税理士業界のファーストペンギンになる──31歳の税理士が「AI×税務」で業界に挑む理由

境裕介(さかい ゆうすけ)|税理士 ソルビス税理士法人 代表社員
神戸大学経済学部卒業後、三菱UFJ銀行に入行。約4年間、中堅中小企業から東証プライム上場企業まで幅広い業種の融資・財務支援に従事し、営業本部への異動も経験。その後PwC税理士法人にて約4年間、大手上場企業の申告書作成やタックスヘイブン税制のコンサルティング、グループ通算制度の導入支援などに携わる。2024年に境税理士事務所を開業、2025年1月にソルビス税理士法人を設立。大阪市北区梅田を拠点に、税理士2名を含む7名体制で、年商数百億規模の大企業から個人事業主まで幅広い顧客を支援。AI専属エンジニアを正社員で擁し、「日本一のAI活用税理士法人」を目指している。
インタビュアー: まず、ソルビス税理士法人の概要を教えてください。
大阪の梅田に拠点を置いていて、税理士2名を含む7名体制です。スタッフは24〜25歳が中心で、僕自身も31歳なので、業界の中ではかなり若いチームだと思います。顧客は大阪と東京が半々くらいで、全国に散らばっています。
サービスは大きく2つあって、売上数百億規模の大企業向けの税務支援と、年商1,000万円以下の方を対象にしたAI活用の低単価サービス「みんなの税務顧問」です。開業からの集中と選択で、まずはこの2つの層に力を入れてきましたが、もちろんその間の規模の方もお客様にいらっしゃいますし、規模問わずご相談は大歓迎です。
副代表が野村證券出身で、僕は三菱UFJ銀行とPwC税理士法人を経て独立しました。金融とBig4の経験を掛け合わせた税務支援ができるのが、当法人の特徴です。
インタビュアー: 税理士を志したきっかけを教えてください。
原点は、故郷の富山にあります。子どものころは当たり前のように賑わっていた商店街が、気づいたらシャッター街になっていた。大学に進学して地元を離れ、帰省するたびに閉まっている店が増えていく。あの風景が、ずっと心のどこかに引っかかっていたんです。
「中小企業や事業者をサポートする仕事がしたい」──そう思ったのは大学時代でした。じゃあどうやってそこに辿り着くか。まず銀行で財務やお金の流れを学ぶ。次に税理士法人で税務の実務を積む。4年ずつ勤めて、30歳で独立する。その設計図を大学の時点で描いていました。
インタビュアー: 大学生の時点で、そこまで具体的に。
よく驚かれるんですが、僕にとっては自然な選択でした。商店街が消えていくのを見て「なんとかしたい」と思ったとき、経営の一番近くに立てる専門家は税理士だと感じたんです。お金の相談ができて、経営の意思決定にも関われる。そこに行き着くまでの最短ルートを考えたら、銀行とBig4で修行してから独立する、という道筋になりました。

インタビュアー: 三菱UFJ銀行では順調にキャリアを重ねていたと伺いました。
最初の2年間はありがたいことに成績が良くて、後半の2年間で営業本部に異動になりました。いわゆるエリートが集まる部門です。そこで「役員候補」と言っていただいたことがあって、正直に言うと迷いました。
銀行の給料は良いですし、安定もしている。このまま残れば、それなりのポジションにいける可能性もある。でも──夜、一人で考えたときに浮かんでくるのは、やっぱりあのシャッター街の風景なんです。
インタビュアー: 最終的に、何が決め手になりましたか。
「自分は何のために銀行に入ったのか」という問いに尽きます。銀行にいれば経営者に融資はできる。でも、もっと深く経営に携わりたかった。お金を貸す側ではなく、経営者の隣に立って一緒に考える側にいきたい。そう思い直して、予定通りPwCに移りました。
PwCでの4年間は、大手上場企業の申告書作成やタックスヘイブン税制のコンサルティングなど、高度な税務に触れる日々でした。直接的な知識以上に、未経験の論点にぶつかったときの調べ方や対応の仕方を叩き込まれた。あの経験がなかったら、今のように幅広い顧客に対応する自信は持てなかったと思います。
インタビュアー: ソルビス税理士法人の顧客層には大きな特徴があると伺いました。
はい。当法人には大きく2つの柱があります。1つは売上数百億から数千億規模の大企業。もう1つは年商1,000万円以下の小規模事業者向けの「みんなの税務顧問」というサービスです。
インタビュアー: 両極端ですね。一般的には中間層を狙う事務所が多いと思いますが。
まさにそこなんです。年商1,000万円から数億、10億あたりの中規模層は、多くの税理士事務所がターゲットにしている激戦区です。僕らはあえてそこを避けて、他の事務所がやらない「両端」を押さえにいっている。
大企業向けは、僕が銀行で培ったネットワークと、副代表が野村證券のプライベートバンキング部門出身であることを活かして、経営者からの紹介で繋がっています。一方、小規模層はAIを前提にした低単価サービスで対応する。この組み合わせができる事務所は、今のところほとんどありません。
インタビュアー: なぜ「両端」という発想に至ったのでしょうか。
AIの進化を見ていると、会計業界は間違いなく大きく変わると確信しています。だったら、AIが得意な領域──つまりシンプルな会計処理が中心の小規模層を、AI前提の料金設計で先に押さえてしまおうと。誰もやっていないなら、ファーストペンギンになるしかない。
面白いのは、「みんなの税務顧問」で入ってきた小さな事業者さんが成長して年商1,000万円を超えたら、提携先の税理士事務所にお繋ぎするエコシステムも作っていることです。小さいうちは私たちがAIで効率的にサポートして、成長したら最適な事務所にバトンを渡す。税理士業界全体で事業者を支えていく仕組みを描いています。
インタビュアー: AI活用について、具体的にどんなことをされていますか。
多くの事務所が「既存の業務フローにAIを足す」というアプローチをとっていますが、僕らは逆です。AI前提で業務フローをゼロから設計し直している。
たとえば、顧客から質問が来ると、裏側の連携でAIに質問が飛び、回答案が担当者の下書きメールフォルダに自動生成されるシステムを作っています。担当者はゼロから回答を考えるのではなく、AIが出した下書きを確認・修正して送る。資料収集のリマインドも自動化しています。
インタビュアー: そうしたシステムは外注で作っているのですか。
いえ、専属のAI系エンジニアが正社員でいます。これは税理士事務所としてはかなり珍しいと思います。僕自身がAIの最先端を追い続けるのは現実的ではないので、そこは専門家に任せている。ただ、税理士業界の中では誰よりもAIに詳しくありたいとは思っていて、毎日触るようにはしています。
「みんなの税務顧問」はまさにこの体制から生まれたサービスで、開始からわずか1ヶ月半、広告もあまり費用を掛けずに50件近くのお客様にご利用いただいています。AI前提だからこそ実現できた価格と、スピード感のある対応が評価されている実感があります。

