法と税をデザインする – 経営者の理想を形にする法と税のワンストップ・デザイン

尾谷 恒治(おたに こうじ)|税理士法人・弁護士法人尾谷&パートナーズ 代表社員
1982年東京都板橋区生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、同大学法科大学院を修了し2008年に弁護士登録。中小企業法務、労務、環境法、行政訴訟などを専門に弁護士キャリアを積み、2013年に仲間と早稲田リーガルコモンズ法律事務所を共同設立。2022年に税理士登録し、父が1983年に開業した尾谷会計事務所を法人化する形で同年9月に税理士法人・弁護士法人尾谷&パートナーズを設立。2024年7月に税理士法人の代表社員に就任し、税理士法人18名・弁護士法人5名の総勢約20名体制で、関東近郊約300社の顧問先に「法と税のワンストップサービス」を提供している。
インタビュアー:尾谷先生は弁護士と税理士の両方の資格をお持ちですが、まず弁護士を志されたきっかけから教えていただけますか。
12歳のときに中坊公平さんの活動を見たことがきっかけです。弁護士として社会正義のために闘う姿に、子どもながらに衝撃を受けて、あの日から弁護士になると決めていました。
18歳で大学に入ってすぐに猛勉強を始めました。1日12〜13時間、法律書と向き合う日々。大学3年のときに旧司法試験の択一にも合格しました。
ただ、進む中で葛藤もありました。大学時代に会った弁護士のOBの方々が、自分が思い描いていた弁護士像とどこか違って、原点を見失いかけたんです。そのとき、産業廃棄物の不法投棄による公害問題を中坊さんが弁護団長として闘った瀬戸内の豊島を訪れました。その際、偶然訪れた直島で安藤忠雄さんの地中美術館と出会い、建築を「自然との共生」として表現するその姿勢に心を打たれて。「法の分野でも同じことができるはずだ」と確信して、環境法という専門領域を見つけたんです。
そこからはロースクールで環境法を学び、行政訴訟の世界にのめり込みました。私にとって師とも呼べる先輩弁護士とも出会い、成長を実感できる中で30歳を契機に仲間と早稲田リーガルコモンズ法律事務所を立ち上げて、弁護士だけで約50名規模の組織にまで育てることもできました。

インタビュアー:弁護士として順調にキャリアを築いておられた中で、お父様の税理士事務所を継がれた経緯を教えてください。
父が1983年に始めた尾谷会計事務所は、私が生まれる半年後に創業しました。文字通り、事務所と一緒に育ってきたようなものです。姉も税理士として独立していますし、家族全員が数字と法律に囲まれて生きてきました。
先程の法律事務所を立ち上げて約10年、組織が大きくなる中で中心的なメンバーの多くが袂を分かつという出来事がありました。自分自身はそのとき海外にいた時期だったのでどちらとも関係は良好なままでしたが、改めて自分のキャリアを見つめ直すきっかけにはなりました。父も80歳に近づいていて、40年以上積み上げてきた尾谷会計事務所の将来を考える時期が来ていた。
「自分が継ぐべきだ」と心が決まったのは、自然な流れだったように思います。2022年3月に税理士登録をして、同年9月に弁護士法人と税理士法人を同時に設立。2024年7月に代表社員に就任しました。

インタビュアー:40年続いてきた事務所に代表として入る。プレッシャーは大きかったのではないですか。
正直、不安はありました。ひとつは、20〜30年選手のベテランスタッフの皆さんが私を受け入れてくれるかどうか。もうひとつは、弁護士としてのキャリアはあっても税理士としての実務経験がゼロだということ。
ただ、スタッフの皆さんは私の想像以上に温かく受け入れてくれました。40年間この事務所を守ってきた方々の懐の深さに、素直に救われましたね。
入った当初は気負いもあったので、「自分がこの事務所を変えるんだ」と意気込んでいました。事実、法律事務所時代のシステムやワークフローと比べるとアナログな部分も多くありました。でも1年ほど経って、40年続いてきたのには、ちゃんと理由があるんだと気づきました。自分の価値観に合わないから変えるのではなく、積み重ねてきた歴史に価値を見出して、それを土台にして高めていく。変革は5年ぐらいかけて、自然な形で進めていくのがこの事務所に合っていると思うようになりました。
インタビュアー:税理士法人と弁護士法人の併設は業界でも非常に珍しいですよね。お客様にとって、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
ひとつは、新しいビジネスを始めるお客様に対して、税務と法務の両面からスキームを検証できるということ。新規事業というのは、法や税の「余白」を解釈しなければならない場面が多い。まだ誰もやっていないビジネスだから、「何が問題かわからない」というところからスタートするわけです。普通なら弁護士がデザインしたものを税理士に確認してもらったり、その逆が起きたりして、事務所間を行ったり来たりすることになる。うちではそれをワンストップでシームレスに提供できます。
もうひとつは、税務調査から国税不服審判、さらには税務訴訟まで一貫して対応できること。私自身が弁護士として行政訴訟を専門にしてきましたから、調査の段階から「最終的に裁判になったらどうなるか」を見据えた戦略を練ることができる。弁護士資格を持つ人間が対応しているということ自体が、交渉力にもつながります。
税理士に依頼する本質は、記帳や申告をしてもらうことだけではないと思っています。入口であるビジネスのデザインと、出口である税務訴訟――その両方に対応できる。だからこそ、中間にある日々の判断も、より確かなものにできる。これがうちの事務所が提供できる独自の価値だと考えています。

