八王子市 / 新宿区

【八王子・新宿】「格安サービスはしません」——AI時代に“属人化”を極める税理士法人グリュックの逆張り経営

【八王子・新宿】「格安サービスはしません」——AI時代に“属人化”を極める税理士法人グリュックの逆張り経営

滝沢 淳:税理士法人グリュック 代表社員/税理士・FP・行政書士

立命館大学法学部を卒業後、大学院で家族法・租税法を研究し、論文「21世紀の家族と税制」で金賞を受賞。平成18年に税理士登録。大手会計事務所2社で相続税等の資産税関係の税務から、上場企業の対応を経験し、新宿で個人事務所として開業したのち、実務の拠点を八王子にも構え、2021年10月に税理士法人化。事務所名の「グリュック」はドイツ語で「幸せ」を意味する。長野県出身。法人顧問から相続・事業承継・M&Aまで幅広く手がけ、「お客様の幸せと成功を支えるベストパートナー」を理念に掲げる。

新宿と八王子、二つの拠点で——税理士法人グリュックの”いま”

まず、現在の事務所の体制とお客様の傾向について教えてください。新宿と八王子、二つの拠点はそれぞれどんな役割なのでしょうか。

滝沢:
新宿はもともと私が開業した場所で、都心のお客様との接点を大切にする拠点です。一方で、八王子は土地も家賃も比較的抑えられて、人も集まりやすいので、事務作業はこちらで中心に行っています。八王子は駅に直結しているので、新宿のお客様のところへ伺うのもアクセス時間はほとんど変わらないんですよ。両方を活かす”二足の草鞋”のような形ですね。
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お客様の客層やエリアは、どう構成されていますか。

滝沢:
エリアは都心のお客様が多いですね。加えて、銀行・証券会社のウェルス層(富裕層)向けの顧問のようなお仕事もしているので、そのご紹介で横浜とか越谷のあたりまで伺うことは日常です。私が長野出身ということもあって、山梨や長野はもとより、新潟・広島など全国のお客様もいらっしゃいます。電車や車の便がいいので思いのほか広い範囲をカバーしているんです。法人の顧問先で150〜200社ほど、これに相続担当部門が専門的に、その年により件数が異なりますがかなり多くの相続案件を手がけています。

2021年の法人化から約5年。事務所として変わったこと、増えてきた相談はどんなものですか。

滝沢:
お客様の層そのものは大きく変わっていないのですが、法人化したことでお客様からの信頼を得やすくなった実感はあります。個人事務所のときは私個人にお仕事をご依頼いただくような感じでしたが、それだとどうしても限界が来たり、私が何かあった時にお客様にご迷惑がかかる。そこで、安心してお客様にご依頼いただけるよう税理士法人化して「グリュック」というブランドとして構築していきたいという思いが、法人化のいちばんの背景にありました。当社という組織にご依頼いただくことで、何かあっても全員でカバーできるというのは、お客様にとって大きな安心だと思っています。採用の面でも、組織として見ていただけるのは大きいですね。

率直に、グリュックさんは「どんな経営者・お客様」と相性がいいと感じますか。

滝沢:
通り一遍の作業だけを望んでいない方ですね。逆に言うと、コストだけを重視される方とは、正直ミスマッチになってしまうと思います。ちゃんと対価をお支払いいただいて、充実したサービスを受けたいという方とは、とても良い関係を築けます。「格安サービスはしません」というのは、ホームページにもはっきり掲げているんです。価格競争に入ってしまうと、どうしても外注のような関係になってしまう。そうではなく、パートナーとして一緒に歩んでいくお客様と一緒にお仕事をさせていただきたいと思っています。その証拠に、開業以来、当社とご契約いただいているお客様で、お断りいただいたお客様はほぼありません。
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「安かろう悪かろう」では、お客様は幸せにならない——理念が固まるまで

大手会計事務所2社や大学院での研究など、濃いご経歴をお持ちです。いま振り返って「あの経験が今の判断に効いている」と感じる場面はありますか。

滝沢:
大学の法学部から、大学院の法学研究科まで税法で著名な先生のもとでご指導いただいていたので、法律的な観点からお客様のご要望を整理することが、今でも自然にできていると思います。弁護士や司法書士の方と一緒に、複雑な案件を法律面から詰めていくことも多いですね。法学部出身ということから友人にも法律家が多いので、例えば、相続をどう戦略的に遺産分割していくかといった相談などを弁護士さんと連携しながら進められるのは強みだと思います。

