節税対策

減価償却費を前倒しで増やす節税方法3選!税理士が解説する定率法・少額特例・強化税制

減価償却費を前倒しで増やす節税方法3選!税理士が解説する定率法・少額特例・強化税制
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減価償却費は工夫次第でもっと早く・多く経費計上できます。合法的な前倒し方法を3つ解説します。

減価償却とは?家計簿にはない税務会計独特の概念

減価償却は、すでに確定申告を何回もやっている方はご存知かと思いますが、家計簿には出てこない税務会計独特の概念です。

機械装置・建物・器具・備品・車など、長期間使用するような設備については、使える期間に応じて費用を配分しなければなりません。これが企業会計の原則で、買った年に一発で全額経費に落とすことはできず、少しずつ経費配分していく仕組みになっています。

📌 ポイント

購入した年はお金が出ていきますが、2年目以降はお金が出ていかないのに減価償却費という経費を計上し続けます。つまり「お金が出ていかない経費」が発生するのが減価償却の特徴です。これが会計上の利益と実際の現金残高の差を生む原因になります。

この耐用年数は国税庁によって資産の種類に応じて定められています。個人的にはちょっと長いかなという感じの耐用年数ですが、以下の通りです。

資産の種類耐用年数
RC(鉄筋コンクリート)建物47年
木造建築の建物22年
6年
パソコン4年

📝 このセクションのまとめ

  • 減価償却は長期使用資産の費用を耐用年数にわたって配分する仕組み
  • 耐用年数は国税庁が資産の種類ごとに定めている
  • 購入年以降、お金が出なくても経費計上が続く点が特徴

定額法と定率法の違い:どれだけ経費に落とせるか

減価償却の計算方法には定額法定率法の2種類があります。

方法概要個人事業主の扱い
定額法毎年均等額を経費計上する原則(届出なしで自動適用)
定率法初年度にドンと計上し、年々減っていく届出をした場合のみ適用

個人事業主の方は、届出をしなければ自動的に全ての資産について定額法が適用されます。定率法は届出した場合に限り適用となります。

なお、法人の場合はこの概念が逆になっており、原則が定率法、例外として定額法が使えます。ただし建物などについては法人も同様に定額法のみとなります。

⚠️ 注意

平成28年4月1日以降に取得した建物・建物附属設備(内装など)・構築物(アスファルト舗装など)については、定率法は選べません。定額法のみとなります。個人事業主の方で定率法が使えるのは、車や器具備品のみです。

具体的な数値で見てみましょう。25万円のパソコン(耐用年数4年・新品)を購入した場合の比較です。

📌 ポイント:減価償却の大前提

資産を買っただけでは減価償却は1円もできません。資産を購入し、事業で使い始めて初めて減価償却ができます。これは税務調査でもよく見られるポイントです。年の途中で取得した場合は月割り計算が必要です。

年度定額法(償却率0.25)定率法(償却率0.5)
1年目62,500円125,000円
2年目62,500円定額法と同額程度
3年目62,500円定額法の半額以下
4年目62,499円(備忘価格1円残し)同様に少額
合計250,000円250,000円

定率法の場合、1年目は12万5,000円の償却費を計上でき、定額法の場合のほぼ倍額になります。ただし、トータルの償却額は同じです。経費に落とせるタイミングが違うだけです。

また、帳簿上は備忘価格として1円を残しておく必要があります。これはどんな資産があったか忘れないためのルールです。会計ソフトを使っている方は自動対応してくれます。

さらに、中古資産の場合は経過年数に応じて耐用年数が短くなり、償却率も高くなるため、1年あたりの減価償却費が増えます。中古車を買って節税したいという方はこの点を活用することが多いです。

📝 このセクションのまとめ

  • 定額法は毎年均等額、定率法は初年度に多く計上する方式
  • 個人事業主の原則は定額法。定率法は届出が必要
  • 建物・建物附属設備・構築物は定額法のみ(平成28年4月1日以降取得分)
  • トータルの償却額は定額法も定率法も同じ
  • 中古資産は耐用年数が短くなり、1年あたりの償却費が増える

前倒し方法①:定額法から定率法への変更

減価償却費を前倒しする1つ目の方法が、定額法から定率法への変更です。先ほど見た通り、25万円のパソコンの例では、定額法の初年度が6万2,500円なのに対し、定率法に変えると12万5,000円と、ほぼ倍額の償却を計上することができます。

