リーマンと野村で世界の税務を設計した税理士——国際税務ひとすじ30年、税理士法人キャストグローバル 高橋研が引き受ける「無理難題」

高橋 研(たかはし けん):税理士法人キャストグローバル 共同代表・代表社員/税理士・米国公認会計士・日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)
1994年京都大学経済学部経済学科卒業。営業職を経て米国公認会計士資格を取得し、1997年、オランダの法律事務所ロイエンス&ルフに入所。在籍中に税理士試験に合格し、2002年から東京共同会計事務所へ。2008年、リーマン・ブラザーズ証券に日本税務ヘッド兼(後に北アジア税務ヘッド)として入社するも、入社半年後に親会社が破綻。買収に伴い野村ホールディングスへ移り、日本税務ヘッド・移転価格グローバル・コヘッドとして10年、アジア・欧州・米州にまたがる税務体制の構築に従事した。デロイト トーマツ税理士法人パートナー、東京共同会計事務所パートナーを経て、2023年、15の士業が集まるキャストグローバルグループにおいて税理士法人の共同代表に就任。国際金融と国際税務を軸に、クロスボーダーの相続・資産承継から法人の税務まで手がける。著書に『信託の会計・税務ケーススタディ』『ビークル(事業体)の会計・税務』ほか。
まず、キャストグローバル全体の構成と、その中での税理士法人の位置づけを教えていただけますか。
キャストグローバルは、全部で15種類の士業が集まっているグループです。特色としては、そのバラエティの多さに加えて、国際絡みを非常に得意としているというところですね。グループの中に中国や東南アジアの拠点を持っていまして、現地のアドバイザーが直接お客様のサポートをしています。15の幅広さと、海外に直接対応できるところ。ここを強みにしています。
弁護士法人も大きいですし、特に司法書士法人は日本で一番大きいと聞いています。東京事務所だけで200人ほどいるようです。その中に税理士法人がグループとして2つありまして、ひとつは大阪にあります。こちらは規模としては小さく、中国のお客様を主にサポートしていると聞いています。ただ、中国絡み以外の国際案件には手が届かない。本格的にクロスボーダーができる人が欲しいと、ずっと思われていたようです。
そこで、グループ代表の村尾弁護士——私の前職のお客様だったのですが——から「クロスボーダーができるね」ということでお声がけをいただきました。東京で税理士法人を作るから代表をやってくれ、と。ぜひということでお受けしたのが2023年です。
その村尾の経歴が、また非常に変わっていまして。日本の弁護士ではあるのですが、ずっと中国絡みの業務をやってきていて、30年以上になると聞いています。上海に14年、香港に7年滞在していまして、上海市に貢献した外国人がもらえる賞を2回受けているそうです。ご本人はそれが自慢らしいですね。さらに香港のソリシター、いわゆる弁護士の資格も持っています。日本人で香港ソリシターの資格を持っているのは3人しかいないそうなのですが、そのうち2人が当事務所にいます。これは結構な特色だと思います。弁護士も、司法試験の試験委員を務めていた者がいたりと、いろいろな人間が集まっています。中国の話は隣で聞いていて、私は業務に携わっていないのですが、中国の反スパイ法対応とかすごいなと思うことが本当に多いですね。
高橋さんは米国公認会計士の資格を先に取られて、国際税務の世界に入られています。日本の税理士になってから海外へ、という順序が一般的だと思うのですが、なぜその入り方だったのでしょうか。
一番最初は、営業職をやっていたんです。ただ、営業はそんなに得意ではありませんでした。営業ってやってみると本当によく分かるのですが、天才的な人がいるじゃないですか。まったく努力しなくてもどんどんお客さんが取れてしまうような人が隣にいて、一方で私はすごく努力しているのに成績が真ん中くらい。これは絶対に向いていないに違いない、ということがよく分かったんですね。
だったら、どうせ努力するなら自分が好きなもの、向いているもので勝負しようと思いました。ちょうどその頃、日本人でもアメリカの会計士資格が取れる、ということが言われ始めていた時期だったんです。これは面白そうだ、やってみようというのが、もともとのきっかけですね。海外やクロスボーダーのことがすごく好きだったので、そういう仕事をしてみたいという気持ちもありました。
