成年後見制度とは?司法書士が利用対象・注意点・家族信託との違いをわかりやすく解説
認知症や障害で判断能力が低下した人を法的に支援する「成年後見制度」の仕組みと注意点を詳しく解説します。
成年後見制度とは?なぜ必要なのか
成年後見制度は、認知症や何らかの障害で判断能力が低下した人を法的に支援するための制度です。医師から認知症であると診断を受けた人は、金融機関での手続きや不動産の売買など、契約を要する法律行為ができなくなります。そうなると、認知症になった本人だけではなくご家族も困ってしまいます。
判断能力が低下した場合にできなくなる行為は、日常生活に直接関係することだけではありません。相続に向けた生前対策もできなくなってしまいます。
- 介護施設への入居契約
- 口座が凍結していて自身で費用を支払えない
- 不動産の売買・名義変更
- 生命保険の契約・変更
- 遺産分割協議への参加
また、判断能力が低下してしまった人は、悪質商法や詐欺被害、親族や知人による財産の使い込みなど、悪意を持った人によるトラブルに巻き込まれることも懸念されます。こうした問題に対応するために活用されるのが、成年後見制度です。
📌 ポイント
日本の高齢化はどんどん進んでおり、それに伴って認知症になる方も増加しています。そのため、成年後見制度の重要度は年々高まっています。
📝 このセクションのまとめ
- 成年後見制度は、判断能力が低下した人を法的に支援する制度
- 認知症と診断されると契約行為・財産管理が困難になる
- 悪質業者や財産の使い込みなどのトラブル防止にも役立つ
法定後見と任意後見の2種類
成年後見制度には大きく分けて、法定後見と任意後見の2つがあります。
| 種類 | 後見人の選び方 | 後見内容の決め方 | 利用できる時期 |
|---|---|---|---|
| 法定後見 | 家庭裁判所が選任 | 家庭裁判所がほとんど定める | 判断能力が低下した後でも利用可 |
| 任意後見 | 自分で後見人を選ぶ | 自分で後見内容を決められる | 判断能力が十分にある状態のみ |
⚠️ 注意
任意後見は、判断能力が十分にある状態のみ選択可能です。すでに認知症などによって判断能力が低下してしまったと判断された場合、法定後見しか選択できません。判断能力があるうちに後見人を選んでおくことが重要です。
本記事では、法定後見の場合に絞って解説していきます。
📝 このセクションのまとめ
- 成年後見制度には「法定後見」と「任意後見」の2種類がある
- 任意後見は判断能力があるうちにしか選べない
- 判断能力が低下した後は法定後見のみ利用可能
法定後見の3類型と後見人の役割
法定後見における後見人は、支援を受ける人の判断能力の程度によって、後見・保佐・補助の3つに分類されます。ここでは、3類型のうち最も利用者が多い「後見」の成年後見人について解説します。
| 類型 | 対象となる状態 |
|---|---|
| 後見(最も多い) | 判断能力が著しく不十分な状態 |
| 保佐 | 判断能力が不十分な状態 |
| 補助 | 判断能力がやや不十分な状態 |
成年後見人の役割は、大きく分けて身上の保護と財産管理の2つです。
【身上の保護】とは、被後見人(後見を受ける人)の生活や医療・介護など身の回りのことに目を配り、保護・支援することです。具体的には以下のことができます。
- 住居の確保や生活環境の整備
- 施設などの入退所の契約
- 治療や入院などの手続き
身上の保護は長期的に渡ることが多いため、被後見人の財産からの支出が破綻しないよう、しっかりとした収支計画を立てる必要があります。
【財産管理】とは、介護施設への入居費や医療費、自宅の転居などで大きなお金が必要なときに、本人に代わって財産を管理する権限です。具体的には以下のことができます。
- 金融機関などでの手続きの代行
- 代理人として遺産分割協議に参加
- 悪質業者が結んだ不利な契約の取り消し
⚠️ 注意
直接的な介護(食事の介助や家事など)は、成年後見人の役割には含まれていません。後見人はあくまでも法的な支援・財産管理を担う役割です。