個人事業主でよく使われるのは太陽光パネルです。特に太陽光パネル投資は個人だと事業所得になりますが、新品パネルの耐用年数が17年のため、定率法を使うと初年度にかなりの償却費を計上できます。その結果、事業所得が赤字になり、給与などと損益通算して所得税の還付を受けられるケースもあります。

⚠️ 注意:定率法が必ずしもお得とは限らない

昔、建物について定率法が使えた時代、大家さんの中には建物に定率法を適用する方もいました。確かに初年度の経費計上額は大きいですが、数年後には減価償却費が減り、融資返済のキャッシュフローは変わらないのに税負担だけ増えていくという事態が起こりました。何でもかんでも定率法がいいわけではありません。また、あくまでこれは節税ではなく課税の繰り延べであることを忘れないでください。

定率法に変更するには、事前の申請が必要です。手続きの流れは以下の通りです。

  1. 「所得税の減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」を用意する
  2. 変更しようとする年の3月15日までに税務署へ提出する
  3. 承認後、その年分から定率法が適用される

⚠️ 注意

令和5年分の確定申告がまだ終わっていない方でも、令和5年分の減価償却方法を今から変更することはできません。令和6年分以降(今年分)から変更したい場合は、3月15日までに申請書を提出する必要があります。

📝 このセクションのまとめ

  • 定率法に変更すると初年度の償却額が定額法の約2倍になる
  • 車・太陽光パネルなどで特に活用されるケースが多い
  • 変更には「償却方法の変更承認申請書」を変更年の3月15日までに提出が必要
  • 定率法は課税の繰り延べであり、後年度の経費が減ることに注意

前倒し方法②:少額減価償却資産の特例(30万円未満)

2つ目の方法は、10万円未満・30万円未満の少額資産に関する特例です。ここでは特に30万円未満の特例(中小企業者等の少額減価償却資産の特例)を中心に解説します。

少額減価償却資産の特例を整理すると、以下の4つの区分があります。

区分取得価額処理方法条件
A:通常の減価償却制限なし耐用年数に応じて減価償却原則
B:少額減価償却資産10万円未満全額即時経費計上事業で使用すれば無条件
C:一括償却資産20万円未満3年間で均等額(月割なし)経費計上特別な届出不要
D:中小少額(今回の目玉)30万円未満全額即時経費計上青色申告・年間合計300万円まで

今回の目玉はこのD:30万円未満の特例です。25万円のパソコンを例にとると、耐用年数4年で分割して計上するのではなく、購入した年に25万円を全額一括で経費に落とせます

📌 この特例を使うための条件

  • 青色申告をしていること(青色申告の特典のひとつ)
  • 年間の取得価額の合計が300万円以下であること
  • 確定申告書にこの特例を適用した旨を必ず記載すること

確定申告書への記載を忘れると、この特例は使えず通常通りの減価償却をしなければなりません。記載漏れに注意してください。

⚠️ 固定資産税(償却資産税)に注意

BとC(10万円未満・20万円未満)を選んだ場合は固定資産税(償却資産税)がかかりませんが、D(30万円未満の中小少額特例)を選ぶと固定資産税の対象になります。ただし、年間150万円までの資産であれば免税点以下となり固定資産税はかかりません。

この特例は決算前の駆け込みでよく使われます。30万円未満のものであれば年間300万円まで一発で経費に落とせるため非常に使い勝手がいいです。

⚠️ 節税目的だけで無駄なものを買わないこと

事業で必要なものを買い、設備投資に節税を兼ねていくのは全く問題ありません。しかし事業で不要なものを節税目的だけで買っても、キャッシュアウトが伴うため全く意味がありません。

📝 このセクションのまとめ

  • 10万円未満は無条件で全額即時経費計上可能
  • 20万円未満は一括償却資産として3年均等で経費計上
  • 30万円未満は青色申告者なら全額即時経費計上(年間300万円上限)
  • 30万円未満の特例を使うと固定資産税の対象になる点に注意
  • 確定申告書への特例適用の記載が必須

前倒し方法③:中小企業経営強化税制(即時償却または税額控除)

