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「事の根」を聞く税理士——京大医学部出身・顧問先750社・残業ゼロ、ことのね税理士法人・速水芹苗の仕事論

「事の根」を聞く税理士——京大医学部出身・顧問先750社・残業ゼロ、ことのね税理士法人・速水芹苗の仕事論

速水 芹苗(はやみ せりな):ことのね税理士法人 代表税理士

滋賀県大津市出身。京都大学医学部人間健康科学科卒。医療の道を志すも実習での違和感を拭えず、知人の飲食店経営を支えたことを機に税理士へ転身。3年で資格を取得し、令和4年に独立。「自分の人生これで良かったと思うために働く」という一貫した軸のもと、お客様にもスタッフにも同じ誠実さで向き合う道を選んできた。令和8年4月、共同代表として「ことのね税理士法人」をスタート。現在は税理士3名を含むスタッフ30名とともに、全国750社の顧問先の安全な経営を支える。スタッフの働く環境を徹底して整えることで生まれる質の高いサービスと、派手さよりも「当たり前を当たり前に」を徹底する姿勢が、多くの経営者から信頼を集めている。大阪・天満橋。

顧問先750社・スタッフ30名——「街の税理士事務所がそのまま大きくなった」

まず、事務所の体制から伺えますか。

速水:
税理士が3名いまして、従業員は全部で30名です。パートの方もいますが全員フルタイムなので、フルタイム30名という体制ですね。

お客様の層には、何か特徴がありますか。

速水:
それがですね、うちは本当に「街の税理士事務所がそのまま大きくなりました」という感じなんですよ。顧客数でいうと750社ありますが、業種はバラバラです。私単独でいえば、医学部出身ということもあって障がい者福祉や訪問介護・看護事業のお客様が多いのですが、会社全体で見るとかなり分散しています。

特徴的なのは獲得ルートで、新規のお客様の9割が既存のお客様からのご紹介なんです。だから創業期から関わらせていただくケースが多いですね。エリアは沖縄から北海道までいらっしゃいますが、大阪が7割くらい。年商のボリュームゾーンは2,000万円から3億円くらいで、大きいところだと数十億円規模のお客様もいらっしゃいます。
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対応スタイルはいかがですか。

速水:
オンライン対応が前提です。9割方オンラインで、一度も直接お会いしたことのないお客様がほとんどですね。

対面でないことに不安を感じるお客様はいらっしゃいませんか?

速水:
だからこそ、連絡のスピード感と定期的な面談での価値提供を徹底しています。最低でも1時間に1回はレスポンスをするルールにしていて、対面以上の距離感と安心感を感じていただけるように工夫しています。定期面談の準備も、お客様あたり1時間ほどかけていて、いかによりよいご提案ができるかを日々模索するようにしています。
京大の正門で立った鳥肌と、病院実習での違和感

速水さんのご経歴も伺いたいのですが、京都大学の医学部に進まれた理由はどこにあったんですか。

速水:
大前提として、京大に行きたかったんです。中学生の時、有名大学を見に行くツアーがあって、いろんな大学を回ったのですが、京大の正門に入った時だけ、鳥肌が立ったんです。当時は京大がどれだけ難しいのかも分かっていなかったのに、「私は多分ここに行くんやな」というイメージを強烈に持ったのを覚えています(笑)。

今振り返って、その鳥肌の理由は何だったと思いますか。

速水:
自由な校風じゃないですかね。この大学は何をしてもいい。ただ、放っておかれるので、落ちこぼれても救ってはくれない。自由と、その自由を実行するために負うべき責任のバランスがすごく良かったなと思います。そこから、京大に行くにはどの高校に行けばいいかを逆算して考えました。学部は、自分の勉強したことで人様のお役に立ちたかったのと、資格があれば潰しが効くかなという考えで医療系を選びました。

