最初から決めていました。チーム対応制は、属人化を絶対に避けたいという考えから来ています。「このお客さんは自分しか知らない」という状況をなくす。自分が休んでも誰かが対応できる。「海外旅行行ってくるから頼む」と言えるような働きやすい事務所にしたいんです。

これは採用にも直結していて、そういう働き方ができる事務所の方が入りたいと思ってもらえるはずです。独立した動機──「繁忙期に疲弊して良いサービスが提供できない」という問題意識──と、そのまま繋がっています。

インタビュアー: マネーフォワードを選んだ理由は?

岩瀬様:
freeeとも比較しました。でも専門家として使ってみると、設計が他の会計ソフトと大きく違うんです。freeeはどちらかというと、税理士を付けていない事業者向けに設計されているように感じます。専門家として自然に使えるのはマネーフォワードでした。

より根本的な話をすると、1つに絞ることでそのシステムのプロになれる、という発想です。いろんなソフトを使っていると知識が中途半端になる。1つに集中すれば、より良い使い方を提案できる。

税法の知識で大手事務所の先生方と勝負しても敵わない。だからこそ、「チーム体制 × MFクラウド」という領域を武器にして戦うと決めました。間口は狭くなるかもしれないけれど、その分この領域では本物になれると思っています。今はfreeeのお客さんが来たら「マネーフォワードに移行できるなら、ぜひ」というスタンスでお話させていただいています。

インタビュアー: 現在のお客様の層を教えてください。

岩瀬様:
法人で50社弱です。20〜30代の若い経営者が中心で、設立間もないスタートアップが多いです。業種はエンジニア系(SE)の方が多いですね。個人の確定申告は基本的に受けていないんです。

インタビュアー: 個人を受けないのは、繁忙期を作らないため?

岩瀬様:
そうです。繁忙期に疲弊したら良いサービスが提供できない──そこへの問題意識から独立したので、自分たちで繁忙期を作る必要はないと。今は残業もほぼなく、週末もちゃんと休めています。法人としての貴重な売上を引き換えにしているので、代表という立場としては少し悩ましいですが(笑)。

「法人税×MFクラウド」に絞ることで、新しいスタッフのキャッチアップもしやすくなる。知識を広げすぎなくても仕事ができる環境は、採用にも教育にも効いてきます。複雑な知識を持つ特定の人間がいないと回らない、という状況を作らないことが大事だと考えています。
「去年は基盤づくり、今年はブランディングと採用」

インタビュアー: この2年を振り返って、手応えを感じた瞬間を教えてください。

岩瀬様:
山田が合流した2025年が、notteにとって基盤を作った1年でした。新規のお客さんが大きく増えたわけではないんですが、「このお客さんにはこういうサービス」という型が固まりました。去年1年間は「いま新規を受け入れて大丈夫かな」という状況だったのが、今は「まだまだ受けていける」という感覚に変わっています

インタビュアー: 今年はどこに力を入れますか?

岩瀬様:
去年が「基盤づくり」なら、今年はブランディングと採用です。それもあってnoteを始めたんですよ。発信を積み重ねて「notteってこういう事務所なんだ」という認知をつくっていきたいです。

採用は、未経験でも全然歓迎しています。商業高校卒や専門学校卒の方でも。むしろこの業界に染まりすぎていない方の方が、うちのやり方に合うかもしれないと思っています。資格取得を目指してくれたら嬉しいですが、必須要件にはしておらず、それよりも長く続けてくれる方を求めています。今年中に1人定着できれば、というのが目標です。

インタビュアー: 事務所の移転も計画中と伺いました。

岩瀬様:
はい。今はシェアオフィスなんですが、本格的なオフィスに移ろうと思っています。札幌駅・大通付近で4〜5名分の部屋を探すと、月30万円ほど必要でした。

予算的に厳しかったので、どうしたかというと──3人それぞれが月3万円ずつ給与を下げることにしました。本気で。しかも、みんな「心地よく」下げたんです(笑)。誰も嫌々ではなかった。

インタビュアー: 自分たちの給料を削ってですか!

岩瀬様:
良いエリアで働いている方が、お客さんへの印象にも求人にも好影響が出るはずだ、という判断です。仲間内でやっているから言えることではあります。でも、これぐらいの本気でやらないとブランドって作れないのかなと思っています。もちろん入社いただく方にはしっかり給料を払いますのでご安心ください!(笑)
「札幌のnotteさんっていいよね」と言われる事務所へ

インタビュアー: 5年後、どんな事務所になっていたいですか?

岩瀬様:
20名くらいの規模をイメージしています。前にいた事務所がちょうど20名くらいだったので、リアルに想像できるんですよね。「あの規模感ならこう動く」というのが肌感覚でわかる。

目指しているのは、「札幌のnotteさんっていいよね」という認知が取れている状態です。全国展開よりも、札幌の地に根ざして選ばれ続ける事務所でいたい。

スタッフへの処遇も大切にしたいと思っています。北海道の会計業界は、資格がないと賃金が低い傾向がある。でも「この業界だから給料が安い」は変えていきたいです。資格の有無にかかわらずちゃんと給料を出して、しっかり昇給もして。「この事務所に勤め続けたい」と思ってもらえる仕組みを作ることが、採用にも、業界全体の底上げにも繋がると思っています。

インタビュアー: 最後に、税理士を探している経営者の方へメッセージをお願いします。

岩瀬様:
会社を設立したばかり、または設立を検討している方には、ぜひ相談してほしいです。創業融資(日本政策金融公庫)のサポートも重ねてきていますし、バックオフィスの立ち上げを丸ごとお手伝いするのが今のnotteの得意なところだと思っています。

志向性として、前向きな方に来ていただきたいですね。会社を大きくしたいと思っている方は、話していてこちらも勉強になるんですよ。アイデアがすごくて刺激をもらえる。スタートアップとして本気で事業を伸ばしていきたい方には、一番近くでサポートできると思っています。

noteで情報発信していますので、まずそちらで事務所の雰囲気を感じていただいてから、気軽にお問い合わせいただければと思います。

取材後記

「残業なし、繁忙期なし、属人化なし」──岩瀬さんが掲げるこの方針は、業界の常識に対する静かな反逆です。資格取得に10年、開業後の苦しい2人体制の日々を経て、ようやく3人のチームが揃った今、notteは「基盤づくり」から「ブランディングと採用」のフェーズへと動き出しています。

印象的だったのは、3人が月3万円ずつ給与を下げてオフィス移転費を捻出するというエピソード。「心地よく下げた」という言葉に、このチームの結束の強さが表れていました。チーム対応制とMFクラウド一本という「武器を絞る」戦略は、採用・教育・サービス品質のすべてに一貫して効いている。札幌でスタートアップを始める経営者にとって、頼れるパートナーになる事務所だと感じました。

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