本当にミーハーなのですが、トム・クルーズの『ザ・ファーム 法律事務所』という映画があったり、マイケル・ダグラスとチャーリー・シーンの『ウォール街』という映画があったりしまして。切った張ったの世界というか、かっこいいなと思って、あんなことをやりたいと考えたんです。それで法律事務所や証券会社に憧れました。
資格を取られて、最初の就職がオランダの法律事務所だったとお聞きしました。
ロイエンス&ルフというところです。入るまでまったく知らなかったのですが、めちゃくちゃ大手でした。アムステルダムの事務所で働いていたときに、すごく驚いたことがあります。フィナンシャル・タイムズという金融新聞がありますよね。ある日その一面を見たら、出ている記事が全部、自分のファームの人間が絡んでいることだったんです。この記事はあのパートナーで、こっちはこの人で、と。
「全部ここに集まっているじゃないか」となった日がありまして、すごいなと。世の中の大きな動きの中心に、実はオランダの事務所が絡んでいる。みんなそんなに使っているんだ、というのが驚きでしたね。ここには5年ほど、税理士試験に受かるまで在籍しました。その後、東京共同会計事務所に移りまして、こちらも5年ほどです。
2008年にリーマン・ブラザーズに入られて、半年後に親会社が破綻します。当時の半年間を、どのように過ごされていたのでしょうか。
入ったときはまず、顔と名前を覚えてもらわなくてはいけないということで、いろいろな部署の、いろいろな人に会いに回っていました。それから、そもそも証券会社のビジネスがよく分かっていなかったので、それを覚えようと思って多くの人に話を聞きました。そうしているあいだにもひっきりなしに問い合わせが入ってきますし、取引の照会も来ますから、それを対応しながら、まずは会社に馴染もうとしていた感じですね。
それと並行して、外部の人にも会いに行っていました。たとえば日本橋税務署です。日本国債の利金の支払いに関する源泉徴収の取り扱いについて、これでいいんですかと聞きに行きました。日銀が日本橋にあるので、所轄が日本橋税務署なんですね。同じ絡みで、証券保管振替機構、いわゆる「ほふり」にも行きました。国債・株式の持ち主の記録はどうやっているのか、持ち主が外国人なのか個人なのか法人なのかで源泉税率がまったく違うのですが、その記録方法や確認はどうしているのか、と。東京証券取引所にも、別件で疑問に思うことがあって、そもそも仕組みを知りたいと思って問い合わせて聞きに行きました。
「リーマン・ブラザーズです」と言わないと中に入れないところに、アポを取って会いに行って話を聞ける。あれは結構面白かったですね。やっと人の名前を覚えてきたのに、というところで破綻してしまったので非常に残念でしたが、かなり忙しく、やれることをやるという形でやっていました。
破綻後、野村ホールディングスへ移られます。あれだけ大きな会社の税務を整えるというのは、どこからどう手をつけるものなのでしょうか。
まず、仕組みを知りたいと思ったんですね。実効税率80%という、とんでもなく高い税金の決算を作っていた会社だったので、そもそもなぜ80%になっているのだろうと。
これは実は非常に簡単で、すぐ横に決算書を作っているチームがいたので、その人たちと仲良くなって、作業をやっている方に話を聞いたんです。かわいそうなことに、実効税率の作業をやっていたのは元リーマンの人間でした。誰もやりたくない作業だったらしく、リーマンから人が来たからもう押し付けてしまえ、ということだったようで、その人だけがずっと毎日残業しているような状態だったんです。なぜそんなに苦労しているんですか、というところから話を聞きながら、どうやって実効税率の分析をしているのか、データはどこから取るのか、と細かいことを伺っていきました。そのうえでデータをもらって見てみたら、こういう理由でこうなっているのか、ということが分かったんです。
分かった上で、ではどうしたらいいのかを考えていく。すぐに答えが出るわけではないのですが、いろいろな仕事をやっていく中で「ああ、こうなっているのか」と分かる瞬間がたまにあるんですね。だったらこれが使えないかな、とアイデアを膨らませていく。そうやって考えがまとまってきたら、実行に移していきます。
