津軽弁で、税金をやさしく。——青森から長久手へ、「分からない」に寄り添う杉野真理税理士事務所

杉野真理(すぎの まり):杉野真理税理士事務所 代表/税理士
青森県弘前市出身。スーパーマーケット勤務を経て税理士を志し、仕事と子育てを両立しながら税理士試験に合格。夫の仕事の都合で愛知県長久手市へ移り、令和5年10月に杉野真理税理士事務所を開業。「税務の不安を安心に変え、お客様の挑戦と成長を支える」を理念に、個人事業主・中小企業を中心に支援。現在は建設業を中心とした経営者の税務サポートに力を入れている。津軽弁で税金を解説するYouTube「津軽弁税理士まりちゃんねる」を運営。「分からない」に寄り添う姿勢を大切に、全国の経営者をオンラインで支援している。
まずは、現在どのようなお客様を支援されているのか、対応エリアも含めて教えてください。
現在は個人事務所として、一社一社のお客様としっかり向き合いながら支援しています。その中で、直近は建設業に力を入れていきたいと考えています。建設業は独立する方も多く、税務や資金繰りに悩みながら事業を成長させていく経営者が多い業界です。そうした挑戦を支える存在になりたいと思い、現在は建設業を中心にサポートしています。 「もっと事業を成長させたい」「利益を伸ばして社員や家族を幸せにしたい」。そんな経営者の方を応援したいと思っています。そうした志を持つ方とは、すごく良いお付き合いができると感じます。
対応エリアは限定していなくて、関東の方も、実は北海道の方もいらっしゃいます。基本はオンラインで対応しています。一方で地域密着も大切にしており、長久手市をはじめ近隣地域の事業者の皆様にも、気軽に相談いただける存在を目指しています。
青森県弘前市のご出身ということですが、子ども時代から大阪に出られるまで、どんな流れだったんですか。
子どもの頃は、男の子と一緒にファミコンで遊ぶような活発な子どもでした。中学校に入ってからは、テストの順位が張り出されるのを見て、それと「勉強したらいい仕事に就けるよ」と親に言われたのもあって、少しずつ頑張るようになりましたね。
その後、大阪に出たのは、税理士登録に必要な実務経験を積むためでした。税理士登録には実務経験が2年必要なんですが、青森の税理士事務所で働いた環境がなかなか合わず、短期間で離職してしまって。「このまま青森にいても登録できないな」と思ったんです。東北だと税理士試験の専門学校は仙台にしかなくて、勉強の話ができる人も周りにいませんでした。それでXやアメブロで受験生のアカウントを作って、情報交換をしていたんです。遠方の税理士さんや受験生の方にDMで「そちらの事務所はどうですか」と聞いてまわって。
候補は札幌・仙台・東京・大阪でした。最終的には札幌と大阪で迷ったんですが、なぜか関西の方との縁が多くて、「自分は関西が合っているのかもしれない」と思い切って大阪に出ました。
そこから今の長久手に移られたのは。
長久手は夫の仕事の都合です。正直、住むまでは地名も知りませんでした(笑)。住んでから「人気の街」「若い街」「住みやすい街」だと聞いて、確かにそうだなと、気に入っています。夏の暑さだけは、北国育ちにはなかなか厳しいですけどね。
そもそも税理士を目指されたきっかけと、資格を取られるまでの道のりを教えてください。
実は、新卒では地元のスーパーマーケットに就職したんです。働くうちに「税金って、暮らしや仕事と切り離せないものだな」と感じるようになって。学生時代は税金も法律も大嫌いだったのに(笑)。転職を考えたとき、自分には管理職の経験も武器もないと思って、「武器がないなら資格だ」と調べ始めました。数ある資格のなかで税理士に決めたのは、税金やお金まわりの知識は、絶対に必要になる知識だと感じていたのと、独立開業がしやすいと知ったからです。自分のペースや裁量で、いろんなこととのバランスを取りながら働けるんじゃないか、と。
勉強は、スーパーで働きながら簿記から始めて、簿記2級まで取りました。30歳で退職し、本格的に税理士試験へ挑戦しました。大学院にも進学し、仕事や子育てと両立しながら勉強を続けました。税理士試験は年に一度しかない試験ですが、合格までに10回受験しています。 同じ国立大学を出た友人と給料の差を感じたことも、「このままではいけない」と背中を押してもらえたと思います。
