年収と所得の違いを税理士が解説|扶養・確定申告で使う正しい数字の見方
「年収」と「所得」の違いを正しく理解しないと、扶養や税額計算で大きなミスにつながります。
年収・所得・手取りはそれぞれ別の数字
「収入」と「所得」はどちらも働いて得たお金を指しますが、指している金額の範囲がまったく異なります。この認識がずれていると、年末調整や確定申告の計算が正しくできなくなります。
まず3つの言葉の定義を整理しましょう。
| 用語 | 意味 | 具体的なイメージ |
|---|---|---|
| 収入(年収) | 労働で得た金銭の全額 | 給与・賞与の合計/個人事業主の売上高 |
| 所得 | 収入から一定額を差し引いた後の金額 | 会社員:給与所得控除後の金額/個人事業主:売上-必要経費 |
| 手取り | 収入から所得税・社会保険料も引いた金額 | 実際に口座に振り込まれる金額 |
⚠️ 注意
「所得」と「手取り」はイコールではありません。所得は給与所得控除を引いた後の金額ですが、そこからさらに所得税・社会保険料を引いたものが手取りです。混同しないよう注意してください。
また、「収入」「所得」という言葉の使い方は、人や会社によってバラバラなことがあります。誰かと話すときに「収入はいくら?」と聞かれた場合、相手が「所得」のことを指している可能性もあります。認識がずれたまま話が進むと、扶養に入れるかどうかの判断がまったく噛み合わなくなるので注意が必要です。
📌 ポイント
収入・所得・手取りはそれぞれ別の数字です。相手に金額を伝えるときは、「収入のことを聞かれているのか、所得金額のことを聞かれているのか」を必ず確認しましょう。
📝 このセクションのまとめ
- 収入は税金・社会保険料を引く前の総額
- 所得は収入から一定額を差し引いた後の金額
- 手取りは所得からさらに所得税・社会保険料を引いた金額
- 3つはそれぞれ異なる数字であり、混同すると計算ミスの原因になる
会社員・パートの「収入」と「所得」はどこの金額か
会社員やパートの方にとって、「収入」とは給与と賞与を合わせた合計金額のことを指します。社会保険料や税金を引く前の金額です。一般的に「年収」と呼ばれるのはこの金額です。
一方、「所得」とは、この給与・賞与の合計金額から給与所得控除を差し引いた後の金額のことを言います。
| 区分 | 金額の定義 |
|---|---|
| 収入(年収) | 給与+賞与の合計(税・社会保険料引き前) |
| 所得(給与所得) | 給与+賞与の合計 ー 給与所得控除額 |
給与所得控除とは何か
個人事業主は売上から必要経費を差し引くことができますが、会社員は経費を自由に引くことができません。そこで、「会社員にもこれくらい経費がかかるだろう」という前提で、あらかじめ一定額を差し引く仕組みが給与所得控除です。会社員にとっての「みなし経費」のようなものだと覚えておくと分かりやすいでしょう。
給与所得控除の金額は、給与収入の金額に応じて以下のように定められています。
| 給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
|---|---|
| 162万5,000円以下 | 55万円 |
| 162万5,000円超 180万円以下 | 収入金額×40%-10万円 |
| 180万円超 360万円以下 | 収入金額×30%+8万円 |
| 360万円超 660万円以下 | 収入金額×20%+44万円 |
| 660万円超 850万円以下 | 収入金額×10%+110万円 |
| 850万円超 | 195万円(上限) |
この表から自分の収入金額に該当する行を探し、給与所得控除額を計算します。収入金額からその控除額を引いた金額が「所得金額」です。
📝 このセクションのまとめ
- 給与所得控除は会社員の「みなし経費」のようなもの
- 収入金額に応じて控除額が変わる(上限195万円)
- 収入 ー 給与所得控除 = 所得金額(給与所得)