ただ、実行のほうが大変でして。どうしても海外の拠点と協力しないとできないので、どこから話をどう落とすかがすごく大事なんです。私は東京の本社にいますから本社の偉い人には話ができるのですが、その人が誰に口を利けるのか、最終的に海外にいる誰に話を通さなければいけないのか。これを探っていくのが重要でした。
そのときにすごく役に立ったのが、再雇用のベテランの方々です。野村は60歳が定年なのですが、「キープ・ヤング」ということで役員、特に執行役、は57歳で退くような仕組みでして、再雇用の方が結構いらっしゃったんですね。この方々は、再雇用だと思って侮っていると、実はものすごく偉かった方だったりするんです。今の部長の元上司にあたるような。ですから海外拠点を含めて社内をものすごくよくご存じですし、しかも再雇用ですから出世に関係なく、いろいろなことを率直に話せる立場でもある(笑)。
この方々に「すみません、教えてください。本当に困っているんです」と教えを乞いに行くと、気持ちよく教えてくださるんですね。あの人と話してもだめだ、この人に話を聞け、と。それで、こういうルートで話を持っていけばいいのか、というのが分かりました。あれを活用できたのは本当に良かったと思います。やはり、長くいらっしゃる方は大事です。あの方々がいなかったら、本当に困っていたと思います。
その野村を、10年で出られます。
10年いた後、あまり新しいことが出てこなくなったんですね。知らないことがあまりないな、と。これ以上いても自分が得るものがない。それに加えて、やり尽くしてしまった感覚がありました。税務の体制を一から作るということをやってきて、100%ではないにせよ大きなところは埋めてしまった。自分がやらなければいけないことがないな、と思ったんです。
そこで、得た知識と経験を外の世界に還元することをやっていきたいと考えました。ちょうどその頃にビッグ4のパートナーの方から声をかけていただいて、デロイト トーマツ税理士法人に2年ほど。その後、東京共同会計事務所に戻り、村尾弁護士からお声がけをいただいて現在に至ります。
ロンドン駐在時代のお話で、印象に残っているエピソードがあると伺いました。
ロンドンに駐在してしばらく経った頃です。当時イギリスの新聞では、イギリスの大きな会社がまったく税金を払わなくてけしからん、と大企業が叩かれていました。実際ひどくて、それはひどいよねと思う金額だったんです。売上の規模に対して、払っている税金が桁違いに小さい会社が多かった。
その中に製薬会社のGSK、グラクソ・スミスクラインがありまして、ここも全然税金を払っていないということで、BBCの番組で特集され、散々に叩かれていたんですね。そういうものを見ていたときに、たまたまGSKの税務担当者と会う機会がありました。それで「BBCの番組を見たよ、なぜそんなに税金を払わないの」と聞いてみたんです。
そうしたら、「上場しているけれど、俺たちのステークホルダーは株主ではないんだ。病院で新薬を待っている患者がステークホルダーだ。だから払う税金があったら、そのお金を新薬の研究に使うんだ」と。とても衝撃を受けました。
当時、私は野村で節税をやっていました。野村で節税をすると何になるかというと、トレーダーがより大きなポジションを取る、掛け金を大きくして勝負する、ということなんですね。それは社会貢献になっているのだろうか、と本当に悩みました。かたやGSKの税務担当者は、新薬を作るのだという一心で同じことをやっている。世のため人のために仕事をしているなという印象を受けて、そういうことをやってみたいと思ったんです。
あらためて、高橋さんの得意領域を教えてください。
やってきたことで言えば、国際金融と国際税務です。金融取引を苦手とする税理士が多い中で、私は証券会社の中にどっぷり浸かっていましたので、そこはまったく問題なく対応できます。
それからクロスボーダーの取引ですね。野村は日本の会社ですが、クロスボーダーではないものを探すほうが難しいくらいでして。たとえばバックオフィス部門はインドに3,000人ほどいましたし、事務の書類関係については中国の大連に事務センターのようなものを作って、日本語を話せる若い方をたくさん集めて回していました。日本の業務を海外に委託しているわけです。日本株のトレーディングにしても、東京だけでなくシドニー、シンガポール、ロンドン、ニューヨークに人を配置してやっていました。そうしたクロスボーダーの取引を、税務上どう配分し直すのかということを、いつもやっていました。放っておいてはいけないところなので、その作業を税務部門がやらなければいけない。それを毎月やっていた、という感じですね。
