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資生堂25年、50代で独立——AI×英語で切り拓く「ひとり税理士」の新しいかたち

資生堂25年、50代で独立——AI×英語で切り拓く「ひとり税理士」の新しいかたち

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米世 毅(よねせ たけし)|税理士米世毅事務所 代表 税理士・US CPA(米国公認会計士)

大学院在学中にモンタナ州でUS CPA試験に合格。2000年に資生堂へ入社し、ファイナンス×国際領域を軸に約25年間のキャリアを歩む。50代を前に独立を決意し、2024年10月に横浜市港北区で開業。自宅・PC1台のミニマル体制で、freee MCPやClaudeなどのAIをフル活用した業務効率化を実践する。顧問先はITエンジニアを中心にしつつ、英語での確定申告対応(RSU・ESPP)も手がける。平日夜間・土日祝日も対応し、副業中の方でも気軽に相談できる事務所を目指している。

資生堂25年——ファイナンス×海外で積んだ「異色のキャリア」

インタビュアー: 大学院在学中にUS CPAを取得されたとのことですが、当時の状況を教えてください。

米世様:
今でこそUS CPAは日本国内で受験できますが、20年以上前は現地に行かないと受けられなかったんです。しかも外国人が受験できるのは田舎の州だけで、私はモンタナ州で受けました。飛行機を2回乗り継いで、ものすごく疲れた状態でたどり着いて。それを半年に1回、試験のたびに繰り返すわけです。大学院に通いながらだったので、なかなか大変でしたね。

動機はシンプルで、将来海外で仕事がしたかった。大学でもESS(English Speaking Society)に所属して英語漬けの環境にいましたし、とにかく海外が好きだったんです。税理士資格は在学中にすでに取得していたので、二足のわらじというわけではないんですが、海外で通用する武器としてUS CPAを取ろうと。周りからは「無謀だ」と言われましたけど、結果的に在学中に合格できました。

インタビュアー: そこから資生堂に入社されたんですね。

米世様:
就職氷河期の2000年入社です。ありがたいことに何社かからお誘いをいただいていて、最初に最終内定の連絡があったのが資生堂でした。「ご縁だな」と思って入社を決めたんです。当時、資生堂はグローバル展開を加速させていた時期で、私がやりたかった「海外で仕事をする」という方向性と一致していました。

インタビュアー: 資生堂でのキャリアは、かなり異色ですね。

米世様:
人材育成に力を入れている会社だったので、若い時から大きな仕事を任せてもらえました。新卒で最初に配属されたのが本社の事業開発部で、いきなりバリ島のウブドでジャングルを切り拓いてスパを建設するというプロジェクトの経営管理サポートでした。

その後は国際事業の経営統括に移って、それから本社の経費管理——22時消灯のプロジェクトのPMを同時にやっていた時期もありました。ベトナム工場にはいきなりシニアマネージャーというポジションで赴任して、現地スタッフのマネジメントを担当しました。いろんな文化への対応を学びましたね。外国の方の時間軸は日本と比べると2倍も3倍もかかるので、早め早めに動いて、定型的な仕事の振り分け方を工夫しないと納期に間に合わない。「ここは日本じゃないな」ということを、あの経験で強く学びました。

インタビュアー: 25年間を一本の線でつなぐと、どんなキャリアでしたか?

米世様:
キャリアの幹はファイナンスです。そこに「海外対応ができる」という強みが掛け合わさって、いろいろな部署を経験させてもらいました。

経理で言うと、伝票の1枚1枚の起票という下流から、IR——投資家とのコミュニケーションという上流まで。特にIRのポストに就けたのは大きかったですね。資生堂はIR部門の人数自体は多かったんですが、広報と財務のハイブリッド組織だったので、財務系からIRに入れる椅子はごく限られていたんです。多少英語ができて、財務にも明るいということで引っ張ってもらえたのかなと思います。当時の社長は厳しい方でしたが、それはそれで勉強になりましたし、今となっては良かったと思っています。
50代で独立——「やらない後悔より、やった後悔」

インタビュアー: 25年間勤めた会社を辞めて独立するのは、大きな決断だったのではないですか?

米世様:
50代になると、大きい会社ではある程度自分のポジションが見えてくるんですよ。このまま会社にいても新しいことはなかなかできない。大きい組織って、何か新しいことをやろうとしても身動きが取れないんですよね。

一方で、税理士として独立するなら60歳の定年後では遅いと思いました。体力面もそうですし、ITの吸収力も年齢を重ねるほど難しくなる。50歳過ぎの今なら間に合うけど、あと10年経ったら厳しいんじゃないかと。人生は一度きりなので、やらない後悔よりやった後悔のほうがいいと思って、独立を決めました。

インタビュアー: 怖さはなかったですか?

