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記帳も申告もAI利用が進む時代、税理士の価値はどこにある? – セブンセンス税理士法人 大野修平が語る、士業の生存戦略

記帳も申告もAI利用が進む時代、税理士の価値はどこにある? – セブンセンス税理士法人 大野修平が語る、士業の生存戦略

大野修平(おおの しゅうへい)|公認会計士・税理士 セブンセンス税理士法人 ディレクター

東京商船大学(現・東京海洋大学)卒業後、フリーターを経て飲食店の立ち上げに携わる中で経営の面白さに目覚め、公認会計士を志す。30歳で公認会計士試験に合格し、有限責任監査法人トーマツ金融部門で銀行・保険・証券の監査を約5年担当。その後独立し、現在はセブンセンス税理士法人ディレクターとしてスタートアップの資金調達支援を専門とする。エクイティ・デッド双方のファイナンスに精通し、東京都アクセラレーションプログラム「NEXs Tokyo」メンターとしてスタートアップの育成にも携わる。さらに、会計事務所700事務所超が参加するAI研究会を運営し、AI時代の士業のあり方を最前線で模索している。

全国11拠点、250名──「超雑食」で「懐の深い」組織

インタビュアー: セブンセンス様は全国11拠点にシンガポールまで展開されていますが、なぜここまで拠点を広げてきたのでしょうか。

大野様:
正直に言うと、戦略的に拡大してきたわけではないんです。大きくは東京と静岡が主要拠点で、もともと別々の法人だったものをブランド統合したんですね。それぞれ100名ぐらいの規模で、全国で約250名の仲間と働いています。また、国外はシンガポールに拠点を置いて富裕層向けの支援もしています。

拠点が広がった理由は、ひとつひとつが「ご縁」なんです。M&Aで引き継いだケースもあれば、求められるままに広げていったケースもあります。

セブンセンス自体、外から見るとすごく戦略的に見られがちなんですが、実際はそうでもない。「今期は売上いくら、拠点をどこに出す、人数をどこまで増やす」みたいな目標は一切置いていません。目の前のお客さんに満足してもらって、その循環の中で大きくなってきたという感じですね。

メンバーも「ここがすごいからセブンセンスに入りました!」というよりは、入ってみたら楽しい、他の税理士法人ではできないことができる──そういう理由で長く残っている人が多い印象です。

インタビュアー: 他の事務所との一番の違いはどこにあると思いますか。

大野様:
今の税理士業界って、各事務所がすごくお客さんを選んでいると思うんです。業種特化、IT活用度、Zoom対応必須──それぞれ色を出している。それはそれでいいと思います。

でもセブンセンスは「超雑食」なんですよ。こだわりがほとんどない。ご縁があってお繋ぎいただいたら話を聞いて、業務の内容も料金体系もオーダーメイドで組み立てて提案する。「月に1回の面談は不要です」というお客さんなら面談回数を減らすし、逆にフルサポートが必要な方──経営計画支援やBPOまで──にはしっかり入り込む。業種も関与の仕方も成長ステージも問いません。2代目3代目の事業承継からスタートアップまで、何でもやります

なぜそのスタンスになったかというと、所内にいろんなタレントがいて、それぞれの得意分野を活かして働こうという考え方があるからです。入ってくる方も、例えば「相続事業承継だけやりたい!」というよりは、税務もMAS(経営助言サービス)もいろんな規模も経験したいという人が多い。自分のやりたいことがやれる環境がある。結果として、懐の深い組織ができているんだと思います。
東小金井のボロアパートから公認会計士へ──パチンコとバンドと「非常識合格法」

インタビュアー: 大野さんのご自身のお話も伺いたいのですが、大学卒業後はフリーランスで飲食店の立ち上げを手伝っていたと伺いました。そこから公認会計士を目指そうと思ったきっかけは何だったのですか。

大野様:
いやあ、話すと長いんですけど(笑)。元々は岡山県の出身で、大学受験でこけちゃって、希望していた大学に行けなさそうだったんです。岡山からすると大阪が一番身近な大きい都市なんですが、とはいえ試験もこけたし、いっそもっと大きい東京に出てみようと思い立ったんです。実家がそこまで裕福ではなかったので、公立校で探した結果、東京商船大学──今の海洋大学に進学しました。

でも、船にすごく興味があったわけでもなかったんですよ。なので勉強もせずにいたら4年間が過ぎて、就活にも気づかず、遊んでいたらフリーターになってしまった。パチンコとバンドと女の子──そんな日々でしたね(笑)。

