税務調査

AI税務調査の実態と対策を税理士が解説|狙われる申告書の特徴とは

AI税務調査の実態と対策を税理士が解説|狙われる申告書の特徴とは
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AIを使った税務調査が本格化し、申告漏れ額が過去最高を記録。あなたの申告書は大丈夫ですか?

AI税務調査で申告漏れが過去最高に|令和5年度の実態

国税庁の資料「令和5年度 所得税及び消費税調査等の状況」によると、各地の国税局が2024年6月までの1年間に所得税に関する税務調査を約60万件実施しました。

その結果、所得税の申告漏れは全国で約31万件に上り、追徴税額も約1,400億円と前年比で30億円増加。同じ方法で統計データを取り始めた2009年以来、過去最高の申告漏れ額となりました。

📌 ポイント

この過去最高記録の背景には、税務調査の「選定」段階でAIを活用したことが挙げられています。帳簿の中身をAIでチェックするのではなく、どの事業者に調査に行くかを選ぶ段階でAIが使われています。

国税には「KSK(国税総合管理)システム」と呼ばれる巨大コンピューターがあり、全ての確定申告データ・業種情報・利益率などの情報が詰まっています。このKSKシステムにAIを連携させることで、申告書の異常値や不自然な動きを素早く察知できるようになったと考えられています。

なお、税務調査には大きく2種類あります。

種類概要頻度・対象
強制調査何らかの証拠を掴んで捜査令状を持ってやってくるレベル悪質な脱税が疑われるケース
任意調査定期的なチェックとして行われる一般的な調査5〜10年に1回程度。個人より法人の方が入りやすい

📝 このセクションのまとめ

  • 令和5年度の所得税調査は約60万件、申告漏れは過去最高
  • AIはKSKシステムと連携し、調査先の「選定」に使われている
  • 任意調査は5〜10年に1回程度で、黒字の事業者が狙われやすい

AIに狙われやすい業種トップ10|申告漏れ金額が大きかった職種

今回の調査で特に申告漏れ金額が大きかった業種のランキングが公表されています。上位に入りやすい業種の傾向を見てみましょう。

順位業種狙われやすい理由
1位経営コンサルタント現金収入が多く、売上を抜きやすい。うさんくさい商売をしながらコンサル名乗るケースも多い
上位ホステス・水商売現金商売で売上の把握が難しい
上位ブリーダー現金取引が多い
上位飲食業現金商売の代表格
上位コンテンツ配信元会社員の駆け出し経営者が多く、申告制度を理解していないケースも
上位太陽光発電事業同上。新規参入者が多い

共通するのは現金商売が多く、売上を簡単に抜きやすい業種という点です。また、コンテンツ配信や太陽光発電事業については、これまで会社員だった方が急にビジネスをスタートした駆け出しの経営者も多く、申告制度そのものを理解していないケースも多いと考えられます。

AIは、過去に申告漏れがあった事例を学習・読み込ませることで、申告書の不備が多いパターン・キリのいい数字ばかりの決算書・現金収入が多い業種などをリサーチしています。

📝 このセクションのまとめ

  • 経営コンサル・ホステス・ブリーダー・飲食業が上位に常連
  • 現金商売で売上を抜きやすい業種が特に狙われやすい
  • コンテンツ配信・太陽光など新規参入者が多い業種も注意が必要

税務調査リスク判定アプリで実験|業種別の判定結果を公開

スマホ確定申告アプリ「タックスナップ」には、税務調査リスク判定機能が搭載されています。実際にいくつかのパターンで判定を試してみた結果を紹介します。

【ケース1】売上86万円のプロゲーマー → リスク「中」

接待交際費が345万8,000円と売上に対する割合が40.4%と非常に高く、国税庁の統計では1%以下が平均とされているため、用途の説明が求められる可能性があると指摘されました。その他の経費は問題なく、詳細の説明ができる資料を用意することが重要とのことです。

【ケース2】売上648万円のITエンジニア → リスク「中」

支払手数料が194万5,800円と売上に対する比率が30%で、業界基準の10%に比べてかなり高いと指摘されました。支払手数料・外注費という科目は税務調査の際に怪しまれやすいため、事業との関連性を説明できるよう準備しておく必要があります。