米世様:
正直、ほとんどなかったですね。US CPAの受験のときも周りから「無謀だ」と言われて、それでも合格しています。だから大丈夫だろうと。

固定費はできるだけゼロに近づけるため、オフィスは一切借りず、自宅でパソコン1台からスタートしました。1年目は紹介会社への手数料がかかっていたんですが、2年目に入ってからはそれもなくなって、売上がほぼそのまま利益になっています。これを回転させていければ食べていくには困らないかなという感覚で、今のところはうまく回っていますね。
AIは「何人かのスタッフを雇っている」感覚——freee MCP × Claudeの実践

インタビュアー: 先生のAI活用はかなり本格的だと伺いました。失礼を承知で言いますが、同世代の方でここまでAIを使いこなしている方はなかなかいないと思います。なぜそこまで使えるのですか?

米世様:
まず、好奇心が旺盛なんですよ。小学校5年生のときに親にパソコンを買ってもらって、簡単なプログラミングをやっていました。40年以上前の話です。だからITに対するアレルギーはまったくなくて、新しいものが出るたびに触ってきました。会社員時代もExcelはかなり得意で、仕事は早かったと思います。

時期的にも良かったんですよね。ChatGPTが出てきた頃にちょうど独立開業したので、ITやAIに対する抵抗感がないまま事業をスタートできた。1年間仕事を回してみて、次にClaudeも出てきて。さらにfreeeが確定申告期間中にMCPを公式リリースしたタイミングで、サクッと導入してみたら「これはすごい」と。好奇心が旺盛なので、60でも70でもたぶんこの感覚は変わらないと思います。

インタビュアー: 具体的にはどんな業務をAIに任せていますか?

米世様:
まず、お客様の月次チェックと年次チェックはもうAIに任せています。うちの顧問先はITエンジニアが中心で、新規の取引先を増やそうとかいう動きがあまりないので、取引が定型的なんです。freeeの自動登録ルールをフル活用して自計化しているので、年間を通してチェックして直して、決算前に一気に仕上げる——という流れでやっています。

もともと資生堂時代に製造業の経理と、子会社の飲食店の経理もやっていたんです。だから大変さを知っているんですよ。逆にそういう複雑な業種は受けないようにしています。特に飲食はかなり上級レベルじゃないと難しい。うちは意図的にITエンジニアに客層を絞って、定型処理に集中できる体制にしているからこそ、AIでの自動化と相性がいいんです。

それだけじゃなくて、お客様からの相談対応のレポート作成もAIがやってくれます。freee MCPでClaudeとfreeeが直接つながっているので、データをCSVでダウンロードしてアップロードして……という手間が一切ない。Claudeがfreeeの中のデータを直接叩いて出してくるので、そのままレポートも出ますし、法人化の段取りや会社清算のスケジュール作成もAIに任せられます。

住宅ローン控除の修正手続きなんかも、Claudeにマニュアルを1回作ってもらって、そのままお客様に渡したりしています。正直、何人かのスタッフを雇っているような感覚ですね。実際にはアルバイトも含めて雇用はゼロ。完全にひとりで回しています。

京都の畠山先生がfreee MCPを活用して1人で60社を担当しているという記事がバズっていましたが、僕から見ても全く違和感はないですね。十分できると思います。

インタビュアー: 入力作業もAIで効率化されているんですか?

米世様:
はい。AquaVoiceという音声入力を使っていて、金額の入力もすべて声でやっています。最近気づいたんですが、カーソルを合わせて読み上げればちゃんと金額も入力してくれるんですよ。たとえばふるさと納税の入力で件数が少ないものだったら、もう読み上げて入力してもらって終わり。キーボードをほとんど操作しないんです。電卓も使っていません。

さすがに件数が多いふるさと納税とかは一度Excelに落としてコピー&ペーストしますが、少量なら音声だけで完結します。

インタビューの前日もfreee MCPのハッカソンイベントに参加して、発表もさせていただきました。freeeの開発チームの中核メンバーとも直接ディスカッションできて、新しいテクニックも教えてもらいましたし、これからさらにできることが広がりそうだと感じています。
英語×税理士——外資系エンジニアの確定申告を、Zoomで一緒に仕上げる

インタビュアー: 英語での税務対応について教えてください。どんな方からの依頼が多いですか?

米世様:
主に外資系IT企業に勤めている方ですね。RSU(譲渡制限付株式)やESPP(従業員株式購入プラン)といったストックオプションを保有していて、確定申告が必要になるケースです。顧問先とは別に、この確定申告だけのスポット対応で年間約20件を受けています。

こうした方が受け取る取引明細は、FidelityやMorgan Stanleyなど海外の証券会社のフォーマットで届きます。日本の証券会社の書式とはまったく違う。これを正しく読み解いて分析し、e-Taxの申告資料に落とし込むという作業が必要なんです。海外のフォーマットに慣れていない税理士だと、そもそもどこに何が書いてあるのかわからないということもあると思います。

インタビュアー: 英語でのサポートは、具体的にどのような形ですか?

