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「中小企業経営者の財務リテラシーが業績を変える」——税理士法人ブラザシップが挑む経営支援のブルーオーシャン

「中小企業経営者の財務リテラシーが業績を変える」——税理士法人ブラザシップが挑む経営支援のブルーオーシャン

松原 潤(まつばら じゅん):税理士法人ブラザシップ 代表社員/公認会計士・税理士

公認会計士・税理士のダブルライセンスを持つ。監査法人を経てハンズオン型のベンチャーキャピタルに転じ、ファンド満期まで投資業務に従事。その後、共同代表の加藤義昭氏とともに二人代表制で税理士法人ブラザシップを経営。名古屋・東京・小牧の3拠点体制で、売上1億〜30億円のフェーズにある中小企業の経営支援を担っている。

売上1億〜30億円のフェーズに特化——600社を支える名古屋・東京・小牧の3拠点体制

まず、税理士法人ブラザシップがどのような事務所か教えてください。お客様の規模感や業種にはどんな傾向があるのでしょうか。

松原:
私たちは売上1億円から30億円のフェーズの企業様を中心にご支援している事務所です。業種にはあえてこだわっておらず、名古屋では製造業のお客様が多く、東京ではより業種が分散している、という傾向はあります。ただ、私たちが重視しているのは業種というよりも、経営の「フェーズ」のほうです。

売上1億円までの規模ですと、社長ご自身がまだ現場に出ていらっしゃることがほとんどです。一方で、そこを超えてくると、社長として見なければならない経営管理の範囲が一気に広がります。「現場プレイヤーから経営者へ」の移行が起きるフェーズで、私たちのサービスが最もお役に立てると考えています。
税理士法人ブラザシップ

以前はもう少し下のフェーズも対応されていたのでしょうか。

松原:
2年前までは、上限を10億円程度に置いていた時期もありました。東京に進出した当初は、創業期のスタートアップのご支援も数多くお引き受けしていまして、私自身もVC出身ということもあり、相談がどんどん集まってくる状況でした。ただ、スタートアップのご支援は案件ごとに複雑化しやすく、属人性が強くなりがちでした。事務所として最もお役に立てる領域はどこか、と改めて見直した結果、いまのフェーズに絞り込ませていただいたかたちです。

3拠点体制についても伺わせてください。

松原:
もともと共同代表の加藤の父が小牧で開業したことが事務所の起点になっています。そこから名古屋、東京と拠点を広げてまいりました。3拠点はそれぞれ独立して動いているわけではなく、地域を跨いだチームを編成しながら一体で運営しています。現在は東京と名古屋にコンサルタント機能を、小牧に会計処理の機能を集約することで、「知識・ノウハウ」と「処理時間」という事務所運営上の二つのボトルネックに同時に対処できる体制を整えています。
「税務顧問は経営支援サービスのなかの一つ」——経営支援型を掲げる理由

「経営支援型の会計事務所」を掲げていらっしゃいますが、一般的な税務顧問業務とは具体的にどう違うのでしょうか。

松原:
私たちが解決したい社会課題は、中小企業経営者の財務リテラシーが低いことです。理由はおおむね三つあると考えています。一つ目は、学校教育で財務を学ぶ機会がほとんどないこと。二つ目は、経理畑のご出身で社長になられる方が少なく、社長になってから経営数字を学ばれる方が多いこと。三つ目が、最も近くにいる存在が会計事務所であるにもかかわらず、税務処理にとどまっているケースが多いということです。

経営者の財務リテラシーが上がれば業績は必ず上がる、という確信が私のなかにはあります。VCから税理士業界に転じたときに強く感じたのは、「税理士には謎の信頼感があって、社長から何でも相談が集まる。しかし、その期待にすべて応えられている事務所はほとんどないのではないか」ということでした。税理士業界全体はレッドオーシャンに見えますが、経営支援型に絞ればまだまだブルーオーシャンが広がっていると判断したことが、いまの事務所のかたちにつながっています。

私たちのなかでは、一般的な税務顧問業務は、経営支援サービスのなかの一つのコンポーネントという位置づけです。決して税務を軽んじているわけではなく、税務はあくまで根幹であり、そのうえに経営支援が積み上がっている、という整理をしています。
VCから親友の誘いへ——監査法人を経て経営支援にたどり着いたキャリア

松原先生は公認会計士・税理士というダブルライセンスをお持ちです。会計士の道に進まれたきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

松原:
もともとTACで学んでいた時代に、加藤と知り合っています。21歳のころから親友という間柄で、別々の監査法人に進みました。私自身は監査法人に入ってからすぐに、「会計や監査よりも、ビジネスそのもののほうが面白い」と感じるようになり、比較的早い段階で監査法人を離れました。その後はハンズオン型のベンチャーキャピタルに移り、ファンドの満期まで投資家としての仕事に従事しました。