📝 このセクションのまとめ
- 法定後見には「後見・保佐・補助」の3類型がある
- 後見人の役割は「身上の保護」と「財産管理」の2つ
- 食事の介助や家事などの直接介護は後見人の役割に含まれない
成年後見制度を利用する際の注意点
成年後見制度を開始するには、家庭裁判所に後見開始の申し立てを行い、審判を受ける必要があります。この手続きにはなかなかの手間と費用がかかります。
【申し立てに必要な書類】
- 医師による診断書
- 戸籍・住民票などの資料
【申し立て費用の目安】
| ケース | 費用の目安 |
|---|---|
| 鑑定が不要な場合 | 約2万円程度 |
| 鑑定が必要な場合 | 2万円+鑑定費用(別途) |
📌 ポイント
支援を受ける方に経済力がない場合は、成年後見制度利用支援事業の助成を受けることができます。ただし、希望すれば必ず助成を受けられるわけではなく、受けられたとしても費用の全額が助成されるとも限りません。
成年後見制度を利用すると、後見人への報酬が必要となることがあります。司法書士・弁護士・社会福祉士などの専門職が選任された場合には、報酬は必ず支払う必要があります。後見人は家庭裁判所に報酬付与の申し立てをすることで報酬を受け取ることができます。
親族が後見人であればこの申し立てをしないという選択もできますが、その場合、後見人は無報酬で後見にかかる負担を強いられることになります。また、親族が後見人になることを希望しても、家庭裁判所の判断で専門家が選任されることもあります。さらに、親族を後見人に選任できても、専門家を後見監督人として選任されることがあります。
後見人の報酬額の目安は、管理する財産額に応じて決められています。ただし、特別な事情があった場合には追加の付加報酬が発生します。
⚠️ 注意
家庭裁判所はあくまでも本人の財産の保護という観点から判断を行います。そのため、成年後見人を立てると、その時から本人の財産を動かすことに制限がかかります。
成年後見制度では、本人の利益を守るために財産をできるだけ減らさないことが最大の目的となるため、成年後見人は家庭裁判所の管理のもと、預貯金口座から生活費などを引き出すことはできますが、株式や不動産の売買・名義変更、生命保険の契約などの投資や財産移転は原則としてできません。あくまでも身上の保護で必要な財産を管理するのみとなっています。
📝 このセクションのまとめ
- 申し立てには診断書・戸籍等の書類が必要で、費用は鑑定不要の場合で約2万円
- 専門職が後見人に選任された場合は報酬の支払いが必須
- 後見開始後は株式・不動産売買など財産移転に関する行為は原則できない
- 親族を後見人にしたくても、裁判所が専門家を選任する場合がある
利益相反とは?特別代理人が必要なケース
成年後見人と被後見人の利害が対立することを利益相反といいます。
たとえば、弟が高齢の兄の成年後見人に就任しており、その親が亡くなったケースを考えてみましょう。この時、親の遺産について、被後見人である兄と成年後見人である弟が共同相続人となります。
成年後見人は被後見人の意思を尊重し、本人の利益を鑑みた行動をしなければなりません。しかし今回のケースでは、弟自身も相続人となるので自身の利益を求める権利もあります。このように利益の両立が難しい関係を利益相反関係といいます。
📌 ポイント
成年後見人と被後見人が利益相反関係になってしまった場合は、特別代理人を選任する必要が出てきます。ただし、すでに後見監督人が付いている場合は特別代理人の選任は不要です。
📝 このセクションのまとめ
- 後見人と被後見人が共同相続人になるなど、利益が対立する場面がある
- 利益相反関係になった場合は特別代理人の選任が必要
- 後見監督人が付いている場合は特別代理人は不要
成年後見制度と家族信託の違い
成年後見制度と似た制度として家族信託があります。家族信託とは、自身の老後や傷病のリスクに備えて、預貯金や保有する不動産などを信頼できる家族に託し、管理・運用・処分を任せる財産管理の方法のことです。