そこからなぜ、医療の道に進まれなかったんですか。

速水:
私の学科は医師にはなれないコースなのですが、病院実習はあるんです。そこで実習に行った時に、「私は病院で働かない方がいいな」と思ってしまって。周りの子たちは、お給料度外視でホスピタリティ全開、残業も何時間でもできますという姿勢だったんです。私はそれができないなと思いました。何のために働くかと考えた時に、「自分の人生これで良かったな」と思うために働くのであって、そのバランスが崩れる働き方はできない。でもこの環境でその考え方は、多分悪になってしまう。だったら失礼だから身を引いた方がいいなと、病院で働く道は違うなと思ったんです。
「そのお客様のために、税理士になったんです」

では卒業後は、どういう流れで税理士に向かうんですか。

速水:
就職活動もしてみたのですが、お給料の高い外資系コンサルなどを見に行ったら、受けに来ている学生さんのレベルが全然違って、見事に面食らいまして。この競争にはとても勝てないと思って、就職はしないまま卒業するんです。実は卒業前に母を病気で亡くしていて、少しお金を残してくれていたので、それで不動産を買ったんですよ。初任給くらいの収入にはなっていたので、働かずに「何かやりたいことを探そうか」とぼんやりしていた時期がありました。

そんな時に、仲良くさせてもらっていた飲食店さんが法人成りをするので経理の人間を探している、と聞いたんです。私は何もしていない身でしたから、簿記もやったことがないくせに「ほな、やります」と言って。それが第1号のお客様です。そのお客様のために、税理士になったんです。

資格を取ってから税理士を志すのではなく、お客様が先だったんですね。

速水:
最初は会計ソフトにお金の動きを入力するとか、給与計算をさせてもらうとか、そんなところからでした。どんどん色々なことを任せていただいて、融資や補助金のお手伝いまでできるようになって、最後は「税理士として代理権限を持って、申告まで面倒を見てほしい」と言われたんです。それで資格の学校に「税理士ってどうやったらなれるんですか」と聞きに行って、申し込んで始まったという感じです。だからその時は、税理士が何をする仕事かも、試験がどれだけ大変かも知りませんでした(笑)。

では勉強のモチベーションは何だったんですか。

速水:
お客様のお役に立ちたかった、それだけです。それはずっと変わっていません。この仕事って、勉強したことをお話しすると、言えば言うほど「ありがとうございます」と言われるんですよ。すごい仕事やなと思っています。医療系を目指した時とやりたいこと自体は変わっていなくて、対象が人から会社に変わっただけなんですよね。その方の人生や健康をお守りするという意味では、同じことをしています。
独立、そして合流——「スタッフさんを安全な状態にしたかった」

資格取得から、今の30名体制まではどうつながっていくんですか。

速水:
3年で資格を取らせてもらって、実務経験のために、母の相続を担当してくださった先生の事務所に「2年だけ勤めさせてください、2年後に独立するので」とお願いしました。その2年間は営業活動もさせてもらって、ご紹介いただいたらとにかく会いに行く。1日8人と会っていた日もあって、休みはほとんどなかったですね。独立した時には売上1,500万円分のお客様を持たせていただいていました。ただ、独立に意気込んでいたというより、「自分1人食べていけたらいいわ」くらいのテンションだったんです。

そこから人を雇うことになった転機は何だったんですか。

速水:
全然、人を雇いたいとは思っていなかったんですよ、怖いから。ただ当時、暗号資産の損益計算をしている会社さんのお客様を一手に引き受けるお仕事をいただいていて、確定申告を350件やらなければいけなくなったんです。その会社さんがスタッフを付けてくれていたのですが、その後、会社の事情で人員を維持できなくなってしまって。私の力で雇えるのは2人でした。せっかく一緒に頑張ってくれた子たちですから、社長さんの了承のもとで「こっちに来ますか」と聞いたら、来ると言ってくれた。それが最初のスタッフです。