フリーター時代は東小金井のボロアパートに住んでいて、昼はCD屋さん、夜はパチンコ屋さんで働いていました。それがある日、そのパチンコ屋が飲食部門を立ち上げるとなったんです。「お前大学まで出てフリーターじゃもったいないだろ。やってみろ」と、飲食の立ち上げを任せてもらった。そこで正社員になりました。

いざやってみると、飲食って面白いんですよ。厨房は製造業だし、集客はマーケティングだし、シフト管理は労務だし、メニュー立案もある。ひとつの店舗に経営のすべてが詰まっている。やっているうちに「経営ってなんとなく面白いな」と思うようになって、経営関係の本を読み漁りました。

経営者もいいけど、自分は飽きっぽい。だったら、いろんな経営を見られたらいいなと思ったんです。それは経営コンサルだなと。

そこで水道橋の資格の専門学校に行って「経営コンサルになりたい」と相談したら、「資格なしでもなれますよ」と言われて。え?となりました(笑)。

そんなとき、帰り道にふと目に入ったのが「非常識合格法!」って書かれたのぼり。クレアールという専門学校で、そこに飛び込んで「経営コンサルになりたいんですけど」と言ったら、「だったら公認会計士がいいですよ」と。「1年で受かる人もいますよ」とも言われた。さらに「簿記も一緒にやった方がいいですよ」という営業も受けて──そのまま申し込んだんです。完全にのぼりと営業にやられましたね(笑)。

飲食の仕事をしながら勉強を始めましたが、半年で「働きながらは無理だ」と飲食をやめて勉強に専念しました。そこから2年半の勉強を経て、30歳のときに公認会計士試験に合格。当時は売り手市場だったので、BIG4も好きなところを選べる状態でした。
リーマン・ショック、大量リストラ──「とにかく辞めたかった」監査法人時代

インタビュアー: 監査法人トーマツで金融部門の監査を5年経験された後、独立を選ばれています。怖さはなかったですか。

大野様:
元々は経営コンサルになりたいと思って入った道ですから、独立は割と自然な流れでした。

2008年に入社したんですが、まさにその年にリーマン・ショックが起きた。当時は監査法人もピンと来ていなかったんですよ。でも次の年からモロに影響が出てきて、2011年にビッグ4はどこも数百人規模の大量リストラをしています。

魅力的な早期退職プランが出て、私もこの機に辞めたいと手を挙げたら、なぜか引き止められて辞められなかった。

そうこうしている内に人もどんどん減ったので、仕事はとにかく忙しい。1年経って、育ててもらった法人にもある程度恩返しできただろうと。

そこで元々抱いていた「経営コンサルをやりたい」という思いを思い出したんです。監査よりも経営戦略の方にずっと興味があった。いいタイミングだと思って辞めました。
「半分ハッタリ」から始まった資金調達支援──スタートアップの世界へ

インタビュアー: 独立後、「税務・会計」ではなく「資金調達支援」を武器にしようと決めた理由は。

大野様:
税理士登録もしたんですが、税務は実務経験がなかったんですよ。全くやったことがなくて、かつ8万人も先輩税理士がいる世界で、ゼロから税務で戦っても勝てるわけがない。

じゃあ何ができるかと考えたとき、監査法人の金融部門にいた経験があった。銀行がどういうロジックでお金を貸すか、──そういう金融機関側の視点を持っている。だったら、「銀行からお金を借りるのは大変だから、資金調達を専門にやります」と打ち出しました。

正直に言うと、半分ハッタリです(笑)。監査法人では資金調達「後」の監査がメインですから、自分で実際に資金を調達した経験はそこまでなかった。でも「得意です」と言ってやっていたら、お客さんがついてきてくれた。勉強しながら業務をこなす日々でしたね。2013年に独立したので、もう10年以上前のことですが、今でも得意分野として残っています。

インタビュアー: スタートアップ支援に特に力を入れるようになった経緯は。

大野様:
トーマツにいた頃からスタートアップが好きだったんです。ただ、当時はスタートアップ界隈も整備されていなくて。最初の資金調達で株式の50%以上を投資家に渡してしまって、創業者なのにもうどうにもならなくなっているケースを何件も見ました。

