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「50事務所に断られた決算も、うちなら余裕でできます」──二度の創業を経た税理士が、残業ゼロ・広告費ゼロで築いたオリジナルのワンストップ体制

「50事務所に断られた決算も、うちなら余裕でできます」──二度の創業を経た税理士が、残業ゼロ・広告費ゼロで築いたオリジナルのワンストップ体制

亀谷 尚輝:汐留税理士事務所 代表税理士

大手会計事務所での勤務を経て、2016年に税理士法人を共同代表として設立。その後、汐留パートナーズグループでの勤務、関連会社の代表取締役を経て、2022年に汐留税理士事務所を設立し、代表に就任。社労士・弁護士・行政書士など、100名超の総合士業ネットワーク「汐留グループ」の一員として、法人・個人・資産管理会社の支援にあたっている。

120名の士業ネットワークと、10名の少数精鋭

まず、事務所の全体像から伺えますか。

亀谷:
汐留グループとして士業が全て揃っていまして、グループ全体で言うと120名以上います。加えて業界最大手の辻・本郷税理士法人とも連携していまして、そちらに国税OBの税理士がいるので、社内でセカンドオピニオンが取れるんです。税務調査も一緒に対応してくれるので、そこは強いところですね。

税理士事務所単体では、スタッフは10名です。この規模でやっている以上、レスポンスの速さとAI活用は「マスト」にさせてもらっています。

あとは教育に重点を置いているので、会計・税務だけじゃなく、デフォルトで財務の部分までサポートできるようになっています。ここが一番の違いかもしれません。

お客様には、どんな層が多いんですか。

亀谷:
不動産や地主の方、漫画家、ITなど原価がかからない業種、あとは資産管理会社ですね。富裕層の方が多いです。ただ最近は、スタッフが増えてきたこともあって、教育業、広告代理店、ダンス、製造業、音楽関係と、業界も少しずつ広がってきました。「原価がかからない業種」という特徴は、少し薄れてきているかもしれません。

地域は全国対応です。海外赴任されている方のサポート実績もありまして、アメリカ、カナダ、メキシコ、ドバイあたりですね。距離はサービスに関係ありません。国際税務も積極的に受けていて、英語での文面のやり取りは問題なく対応できますし、オンラインの打ち合わせは通訳を立てれば大丈夫です。個人の確定申告も対応しています。
数字を「見える化」して、経営者を“効果がある決断”だけに集中させる

「財務までデフォルトで」というのは、具体的にどこまで踏み込まれるんでしょうか。

亀谷:
まずBSの指標を見ながら、「こういう状態なら健全ですよ、安全ですよ」ということが分かるようにします。そして、金融機関がいくらまで貸してくれるのか、金融機関目線でどう評価されるのか。ここまで踏み込みます。

PLに関しては、1人当たりの生産性、利益、1人当たりの売上、給料。それを並べていくと、「結局、何が原因なのか」が分かるんですよ。クライアントと話しながら試算表を出して、その後のシミュレーションまでしっかり具現化したものを提出させてもらって、そこからどんどん深掘りしていく、という流れですね。

大事なのは、社長ご自身が財務指標を理解して、金融機関から評価される状態になることなんです。だから「教育」と言っています。

シミュレーションを必ず出す、というのがこだわりなんですね。

亀谷:
そうですね。必ず具現化したものを提出します。ただ、数字はあくまで入口でしかないんです。最終的に行き着くのは、結局「人の悩み」なんですよ。「会社を成長させたい」というご相談にしても、その奥には必ず、経営者ご本人の悩みがある。何に不安を感じているのか、本当は何を解決したいのか。そこを見ないまま数字の話だけをしても、絶対に刺さらないんです。だから、お客様の悩みを徹底的に深掘りする。結局はそこに尽きます。

もちろん人間だけだと分からないので、そこはAIを使って深掘りして、それをお客様にプレゼンして、よりクリエイティブな提案をさせてもらっています。というのも、頑張れば成果が出た時代は、昭和や平成までだと思っているんです。令和はそうはいきません。2030年に向けて最低賃金1500円という水準が目標に掲げられていますし、物価も金利も上がっていく。同じやり方を続けていたら、コストの上昇にそのまま押し切られてしまいます。

だからこれからの士業のあり方も、変わっていくと思うんです。会計・税務の枠の中だけで完結させていたら、経営者の力にはなりきれない。お客様と一緒に組織の改革や仕組みづくり、ビジネスの戦略まで練っていく。そこまで踏み込んで初めて意味があると思っています。