【ケース3】売上989万円のインフルエンサー → リスク「中」

売上金額が1,000万円をわずかに下回るため、今後もこの状況が続く場合には税務調査の対象となる可能性があると指摘されました。これは消費税の問題です。インボイスを取得していない場合、2年前の基準期間の課税売上高が1,000万円以下であれば消費税が免税となります。

⚠️ 注意

本当は売上が1,000万円を超えているのに、意図的に売上を減らして1,000万円を切るようにして消費税逃れをするケースが多く見られます。毎年毎年売上が1,000万円直前で止まっている方は特に要注意です。開業初年度や単年度で1,000万円を下回っているケースは基本的に問題ありません。

【ケース4】売上326万円の一人親方(大工) → リスク「高」

経費の総額が売上に対して172.8%という非常に高い割合で、税務署からの質問や調査がある可能性が非常に高いと判定されました。

項目金額売上比率リスク評価
接待交際費32万5,800円99.98%非常に高い
消耗品11%高い
経費総額564万3,488円172.8%非常に高い

一人親方として経費率は通常30%〜60%程度が望ましいとされており、この高い割合は税務署からの注目を集める可能性があります。本当に赤字なのであれば、青色申告で繰越控除を使って3年間の未来の節税に活用することができますが、何でもかんでも経費に突っ込むのは非常に危険です。

【ケース5】売上450万円のウェブマーケター → リスク「低」

売上450万円に対して経費が42万5,580円、経費率わずか9.46%。この業種であれば妥当な水準とされ、税務調査リスクは低いと判定されました。

📌 ポイント:タックスナップの概要

  • 会計ソフトではなくスマホアプリ。パソコン不要で電子申告までスマホで完結
  • 勘定科目の知識不要。スワイプだけで自動仕訳が可能
  • 銀行データと連携し、経費は右スワイプ・経費以外は左スワイプで仕訳
  • PayPayの画面をスキャンして取り込み、自動仕訳する機能も搭載
  • 青色申告65万円控除にも対応
  • 税務調査リスク判定機能は「安心プラン」のみ搭載
  • 万が一調査で追徴課税された場合、アプリ代を全額返金するサービスつき

📝 このセクションのまとめ

  • 税務調査リスクは売上に対する各経費の比率で判定される
  • 接待交際費・支払手数料・外注費が売上比で異常に高い場合は要注意
  • 売上が毎年1,000万円直前で止まっている場合は消費税逃れを疑われる
  • 個人事業主の赤字続きは「どうやって生活しているのか」と疑われる

税務調査が入りやすくなるきっかけ|引き金となる5つのケース

どんな事業者(個人事業主を含む)が税務調査に入られやすいのか、引き金となるケースをまとめます。

  • 売上が急拡大した
  • 利益率の変動が激しい(増収減益など)
  • 過去の赤字繰越を使い切った
  • 10年・20年と税務調査が入っていない
  • 赤字が続くなど脱税の形跡がある

これらの状態だから悪いということでは決してありません。基本的にはKSKシステムにAIを連携させて調査先を選定していますが、こうした状況が引き金になりやすいという点を把握しておくことが重要です。

📝 このセクションのまとめ

  • 売上急拡大・増収減益・長期間の無調査などが調査の引き金になる
  • これらの状況自体が悪いわけではなく、理由を説明できることが大切

AIに狙われる「危険な申告書」の4つの特徴

では具体的にどんな確定申告書が危ないのか、4つのパターンを詳しく解説します。

① 増収減益のケース

増収減益とは、売上が伸びている以上に経費が大きくなっている状態のことです。例えば売上が50%増なのに経費が120%増え、結果として利益が減ってしまっているような場合です。

このようなケースでは「経費の中身に無理な節税や脱税があるのではないか」と疑われます。ただし、事業にはさまざまなことがあり、本当に増収減益になることもあります。そういった場合は後述する「特殊事情欄」に情報を開示することが重要です。説明がつけば問題はありません。

② 個人事業主なのに赤字決算が続いている

法人と個人事業主では、赤字の意味合いが大きく異なります。

区分赤字の意味生活費との関係
法人純粋な事業上の損益役員報酬を別途受け取るため生活費の財源がある
個人事業主自分の生活費も含めた損益最終利益から税金を引いたものが生活費になるため、赤字では生活できないはず