「無理難題をなんとかする」というスタイルだと伺っています。高橋さんにとっての無理難題とは、どういうもので、どう解かれるのでしょうか。
一番こたえたのは、やはり野村に入って実効税率80%という会社を見たときに、「なんとかしろ」と怒鳴られたことですね。なんとかしたいですよ、という感じなのですが、そもそもなぜ80%になっているかも知らない段階で怒鳴られるわけですから。分かりましたと言いながら、そこから学習が始まるんです。
学習をしていって理由が分かると、対応も分かってくる。こういう風にしたらいいのではなかろうか、という仮説を立てるわけです。仮説を立てたら実行に移していかなければいけませんが、実行にあたっては先ほどの再雇用の方々に伺いながら中のことを理解して、どこにどう話を通すかで、できるかどうかが変わる。サラリーマンとしては当たり前のことなのでしょうけれど、どこからどういう話を落としていくのか。それをきちんと中でやりました、というのは一つ言えるかなと思います。理屈だけではないんですよね、実社会は。
心に刻んでいるモットーが二つありまして、これも通じるところがあります。ひとつは「頂戴した質問には24時間以内に返答せよ」。以前、ある著名な経営者の顧問弁護士が心がけていたこととして伝え聞いたものです。当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだった経営者を顧客としてつかむには、24時間以内に回答しなければ切られる、と。もうひとつは「10分で60点を出せ。1時間で100点なんていらん」。これはリーマンから野村に移籍した当時、野村の社長を務めていた方の口癖でした。主計部長も歴任された方で、税務部門への注文も手厳しかったんです。質問したらできれば即答、遅くても10分で60点の回答を出せ。1時間経って100点の答案を出されても、1時間後には相場が動いてしまっていて、まったく役に立たない、と。この二つは、その後の私の顧客対応にも生きています。
ご相談される方の資産規模について、伺ってもよいでしょうか。以前、2桁億円、3桁億円というお話が出ていました。
これは最近、他の方から言われたのですが、いつも「2桁億、3桁億をお持ちの方がお客様です」と言っていると、それくらいないと声をかけてはいけないのではないか、と思ってしまう人がいるそうなんです。実は、そうでもないんですね。
そんなにお持ちでなくても、タイムチャージの報酬をお支払いいただけるのであれば、どなたにご相談いただいても構いません。たとえば「こういうことを考えていて、方向性について相談したい」ということであれば、1時間5万円とはいっても、2〜3時間であれば10万円から15万円でご相談に乗れます。ワンタイムの、スポットのご相談でも対応できますと、申し上げたほうがいいのだろうと思いました。ご質問がまとまっている方であれば、少しだけ聞いていただいて、持ち帰ってご検討いただくのでもまったく構いません。そういう形でもお問い合わせいただくほうが大事だと思っています。
今後5年、10年をどう歩んでいかれたいですか。
他の誰にもできない何かをしていける税理士でありたい、というのはずっと思っています。そうでなければ、生まれてきた意味がないと思っていまして。幸いなことに、おそらく誰も経験したことがないようなことを経験させてもらってきました。ある意味、その経験はすごく大事だなと思っています。
特に最近はAIが台頭してきて、いろいろなことがお客様側でできてしまうということが起こってくるだろうと思っています。そのときに何が大事かというと、結局は今までの経験なんですね。こういう状況になったらこうなりそうだ、という肌感覚、空気感のようなもの。それを知っていることが、実はすごい武器になるのではないかと最近思い始めています。それを知っているからこそ、このプロンプトが出せる、ということもあると思うんです。経験したからこそのAIの活用をやっていきたいですね。私自身、最初のリサーチはかなりAIにお願いしています。すごく便利にはなりました。ただ、間違えているなと思うことも多いですね。きちんとしていない方のウェブページも拾ってきてしまうからでしょう。