今でもエクイティとデッドの両方のファイナンスを見られる人間というのは、実はそんなに多くないんです。銀行融資の専門家はいても、エクイティ(株式資金調達)まで見られる税理士はほとんどいない。逆にVC出身のアドバイザーはエクイティに強くても、融資についての詳しい知識などはない。その両方をカバーできるのが自分の強みになりました

資金調達って経営そのものと深く関わるので、いろんなビジネスを見られるんですよ。どこでマネタイズするか、どのタイミングで調達するか、資本構成をどう設計するか。経営の勘所や、経営者が悩むポイントをたくさん見てきました。そうやってスタートアップ支援を続ける中で、業界の中でも「大野さんはスタートアップの人だよね」というポジションが確立されていったんです。
SaaSの限界、クラウド会計の転換期──スタートアップから見たAIの衝撃

インタビュアー: AIについて積極的に発信されていますが、士業の世界にどんな影響が来ると感じていますか。

大野様:
スタートアップ支援をずっとやってきた中で、2024年・2025年はスタートアップに大きな変化を突きつけた時期でした。AIによってビジネスモデル自体を変えざるを得ないスタートアップが続出した。そしてその波が、2026年には士業にも本格的に押し寄せると思っています。

特にある程度巨大化したSaaS企業は現時点でもLLM(大規模言語モデル)を使ったプロダクトになりきれていない。巨大化したからこそ方向転換がしづらいんだと思います。

税理士事務所も一緒だと思います。250人いる税理士法人を生成AIに合わせた業務の形にチューニングしていくのはすごく大変で、今まさにそこに取り組んでいるところです
700事務所が集まるAI研究会──「俺たちの仕事はAIじゃ無理」が一番危ない

インタビュアー: セブンセンスとしてはAIにどう対応しているのですか。

大野様:
セブンセンスでは、会計事務所向けの「AI研究会」という会員組織を立ち上げました。まだ立ち上げて1年ぐらいの組織なんですが、すでに700事務所が参加しています。

私を含めて所内にAI専任が4名いて、毎日AIの最新情報を収集して研究しています。世の中のAIのことをそのまま伝えても会計事務所には響かないので、「会計事務所の業務にどう活かせるか」に噛み砕いて発信する必要がある。情報収集とどう業務に活かすかを研究して、それをAI研究会に出したり、所内に還元したり。最近はかなりいい感じに回り始めていて、他の事務所へのコンサルティングにも活用しています。

インタビュアー: 具体的に、AIは士業の仕事をどこまで代替すると考えていますか。

大野様:
はっきり言います。記帳して決算して申告する──この「士業の最大公約数」的な業務は、2026年中にAIで完璧にできるようになると思っています。そして2027年には、一般ユーザーが使い始めて「税理士にお願いしなくてもできる」という世界が来る。実際、今もそうなりつつあります。

そういった時代の流れが確実な中で、税理士側のスタンスとして一番問題なのは、「俺たちの仕事ってAIじゃまだ無理だよね?」という考え方です。これが一番危ないと思っています。じゃあどうやって飯を食っていくの?──結局のところ、それは「コンサル」になると思っています。

しかも、難しいコンサルもAIにはできるんです。じゃあAIにできないコンサルとは何か。そこを突き詰めるのが、これからの士業の生命線です。
「AIは風邪を引いたことがない」──知識の先にある、人間にしかできない伴走

インタビュアー: AIにできないコンサルとは、具体的にどういうことでしょうか。

大野様:
例を出しますね。飲食店の社長が困っているとします。AIに「ピザ屋としての経営戦略を考えて」と聞くと、10個のアイデアを出してくれる。それを全部優先順位までつけてくれる。すごいですよね。

でも、人間がそれらすべてを実行できるわけではないんですよ。人間にしか汲み取れない部分がある。人間は弱いので、分かっていても実行できない。

成功というのは実行の積み重ねなんです。「来月先生が来るから、ここまで進捗を出しておかないとな」──そういう人間的なプレッシャーや伴走が、実行を後押しする。それはAIにはできない。

インタビュアー: メンターの現場でも変化を感じますか。

大野様:
スタートアップのメンターもたくさんやっていますが、2023年・2024年ぐらいまではたくさん質問を受けたんですよ。ピッチデックの作り方や事業戦略──そういう「知識」に関する質問です。