会計の面では、前職で上場企業まで担当していた経験が、今の法人のお客様への対応に効いています。例えば、税法上はこういった考えだが、会計監査でこういう指摘を受ける可能性があるので、こうしましょうという提案をしたりします。

法律と会計、その両面が生きている感覚があります。
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約25年程この仕事を続けるなかで、税理士としての”軸”はどう固まっていきましたか。

滝沢:
「お客様がいちばん喜ぶ形は何か」を常に中心に置く——これに尽きます。お客様が何を求めていて、何が幸せなのかを考えながら仕事をする。事務所名の「グリュック(幸福)」も、まさにそこから来ています。そしてもう一つが、「格安サービスはしない」ということです。

その考えに行き着いたきっかけのようなものはあったのでしょうか。

滝沢:
安かろう悪かろうのサービスは、形のないものだからこそ、かえってご不満につながりやすいんです。私は今、東京税理士会で苦情相談の対応もしているのですが、強いクレームの話をよくよく伺うと「決算だけ格安でやってもらっていた」といったケースが本当に多い。駆け出しの頃に安く受けて、受けきれなくなって対応が雑になっていく——そういう構図なんですね。だったら、きちんと対価をいただいて、きちんとやらせていただく。そういうお客様に丁寧に向き合うほうが、結局はお互いに幸せになれる。前職の一つが安い案件も受ける事務所で、安い案件ほどクレームになりやすいと肌で感じたことも、今の方針につながっています。
平等より公平、税金より納得感——相続・事業承継の向き合い方

「幸せ・成功を支える」を実感した、直近の具体的なエピソードがあれば教えてください。

滝沢:
相続でご家族が揉めていた案件で、最終的にみんなが納得し、将来の幸せを考えた形で遺産分割を着地できたケースがありました。金額としては必ずしも多くなかった方もいらっしゃいましたが、相続人それぞれが、いちばん幸せになる形を提案できたと思っています。

相続では、関係性を大切にされていると伺いました。判断の軸はどこにありますか。

滝沢:
平等よりも公平、税金よりも納得感です。税金を少しでも減らすために無理に分割の形を変えることもできますが、それで揉めてしまっては意味がない。税金が多くなってしまっても、将来的に良い結果になるケースが絶対あるんです。だから私は「これは払ったほうがいいですよ」とはっきり申し上げます。税金だけではなく皆様の幸せを中心に考える、というのを一つの軸にしています。

事業承継・M&Aも手がけられますが、同世代の経営者に「これだけは早めに」と伝えたいことはありますか。

滝沢:
事業承継は、やり方もマインドも税制も変わっていくものです。だからこそ、常に新しく考え続けていく必要がある。コンサルティングとして一度入っても、それで終わりにはできません。状況も人も環境も変わりますから、長い時間をかけて考えていくもの。M&Aも同じで、一発で決めようとせず、長いスパンで、本当に良いパートナーと組まないと決まりません。テクニックに走ってしまうと、うまくいかないと思っています。皆さんスポットでご依頼されがちなのですが、長い目で伴走させていただくのがいちばんです。
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AIの時代こそ、人の判断を——属人化を”極める”逆張りの経営

AIやクラウドが急速に進むなか、これからの税理士が果たすべき役割をどう考えていますか。

滝沢:
AIやITは、むしろ積極的に活用しています。私自身、もともとコンピューター関連のアルバイトをしていたくらいITが好きで、先進的なものはどんどん取り入れてきました。事務所の席は一人ひとりがブース型になっていて、各デスクにスキャナーやプリンターを完備し、会計データの取り込みまで自席で完結できるようにしています。これは開業当初からやっていることなんですよ。

そのうえで、人にしかできない部分はどこにあるとお考えですか。

滝沢:
いまは仕組化して属人化しない方向が世の中の潮流ですよね。でも、そういった標準化を行ってしまうと、結局はコンビニ型になってしまうんです。無難な品揃えで、誰でもできる代わりに、満足度は一定のところで止まってしまう。そして誰でもできることなら、いずれAIに置き換わる。だから私たちは、あえて逆張りで、職員一人ひとりの個性を活かした”属人化”を極めようとしています。お客様は「人」につくものですから。経営的にはものすごく大変な道ですが、そこを大事にしています。