ファンドの区切りを迎えたタイミングで、会計の世界に戻るという選択肢は、正直なところピンときていませんでした。「また会計に戻るのはキャリアとして逆戻りではないか」という感覚が残っていたためです。そこに加藤から繰り返し声を掛けられていたのですが、何度かはお断りしていました。

それでも合流を決められた理由は何だったのでしょうか。

松原:
きっかけは、加藤がコンサルティングをしている現場に同席させてもらったことです。実際にお会いした社長様が、いわゆるどんぶり勘定で経営をされていて、予実管理もKPI設定もなく、月次の数字もご覧になっていないという状況でした。「これだけ多くの中小企業がこの状態にあり、私たちが伴走することで本当に良くなるのであれば、これは社会的に意義のある仕事だ」と感じました。

加藤から声を掛けられたのは、おそらく7回目か8回目ぐらいだったと思います。親友と一緒に事業を立ち上げることへの抵抗もありましたし、「加藤の事務所に入って使われる」という構図に見えてしまうことも正直引っかかりました(笑)。一方で、税理士法人は無限責任で経営する事業ですので、加藤の立場から見ても下手な相手とは組めません。私自身は税務未経験でしたが、加藤の側にはお父様から続く事務所の基盤があり、お互いに補完関係が成立する、という整理もできました。最終的には、社会的な意義への共感と、二人で組むことの納得感の両方が揃って、合流を決めさせていただいた形です。
税理士法人ブラザシップ 代表社員・松原潤
「対外」と「対内」で役割を分ける——二人代表制という選択

加藤代表と二人代表制で経営されています。役割分担はどのようになっているのでしょうか。

松原:
現在は、私が東京の代表、加藤が名古屋の代表を務めています。それぞれが得意領域を活かす形で役割を分けています。私のほうはマーケティング戦略の立案、採用、人事、コンサルティング業務などを中心に担当しています。一方で加藤は、組織マネジメント、会社のビジョン、研修事業といった領域を担っています。

性格としても役割が綺麗に分かれていまして、私自身は「社会を変えたい」「外に向かって発信していきたい」という方向性が強い人間です。加藤は逆に、組織のなかのメンバーと向き合うことを大切にしており、そこに楽しさを感じるタイプです。社外に向かう役割と、社内に向かう役割——この棲み分けが自然にできているので、二人代表制でも意思決定の重複が起きにくい体制になっています。
税理士法人ブラザシップ 代表社員・加藤義昭と松原潤
加藤さんと松原さん
「コンサルティングではなくコーチング」——4ステージで現在地から目的地へ伴走する

「コンサルティングではなくコーチング」というアプローチを取られている、と伺いました。具体的にどう違うのでしょうか。

松原:
私たちは経営支援のプロセスを、大きく4つのステージに分けて捉えています。

一つ目が「現在地を素早く掴む」ステージです。クラウド会計を導入していただき、月次決算を早期に出して、税務顧問業務のなかでモニタリングを掛けていく。そのうえで、決算書の見方や経営計画の立て方など、社長ご自身が数字を読めるようになるための研修もご一緒します。最終的に、社長が現在地をご自身で掴めるようになることを目指しています。

二つ目が「目的地を明確に描く」ステージです。三つ目が「目的地に向かう」プロセスのご支援、四つ目が「思いをつなぐ」——事業承継や次世代への引き継ぎに関する論点です。

月次を早めて経営計画を立て、PDCAを回していく。税務顧問という与件にとどまらず、そこから一段踏み込んで、この4ステージに社長を乗せていく——これが、私たちの考えるコーチング型の経営支援です。社長にお願いしている費用についても、「税務顧問はコストに近い性質を持っているが、それ以外の経営支援は事業への投資である」という整理を、お客様にもお伝えしています。
経営支援の4ステージ
経営支援の4ステージ

支援の範囲は、財務以外にも広がってきているのでしょうか。

松原:
そのとおりです。財務が私たちの専門領域であることは変わりませんが、人事とDXは、これからさらに広げていきたいと考えている領域です。経営者の意思決定が最も深く関わるのが、ヒトとデジタルの論点だからです。「人が足りない」「理念が浸透しない」というご相談は、いまも頻繁にいただきます。

もちろん専門家への紹介という選択肢もありますが、私たちの内部にコンサルティング機能として持つことに意義があると考えています。コンサルファームとして、ヒト・モノ・カネを横断的にご支援できる体制をつくっていきたい、というのが現時点での方針です。
業界唯一の「全コンサルタントがMASを実行できる体制」——コンテスト3回優勝の意味