インタビュアー:あらためて、現在のお客様の層や、事務所の体制について教えてください。
東京・豊島区の大塚を拠点に、関東近郊の約300社をサポートしています。エリアでいうと池袋を中心に、練馬区、板橋区、新宿区、千代田区あたりのお客様が多く、埼玉にも広がっています。
お客様の規模は本当にさまざまで、年商100億〜200億円の上場企業が数社いる一方で、1,000万〜2,000万円規模の方もいらっしゃる。中心になるのは年商5,000万円〜30億円あたりの層ですね。基本的には法人顧問がメインで、個人のお客様には法人化をおすすめしています。相続や事業承継も、顧問先の中で発生するものについてはニーズベースで対応しています。

インタビュアー:ベトナム部門や国際部門があるのも、御社ならではの特徴ですね。
事務所は3つの部門で構成されています。本社オフィスの日本部門、同じく本社のベトナム部門、そしてフルリモートで運営する国際部門(英語部門)です。
ベトナム部門は、もともと父が中国語を話せたことで中国のお客様を多く手がけていた流れがあります。3年前に日本語も会計知識も持つベトナム人スタッフが入ってくれたことで、自然とベトナム部門が立ち上がりました。国際部門は、大手が規模の大きいクライアントしか対応しない中で、中小規模でも英語や母国語でアドバイスを受けたいというニーズは確実にあることから、立ち上がりました。
スタッフは筑波大学出身の留学生が中心で、エストニア人やリトアニア人もいます。海外にもスタッフのネットワークがあり、お客様の母国語でヒアリングし、共通言語である英語を介して、日本語で税務申告を行う。この仕組みは非常に多く引き合いをいただいていますし、自信を持って提供できているサービスです。

インタビュアー:最後に、今後の展望と、税理士を探されている方・一緒に働きたい方へのメッセージをお願いします。
マネーフォワードなどのクラウド会計も使いこなしつつ、池袋周辺だけでなく日本全国をマーケットにしていきたいと考えています。
数字的な目標は明確で、5年間で売上を倍増させること。毎年1.2倍のペースで着実に成長していくイメージです。
そしてこの4月に、大学時代のロースクールの同期である弁護士も加わります。元々、大手の著名な法律事務所に在籍し、その後大手都市銀行の法務副部長を7年務めてきた人物です。士業事務所は結局、人で決まると思っています。彼が入ることで、「法と税のデザイン」をさらに高いレベルで提供できるようになると確信しています。弁護士事務所としても、租税訴訟を組織的に手がけるという意味で、5年以内に業界をリードするポジションを目指したいですね。
また会計事務所としては、今いるベテランの税理士たちの実力は間違いないので、彼らが現役のうちにその技術を次の世代に継承していくことが最重要テーマです。同じマインドを持った仲間を見つけるために、士業の集まりなどに自ら足を運んで声をかけています。
お客様に対しては、新しいビジネスに挑戦したい経営者の方にこそ来てほしいと考えています。法と税の両方の視点からスキームを検証できる事務所は、他にほとんどありません。上場企業から年商1,000万円の個人事業まで、規模は問いません。「やりたいことがあるけど、法的にどうなのか、税務的にどうなのかわからない」――そういう方のために、私たちはいます。
求職者の方には、「法と税のデザイン」という、まだ誰もやっていないフィールドで一緒に挑戦しませんかと伝えたいですね。ベトナム語、英語、中国語――言語を活かした仕事もあります。40年の歴史とこれからのイノベーション、その両方を肌で感じられる場所です。
インタビュアー:本日はありがとうございました!

編集後記
12歳で弁護士を志し、瀬戸内の地中美術館で環境法という天職を見つけ、そして40年続く父の事務所を継ぐ――尾谷先生の人生には、一見バラバラに見える点と点が、振り返ると一本の線でつながっている美しさがありました。
「変革は5年かけて自然な形で」という言葉に、40年の歴史への敬意と、弁護士として組織の分裂を経験された方ならではの深い洞察を感じます。法と税を「デザインする」という発想は、この事務所でしか生まれ得なかったもの。その唯一無二の価値が、これからどんな景色を描いていくのか、とても楽しみです。尾谷先生、ありがとうございました。
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※ 本インタビューの内容は取材時点のものです。事務所の体制やサービス内容は変更される可能性があります。最新の情報については各事務所に直接お問い合わせください。