米世様:
前回の確定申告——2024年分の申告のときは、海外のお客様とZoomで画面を共有しながら、確定申告の書類を一緒に仕上げていくということもやりました。「ここに入力してください」「この欄にこの金額です」と、英語でリアルタイムにコミュニケーションを取りながら一つずつ進めていくんです。その方は片言の日本語はわかったので、日本語と英語を混ぜながらでしたけどね。

日本の税制度を英語で、同期的にコミュニケーションが取れる税理士というのは、なかなかいないと思います。資生堂時代にベトナムやバリで海外の方と仕事をしてきた経験——文化の違い、時間軸の違いへの対応力——が、そのまま今の仕事に活きています。海外のお客様とのやり取りでは「日本のスピード感」を押し付けずに、余裕を持って進めることが大事なんです。これは企業で25年やってきたからこそわかることですね。

インタビュアー: お客さんとのコミュニケーション手段は?

米世様:
基本的にLINEでつないでいます。24時間とまでは言いませんが、平日も夜遅くまで対応していますし、土日祝日も面談をやっています。うちのお客さんは副業の方が多いんですよ。会社員だと日中は時間が取れないので、「土日に対応してくれるのはすごく助かる」とよく言われます。

大きい事務所だと、平日の夜や土日にスタッフに対応させるわけにはいかないですし、先生自身もスタッフに任せきりで実務がわからなくなっているケースがあります。うちはひとりで全部やっているので、実務をわかっている人間がそのままレスポンスする。この身軽さは個人事務所ならではの強みだと思っています。
目指すのは「AIの活用で一番頼りにされる会計事務所」

インタビュアー: 5年後、10年後の事務所の姿を教えてください。

米世様:
AIの活用をしたいときに、一番頼りにされる会計事務所になれたら嬉しいですね。

今一番やりたいのは、freee MCPのユーザーを1人でも多く増やすことなんです。母数が増えていくと、必ず第二・第三の畠山先生みたいな方が出てきます。そうすると私も新しいナレッジに出会えますし、freee側へのリクエストも増えて、プロダクト全体が発展していく。実際、私も相当リクエストを出していて——一番強く言っているのは税務申告のMCP化です。

具体的なイメージとしては、次の確定申告では簡単な申告ならフォルダに源泉徴収票や支払調書、ふるさと納税の資料をスキャンや写メで入れて、ボタンひとつで確定申告書が完成する——そういう世界です。そのためのAIの知見というか、自分なりのノウハウは作ってあって、freeeさんとも共有しています。あの開発チームは優秀なので、多分できるんじゃないかなと思っていますね。

素人とプロの違いって、安定的にプロダクトを実現化できるかどうかだと思うんです。私もベトナムの工場にいたのでわかるんですが、試作品を作ることと、安定した品質で量産することはまったく別の話です。その安定化の部分はfreeeさんの役割で、私は実践者としてフィードバックし続けたいですね。

身近な先生にはすでに個別でfreee MCPの使い方を教えたりもしています。場合によっては今後、導入支援のようなこともやっていきたい。AIを活用したい会計事務所が「まず米世に聞いてみよう」と思ってもらえるような存在になれたらと思っています。

インタビュアー: 最後に、記事を読んでいる方へメッセージをお願いします。

米世様:
純粋に事業を伸ばしていきたいITエンジニアの方は、うちの客層としてすごく合うと思います。ITの話は大好きですし、特にAI周りの話題は大歓迎です。ビジネスパートナーとして一緒にやっていきたいなと思っています。

副業中の方もぜひ相談してほしいですね。法人でも個人でも、副業のお客様が実は一番多いんです。他の会計事務所だと平日の日中しか対応できないと思いますが、うちは平日の夜も土日祝日も対応しています。ひとりで身軽にやっていますし、実務もすべて自分でやっているので、レスポンスには自信があります。

それと、オンライン・ペーパーレスの事務所なので、場所はどこでも大丈夫です。ぶっちゃけた話、毎年ベトナムに行っているんですが、海外からでも普通に仕事ができています。いつでも、どこからでもお声がけいただければと思います。

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取材後記

インタビューの前日、米世先生はfreeeのハッカソンで発表をされていたそうです。その翌日にこの取材に応じてくださる——このフットワークの軽さが、米世先生そのものだと思います。

小学5年生からパソコンに触れ、資生堂で25年間世界を飛び回り、50代で独立してAIをフル活用する。「好奇心が旺盛なので、60でも70でもたぶん変わらない」という言葉が、とても自然に聞こえるインタビューでした。

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※ 本インタビューの内容は取材時点のものです。事務所の体制やサービス内容は変更される可能性があります。最新の情報については各事務所に直接お問い合わせください。