いま松原先生がおっしゃっている経営支援の領域は、業界用語ではMAS(マネジメントアドバイザリーサービス)と呼ばれる領域に近いものでしょうか。

松原:
はい、業界の言葉で言えばMASにあたります。ただ、MASといっても各事務所で扱い方には流派があるのが実情で、多くの事務所では「予実管理」を指していることが多いです。予実管理だけでも一定の成果は出ますが、私たちが目指している経営支援は、もう少し本質的な財務をベースにしたコーチングだと位置づけています。

業界には全国規模の事務所が集まって品質を競うMASコンテストがあり、100名規模の税理士が審査員を務める場でジャッジが行われます。ありがたいことに、私たちはそのコンテストで過去3回優勝させていただいています。
経営支援全国大会の優勝状
経営支援全国大会の優勝状

審査員から見たブラザシップの強みは、どのあたりにあるのでしょうか。

松原:
所長一人がMASを実行できる事務所は業界にも多くいらっしゃいます。ただ、コンサルタント全員がMASを実行できる事務所はほとんど見たことがない、というのが業界を見ての実感です。私たちは税務顧問担当者と経営支援を行うコンサルタントを役割として分けていないので、各コンサルタントがそのままMASのプレイヤーとして動けます。現在、コンサルタントは20名規模になっていて、この「組織としてMASを実行する」体制こそが、コンテストで評価いただいているポイントだと受け止めています。
税理士法人ブラザシップ コンサルタント
コンサルタントの方々
これからは「コンサルファーム」として——10億円規模を見据えるビジョン

最後に、これからのブラザシップの展望と、経営者の方々へのメッセージをお願いします。

松原:
私たちはこれまで「経営支援型の税理士法人」として歩んできましたが、これからはコンサルファームへと自らを位置づけ直していきたい、と考えています。中核には引き続き税理士法人があり、税務は事業の根幹として極めて重要です。そのうえで、人事とDXを含めた経営支援を広げていくためには、法人としての形を「コンサルファーム」として明確に再定義する必要があると感じています。

加藤とは、事業規模としては10億円規模を目指したいという話をしています。そこまで到達できれば、業界での存在感も増し、お客様にお届けできるサービスの品質も一段上に引き上げられると考えています。「会計事務所業界そのものが経営支援型に変わっていくこと」が、最終的に中小企業に与えるインパクトとしては最も大きいと思っていますので、ブラザシップが業界内で目立つ存在になることで、「ああいう事務所を目指したい」と思っていただける同業の方が一社でも増えていくことを願っています。

経営者の方々にお伝えしたいのは、「誰を税理士に選ぶかは経営者人生に大きく関わる、極めて重要な意思決定だ」ということです。ポジショントークではなく、心からそう思っています。月々の数千円から1万円程度のコストの差で税理士を選ぶよりも、本気で経営の相談ができる税理士と組めるかどうかのほうが、はるかに長期の業績に効いてきます。もし、いまの税理士との関係に少しでもモヤモヤを感じていらっしゃるのであれば、ぜひお気軽にお声掛けいただきたいですし、私たち自身も、税理士業界全体を一緒に盛り上げていく仲間を増やしていきたいと考えています。
税理士法人ブラザシップ

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取材後記

「税理士業界はレッドオーシャンに見えますが、経営支援型はまだまだブルーオーシャンです」——松原先生がインタビューの途中で口にされたこの一言に、ブラザシップという事務所の輪郭が凝縮されていたように感じます。VCというキャリアを経て、改めて中小企業経営の現場に深く入っていらっしゃった松原先生だからこそ、財務リテラシーという根本課題に対する確信が揺るがないのだと、お話を伺いながら思いました。

特に印象的だったのは、「コンサルタント全員がMASを実行できる組織」というお言葉でした。所長個人の力量に依存する経営支援ではなく、組織として再現性をもって届け切る——ここに、業界MASコンテストで3度優勝されていらっしゃるブラザシップの本当の強みがあるのだと感じます。税務顧問担当とコンサルタントを分けない、というシンプルな設計が、結果として「経営支援が日常業務として浸透している組織」をかたちづくっていらっしゃるのだと拝見しました。

「これからはコンサルファームとして再定義していく」というご決断は、税理士業界全体の進む先を一段先取りされているように感じました。財務だけでなく人事とDXまで踏み込みたい、というメッセージは、いま中小企業経営者が最も伴走者を必要としていらっしゃる論点と、まっすぐ重なっています。経営フェーズの転換点にいらっしゃる売上1億〜30億円規模の経営者の方々、そして自社の経営支援サービスを一段引き上げたいと考えていらっしゃる同業の先生方には、ぜひ一度お話を聞きにいかれることをおすすめしたいインタビューになりました。

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※ 本インタビューの内容は取材時点のものです。事務所の体制やサービス内容は変更される可能性があります。最新の情報については各事務所に直接お問い合わせください。