実は、AIがここまで来ることは分かっていました。2016年頃から、野村はもうそういう状況になっていたんです。RPAの導入を2016年頃から進めていて、ITでできるのだから人はいらない、ということで、インドのバックオフィスの人員をすごい勢いで削減し始めていました。それを見て、人件費とIT費用をすげ替えるだけで、人はいらなくなるかもしれないと思ったんですね。
このままずっと定年まで野村にいることはできる。できるけれど、俺の仕事はなくなるな、と思ったんです。子どもに「お父さんは何をしていたんだっけ」と聞かれたときに、「今はなくなった仕事なんだけどね」とは言いたくない。どうせなら、まだ存在している仕事をやっていたお父さんでいたい。AIで大体代替できるような仕事はやりたくないので、ではAIにできないものは何だろうと探し始めたのが、2016年頃だったという感じです。
最後に、いま解決したいと思われている課題と、どういった方にご相談いただきたいかを教えてください。
今ない価値を届けたい、というのがあります。それと、社会問題の解決ですね。税理士という業界全体で言えば、もちろんいろいろな問題を解決しているのでしょうけれど、本当のお困り事に答えていないという感覚があるんです。
たとえば中小企業のオーナーの方は、自社株や不動産をお持ちという方が多い。でも、亡くなったら10ヶ月以内に現金一括で相続税を払ってくださいと言われるわけですよね。自社株や不動産をお持ちだと現金は持っていないので、相続税なんて払えませんよ、というのが普通です。払えないけれど払えと言われる。しかも税率が異常に高くて、日本の最高税率は55%です。半分以上を持っていかれる。財産の半分以上の現金を持っているかというと、絶対に持っていないんですね。これをなんとかしてあげたいと思っています。都心にご自宅をお持ちの方も同じです。財産の半分以上が自分の住んでいる家で、そこに相続税を払えと言われるわけですから。
ですので、相続税の対策が終わっていない、資産規模の大きな方。まずはこの方々ですね。そこに至るまでの毎年の所得税と法人税も対応します。そして、国際税務が得意ですから、国をまたぐ様々なお困り事。海外投資でも、海外不動産でも、ご家族が海外にいらっしゃるということでも構いません。国境をまたいだお困り事は、ぜひご相談いただければと思います。
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取材後記
「営業では成績が真ん中くらいだった」。取材の冒頭で、高橋さんはご自身のキャリアの出発点をそう振り返りました。世界有数の投資銀行でグローバルの税務体制を設計してきた方の第一声がこれなのか、と少し驚きましたが、話を伺ううちに、この方の一貫性はまさにそこにあるのだと感じました。向いていないと分かったら、向いている場所へ動く。分からないことがあったら、隣の席の担当者にも、税務署にも、取引所にも、自分から会いに行く。実効税率80%という数字を突きつけられたときに最初にされたことが、「その作業をしている人に話を聞く」だったというのは、とても象徴的なエピソードだと思います。
もうひとつ印象に残ったのは、GSKの税務担当者の言葉を語られたときの熱量でした。同じ「節税」という技術が、片方ではトレーダーの掛け金を大きくするために使われ、片方では新薬を待つ患者のために使われている。技術としては同じことをしているのに、向かう先がまったく違う。あの問いを自分の中に持ち帰ったからこそ、いまの「本当のお困り事に答えていない気がする」という感覚に繋がっているのだろうと思います。
取材の中で、高橋さんはご自身から「2桁億、3桁億をお持ちの方がお客様です、と言い続けていると、それくらいないと声をかけてはいけないと思われてしまう」と切り出されました。そのうえで、スポットの相談にもタイムチャージで応じられるとお話しくださいました。国際税務という領域は、どうしても「限られた人のもの」に見えてしまいます。その扉を自分から開けにいこうとされている姿勢に、この方の仕事の向き先が表れているように感じた1時間でした。
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