AI税務調査「KSK2」2026年始動で何が変わる?税理士が解説する調査回避策
2026年9月、国税庁の次世代AIシステム「KSK2」が始動し、税務調査のあり方が根本から変わります。調査確率・追徴課税額の最新データと、今すぐ取れる具体的な対策を詳しく解説します。
この10年で税務調査はどう変わったか──最新データで比較
まず、直近のデータが確認できる2024年と、その10年前の2014年を比較して、法人に対する税務調査がどのように変化したかを見ていきます。
| 指標 | 2014年(10年前) | 2024年(直近) | 変化 |
|---|---|---|---|
| 法人数 | 約300万法人 | 約340万法人 | 約13%増 |
| 実地調査件数 | 約9万1,000件 | 約5万9,000件 | 約35%減 |
| 実調率(調査が来る確率) | 約3% | 約1.7% | 約43%減 |
| 修正申告割合(申告誤りが見つかった割合) | 72% | 76% | 増加 |
| 不正発見割合(重加算税対象) | 18% | 22% | 増加 |
| 1件あたり追徴課税額 | 約175万円 | 約358万円 | 約2倍超 |
法人数は増加しているのに、実地調査の件数は大幅に減っています。コロナ禍でさらに減少し、その後回復しても5万9,000件と10年前の水準には程遠い状況です。
かつては「10年で会社を経営していれば3割程度の確率で調査が来る」と言われていましたが、現在は10年間でも調査が来る確率は約17%にまで下がっています。
⚠️ 注意
調査件数は減っているものの、調査に来たときの「命中率」と「追徴額」は確実に上がっています。1件あたりの追徴課税額がインフレを考慮しても約2倍超というのは、税務署が「不正がありそうで、かつ不正金額が多いところ」を狙い撃ちしている証拠です。
📝 このセクションのまとめ
- 法人数は増加する一方、実地調査件数は10年で約35%減少
- 調査が来る確率は3%→1.7%に低下(10年で約17%)
- 一方で調査精度・追徴額は上昇し、「狙い撃ち型」に移行している
調査精度が上がった理由──すでに稼働しているAI選定システム
なぜこれほど調査の精度が上がっているのでしょうか。その大きな原因が、2022年からすでに稼働しているAIによる税務調査先の選定システムです。
様々なところからデータを収集・加工し、AIで分析したうえで調査先を選ぶという仕組みがすでに動いています。そして、このシステムが2026年9月にさらに大きく進化します。
📌 ポイント
国税庁には以前から「KSK(国税総合管理)システム」がありましたが、2026年9月からは次世代型の「KSK2」へ移行します。簡単に言うと、あらゆる情報を集めてAIで分析し、税務調査にも活用するという、より高度なシステムです。
📝 このセクションのまとめ
- 2022年からすでにAIによる調査先選定が始まっている
- 2026年9月に次世代システム「KSK2」へ移行し、さらに精度が上がる
KSK2で何が変わるのか──4つの激変ポイント
KSK2への移行によって、税務調査の運用は具体的に以下の4点で大きく変わります。
- 調査先の選定が「各税務署単位」から「全国レベル」へ
- 選定基準が「職人的な調査官の勘」から「データによる自動選定」へ
- 税目の管理が「縦割り」から「横断的な連携」へ
- 調査官が現場でリアルタイムにデータへアクセス可能に
それぞれ詳しく見ていきましょう。
【変更点①②】全国一元化&データ自動選定──「引っ越し対策」はもう通用しない
これまでは、各税務署がそれぞれの管轄内でデータを管理し、調査先を選んでいました。そのため、「税務調査が来そうだから、管轄の税務署を変えるために引っ越しをしよう」という対策が、一部では実際に行われていたようです。管轄が変わると情報が一旦リセットされるような側面があったからです。
⚠️ 注意
KSK2では調査先の選定が全国レベルになります。管轄の税務署を変えても、データはリセットされません。また、「売上が10億円でも都会に本社を移せば目立たなくなる」といった発想も通用しなくなります。地域による「目立ちにくさ」は今後一切関係なくなると考えてください。
また、調査先の選定がデータによって自動化されることで、「経験豊富な調査官」よりも「データ分析」が重視されるようになります。ベテランの勘に頼った選定から、AIと統計学に基づく客観的な選定へとシフトしていきます。
📝 このセクションのまとめ
- 管轄税務署を変えるための「引っ越し対策」はKSK2で完全に無効化される
- 都会への本社移転で「目立たなくする」手法も通用しなくなる
- 調査先選定はベテランの勘からデータ自動選定へ移行する
【変更点③④】税目の横断連携&現場リアルタイム照会──税理士が「最も嫌な改正」と語る理由
3つ目の変更点は、税目をまたいだ横断的な情報連携です。これまでは法人税の部門と所得税などの個人課税部門がバラバラで、連携が取れていないケースも見受けられました。
KSK2では、ある会社の法人税を見れば、その代表者の所得税・相続税など、あらゆる情報が全て繋がって分析されるようになります。グループ会社との取引関係なども、AIが横断的に把握します。
⚠️ 注意
