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地元・山口で、経営者の「困った」に応え続ける。——仕組み化で歩んだ、地方会計事務所の10年の軌跡

地元・山口で、経営者の「困った」に応え続ける。——仕組み化で歩んだ、地方会計事務所の10年の軌跡

山本 将之(やまもと まさゆき):ソルト総合会計事務所 代表/公認会計士・税理士

1982年、山口県防府市生まれ。宇部工業高等専門学校で情報技術と簿記を学び、公認会計士を志す。EY新日本有限責任監査法人では、上場企業や金融機関の会計監査、内部統制の構築支援、財務デューデリジェンスなどに携わる。その後、(株)YKプラン二ングに移り、全国の会計事務所に向けて財務ソフトの提案営業に従事。

2015年4月、32歳で故郷・防府市にソルト総合会計事務所を開業。2018年には防府市の「ほうふ幸せます働き方認定企業」に認定され、2024年にJR防府駅前のルルサス防府へ事務所を移転。現在はスタッフ10名、約150社の税務顧問・財務支援を中心に、年間20〜30件の相続業務にも対応。創業・成長支援から相続・事業承継・M&Aまで、地元・山口の経営者に寄り添う総合的な支援体制づくりに取り組んでいる。

顧問先約150先、スタッフ10名——防府を中心に、年商1〜5億円の法人と相続を「顔を合わせて」支える

はじめに、いまの事務所の体制から教えていただけますか。

山本:
10人で運営しています。資格者は、私が公認会計士と税理士を持っていて、あとは社会保険労務士が1人、中小企業診断士が1人在籍しています。ですので、税務以外の労務とか補助金といったご相談にも対応できる形になっています。それとデザイナーも1人在籍しています。

顧問先はどういった会社が多いのでしょうか。地域や規模、サービスの柱も含めて伺えますか。

山本:
法人のお客様が中心で、税務顧問や財務支援を行っています。また、個人のお客様からは相続税申告や生前の相続対策などのご相談も多くいただいています。個人事業主の方も一部いらっしゃいます。規模でいうと、売上1億円から5億円くらいの会社が比較的多いですね。売上1億円未満の会社から10億円を超える会社まで、幅広くご支援しています。自計化先が3割、記帳代行先が7割くらいです。現在の顧問先は約150社になります。

地域としては防府市が一番多く、山口市や周南市など近隣の地域にもお客様がいらっしゃいます。福岡など県外のお客様も一部いらっしゃいますが、もともとの知り合いの方が中心ですね。Webだけでも対応できるのですが、結局、顔を合わせたほうがより良いサービスが提供できると考えています。経営者の方とお会いしてお話しすることを大切にしたいので、基本的には地元を中心に活動しています。

サービスの中心は、法人向けの税務顧問・財務支援と、個人向けの相続税申告・相続対策です。財務支援については、税務顧問とほぼセットで提供しており、決算予測や資金繰り、数字をもとにした経営支援にも力を入れています。また、事業承継やM&Aのご相談など、企業の成長から次世代への引き継ぎまで、幅広くサポートしています。相続については5年ほど前から本格的に取り組み始め、現在は年間20〜30件ほどの相続案件に対応しています。
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IT、簿記、そして経営——「仕組みを作って人の役に立ちたい」が会計にたどり着くまで

会計の道に入られたきっかけを伺えますか。最初から会計士を目指されていたわけではないそうですね。

山本:
もともと親が自営業をやっていまして、ピアノの調律師なんです。幼い頃から商売やお金の大切さ、大変さを身近に感じていました。私自身はバスケットボールをずっとやっていて体を動かすのが好きだったのですが、高校に進学するときに、何か専門的な技術や知識を身につけて、手に職をつけたいという思いもありました。
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宇部高専では、最初はシステムエンジニアを目指されていたそうですね。そこから会計へは、どうつながったのでしょうか。

山本:
1998年に入学したのですが、当時はちょうどインターネットが普及し始めた頃で、まだ未知の可能性を秘めたものという印象でした。そこに大きな可能性を感じ、当時はシステムエンジニアを目指して、C言語やVBを学びながら、簡単なシステムを作ったりしていました。もともと、自分で仕組みを作って人の役に立ちたい、という思いがあったのだと思います。