そうなると、職員の方の育成がより重要になりますね。

滝沢:
そうですね。今は私が一緒にOJTで動きながら育てています。職員は私を含めて9名、うち3名が有資格者です。ただ、正直に言うと資格はそれほど関係ないと思っているんです。資格は最低限の知識の保証でしかなく、知識があることと、それを使いこなせることは別ですから。むしろ、お客様のことを一生懸命考えられる人のほうが、評価も満足度も高い。今はお客様もインターネットやAIで詳しい情報をご存じです。「AIにこう書いてあったけど」というご質問もすごく増えました。しかし、AIは杓子定規に多数派の答えを出しますが、個別の事情を踏まえて「あなたの場合はこの方がよいのではないか・・・」など、お客様の意思決定をいかに人間的にお手伝いできるか——そこが、これから残る税理士の仕事だと思っています。
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会計ソフトについては、どのように選ばれていますか。

滝沢:
基本はお客様が使いやすいものに、こちらが合わせるスタンスです。基本的には弊所のほうが会計に関するITスキルは高いはずなので、無理にこちらの都合に合わせていただく必要はない。お客様が現在使っていらっしゃるソフトなど、お客様に応じて柔軟に対応しています。特にこだわりのないお客様には、お客様にいちばん合った使いやすいソフトをおすすめしています。様々なソフトを使ってみて、プロの視点でみて、将来的に一番使いやすいだろうソフトをお客様本位で選んでいます。ソフトの進化も日進月歩なので、常に情報を得るようにしています。どのソフトも操作性や将来性向上にも期待しています。

「地域No.1、そして地方都市へ」という構想は、いまどのあたりまで進んでいますか。

滝沢:
正直に言うと、私自身は「地域で一番」にそこまでこだわってはいないんです。昔は日本一を目指していたこともあったのですが、それは大変だと分かりました(笑)。今は50名規模くらいにできたらいいなと思いつつ、人数を追い求めることが本当に正解なのか、悩み始めているところでもあります。
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規模を大きくしたい、という思いの根っこにあるものは。

滝沢:
一定の規模があると、お客様が安心してご依頼しやすいんです。たとえば急に「今月中に100件の申告をお願いしたい」と言われても、一人では絶対に受けられない。でも10人、20人いれば対応できる。誰かが病気になっても、みんなでフォローし合える。そういう安心のためにも、組織を大きくしていきたい。ただ、それと相反するのが、先ほどの品質の問題なんです。規模を広げながら、いかに品質を維持するか。これが最大の課題ですね。目指しているのは、ホテルのコンシェルジュのような存在です。評判の高いホテルのように、高いホスピタリティでお客様一人ひとりに向き合う——そんな事務所でありたいと思っています。

最後に、これから税理士を探す経営者へメッセージをお願いします。

滝沢:
繰り返しになりますが、私たちは格安サービスはいたしません。その代わり、お客様のご満足と、納得のいく形、そして幸せや成功を、最大限に追求していきます。単なる外注先ではなく、お客様のコンシェルジュとして、パートナーとして、一緒に歩んでいきたい——そう思っていただける方は、ぜひ一度ご相談いただければ嬉しいです。

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取材後記

滝沢さんのお話で一貫していたのは、「お客様の幸せと成功」という理念を、決して綺麗事で終わらせない徹底ぶりでした。事務所名の「グリュック(幸福)」を掲げ、「格安サービスはしません」とホームページに明言する潔さの裏には、苦情相談の現場で「安かろう悪かろう」がお客様を不幸にする構図を数多く見てきた、確かな実感がありました。

印象的だったのは、世の中が「仕組み化・属人化しない」方向へ進むなかで、あえて職員一人ひとりの個性を活かす”属人化”を極めるという逆張りの経営哲学です。開業当初からブース型の執務環境を整え、AIもクラウドも積極的に使いこなす一方で、「誰でもできることはAIに置き換わる。個別の事情を踏まえて判断できる人こそ残る」と語る姿は、IT時代の税理士像そのものでした。相続では「平等より公平、税金より納得感」、事業承継では「テクニックに走らず長いスパンで」。一つひとつの言葉に、お客様の人生に伴走してきた重みが宿っています。「ホテルのコンシェルジュのような事務所でありたい」という言葉のとおり、八王子・新宿エリアで、価格ではなく価値で選ばれ続ける税理士法人だと感じました。

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