そこから別の事務所と合流されると思うのですが、どんな経緯だったんですか。

速水:
スタッフに仕事をお任せして時間ができたので、青年会議所に入って、その翌年は青年会議所内でもかなり忙しい役を務めました。そのおかげで自分の権限をスタッフに委譲せざるを得なくなって、事務所が仕組みで回るようになったんです。そして次の年、今度は1年間アメリカのサンフランシスコに語学留学をしました。英語が下手なのがずっとコンプレックスだったので、解消しておこうと思って(笑)。

その留学中に考えたんです。なんで私はアメリカに留学できているんやろうと考えたら、スタッフの皆さんが守ってくれているからじゃないですか。当時、資格者は私1人でしたから、私に何かあったら事務所は終わって、みんなが路頭に迷ってしまう。せめてこの人たちだけでも安全な状態にしなくちゃと思いました。もう1人税理士がいて税理士法人になっていれば、私に何かあってもみんなは困らない。ちょうどその時に、同じように合流する相手を探している先生の話があって、それが今の共同代表の池上です。アメリカからZoomで2週に1回くらい話して、令和8年4月に合流して今の規模になりました。
当たり前を当たり前に——1時間以内のレスと、「事の根」を聞くこと

お客様から評価されているのは、どんなところだと考えていますか。

速水:
「当たり前を当たり前に徹底している」ことを、いちばん評価していただいていると思います。うちは、脱法スレスレの危ない節税策を売りにして一発逆転を狙うような事務所ではありません。税理士としてすべきことを漏らさず、リスクのない正攻法で確実にお客様の資産をお守りする。そして、お願いされたことを迅速かつ確実にやり切る。そういう「安心感」を評価していただいています。税理士の変更のご相談を受けると、「言ったことを全然やってくれない」「お願いしたことを忘れられる」「レスがない」という話をよく聞きますが、うちではあり得ないですね。

具体的には、最低でも1時間に1回はお返事をするようにしています。すぐに答えられないことでも、「今は答えられませんが、いつまでにお答えします」というお返事は1時間以内にできますから。お客様が不安なまま待っている時間をいかに短くするかは、会社として徹底しているところです。
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他にはいかがですか。

速水:
はっきり言うことですね。できるのか、できないのかをはっきり言う。はっきり言えないのは勉強不足だという考え方をしているので、お客様の立場に立って「私があなたの立場ならこちらを選びます」というところまで言えて、初めてご提案だと思っています。もちろん脱法は絶対にしませんから、できないとお伝えすることもあります。ただ、その時に頭ごなしに「無理です」とは言いません。「まず、なぜそうしたいんですか」という背景——これは「ことのね」という社名にもつながるのですが、物事の本質、事の根っこを聞いて、ご要望いただいた策では達成できなくても、別の策で達成できないかを考えるようにしています。

30名の組織で、その価値観をどう浸透させているんですか。

速水:
今ちょうど、クレドを作り直しているところなんです。4人のマネージャーとは週1回話していて、その作り直しの過程にも入ってもらっています。スタッフからも月1回アンケートで「うちらしさって何?」「うちがお客様に評価されているところは?」と意見を拾っていて、各チームの週1回の会議でも価値観について話す時間を作ってもらっています。今まで言語化されていなかった、うちが大事にしてきたふわっとしたものを、改めて言語化して認識をすり合わせている段階ですね。
残業ゼロの理由はシンプル——「スタッフを増やしてから、お客様をいただく」

採用の場面では、どんなことに驚かれますか。

速水:
残業ゼロは、めちゃくちゃ驚かれます。合流前から、両方の事務所とも残業ゼロだったんですよ。なぜかというと、スタッフを増やしてからお客様をいただくようにしているからです。仕事量とスタッフのキャパシティのバランスをずっと見ているので、理論上、残業が発生しないんです。「なんでそんなことができるんですか」と聞かれますが、お客様の契約数を調整しているからです、というだけの話で。