実際の例で言うと、経営者が「働いてお金をもらう」という状態から脱却して、できる限り決断だけをして、イレギュラーなことがあったら対応する、という形に変えていく。そのための組織の改革や仕組みづくり、ビジネスの戦略を、今まさに一緒に練っているお客様がいらっしゃいます。税務の枠に収まる話ではないですよね。
高校で出会った簿記と、実家のコインランドリー

そもそも税理士を志されたきっかけは、どこにあったんですか。

亀谷:
簿記が好きだったからです。勉強で唯一、それだけしかできなかったっていうところですね(笑)。高校の頃に出会って、「これが好きだから、じゃあこれを仕事にしよう」と。

それで調べていったら、不動産はなくならないなと思ったんです。だから地主さんや相続といったところに強くなっていきました。

事業承継に強くなったのは、自分の実家が関係しています。コインランドリーを経営していまして、今60店舗ぐらいあるんですけど、その事業承継のときに、士業も金融機関も、全く乗ってくれなかったんですよ。

「全然ダメだな」と思いました。でも同時に、そこにビジネスチャンスがあるということを、肌で感じているんですよね。当事者として困った経験があるので、同じ立場の経営者が何に困るかが分かる。それが今の専門性につながっています。
「お金だけあっても、ビジネスはうまくいかない」

2016年に一度、共同代表として法人を立ち上げられていますね。

亀谷:
独立したいというのをずっと言い続けていたら、「お金を出してあげるから、やってみたら」という共同代表が現れたんです。その方は税理士でもあるんですが、本業は広告代理店の社長で。1人で年商60億を稼ぐような方でした。

当時、業界大手の税理士法人の年商を帝国データバンクで調べたら、ちょうど同じくらいの規模だったんですよ。何百人もいる組織と、1人で稼ぐ人が同じ年商。それを見て「じゃあ一緒にやってみようかな」と思ったんですよね。お金はすごく持っているし、集客もできるという話だったので、ジョイントさせてもらいました。

ところが、全く集客がうまくいかなかったんです(笑)。確かにお金には困らなかったんですけど、お金だけあっても結局ビジネスはうまくいかないというのを、つくづく学びました。

振り返って、うまくいかなかった原因はどこにあったと思いますか。

亀谷:
他責にしていたからですね。やっぱり他責思考は絶対に良くないです。成長が鈍化するというか、そもそも成長しないんですよ。

最終的には「お金だけ出してもらっている」という状態でしたから、だったら自分でリスクを背負ってやった方がいいな、と。それで独立の道を選びました。

その後もいくつかの事務所を経験したんですが、みんな単価が安い方向に行って、数ばかりを追いかけるんですよね。でも私は、このビジネスは「どうやって単価を上げていくか」のビジネスだと考えているんです。単価を上げていけば、自然といいループに入ってくる。規模を追う話ではないんですよ。

今は税務の枠を超えて、サービスの幅を広げていらっしゃいますね。

亀谷:
お客様が困っていること、不満に感じていること——そうした「不」を徹底的に分析していった結果なんです。突き詰めると、税務や会計の枠の中だけでは解ききれないものが必ず出てくる。それなら多角化経営に振ったほうがベターだ、という結論になりました。

手を広げること自体が目的ではないんですよ。お客様と向き合った結果として、必要なものが増えていく。だからこそ、徹底的にお客様と向き合うことが非常に重要だと思っています。
契約前に、2〜3回会う

今、事務所をやられていて楽しいと感じるのは、どんな瞬間ですか。

亀谷:
他の事務所で「全く無理です」と言われたことが、うちだったらできるというところですね。

よくあるのが、「決算が間に合いません、50事務所あたったけど無理でした」という相談です。でも、うちだったら余裕でできますよ、という。キャパを空けていますし、スタッフを大切にしているので。僕からすると、息をするのと同じくらい当たり前のことなんです。むしろ「なんで無理なの?」と思ってしまう。

乗り換えのお客様も多いんですが、それまでが激安で受けられているケースがほとんどなんですよ。うちに切り替わって2倍3倍の金額になっても、お客さんは何も文句を言わない。逆に言えば、それまでの値付けが安すぎたということです。