4つ目の変更点が、税理士として「最も嫌な改正」と言われるものです。調査官が調査先の現場でKSK2のデータにリアルタイムアクセスできるようになります。 例えば、社長が「この取引はあの会社が払ったはずです」と言っても、調査官がその場でKSK2を照会し「その会社はその時期にそのような支払いをしていません」と即座に反論できてしまいます。 これまでは「一旦持ち帰って調べます」という時間の間に、税理士が過去の帳簿を確認して対応策を練ることができました。「時間を稼ぐ」という対応が今後はほぼ不可能になります。
📝 このセクションのまとめ
- 法人税・所得税・相続税などが横断的に連携され、代表者個人の情報も一体で分析される
- 調査官が現場でリアルタイムにデータ照会できるため、「時間稼ぎ」の対応が通用しなくなる
- 取引先の情報もデータベースに蓄積され、即座に照合される
税務調査先はどうやって選ばれるのか──AIが狙うポイント
では、具体的にどのような会社・個人が調査先として選ばれやすいのでしょうか。大きく「マクロ(業界全体)の視点」と「ミクロ(自社内)の視点」に分けて整理します。
【マクロの視点】同業他社との比較
同じ業種・同じ規模の法人の財務諸表を比較して、「この会社だけ経費が多すぎる」「売上が少なすぎる」といった異常値を検出します。顧問税理士がいる方は、「うちの会社は同業他社と比べてどうですか?」と定期的に確認しておくことが重要です。
【ミクロの視点】自社内の異常値
- 売上総利益(粗利益)や営業利益の急激な増減
- 特別利益・特別損失の計上(本当に正当なものか)
- 仮勘定(仮受金・仮払金)の多額計上
- 代表者への仮払い・貸付金(売上の抜き取りや私的流用の疑い)
- 交際費・広告宣伝費・外注費の突出した金額
【その他の選定要素】
- 過去の調査実績・会社の「質的区分」(不正しがちな会社として記録されているか)
- 重点項目:消費税の多額の還付申告、国際取引
- 時代に合わせた重点業種(最近ではインターネット関連など)
- 取引先に関する情報(いわゆる「資料箋」)
- グループ会社との対外取引関係
📌 ポイント
KSK2以降は、自社だけでなく「取引先」「過去の記録」も含めた全方位のデータが税務署側に蓄積され、即座に引き出せる状態になります。「今の自分の会社だけ」を見るのではなく、過去も取引先も含めて対策を考える時代が来ます。
📝 このセクションのまとめ
- 同業他社との比較で異常値がある会社が狙われやすい
- 仮勘定・代表者貸付・交際費の突出など、自社内の異常値も重要なシグナル
- 過去の調査記録・取引先情報・業種トレンドも選定基準に含まれる
税務調査に入られないための具体的な対策
では、これらを踏まえて、税務調査に入られないためにはどうすればよいのでしょうか。
まず大前提として、上記の選定条件に当てはまらなければ、調査が来る可能性は低くなります。調査確率自体は3%から1.7%へと下がっていますので、昔に比べれば来ること自体は少なくなっています。
ただし、経営をしていれば、これらの条件に当てはまることは多々あります。その場合の対策として、以下の2点が有効です。
【対策①】事前に根拠と証拠を用意しておく
特定の科目が高額になった場合など、調査が来ても大丈夫なように、事前にその理由と証拠を用意しておくことが基本中の基本です。調査官が現場でリアルタイムにデータを照会できる時代には、その場で即答できる準備が必要です。
【対策②】33条の2「書面添付制度」を活用する
顧問税理士がいる方には、「33条の2」と呼ばれる書面添付制度の活用を強くおすすめします。これは、税理士が「なぜ外注費が急増したか」などの理由を細かく書面にまとめて、申告書と一緒に提出する制度です。
- AIがこの書面も読み込むと考えられるため、税務調査が来にくくなる効果が期待できる
- この書面を提出しておくと、まず税務署から税理士に連絡が来て、税理士側で全て対応が完結する可能性がある(会社に直接調査官が来ない可能性がある)
⚠️ 注意
「AIに分析されないように、紙で全て提出しよう」と考える方もいるかもしれません。しかし、どんな書類を提出しても、国税庁はAI-OCRを使って全てデジタル化します。紙での提出は何の対策にもなりません。 さらに、インボイス制度や電子帳簿保存法によってあらゆる取引データがデジタル化されており、これらは全てAIに読み込ませてより効率的な税務調査を行うという国税庁の強い意図があります。国税庁は現在、AIや統計学に強い人材の採用・育成にも力を入れており、ベテランの経験と勘に基づく税務調査は今後確実に減っていくでしょう。
なお、今回は法人を中心に解説しましたが、個人事業主・所得税についても基本的な考え方は同様です。また、国税庁のシステム変更は地方税のeLTAXにも影響を及ぼす見込みです。
📝 このセクションのまとめ
- 調査が来ても大丈夫なように、異常値がある科目は事前に根拠と証拠を用意しておく
- 顧問税理士がいる場合は「33条の2(書面添付制度)」の活用が有効
- 紙で提出してデジタル化を避けようとしても、AI-OCRで全てデジタル化されるため無意味
- インボイス・電子帳簿保存法は、AI税務調査を強化するための布石でもある
※本記事の情報は2025年9月28日時点のものです。
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル オタク会計士ch【山田真哉】 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは オタク会計士ch【山田真哉】を応援しています!
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