でもここ最近、全く聞かれなくなりました。なぜなら、AIが答えてくれるから。

じゃあ今何を求められているかというと、知識や経験を披露するのではなくて、気持ちへの共感なんです。苦しいときに寄り添ってくれる人がほしいんです。

AIもいっぱい失敗事例を学習しています。でも、AIに「しんどいよね」と言われても、どこか白々しい。AIは結局、しんどい思いをしたことが無いんですよ。風邪すら引いたことがないんですよ。知識として「しんどい」という状態は知っていても、実際に経験したことがない。

これは経営コンサルタントも一緒です。対処法は出してくれるけど、本当にしんどいときに気持ちに寄り添ってくれるかどうか。そういうのは、いっぱい失敗してきた人間に話したいじゃないですか。

インタビュアー: 税理士業界にとって、それはどういう意味を持ちますか。

大野様:
税理士の仕事って、税法や法令に基づいた「正解探し」に集中しがちなんです。それが仕事の本質でもある。でも正解を探す力だけでは、「正解のない世界」で活動している経営者には寄り添えない。

経営者は毎日、正解のない判断を迫られている。そこに「答え」を求めても出てこない。でも、自分も正解のない世界に飛び込んだことがある人間になら、話を聞いてほしいと思える。

だから私は、税理士業という守られた領域から少し飛び出してみることが大事だと思っています。「人間力」を磨くこと。正解のない世界に自分も飛び込んでみること。そうすることで初めて、幅広いお客さんに本当の意味で寄り添える税理士になれるんだと思います。
「懐の深さ」がセブンセンスにいる理由──チャレンジing × チェンジing

インタビュアー: 大野さんがセブンセンスで働き続けている理由を聞かせてください。

大野様:
悪く言えば雑食で、よく言えば懐が深い。それがセブンセンスです。

ぶっちゃけ言うと、私は税務はほとんどやっていないんですよ。普通の税理士法人だったら許されないと思います。でもセブンセンスでは、事業につながる活動であれば信じて任せてもらえる。グループの理念が「チャレンジing × チェンジing」──変化し続けることなんです。変化できる人が一番強いという考え方

この理念には共感していますし、税務ができないけど税理士法人にいられるというのもありがたい。AI時代になって、自分の存在価値が上がってきているなと感じています。

もちろん、日々税務のことをしっかりやってくれているメンバーには心からリスペクトしています。彼らが税務顧問の事業基盤をしっかり構築してくれているからこそ、自分が自由にスタートアップ支援やAI研究に動ける。お互いがそれぞれの役割を持ち寄って、協力し合って組織が成り立っている。持ちつ持たれつなんです。

インタビュアー: 最後に、セブンセンスにどんな方に来てほしいですか。

大野様:
あまり敷居を高く感じないでほしいですね。個人のお客さんもたくさんいますし、これから伸びていきたい会社もある。

スタートアップって、成長していくと海外進出、M&A、IPO、内部統制と、次々に新しい経営課題が出てくるじゃないですか。本当はそれを全部ひとつの事務所に頼めたらいいけど、全部に対応できるところは少ないと思っています。セブンセンスはそこに幅広く対応できます。社労士法人もグループにあるので、人事関連の課題もカバーできる。

だからこそ、創業段階から長い目でお付き合いできる方に来てほしい。経営のフェーズが変わるたびに事務所を変えるのではなく、一緒に成長していけるパートナーでありたいと思っています。

取材後記

フリーター、パチンコ屋、バンド、飲食店──公認会計士として最も「らしくない」キャリアを歩んできた大野修平さん。しかしトーマツ金融部門で銀行・保険・証券の監査を経験し、独立後は「半分ハッタリ」から始めた資金調達支援をスタートアップの第一線に育て上げています。その一見遠回りに見えるキャリアのすべてが、今の大野さんの武器になっています。

「AIは風邪を引いたことがない」──この言葉が強く印象に残りました。AIが知識を代替する時代に、700事務所が集まるAI研究会を率いる大野さんが辿り着いた答えは、意外にも「人間」でした。合理的な戦略を示すことではなく、実行を後押しし、苦しいときに隣にいること。それがAI時代に士業が磨くべき力だといいます。

セブンセンス税理士法人という250名の組織の中で、スタートアップ支援とAI研究という「異端」の領域を自由に動き回れるのは、「チャレンジing × チェンジing」を掲げるセブンセンスの懐の深さがあるからこそです。変化を恐れない人と、変化を受け入れる組織──その組み合わせが、AI時代の士業のひとつの答えを示しているように感じました。

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