相続・贈与

「アリバイ贈与」は税務署に狙われる!定期贈与とNISA活用の落とし穴を税理士が解説

「アリバイ贈与」は税務署に狙われる!定期贈与とNISA活用の落とし穴を税理士が解説
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「111万円贈与して1,000円納税すれば安心」という思い込みが、最も危険です。

新しいNISAと相続税対策の関係

昨年から新しいNISAがスタートし、「今こそ相続税対策を」ということで、毎年110万円を贈与したり、あるいは「それでは少し危ない」ということで111万円を贈与して1,000円の贈与税を払う。そして「贈与がうまく成立した」とドヤ顔でいる方がいらっしゃいませんでしょうか。

⚠️ 注意

はっきり言います。その「アリバイ作り」はほぼ無意味です。無意味どころか、「無事に贈与が成立した」と思い込んでしまうことが一番危険なのです。

まずNISAについておさらいしておきましょう。NISAとは「日本版インディビジュアル・セービング・アカウント(少額投資非課税制度)」のことで、通常の証券会社の特定口座や一般口座とは異なる、第3の口座です。

18歳以上であれば誰でも1人1口座持つことができ、その口座の中で得られた利益(配当金や株の売却益など)は、いくら儲けてもなんと税金が0円・非課税です。

2025年3月末時点でNISA口座の解説数は2,647万口座となっており、大体国民の4人に1人がNISA口座を開設しています。

区分対象商品年間上限生涯上限
積立投資枠投資信託など120万円(月10万円まで)1,800万円
成長投資枠個別株・投資信託240万円
合計360万円1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)

投資で得た利益に対して税金が一切かからないというのは非常に画期的なことです。これから株式投資をやってみようという方は、普通の特定口座などよりもまずこのNISA口座からスタートした方がいいでしょう。

さらに、現在は18歳以上という制限があるNISAですが、なんと子ども支援(仮称)というものが創設予定になっています。年間投資枠の上限や非課税期間などの詳細は現時点では未定ですが、0歳児からでも利用できるということで、これによってより相続税対策がしやすくなります。特にNISA枠を使い切った方は、家族(子どもやお孫さん)名義のNISAで非課税枠がさらに広がります。この子ども支援は早くても2026年以降のお話になるかもしれませんが、生前贈与と組み合わせた相続税対策がより可能になります。

📝 このセクションのまとめ

  • 新NISAは年間360万円・生涯1,800万円まで投資でき、利益は永久非課税
  • 2025年3月時点で約2,647万口座(国民の約1/4)が開設済み
  • 子ども支援(仮)が実現すれば0歳からNISAが利用でき、家族全員で非課税枠を活用できる

相続税の基本的な仕組みと税率

相続税というのは、個人の貸借対照表(財産目録)を作って、それに基づいて計算するものです。プラスの財産から負債(マイナスの財産)を引いた純財産に対して相続税がかかります。この純財産が大きければ大きいほど、相続税の負担が大きくなります。

厳密には「基礎控除」といって相続税がかからないラインがあります。

📌 ポイント:相続税の基礎控除額

3,000万円 + 法定相続人の数 × 600万円

例:配偶者1人+子ども2人(合計3人)の場合
600万円 × 3人 + 3,000万円 = 4,800万円まで非課税(申告も不要)

相続税対策として皆さんが考えることは大きく3つです。

  • 財産を減らす(生前贈与など)
  • 財産の評価を下げる(土地の評価減など)
  • 負債を増やす(借入など)

なお、相続税の税率はあまり知られていませんが、所得税と同様に累進課税となっており、最低税率は10%ですが、基礎控除を引いた後の総額が6億円を超える方には55%という非常に高い税率が適用されます。「3代続けば財産がなくなる」と言われるのも、あながち嘘ではないのです。

課税価格(基礎控除後)税率
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%
5,000万円以下20%
1億円以下30%
2億円以下40%
3億円以下45%
6億円以下50%
6億円超55%

📝 このセクションのまとめ

  • 相続税は純財産(プラスの財産-負債)に課税される
  • 基礎控除は「3,000万円+法定相続人×600万円」
  • 最高税率は55%(6億円超)と非常に高い
  • 対策の基本は「財産を減らす・評価を下げる・負債を増やす」の3つ

生前贈与とNISAを組み合わせた相続税対策の流れ

代表的な相続税対策である生前贈与。具体的には、祖父母名義の預金から子ども・孫名義の預金にお金の贈与を行い、その後お子さん・お孫さんが自らNISA口座を開設して運用(株や投資信託を自分で購入)するという流れです。