インタビュアー: AI活用を推進する一方で、従来型の顧問契約の解約率がゼロだと伺いました。
はい。高単価の従来型顧問契約については、資金繰りの悪化や廃業を除いて、解約は一度もありません。
理由はシンプルで、ウェットな付き合いを意識しているからです。毎月必ず連絡を取りますし、税務や会計に関係のない経営の悩みにも相談に乗る。「AIの事務所」と聞くとドライな印象を持たれるかもしれませんが、実態は真逆です。
インタビュアー: 効率化と人間味の両立は、なかなか難しいことだと思います。
むしろ、効率化しているからこそ人間味に時間を使えると思っています。AIが定型的な作業を引き受けてくれる分、僕らは顧客と向き合うことに集中できる。
銀行の経験も活きています。お客様が資金繰りに困っているとき、銀行の貸し出し側の視点から、どういう計算書を作れば融資が通りやすいか、どう話せば銀行員に響くかをアドバイスできる。これは銀行出身の税理士だからできることです。PwCで培った対応力──見たことのない論点に直面しても、調べ方がわかっている、冷静に対処できる──も、お客様の安心感に繋がっていると感じます。
インタビュアー: 今後の目標を教えてください。
開業から5〜6年後には、M&Aも含めたグループ全体で売上10億円を目指しています。今の成長率が続けば、十分に達成可能だと見込んでいます。社員数は70名程度になるイメージです。
拠点も増やしたい。従来型の顧問契約では訪問もしますので、東京、名古屋、福岡といった主要都市には拠点を構えたい。それと──これはまだ構想段階ですが、地元の富山にも出したいんです。
インタビュアー: 富山、ですか。
ビジネスの合理性だけで言えば、富山は優先度が高くないかもしれません。でも、あの商店街のことがずっと頭にある。自分が税理士になった原点の場所に、いつか恩返しをしたいという気持ちは消えないんです。
インタビュアー: 最後に、税理士を探している経営者の方に向けてメッセージをお願いします。
私たちは今、7名体制で平均年齢もすごく若い事務所です。24〜25歳のスタッフが中心で、僕自身も31歳。税理士業界の中では異質かもしれません。
でも、だからこそできることがある。AIを使いこなして効率化する。従来の常識にとらわれない料金設計でサービスを届ける。そして何より、お客様の隣で一緒に成長していく。
税理士業界は平均年齢が高くて、ITやAIの導入が遅れている「古い業界」です。僕らはそこに、若い世代として革新を起こしていきたい。もし「今までの税理士とは違う選択肢がほしい」と感じている方がいたら、ぜひ一度ソルビスに声をかけてください。
編集後記
境さんは31歳。税理士業界ではかなり若い代表ですが、お話を聞いていると、大学時代からキャリアを逆算して計画してきた芯の強さを感じました。
銀行で順調だったキャリアを予定通り手放し、PwCで税務の経験を積み、30歳で独立。その道筋は、故郷の商店街が寂れていくのを見た経験が出発点にあるとのことです。
お話の中で特に印象に残ったのは、AIを積極的に取り入れながらも「ウェットな付き合いを大事にしている」という言葉でした。効率化で生まれた時間を、お客様と向き合うことに使う。解約率ゼロという実績が、その姿勢の裏付けになっています。
「ファーストペンギンになりたい」と語る境さんの表情は、気負いよりも楽しさが勝っているように見えました。5年後の売上10億円という目標も、富山への拠点展開の構想も、一つひとつ着実に積み上げていく方なのだろうと感じた取材でした。
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