激安で受けるから、スタッフも嫌になって、お客様への対応が嫌になって、税理士が不満を言う。初動の値段設定がおかしいんですよね。

2倍3倍の提示を受け入れてもらうのは、簡単ではない気がします。何かコツがあるんでしょうか。

亀谷:
顧客教育ですね。それができていない事務所が多いんだと思います。

まずやるのは、お客様が何で悩んでいるかを徹底的にヒアリングすること。要は「ノーニーズ・ノープレゼンツ」で、こちらから「こんなことができます」という話をする必要はないんですよ。その上で、そのお客様に合った回答をして、具現化して、視覚で分かるようにする。お客様はわがままなので(笑)、そのわがままにできる限り応えるようにしています。

そして、契約前に2〜3回お会いします。多分、他はやっていないと思うんですよ。1回目は私が会社案内をして、スタッフが「うちはこういう風にやるんですよ」というプロトタイプのようなものをお見せする。それで消化しきれなければ、「じゃあもう1回やりましょう」と。

大体そうすると決まります。「相性が」とおっしゃる方もいますが、それで決まらない場合は、うちのペルソナじゃない、ターゲットじゃないと考えていますね。「うちに変わったら、ビフォーアフターでこうなりますよ」ということを、とにかく伝えることにフォーカスする。そこに全部を寄せています。
AIは手段。目的と手段を、逆にしない

AI活用が「マスト」ということでしたが、実際にどう使われているんですか。

亀谷:
今日の話で言うと、MCPサーバーを繋いで記帳代行を自動化させました。次にやろうとしているのが、シミュレーションや予実管理をAIで自動化することですね。

あとはミーティングを全部録画・録音しているので、そこでAIに指摘してもらうんです。「本当はこういうところで悩んでいるかもね」といったことをまとめてもらったり、議事録をまとめて「今日はこういうお話をしましたね」とお返しすると、お客様の頭の中が整理されるんですよ。

結局、いいことを言っていても、頭の中に残らなくて行動に移らなかったら意味がないので。お客様の「行動」にフォーカスするような、悩んでいることにフォーカスするようなAI活用をしています。

これは今、私自身がキャッチアップして先陣を切って進めています。まだ手探りなので、みんなの前で構えているだけですけどね(笑)。

AIを導入するとき、みんなが引っかかるのは「導入して時間が空いたけど、どうするの?」というところだと思うんです。目的と手段を逆にしたくない、と。うちはそこが明確なので、どんどんサクサク進むんだと思います。

今後、さらに使っていきたい領域はありますか。

亀谷:
録画したものが全部AIに溜まって、悩んでいることを推測して、担当者にフィードバックが行く仕組みを作りたいですね。

というのも、全てのミーティングに事務所のトップが出るのは不可能じゃないですか。実力のある人が全部に出るのは物理的に無理なので、そこをAIがサポートしてくれれば、担当者にとってもお客様にとってもいいことだなと。

一度作ろうとしたんですけど、コストが爆発するんですよ。5〜6項目の評価シートを作って担当者にフィードバックする仕組みも考えたんですが、ハルシネーションを起こす可能性がある。お客様が建前で「あなたの点はすごくいいね」と言っていたら、その時点で高評価になってしまいますから。それでコストも毎月かなりの額になるので、現実的じゃないなと一度断念しました。今は言語情報だけで、低価格でできないかを模索しているところです。
「残業する人は、仕事ができない人」

採用ページで「残業をしない」「ノルマは一切なし」と明言されています。かなり珍しい宣言だと思うのですが。

亀谷:
残業する人は、仕事ができない人ですから。生産性を上げようというのが会社の方針で、そのためにAIもやっていきましょうと言っている。AIはあくまで手段なんですけど、それにも関わらず残業するというのは、全くクリエイティブじゃないですよね。

脳のゴールデンタイムは、起きてから3〜4時間と言われているので、朝早く来てやってもいいよ、とは伝えています。

ノルマのほうは、うちは少数精鋭なので、勝手にやりますから(笑)。勝手に自分で目標を立ててやってくれる。そこは採用の段階から人を選んでいるので、縛って動機付けをすることが何のためになるのか、分からないんですよね。

事務所としての目標は置いています。年収で800万〜1200万くらいのレンジまで行ったら、あとは副業していいよ、という感じですね。中途半端に上乗せするより、空いた時間で副業してもらった方がいい。実際、1人だけちょっと化け物みたいなスタッフがいて、その人は副業のほうで年1000万以上稼いでいると思います(笑)。