成年後見制度と家族信託は「他の人に財産の管理を任せる」という点では共通しますが、目的や開始時期などが異なります。
| 比較項目 | 成年後見制度(法定後見) | 家族信託 |
|---|---|---|
| 目的 | 認知症などで判断能力が著しく低下した人を法的に支援する | 信頼できる家族(受託者)に財産の管理・運用・処分を託す |
| 開始時期 | 認知症などで判断能力が著しく低下したと判断された時 | 信託契約を結んだ時 |
| 費用 | 申し立て費用は比較的低め。ただし継続的な報酬が発生 | 契約時の費用は高め。その後のランニングコストは原則不要 |
| 裁判所の関与 | 家庭裁判所の管理・監督あり | 裁判所や第三者の関与なし |
| 財産管理の柔軟性 | 財産移転・投資は原則不可 | 契約内容に応じて柔軟に対応可能 |
| 認知症後の利用 | 可能 | 診断後は契約が困難 |
家族信託を利用すべきケースは、以下のような状況です。
- 検討している段階で判断能力がはっきりしている
- 柔軟に財産管理をしたい
- 裁判所や第三者に関与されたくない
- 次の代まで財産を承継する人を指定したい
- 健康なうちから相続の準備がしたい
家族信託は契約時の費用は成年後見制度に比べて高くなりますが、一度契約を結べばその後のランニングコストは原則として発生しません。長期的なサポートとして利用する場合、家族信託を選択するのがよいといえます。
成年後見制度を利用すべきケースは、以下のような状況です。
- すでに判断能力に問題を抱えている
- 財産管理以外の法律行為を行う必要がある
- 財産管理以外にも身上看護の必要がある
- 専門家に財産管理や身上看護を任せたい
本人に身近に頼れる親族がおらず、親戚や知人が身上看護を行っている場合や、家族がいても仕事が忙しく財産管理や身上看護を行う時間がない場合などには、成年後見制度を利用するとよいでしょう。
📝 このセクションのまとめ
- 家族信託は健康なうちに契約できる柔軟な財産管理の手法
- 成年後見制度は判断能力が低下した後でも利用できる法的支援制度
- 長期的なコスト面では家族信託の方が有利な場合が多い
- すでに判断能力が低下している場合は成年後見制度一択
成年後見制度の改正に向けた動き
成年後見制度は現在、制度の改正が検討されています。この制度は活用するために様々なコストがかかるため、認知症などの問題を抱える人の増加に比べ、利用者数の推移はあまり高くないのが現状です。
この実情を踏まえて、厚生労働省では成年後見制度の利用促進のために2018年から専門家会議を設置し、改善を図っています。
📌 ポイント
政府は2026年度までに民法など関連法案の国会提出を目指しており、実現すれば成年後見制度が始まって以来、初の大幅な改正となります。制度がより使いやすくなるよう議論が進んでいます。
医師に認知症と診断されていると法律行為ができなくなり、財産管理も難しくなってしまいます。ご自身やご家族の中に判断能力に不安がある人がいる場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。早めに準備することで、できる対策が変わってきます。
📝 このセクションのまとめ
- 成年後見制度の利用者数は認知症・障害者数に比べてまだ少ない
- 2018年から専門家会議が設置され制度改善の議論が進んでいる
- 2026年度までに関連法案の国会提出を目指しており、大幅改正が期待される
- 判断能力に不安がある場合は早めに専門家へ相談することが重要
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 相続専門税理士チャンネル【VSG相続税理士法人】 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 相続専門税理士チャンネル【VSG相続税理士法人】を応援しています!
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