「岡崎×相続」で突き抜ける——ランチェスター戦略で地域No.1を目指し、社長の最も身近なパートナーであり続ける中垣健税理士事務所

中垣 健(なかがき けん):中垣健税理士事務所 所長/税理士・行政書士、株式会社未来経営 代表
愛知県岡崎市生まれ。明治大学商学部卒。35歳で税理士試験に合格し、41歳だった2008年に、生まれ育った地元・岡崎で独立開業した。中小企業の経営支援から税務全般、事業承継、相続・贈与対策まで幅広く対応し、相続税申告300件超、相談3,000件超の実績を持つ。正攻法で税務調査リスクを抑える相続税申告を強みとし、相談者に寄り添った支援に定評がある。社会保険労務士やパートスタッフを含む約30名の体制で、相続を中心とした資産税部門と税務顧問業務の両輪を回す。近年は同業の税理士に向けた「相続特化事務所マスター講座®」を主宰し、実務と教育の両面で活動している。
まず、現在の事務所の体制と、お客様の傾向について教えていただけますか。
税理士は私ひとりで、社会保険労務士が1名、スタッフ指導などで連携する外部の提携税理士が5名います。そのほかに正所員が14名、パートスタッフが16名で、全体では計30名ほどの体制です。女性スタッフも多く在籍しています。売上は、経理代行を含む税務顧問業務と、相続を中心とした資産税部門の大きく二つで構成しています。そのほかに税務調査の対応も年間20件ほどあって、こちらはスポットで、私と国税OBの税理士とで連携しながら、案件ごとに臨機応変に対応しています。
対応されているエリアには、何か特徴がありますか。
地元を中心に、西三河エリアのお客様が一番多いですね。名古屋方面の方もいらっしゃいますが、そちらはご紹介でつながったケースがほとんどで、こちらから広く営業をかけているわけではありません。生まれ育った岡崎で、「中小企業の社長の最も身近なパートナー」でありたいというのが、開業以来ずっと変わらない想いです。

そもそも、中垣先生が税理士を志されたきっかけを教えていただけますか。
27歳の頃、結婚を機に新たな人生をスタートさせたいと考えたのが出発点です。当時、これからどう生きていくかを真剣に考えていて、知人に相談したんですね。その方のお父様が司法書士をされていたこともあって、士業の話になりました。弁護士はさすがに難しい、では自分に何ができるだろうと話していくなかで、「人当たりも良いし、税理士の資格を取ってみたらどうか」と背中を押してもらったんです。そこから資格取得を目指しました。なかなか合格できなかったのですが、35歳の12月にようやく合格し、41歳のときに事務所を開業しました。現在58歳ですので、約17年間、この仕事を続けていることになります。
資格取得後、開業までは税理士事務所にお勤めだったのでしょうか。
岡崎市内の税理士事務所に拾っていただいて、勤務しながら資格取得を目指しました。合格して独立するまで、さまざまな経験をさせていただいた事務所です。ただ、そこは今私がやっているような相続特化の事務所ではなく、どちらかというとコンサルティングがメインで、私自身も税務顧問や将来のシミュレーションといった業務に携わっていました。この経験が、開業後の事務所づくりの原点になっています。
開業されてから、事業の柱はどのように変わっていったのでしょうか。
開業当初は、「10年で売上1億円を超える」という目標を立てていました。開業して7,8年あたりで、コンサルティングにもう一本の収益の柱を増やしたいと考えて、大きく投資をしたんです。結果的に、9年目から10年目あたりで目標どおり1億円を超えることができました。ところが、想定以上に個人に依存する形になってしまい、経営が立ち行かなくなってしまった。いわゆるMAS(経営支援)の取り組みが崩れてしまって、3,000万円ほどを溶かすことになりました。属人化が、その一番の原因でした。
そこから、どのように立て直されたのですか。
属人化せずに、事務所の経営基盤を強化できる事業は何か——これを、半年かけて自社のリソースと市場のニーズの両面から徹底的に分析しました。そこで行き着いたのが、相続に特化することだったんです。岡崎市には65歳以上の方が9万人以上いらっしゃって、相続税の申告が必要な方も年間600〜700件はあると見込めました。「岡崎×相続」で突き抜ければ、地域でしっかりとシェアを取れる——ランチェスター戦略の考え方で、まずは岡崎での占有率を目標に据えました。とはいえ、それまで相続業務の経験が豊富だったわけではありません。それでも、うちの優秀なスタッフと一緒なら必ずできると考えて、挑戦することに決めました。
ゼロから新しい柱を立ち上げるのは、相当なご苦労があったのではないですか。
本当の意味で、人生初の試行錯誤でした。ひとつのビジネスを辞めて新しいビジネスを立ち上げるわけですから、もう一度、事務所を開業するのと同じくらいのパワーが必要でした。採用や体制づくり、事業計画、資金調達、チラシ作成まで、とにかくあらゆることに一から取り組みました。その結果、相続の売上は初年度が約1,300万円、翌年が約3,000万円、その後はさまざまな企業様とも提携して、コロナ禍でも6,000万円、さらに翌年には8,000万円と、ぐんぐん伸びていきました。