3つ目の方法が中小企業経営強化税制です。個人事業主の方はあまり使われている例が少なく、どちらかといえば法人向けの制度ですが、知っておいて損はありません。

この制度は、生産性の向上や収益の向上につながる設備投資を行った場合に、即時償却(全額一括経費計上)または税額控除が受けられるというものです。

メリットの選択肢は2つあります。

選択肢内容性質
即時償却取得価額の100%をその年に全額経費計上課税の繰り延べ
税額控除通常通り減価償却しつつ、取得価額の10%を法人税額から直接控除(中小企業・資本金3,000万円以下の法人や個人事業主)免税(トータルでお得)

例えば200万円の機械を購入した場合、通常は10年かけて少しずつ減価償却していくところを、即時償却なら200万円を一括でその年の経費に落とせます。一方、税額控除は通常通り減価償却しつつ、その10%(20万円)を法人税額から直接差し引けるため、トータルで見ると税額控除の方が有利です。

📌 どちらを選ぶべき?

トータルの節税額でいえば税額控除の方が有利です(課税の繰り延べではなく実質免税)。ただし、今年の経費を増やして節税したい場合は即時償却の方が効果的です。実務上は即時償却(100%償却)を選ぶ方の方が多い傾向にあります。なお、税額控除には当期の法人税額の20%を上限とするルールがあり、超過分は1年間の繰り越しが可能です。

この制度の適用条件は以下の通りです。

  • 電気業・娯楽業以外の業種であること
  • 適用期限:2025年(令和7年)3月30日までの事業供用分
  • 資本金1億円以下の中小企業(青色申告者)

設備の類型はA〜Dがありますが、実務的によく使われるのはAかBです。

類型主な要件
A類型工業会の証明(生産モデルが最新であることの証明)が必要
B類型経済産業局への投資計画の提出が必要

対象設備には取得価額の下限があります。

設備の種類取得価額の下限
機械装置160万円以上
工具30万円以上
器具備品30万円以上
建物附属設備60万円以上
ソフトウェア70万円以上

⚠️ 適用できないケース

  • 25万円のパソコンなど、各設備の下限金額を下回るもの
  • 建物附属設備のうち、本店・寄宿舎・福利厚生施設(別荘など)に関するもの
  • 国外の投資(国内投資に限る)
  • 中古資産(新品のみ対象)

個人事業主でこの特例が適用されている例は非常に少ないですが、法人向けの節税の中では節税額という観点で圧倒的に効果の高い制度として位置づけられています。

📝 このセクションのまとめ

  • 生産性向上につながる設備投資で即時償却または税額控除が選べる
  • トータルの節税効果は税額控除の方が大きい(実質免税)
  • 今年の経費を増やしたい場合は即時償却が有効
  • 資本金1億円以下の青色申告中小企業が対象
  • 設備の種類ごとに取得価額の下限あり。中古資産は対象外
  • 適用期限は2025年(令和7年)3月30日まで

前倒しが必ずしも正解ではない:事業の状況に合わせた判断を

今回、減価償却の前倒し方法を3つご紹介しましたが、最も大事なことをお伝えします。

⚠️ 前倒しで経費に落とすことが常に正解ではない

今期が赤字の場合、経営強化税制を使っても、少額資産を買って一発で経費に落としても、わざわざ定率法に変えても、何の意味もありません。今年赤字で来年も厳しそうな状況が続く場合は、普通に減価償却をして将来の経費計上の枠を残しておいた方が、節税面では有利になる可能性があります。

皆さんの今後の事業計画や事業の見通しをもとに、どのように経理処理をするかを検討してください。

📌 大切な視点

良い会社・良い事業を作っていくためには、節税が全てではありません。黒字を出し、儲けることが一番大事です。減価償却の処理方法はあくまでその手段のひとつとして活用してください。

📝 3つの前倒し方法まとめ

  • ①定額法から定率法への変更:初年度の償却額を約2倍に。変更年の3月15日までに申請書提出が必要
  • ②少額減価償却資産の特例(30万円未満):青色申告者なら年間300万円まで全額即時経費計上可能
  • ③中小企業経営強化税制:要件を満たす設備投資で即時償却または税額控除が選択可能
  • いずれも課税の繰り延べが基本。赤字の年に使っても効果がない点に注意

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!

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