その中で簿記の授業があって、会計の仕組みを勉強するようになったんです。それで、これをシステム化したら面白いのかな、と考えたりして。今のクラウド会計のような発想まで大層なものではないですけれども、インターネットと会計を組み合わせることで、何か新しいことができるのではないかと、当時から興味を持っていました。

その過程で財務や経済を学んでいくうちに、システムを作るだけではなく、ITと会計の知識を活かして、企業の課題解決に携わりたいと思うようになりました。ちょうどその頃、同級生から公認会計士という仕事を教えてもらい、興味を持ったことが、この道へ進んだきっかけです。もともとITがあって、ITから簿記に出会って、簿記から会計、経営そのものに出会っていった。その延長線上に公認会計士があったんです。
会計を「監査する側」から、事務所に仕組みを「提案する側」へ——監査法人と財務ソフト会社で培った経験

監査法人での7年間で、いま役に立っていることは何でしょうか。

山本:
ひとつは、プロとしての姿勢を学べたことですね。周囲には仕事に厳しく熱量の高い方が多く、品質に妥協しないこと、期限を守ること、疑問があれば自分で徹底的に調べることなど、仕事に向き合う基本姿勢を鍛えられました。当たり前のことかもしれませんが、単に与えられた仕事をこなすのではなく、プロとしてどうあるべきかを学べたと思います。

金融機関の監査にも多く携わったことで、銀行が企業の決算書をどのような視点で見ているのかを学べたことも大きかったですね。また、様々な上場企業の内部統制に触れる中で、どのようなプロセスで業務が回っているのかを知ることができたのも、貴重な経験でした。東京と福岡で7年ほど働きました。

そのあと、独立ではなく、会計事務所向けの財務ソフトを提案する会社に移られています。あの一歩は何だったのですか。

山本:
地元に戻って中小企業の税務を経験してみたいと思っていたんです。監査法人では上場企業の会計監査が中心でしたので。県内の会計事務所への就職を考えていたところ、その事務所の会長から「こういう財務ソフトがあるんだよ」と紹介していただいたんです。その会計事務所が母体となっている会社だったのですが、ご縁があって、全国の会計事務所に財務ソフトを提案する仕事に携わることになりました。

働いてみると、これがめちゃくちゃ面白くて。これまで会計士として会計を監査する側だったのが、会計事務所に対して仕組みを提案する側になったんです。全国の会計事務所を訪問する中で、成長している事務所とそうでない事務所の違いや、お客様から支持される事務所の特徴、ITの活用によって業務がどう変わるのかなど、多くのことを学ぶことができました。さまざまな会計事務所の取り組みを間近で見ることができたのは、非常に貴重な経験でしたね。このときの経験が、現在の事務所経営や仕組みづくりの土台になっていると思います。

32歳での独立は、いつから決めていらっしゃったのですか。

山本:
それは思っていなかったです。32歳のときに独立していなかったら、そのまま今も同じ会社で働いていたと思います。すごく良い会社でしたから。ただ、いろいろな税理士事務所に提案をする中で、自分でもこうしたITツールや仕組みを活用して、会計事務所を経営してみたいと思うようになったんです。それが独立を決意した一番大きな理由ですね。

もうひとつは、地元への思いですね。以前から地元には知り合いの経営者の方もいて、「山本さんがやってくれないの?」と声をかけていただくこともありました。そうしたこともあって、自分が生まれ育った地域の企業や経営者の方々の役に立ちたいという思いがありました。開業してからは、税金の計算をただするだけではなく、経営者の方に長く寄り添える事務所であることを大切にやってきました。
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主役は社長、事務所は調味料——「ソルト」の2つの意味と、「お金じゃない4つのやすい」

「ソルト」という名前には、どんな思いを込められたのですか。

山本:
単純な理由を言うと、山本という名字がありきたりで、検索してもいろいろな山本が出てくるので目立たないな、というのがありました(笑)。これは本当の理由なのですが、もう少し真面目な理由も2つあります。

ひとつは防府の歴史です。私は防府の中でも中関という地域で育ったのですが、ここは昔、塩田地帯だったんです。地元に根付いた事務所にしたいという思いがあって、ソルトにしました。

もうひとつは、経営における調味料、というところですね。あくまで会社経営の主役は社長、経営者です。税理士が社長に代わって経営はできませんが、塩を加えることで——数字や税務、財務、経営に関する知識を少し加えることで、会社がいい方向に変わるといいなと思って。その引き立て役のような存在になりたい、という意味を込めました。
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ホームページでは「お金じゃない4つのやすい」として、相談しやすい・使いやすい・わかりやすい・管理しやすい、を掲げられています。あえて「お金じゃない」と言い切られる理由と、試算表をお渡しするだけの事務所との違いを伺えますか。