今は津軽弁を前面に出して発信されていますが、どういう思いでその方向に決められたんですか。
これが普通の喋りで、津軽弁で喋ろうと意識しているわけじゃないんです(笑)。きっかけは、名古屋で動画制作をしている知人から「津軽弁の喋りが面白いから、津軽弁で税金を解説する動画を出してほしい」と言われたことで。最初は絶対に嫌だと思っていました。でも数ヶ月後に、別の人からも同じことを言われたんです。「複数の人から言われるなら需要があるのかな」と。Xでつぶやいたら、フォロワーの税理士さんからも「ぜひやってほしい」とリプライがたくさん来て。すごく抵抗はあったんですが、やり始めることにしました。
やってみて嬉しかったのは、コメント欄で前向きな言葉をいただけることですね。正直、そこから直接集客できているかというとそうでもないんですが、認知度はすごく上がりました。女性で、津軽弁で、税理士という組み合わせはキャラクターがかぶる人がいないので、覚えてもらいやすいんだと思います。撮影と編集は専門の方にお願いして、何を話すかは主に自分で考えています。現在は一時お休みしていますが、近いうちに再開する予定です。
お客様を支援するうえで、大事にされていることはありますか。
お客様が「分からない」と感じていることや、不安に思っていることに、なるべく寄り添うようにしています。私自身、30歳から簿記3級の勉強を始めて、分からなくて本当に苦労したんです。試験勉強や実務でこちらは真剣に質問しているのに、「こんなことも分からないのか」とため息をつかれて、恥ずかしくて嫌な気持ちになった経験があります。だからこそ、お客様にはそういう思いをしてほしくない。安心して何でも聞ける、というのを大事にしたいと思っています。
お客様と会う頻度は決まっていなくて、お客様によって変わります。お客様の規模やご希望に応じて、チャットやオンライン面談を中心に、その方に合った距離感でサポートしています。
今年から、小学校で租税教室もされていると伺いました。
はい、今年の春から始めました。税理士になってよかったな、と思わされる瞬間ですね。もともと子どもの相手は得意なほうではなかったんですが、自分に娘が生まれてから子どもが可愛いと思えるようになって。娘が通う小学校で講師をやりたいと思ったのもきっかけです。6年生のクラスごとに授業をするんですが、子どもたちの純粋なリアクションは本当にプライスレスで。税金が社会でどのように使われているかを知ってもらい、自分たちの社会に関心を持つきっかけになればと思っています。
最後に、事務所として目指す姿と、この記事を読んで杉野さんを知った方へのメッセージをお願いします。
事務所の理念は、「税務の不安を安心に変え、お客様の成長と挑戦を支える」ことです。自分のお客様が業績を上げて豊かな生活を送る、その先で、地域や日本全体を活性化させることにつながったら——というのが、私の根っこにある思いです。そのためにも、顧問先を増やして、支えられる範囲を広げていきたいですね。
税金のことで不安を抱えている方がいらっしゃれば、一人で抱え込まず、まずは気軽に声をかけていただけたら嬉しいです。「分からない」を一緒に「分かる」「安心」に変え、経営者の方が本業に集中できる環境づくりをお手伝いしていきたいと思っています。
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取材後記
画面越しでも、杉野さんの津軽弁はやわらかく耳に届きます。本人は「中途半端な訛り」と笑いますが、その素朴な語り口こそ、税金という身構えてしまいがちなテーマと相手との距離をすっと縮めてくれるのだと感じました。
印象的だったのは、「分からない」に寄り添う姿勢の根っこに、ご自身が30歳から学び直し、ため息をつかれて悔しい思いをした経験があったことです。だからこそ、お客様が安心して質問できる場をつくることに、強い意志を持っていらっしゃる。スーパー勤務から税理士へ、青森から大阪、そして長久手へと歩んでこられた道のりそのものが、挑戦する経営者に寄り添う説得力になっていました。
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