スタッフの方は、全員リファラル採用だと伺いました。

亀谷:
採用に時間もお金も一切かけていません。3年ぐらいで10人になりましたけど、広告媒体には一切お金をかけていない。履歴書も職務経歴書も出してもらっていないです。

1年で3人ぐらいのペースで採用できるので、正直、他の事務所がなぜ採用にお金と時間をかけているのか、不思議なんですよね。働きたくなる環境を作って、1人1人と向き合えばいいだけの話だと思うんです。すごくシンプルですよ。

何に惹かれて来てくれているのかは、謎です(笑)。聞いたことがないので。ただ、面談で「こういうことをしてくれたら、こういう風に上げるよ」というのは僕から伝えているので、未来を作っているからかなとは思います。多分、未来を作っていない事務所のほうが圧倒的に多いんじゃないでしょうか。

これまでスタッフの側から「辞めたい」と言われたことは、一度もないですね。逆に僕から「辞めてくれ」と言ったのは2人います。研修中に寝ていたりとか、いくらリファラルとはいえ、さすがに非常識すぎるだろう、と。

「地方1人拠点長候補」という珍しい採用枠も設けられていますね。

亀谷:
どんどん拡大していきたいというのがあるので。1人だったとしても、全然できるでしょうって思うんですよ。ノウハウを共有すればいいだけなので。
少数精鋭で、1人当たりの生産性を極める

今後の税理士事務所の姿は、どう描いていますか。

亀谷:
税理士事務所だけだと、完全に少数精鋭です。今の人数からプラス5〜10名くらい、15〜20名程度の規模ですね。今の事務所の箱に入るのがこれくらい、オンラインでコミュニケーションを取って管理できるのもこれくらいかな、というのが理由です。

人数を増やす代わりに、とにかくお客様の悩みや不安、不満をヒアリングしていく。この、人間にしかできないコミュニケーションの力が事務所の強みなので、そこを最大限に伸ばしていきます。そうすれば自然とクリエイティブな仕事が求められるようになり、単価も生産性も上がる。待遇も、もっと良くしたいと思っています。

さきほどの年収800万〜1200万というレンジも、あくまで通過点だと考えています。

私個人の目標としては、エッジが効きすぎているとは思うんですが、1人当たり売上高1億円を目指しています。業界では1人1000万〜1200万くらいが一般的だと思うんですけど、レバレッジを効かせればもっと行けるはずなんですよ。採用にコストをかける構造が前提になっていることも、一因かもしれません。記帳や申告書作成の周辺業務にはAIを徹底的に使っていて、今の業務をどこまでAIに置き換えられるかという世界観で進めています。資料の収集から記帳、お客様への質問事項の整理まではAIにまとめてもらい、一次チェックもAIに通す。最終確認は税理士が責任を持って行いますが、その手前の工程はすでに着手していて、年内の完了を目標にしています。

最後に、お強みの一つでもある資産管理会社をお持ちの方や富裕層の方に向けて、お伝えしたいことはありますか。

亀谷:
お金持ちが、どうやったらさらにお金を生むかを知っています、ということでしょうか。

「不動産投資をした方がいいですか」といったご相談もよくいただきますし、もちろん対応もできます。ただ、その前にやったほうがいいことがあるんですよ。世の中には節税商品もたくさんありますけど、多分それをやるよりも、順番として先に手をつけるべきことがある。そちらのほうが、結果的にずっと効きます。

そこはお一人おひとりの状況によって全く変わるので、ぜひ一度ご相談いただければと思います。

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取材後記

「なんで無理なの?」──取材中、亀谷先生は何度もこの問いを口にされました。決算が間に合わない、50事務所に断られた。そんな相談を「息をするのと同じくらい当たり前」に引き受けられるのは、キャパシティを空け、スタッフを大切にし、単価を上げるという選択を積み重ねてきた結果です。一度目の創業で「お金だけあってもビジネスはうまくいかない」と学んだ経験が、広告費ゼロ・履歴書不要のリファラル採用、残業ゼロ・ノルマなしという、一見ゆるく見える方針の一つひとつに通っている。歯に衣着せぬ物言いの奥にあるのは、数ではなく、お客様の悩みにとことん向き合うことと生産性で勝負するという、一貫した経営観でした。今の税理士に物足りなさを感じている経営者、資産をどう増やすかを相談したい方は、一度話を聞いてみる価値があると思います。

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