山本:
会計事務所の価値は、単純に料金が安いことではないと思っています。もちろん専門性は大前提なのですが、それと同じくらい大切なのが、相談のしやすさです。経営者にとって、相談しやすい、話しやすい、分かりやすい、頼みやすい。「ちょっと聞いてみよう」と思ってもらえることですね。経営者が困ったときに、いつも横にいてくれる存在であることが大切かなと思っています。それくらい相談するハードルが低い事務所でありたい。あとは、的確に返せることがすごく大切だと思っています。

具体的な支援内容はお客様によって異なりますが、まずは一緒に単年度の経営計画を作成し、決算予測や予算実績管理を行いながら、今後の業績予測や資金繰りの見通しを確認していきます。その中で、必要に応じて節税対策や黒字化に向けた改善提案なども行っています。基本的には、そうしたものが税務の契約の中に一通り入っている形にしています。手厚くサポートしたいと思っているんです。

ですので、これからどんどん事業を伸ばしたいという社長さんとは、すごく合うのかなと思います。ありがたいことに周囲の方からも、「それならソルトさんがいいのではないか」と紹介してくださるんです。「今依頼している税理士だと、申告や処理はきっちりやってくれるけれども、そういう相談ができない」という方が、周りから聞いてご相談に来られるケースがすごく多いですね。
責任を一人に集中させない——1チーム4人制、改善提案、そして「きっかけ」の研修

顧問先150先を、山本さんお一人で見きれるわけではないと思います。どう回されているのですか。

山本:
私一人ではできません。担当を1チーム4人にしているんです。メイン担当、サブ担当、入力担当、入力サブ担当という形ですね。経験が浅い方もサブ担当で入って勉強できますし、責任を一人に集中させないようにしています。

お客様からしても、担当が風邪を引いたりしても他のサブ担当が対応できます。担当とお客様をチャットでつないでいるので、今回は担当が対応できなくてもサブ担当が回答して、チームでサポートする形です。そのなかで、見ながら覚えていくという面もあります。
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スタッフの前職が多彩だと伺いました。会計事務所経験者を採用する道もあるなかで、異業種の方を採って育てていらっしゃるのはなぜでしょうか。朝のWEB研修や朝礼といった仕組みの狙いも、あわせて伺えますか。

山本:
証券会社出身の方や製造業出身の方、新卒の方など、会計事務所の経験者はそんなに多くありません。大切にしているのは、知識は後からついてくるということです。疑問を持つ、自分で調べる、先回りして考える、お客様の立場で考える。それができれば自然といい仕事ができるのかなと思っていて、事務所の中でもよく伝えています。もちろん経験者の方もいいのですが、熱意のある方、ビジョンを持っている方を採用するようにしています。そのほうが、結果として伸びるかなと思っています。

そのために、事務所の中で改善提案もやっているんです。みんながExcelに「こういうことを改善したい」と書いておいて、定期的に会議で集まって拾っていきます。今ある仕事をただ繰り返すだけではなく、もっとよくできないかを、ずっとみんなに考えてもらっています。それがお客様への提案にもつながるのかなと思っています。

研修は、私自身が面白いと感じたYouTubeの動画をみんなで見たり、税制改正の内容を一緒に勉強したりしています。そういうものは、なかなか見る機会がないじゃないですか。ですので、学ぶきっかけを与えるためにやっているという感じです。そこで興味を持って、自分から調べたり、勉強したりするようになってくれたら嬉しいですね。朝礼は、監査法人のときには朝集まること自体がなかったので、せっかくみんな集まっているんだからやってみよう、と(笑)。あとは定期的にメンバーと腰を据えて話す機会も設けてキャリア設計や悩みなどに寄り添いたいと思っています。

会計事務所にデザイナーの方がいらっしゃるのは珍しいと感じました。どういう経緯だったのですか。

山本:
もともとソフトの提案をしていたときに感じていたのですが、ソフトは目に見えないじゃないですか。一方で、パンフレットやチラシなど、実際に手に取れるものには、伝える力があると感じていました。ロゴやデザインも、企業のイメージを伝えるうえで大切だと思っていたんです。