ただし、ここで注意しなければならないのが「名義NISA」の問題です。

⚠️ 注意:名義NISAは贈与にならない

名義だけお孫さんになっているNISA口座で、実際はおじいちゃん・おばあちゃんが孫にお金を渡したふりをして、自分で孫名義の口座を開設して自分で運用している場合、これは財産を贈与したことにはなりません。

お子さん・お孫さんのNISA口座のパスワードを誰が管理しているか、この実態が非常に重要です。もしおじいちゃん・おばあちゃんが管理しているなら、それは100%おじいちゃん・おばあちゃんの財産であり、相続税対策は一切成立していません。

相続税の税務調査において最も狙われるのが名義預金・名義NISAです。

また、贈与税についても注意が必要です。NISA自体は非課税ですが、お金を贈与した際には受け取った側に贈与税がかかる場合があります。贈与税にも基礎控除があり、個人1人当たり年間110万円までであれば贈与税は非課税です。

ただし生前贈与は相続税対策の意味合いが強いため、贈与税の税率は相続税よりも高く設定されています。

課税価格(基礎控除110万円控除後)税率(直系尊属から18歳以上への贈与)
200万円以下10%
400万円以下15%
600万円以下20%
1,000万円以下30%
1,500万円以下40%
3,000万円以下45%
4,500万円以下50%
4,500万円超55%

贈与税は4,500万円超で55%という非常に高い税率が適用されます。だからこそ、生前贈与をされる方は年間110万円という基礎控除の枠にこだわるのです。

📝 このセクションのまとめ

  • 生前贈与+NISA活用は有効な相続税対策だが「名義NISA」には要注意
  • NISA口座のパスワード管理者が誰かで、贈与の実態が判断される
  • 贈与税の基礎控除は年間110万円。超過分には高い税率がかかる
  • 贈与税の最高税率は55%(4,500万円超)で相続税と同水準

「定期贈与」と見なされる危険性

例えば、毎年100万円を孫に贈与して相続税対策をしようとしたとします。110万円の基礎控除を下回っているので贈与税はかからない。これを長期的に続ければそれなりに大きな相続税対策ができる、という考えです。

しかし、これには危険な要素が含まれています。

⚠️ 注意:定期贈与と認定されると…

税務当局は「100万円の贈与を10回した」のではなく、「元々1,000万円を贈与する計画だった」と見なします。

もし1,000万円の贈与のつもりだと認定されると、贈与税177万円を納めることになります(実際には計算上多少変動しますが、総額1,000万円で一括贈与した場合にはこれだけの贈与税がかかります)。

これは「定期贈与」というものに該当します。国税庁もこの点について明確にアナウンスしています。国税庁のQ&Aには次のように記載されています。

📌 国税庁Q&Aより(贈与税がかかる場合・質問9-1)

「ただし、毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受けることが贈与者との間で契約・約束されている場合には、契約をした時点に定期金(給付契約に基づく定期金に関する権利)=10年間にわたる100万円ずつの給付を受ける契約にかかる権利の贈与を受けたものとして贈与税がかかります。」

つまり「10年間で1,000万円もらえる権利をもらった」と見なされるため、基礎控除以下ではないということです。

📝 このセクションのまとめ

  • 毎年100万円×10年の贈与は「1,000万円の定期贈与」と見なされる場合がある
  • 定期贈与と認定されると贈与税177万円が課税される
  • 国税庁も定期贈与の課税について公式にアナウンスしている

「アリバイ贈与」が無意味な理由

定期贈与と見なされることへの対策として、誤った解釈が広まっています。よくある「アリバイ作り」の手法を見てみましょう。

よくある「アリバイ作り」の手法効果理由
毎年の贈与金額を変える(100万→105万→95万→…)ほぼ無意味金額の変動だけでは定期贈与の認定を防げない
贈与の日付を毎年変える(12月1日→10月31日→…)ほぼ無意味日付の変動だけでは定期贈与の認定を防げない
111万円を贈与して1,000円の贈与税を納税する無意味納税の事実と契約・法的行為の実態は関係ない

特に3つ目の「111万円贈与+1,000円納税」について詳しく説明します。111万円から基礎控除110万円を引くと1万円。1万円に対する贈与税率10%で1,000円の贈与税を納める。「しっかり贈与の申告をして納税しているから贈与が成立している」という考え方です。

⚠️ 注意

これは勘違いです。その納税の事実と、贈与契約・法的行為の実態は全く関係ありません。一見真面目に頑張っておられるようで、無意味と言わざるを得ません。

金額を変えたり、日付を変えたり、111万円で贈与をしたとしても、それでも先ほどの定期贈与と判断されてしまうことがあるのです。これだけで贈与が成立したと油断してはいけません。