例えば売上1,000万円で経費が1,200万円かかっている個人事業主がいたとして、税務当局は「どうやって生活しているのか」と疑問を持ちます。単年度の赤字であれば借入や貯蓄でしのぐこともできますが、これが毎年続いているのは明らかにおかしいということで調査対象になりやすいのです。

③ 申告書・決算書の数字が丸い数字ばかり

申告書や決算書に記載されている数字が、以下のように全て丸い数字になっているケースです。

  • 売上:1,200万円
  • 仕入:600万円
  • 経費各項目:全て万円単位で端数なし

実務上、本当に事業を営んでいればこのような数字になることはまずありません。不自然な丸い数字ばかりの申告書は、今回のAI選定で狙われたことが確認されています。

④ 外注費・支払手数料の金額が異常に大きい

例えば売上1,200万円の事業なのに、支払手数料が1,000万円・外注工賃が1,000万円といったケースです。

⚠️ 注意:外注費・支払手数料が狙われる理由

脱税を試みる人が架空経費を計上する際、仕入れに入れると帳尻が合わなくなります。水道光熱費や雑費を大きくするのも不自然なため、最終的に「外注費」や「支払手数料」にたどり着くケースが多いのです。税務当局はこの手口をしっかり把握しています。

また、知り合いが経営する赤字の会社にお金を流し、そちらの会社は赤字なので税負担がないという手法を使った脱税も多く見られます。

外注費・支払手数料が本当に多くかかっている場合は問題ありませんが、調査の際には以下の点を説明できるよう準備しておく必要があります。

  • 実態があるかどうか(支払先の写真・所在地を言えるか)
  • 接待交際費や寄付金に該当するものではないか
  • 契約書がちゃんとあるか
  • 金額の算定根拠を説明できるか
  • 最終成果物(コンサルを受けたならレポートなど)があるか
  • 請求書があるか
  • 支払いの証拠があるか

これらを全てクリアできれば実在する経費の可能性が高いですが、どれかで詰まる場合は架空経費の可能性が高いと見られます。

⑤ 家事按分・家事消費の処理漏れ

家事按分とは、プライベートと仕事の両方にまたがる経費について、プライベート分を経費から除外することです。仕事・プライベート両用の車などが代表例です。これを行っていないケースは決算書を見れば分かるため、狙われる可能性が高くなります。

また、家事消費とは飲食店などでお店の食材を自ら食べた場合などに、仕入れが経費に落ちている以上は、その時価相当額を売上に計上しなければならないという考え方です。これが行われていない場合も申告書のミスとして指摘されます。

📝 このセクションのまとめ

  • 増収減益・赤字続き・丸い数字・外注費の異常な大きさ・家事按分漏れが危険な申告書の特徴
  • 外注費・支払手数料が大きい場合は契約書・請求書・成果物などを必ず保管する
  • 家事按分・家事消費の処理は決算書に必ず反映させること

AIに狙われないための安全な確定申告のコツ|「特殊事情欄」を活用せよ

では、これらのリスクがある場合にどう対策すればよいのでしょうか。最も重要なのが確定申告書・決算書の「特殊事情欄」への記載です。

青色申告決算書の3ページ目に「特殊事情」を記載する欄があります。ここに、増収減益や赤字になった理由をしっかり書いておくことが非常に有効です。

📌 特殊事情欄に書くべき内容の例

  • 「今期は人員投資・設備投資があり、昨年より売上は増えたが大幅な減益となった」
  • 「コロナの影響でサービス業として売上が激減し、赤字となった」
  • 「新規事業立ち上げのため初年度は先行投資が多く、赤字計上となった」

このように情報を開示することで、「内部体制がちゃんとできている事業者だな」という印象を与えることができます。

「税務署にあえてこちらから情報を教えていいのか」と思う方もいるかもしれませんが、真面目に経営されている方にとっては逆効果ではありません。この特殊事情欄を記載している人はほぼ9割以上が書いていないため、あえて書いておくことで差別化できます。

もちろん、脱税に近いことをしている場合はこの限りではありません。あくまで正当な理由がある場合の情報開示として活用してください。

📝 このセクションのまとめ

  • 青色申告決算書3ページ目の「特殊事情欄」に増収減益・赤字の理由を記載する
  • 9割以上の人が書いていないため、記載するだけで信頼性が上がる
  • 正当な理由があるなら積極的に情報開示することがAI選定対策になる

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!

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