新規のお客様の開拓は、どのように行っていらっしゃいますか。
相続業務は、お客様のタイミングでしかご依頼が来ないんですね。ですから、毎月の関与が続く税務顧問のようなBtoBとも、純粋なBtoCとも違う、「BとBの中間」のような性質があります。相続特化型の事務所で申告件数を増やしていくには、提携先との関係強化が欠かせません。ひたむきに取り組んでいると、その姿勢に共感してくださる方が現れて、提携先も少しずつ増えていく。その積み重ねで、今では正確な数が把握できないほどのビジネスパートナーができました。300以上はあるでしょうか。こうしたネットワークづくりに、週5日のうち2日は専念しています。
点が線になって、どんどん広がっていくのですね。
相続をきっかけに、コンサルティングのご依頼につながるケースも多いです。たとえば二次相続への備えや、配偶者の方の遺言書作成、相続時精算課税の活用提案など、継続的な支援が自然と生まれていきます。不動産の売却をどう取り込んで、お客様の満足、そして長期のお付き合いにつなげるかも、大きなテーマです。不動産売却については、うちにも宅地建物取引業の免許を持つスタッフがいるのですが、当方では直接は扱わず、提携先の不動産会社からフィーをいただく形で対応しています。
30名規模の組織になるまでには、マネジメントの面でも転機があったのではないでしょうか。
ええ。実は、まだ50〜60件ほどの顧問先だった頃に、古株のスタッフから『このままだと全員辞めますよ」と言われたことがあったんです。当時の私は、自分が「やると決めたらやる」とストイックに突き進むタイプで、「鬼軍曹」と呼ばれるほど厳しかった。その厳しさを、そのまま人にも求めてしまっていたんですね。知人から「人の力を使えない人は、経営者じゃない」とガツンと言われたこともあって、これは自分が変わらなければいけないと痛感しました。
そこから、どのように変えていかれたのですか。
ちょうど35歳の頃からコーチングを学んでいたことを思い出して、本格的に学び直しました。CTIジャパンのプログラムにも通いましたし、アチーブメントの研修にはスタッフにも一緒に通ってもらいました。今は妻がプロのコーチとして、問題を整理整頓してくれる存在になっています。事務所としては、外部の知見を取り入れたリーダーシップ研修を、課長クラスを中心に毎月、2年ほど継続しています。座学や全員での会議を重ねるなかで、スタッフが「自分たちで改善できる」「意見を言ってもいいんだ」と、主体的に動けるように変わってきました。見学会などで仕組みを惜しみなく開示しているので、スタッフ自身も「自分たちには影響力がある」と実感できる。おかげさまで、今では私も「仏の所長」と言われるようになって、スタッフから率直な意見や相談が出てくるようになりました。

日々の業務そのものも、仕組みで回るようになってきたのですね。
メンバーが一人、また一人と増えていくなかで、チームで効率よく動くにはどうすべきかを追求して、分業体制とマニュアル化を徹底しました。今では、入所して1カ月に満たないスタッフでも、相続税の業務を実践できるほど仕組みが整っています。あわせて、私が経営者と向き合う時間を確保するために、議事録の作成や資金繰りの整理、リサーチといった業務にはAIも積極的に活用しています。社長にお会いしてじっくり話す——その一番大切な部分に時間を割けるよう、それ以外を仕組みとツールで支える、という考え方です。
近年は、同業の税理士の先生方に向けた講座も主宰されています。どうして始めようと思われたのですか。
うちの成長ぶりを見た同業の方々から、「いったい何をしているのか」とよく聞かれるようになったんです。スタッフが優秀なのはもちろんですが、人材の育成方法やその仕組みには再現性がある。それを言語化して伝えたら良いのではないか、とある方に勧めていただいたのがきっかけでした。そこで、「相続特化事務所マスター講座®」を2年ほど前に立ち上げました。ライバルにはあまり教えたくないので(笑)、地元・愛知県以外の先生に限定して、10名くらいの規模を想定して始めたのですが、第一期には全国から33名もの先生にご参加いただきました。第2期には62名に増えてまいりました。「なぜそこまで教えてくれるのか」と驚かれることもありますが、参加者の方に本当に成功してほしいので、講座やコンテンツ、事務所見学会、Chatworkでの個別の質問対応まで、積極的に支援しています。今は第三期の募集を進めているところです。
最後に、これから目指していきたい姿を聞かせてください。
将来的には、信頼できる3〜4名の右腕税理士とともに、岡崎市全体の課題解決を担える事務所にしていきたいですね。私が大切にしているのは、成功している経営者に共通する「味方が多いこと」だと思っています。相手を正面から押すのではなく、横に並んで伴走するような感覚で、その人の立場に立った言動をする。そして、自分でコントロールできることを、ただ一生懸命やり切る。営業マンとして大量に行動するという当たり前のことを、今もずっと続けています。地元・岡崎で、社長の最も身近なパートナーであり続けたい——その想いは、これからも変わりません。

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取材後記
インタビューにて印象に残ったのは、「鬼軍曹」から「仏の所長」へという、ご自身の変化を率直に語ってくださったことです。スタッフから「全員辞めたい」と告げられた経験を、コーチングを学び、人の力を信じる経営へと転換させる糧にされた。そして今、その再現性のある仕組みを、ライバルになり得る同業の先生方にまで惜しみなく開いていらっしゃいます。「なぜそこまで教えるのか」という問いに、「本当に成功してほしいから」と迷いなく答える姿に、中垣さんの人柄がそのまま表れていました。
数字の先にある経営者の人生に、横に並んで伴走する。岡崎という地元にこだわり抜き、地域全体の課題解決まで見据える中垣さんの姿勢は、まさに「良い税理士との出会いが、良い経営をつくる」を体現するものだと感じます。相続を控えたご家族にとっても、これから事務所を成長させたい同業の先生にとっても、心強い存在であり続けるに違いありません。
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