広報・総務と兼任する形で仕事をしてもらっています。これはめちゃくちゃ良かったですね。自分で動ける方だったので、SNSやホームページの更新もしてくれますし、「こういうのをやってみたらいいんじゃないですか」と提案もしてくれます。お客様のキャラクターや、車のカッティングシートを作ったこともあります。
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出口まで一緒に——相続・事業承継に踏み込んだ理由と、「山口県で一番」の中身

ここ数年、相続や事業承継に力を入れていらっしゃいます。何が背景にあったのですか。年間20〜30件まで増やすのに打った手も、あわせて伺えますか。

山本:
相続は開業当初は全然やっていなかったのですが、やってみるとすごく感謝されることが多かったんです。それに、会社を作って終わるときには、必ず相続の問題が出てきます。成長していく会社を見ていても、最後は相続か事業承継、M&Aという形で出口がある。ですので、その出口にも強くなりたいと思って、相続に取り組み出した形です。

やってみると、悩みを持っている方が結構多いんですね。お金があれば悩むことはないのかなと思っていましたが、逆に、ある方が悩むという面がありました。そこに対して手が打てればなと。創業から成長、そして事業承継やM&A、相続と、入口から最後まで長期的に見られるところは、ひとつ強みになるのかなと思っています。

具体的に打った手としては、まず相続特化のサイトを作って、Web広告を出しました。あとは相続の相談会を、折り込みチラシを入れて定期的にやったり、町の看板に相続の広告を出したりですね。ホームページからお問い合わせいただく方もいらっしゃいますし、司法書士の先生からご紹介いただくケースも多いですね。防府市を中心に地元密着で取り組んでいます。
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これから事務所をどうしていきたいですか。直近1〜2年でいちばんの課題も含めて教えてください。

山本:
とにかく山口県で一番の事務所になりたいです。これはあくまで売上や規模だけを言っているわけではありません。サービスの質、お客様からの評価、社員の給与水準や働きやすさ。そういうものを含めて強い事務所を作りたいですね。

その中身としては、税務申告だけではなく、財務支援や相続、事業承継、M&Aといった経営者の悩みを長期的に解決できる事務所であること。それと、お客様だけではなく、働いてくれるスタッフにとってもいい事務所、働きやすい事務所であること。この2軸をしっかりさせたいと思っています。

直近の1〜2年は特に採用が課題だったため、そこに力を入れてきました。防府市には大学や会計の専門学校がないため、会計を学んだ学生を地元で採用することは簡単ではありません。そこで採用に特化したホームページを制作したところ、経験者の方も含めて応募が増え、手応えを感じています。今後は、新しいお客様との出会いをさらに増やしていくことに加えて、入社してくれたスタッフにどう成長してもらい、長く活躍してもらうかが課題ですね。採用することも大切ですが、定着してもらえる事務所づくりは、さらに重要だと感じています。

最後に、一言お願いいたします!

山本:
問題があったときに「ソルトさんに聞いてみよう」と言っていただける、そういう頼りになる事務所になりたいなと思っています。気軽にご相談ください!
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取材後記

山本さんは「会計の人」である前に、「仕組みの人」だと感じました。プログラミングから入って簿記に出会い、会計事務所に財務ソフトを提案する側を経験してから、故郷で開業する。その順番で歩いてきた人が作る事務所は、やはり仕組みでできています。1チーム4人制、Excelに書き溜めていく改善提案、きっかけを与えるためだけの朝の研修。どれも「誰かが頑張る」ことに頼らない形になっていました。

印象に残ったのは、引き立て役としての控えめさと、野心が同居しているところです。「主役は社長で、うちは調味料」と語る一方で、「山口県で一番」とはっきり口にされます。その「一番」の定義に、売上や規模ではなく、社員の給与水準や働きやすさが入っている。ここに事務所の作り方が表れているように思いました。

申告や記帳はきちんとやってもらえているけれど、経営の相談ができていない。そう感じている山口県の経営者の方にとって、創業から相続・事業承継の出口まで、顔を合わせながら横にいてくれる事務所は、有力な選択肢になるはずです。「ソルトさんに聞いてみたら」と周りから言われる存在を目指す——その言葉に、この事務所の10年が詰まっているように感じました。

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※ 本インタビューの内容は取材時点のものです。事務所の体制やサービス内容は変更される可能性があります。最新の情報については各事務所に直接お問い合わせください。