📝 このセクションのまとめ

  • 金額を変える・日付を変える・111万円にして納税する、これらはいずれも定期贈与の認定を防ぐ効果はほぼない
  • 「納税しているから贈与が成立している」という考えは誤り
  • アリバイ作りで安心してしまうことが最も危険

定期贈与と見なされないための正しい対策

定期贈与がダメだということであれば、単なる「連年贈与」としての実態になるよう、事実関係を整えておくことが必要です。具体的な対策は以下の3つです。

対策① 事実関係を双方で明確にして税務調査に臨む

贈与というのは、上げる側の「上げた」という意思表示だけでなく、もらう側の「もらいました」という意思表示・認識があることが必要です。

税務調査が行われると、基本的に被相続人(亡くなられた方)はいませんので、相続人の方にヒアリングされます。調査官から「10年間にわたって1,000万円もらうという約束をしていましたか?」と聞かれた際に、「もらう約束をしました。1,000万円まとめてもらうと一度に使ってしまいそうだから、1年間100万円という約束にしました」などと答えてしまうと、これは明らかに定期贈与なのでアウトです。

📌 ポイント:正しい贈与の考え方

贈与の金額は「10年間でいくら」と決めるのではなく、毎年考えることが大切です。

  • 「今年は110万円にしようかな」
  • 「今年は経済的に余裕がないから90万円にしようかな」
  • 資産家の方は110万円にこだわらず、例えば年間500万円の贈与で贈与税約50万円(税負担約1割)を払い、将来の相続税(2〜3割以上)を下げる方が有利な場合もある

上げる側・もらう側それぞれが、このような事実関係の認識を持つことが重要です。

対策② 振り込みを通じて証拠を残す

贈与の成立に振り込みが絶対条件というわけではありませんが、客観的な証拠があった方が望ましいのは間違いありません。贈与する側の口座から出て、お子さん・お孫さんの口座に入金がある、そのような履歴を残しておくことが望ましいです。

対策③ 毎年贈与契約書を作成する

税務調査が入ることが分かった時点でまとめて贈与契約書を作ってプリントアウトし、急いで押印する、これはバレます。

  • 紙の質が同じ
  • 紙の新しさが同じ
  • 押印後のにじみ具合も、大体同じ時期・同じ日に押印されたと分かる

10年にわたって贈与するなら、10年前の書類は紙が黄ばんでいたり古くなっていたりするはずです。調査官はそういったところも必ずチェックします。

「公証役場に行って確定日付をもらえばいいのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。確定日付は贈与の事実・契約書が本物であることを記録に残すためのもので、有料で受けられます。しかし、これも絶対ではなく、気休め程度という感じです。お金もかかりますし、それよりも毎年ちゃんと契約書を作って押印し、手元に保管しておく方が重要です。できればパソコンの印字ではなく、自筆で押印しておくとなおよいでしょう。

📌 ポイント:正しい事実関係を整えれば…

このような事実関係をきちんと整えておけば、毎年100万円・90万円・110万円と金額を変える必要もありませんし、いちいち111万円の贈与をして面倒な申告をやらなくてもよいのです。有効かつ手間がかかりにくい相続税対策を目指しましょう。

📝 このセクションのまとめ

  • 贈与は「上げる側」「もらう側」双方が意思表示・認識していることが必要
  • 贈与の金額は毎年その都度考え、「最初から総額を決めている」という実態を作らない
  • 振り込み履歴を残して客観的証拠を確保する
  • 毎年贈与契約書を作成・押印して手元に保管する(後からまとめて作成するのはNG)
  • 資産規模が大きい方は110万円にこだわらず、贈与税を払ってでも早期に贈与を進める方が有利な場合がある

まとめ:生前贈与とNISAを正しく活用するために

生前贈与とNISAを活用して相続税対策をしっかり行いたい方は、定期贈与と見なされないよう連年贈与としての実態を整えながら、コツコツと110万円などの贈与を進めていただくことが重要です。

財産規模が大きく早急に相続税対策が必要な方は、110万円にこだわる必要はありません。税負担は発生しますが、例えばNISAの1人当たり上限360万円に合わせて贈与するというのも1つの考え方です。

📌 生前贈与×NISA活用の正しいポイント整理

  • 「アリバイ贈与(金額変え・日付変え・111万円納税)」は定期贈与認定を防ぐ効果がない
  • 名義NISAは贈与にならない。口座の実際の管理者が誰かが重要
  • 贈与は双方の意思確認・振り込み履歴・毎年の契約書作成で実態を整える
  • 資産規模によっては贈与税を払ってでも大きな金額を早期に贈与する方が節税になる
  • 子ども支援NISA(仮)が実現すれば、家族全員でNISA非課税枠を活用できるようになる

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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