繁忙期もですか。

速水:
うちは9割方が法人のお客様なので、確定申告期が固まりにくいというのはあります。ただそれ以上に、ほとんどのお客様と3ヶ月に1回は面談をしているんです。ということは、常に3ヶ月前までは会計が締まっている。年1回まとめて処理するということがないので、そんなにバタバタしないんですよ。面談の頻度は契約時に決めて、レスポンスも営業時間内とお伝えして、最初から期待値をすり合わせています。約束をして、ちゃんと守る。無理をするから問題になるんです。

フレックスタイム制も導入されていますね。

速水:
コアタイム10時〜16時のフレックスです。私が、遅刻・早退という概念が好きじゃないからです。この形なら、大学院や専門学校に通いながら働くこともできます。実際、税理士試験や社労士試験の勉強をしている者もいます。

なぜそこまでスタッフの環境にこだわるんですか。

速水:
スタッフが疲弊して余裕をなくすと、一番被害を受けるのはお客様だからです。心と時間に余裕があるからこそ、「高品質なサポート」をご提供できる。スタッフを守ることは、巡り巡ってお客様をお守りすることに直結しているんです。
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10年後、「税理士業界でいちばん福利厚生がいい事務所」に

最後に、事務所の未来像を伺えますか。

速水:
この3年は拡大を意識しています。というのも、スタッフのお給料を上げたいので、利益率を上げるために売上を上げるという順番なんです。今の売上規模から、3年でプラス1億円を考えています。ただ、一人当たりの業務量を増やして力技で伸ばすのではなく、別商品の導入や業務効率化によって高付加価値化を図る計画です。そして10年後には、「税理士業界でいちばん福利厚生がいい事務所」というイメージを確立したいんです。一般企業でいうと「あの会社って福利厚生いいって聞くよね」と言われるような。子育てをしながらもっと柔軟に働けるようにもしてあげたいですし、利益率が上がればできることは増えていくと思います。

お客様への価値提供の面ではいかがですか。

速水:
既存の顧問というサービスだけでは、この先苦しくなってくるだろうと思っています。なのでコンサルティング的な別商品——経営計画を一緒に作って、定点観測を一緒にやっていくようなプランは必要になると考えています。ただ、私たちが上から目線で指導するような経営コンサルタントになる必要はないと思っています。あくまで主役はお客様であり、お客様の中にある答えを対話によって引き出し、整理する「番頭」であり「伴走者」でありたいです。

速水さんご自身は、この仕事のどこにやりがいを感じていますか。

速水:
スタッフとの面談で「そんなことを考えてくれていたんや」と新しい視座をもらった時や、自分の考えたことがスタッフに刺さっていると実感した時ですね。根本には、スタッフにもお客様にも「人生これで良かったな」と思ってほしいというのがあって、自分もそう思っていたいんです。そのお手伝いができた時がいちばん嬉しいですね。だから正直、税理士としてどうなのかは分かりません。自分の思想を表現するツールが、たまたま今、税理士法人になっているだけなんです。

本日はありがとうございました!

ことのね税理士法人の詳細はこちら

取材後記

「税理士が何かも知らないまま、あるお客様のためにこの仕事を選んだ」という速水さん。経歴だけを見れば異色ですが、1時間お話を伺って感じたのは、病院実習の日から今日まで、一本の線がまったくぶれていないことでした。「自分の人生これで良かったと思うために働く」——それを自分にも、スタッフにも、お客様にも徹底する。残業ゼロも、1時間以内のレスも、その思想から論理的に導かれた仕組みなのだと分かります。

印象的だったのは、社名の由来が「事の根」だと伺った瞬間です。ご要望をそのまま受けるのではなく、その根っこにある願いを聞いて、別の道を一緒に探す。派手さよりも「当たり前を当たり前に」を選ぶ事務所の姿勢が、この三文字に凝縮されていました。

創業期から伴走してくれる税理士を探している方、そして「話したいと思える税理士かどうか」を大切にしたい方に、ぜひ読んでいただきたいインタビューでした。

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※ 本インタビューの内容は取材時点のものです。事務所の体制やサービス内容は変更される可能性があります。最新の情報については各事務所に直接お問い合わせください。