個人事業主・フリーランスの「収入」と「所得」はどこの金額か
個人事業主やフリーランスの方の場合、「収入」は売上高を指すことがあります。ただし、売上高をそのまま「収入」と呼んでしまうと、実際に経費として出ていったお金が考慮されないため、実態と乖離することがあります。
そのため、個人事業主の場合は「年商」という言葉で収入金額と区別することがあります。年商は純粋に1年間の売上金額だけをまとめたものです。
一方、「所得」は以下のように計算します。
📌 個人事業主の所得の計算式
所得金額 = 売上高(収入)ー 必要経費
例:年間売上800万円、経費500万円の場合
所得金額 = 800万円 ー 500万円 = 300万円
| 区分 | 会社員・パート | 個人事業主・フリーランス |
|---|---|---|
| 収入(年収・年商) | 給与+賞与の合計 | 売上高(年商) |
| 所得 | 収入 ー 給与所得控除 | 売上高 ー 必要経費 |
会社員と個人事業主では「収入」「所得」が指す金額の計算方法が異なります。これが、人によって認識がずれる大きな原因のひとつです。
📝 このセクションのまとめ
- 個人事業主の収入は売上高(年商)
- 個人事業主の所得は「売上高 ー 必要経費」
- 会社員と個人事業主では計算方法がまったく異なる
会社員・パートは源泉徴収票のどこを見るか
会社員やパートの方は、勤務先から発行される源泉徴収票を見ることで、自分の年収と所得金額を確認できます。
源泉徴収票の見方は以下のとおりです。
| 確認したい項目 | 源泉徴収票の記載欄 |
|---|---|
| 年収(収入金額) | 「支払金額」欄 |
| 所得金額 | 「給与所得控除後の金額」欄 |
| 所得税額 | 「源泉徴収税額」欄 |
- 支払金額:1年間の給与・賞与の合計額。これが「年収」です。
- 給与所得控除後の金額:支払金額から給与所得控除を差し引いた後の金額。これが「所得金額」です。
- 源泉徴収税額:その年の所得税の合計額。配偶者控除・生命保険料控除などを反映した最終的な所得税額が記載されています。
📌 ポイント
源泉徴収票は年末調整が完了した後に発行されます。年末調整が終わるまでは、この書類にまとまった数字は出てきません。年末調整後に手元に届いたら、必ず「支払金額」と「給与所得控除後の金額」を確認しておきましょう。
📝 このセクションのまとめ
- 年収は源泉徴収票の「支払金額」欄を見る
- 所得金額は「給与所得控除後の金額」欄を見る
- 所得税額は「源泉徴収税額」欄に記載されている
- 源泉徴収票は年末調整完了後に発行される
個人事業主・自営業は確定申告書のどこを見るか
個人事業主や自営業の方は、確定申告書を見ることで収入金額と所得金額を確認できます。青色申告の方は青色申告決算書、白色申告の方は白色申告決算書も合わせて確認しましょう。
確認箇所は以下のとおりです。
| 確認したい項目 | 書類名 | 記載箇所 |
|---|---|---|
| 収入金額(年商) | 青色(白色)申告決算書 | 「売上金額」欄(1番の赤枠) |
| 所得金額 | 青色(白色)申告決算書 | 「所得金額」欄(決算書の末尾付近) |
| 収入金額(年商) | 確定申告書 第1表 | 「事業(営業等)」の収入金額欄 |
| 所得金額 | 確定申告書 第1表 | 「事業(営業等)」の所得金額欄 |
⚠️ 注意:青色申告特別控除の扱いに要注意
所得金額を答える場面では、青色申告特別控除を含む金額で答えるのか、含まない金額で答えるのかを確認する必要があります。たとえば、配偶者の扶養に入れるかどうかを会社側に確認する際、会社ごとに「青色申告特別控除前の所得金額」を使うルールの場合があります。相手先の指示に従って正しい数字を伝えるようにしてください。
農業をされている方は、確定申告書第1表の「農業」欄に売上高と所得金額が記載されます。事業の種類に応じて該当欄を確認しましょう。
📝 このセクションのまとめ
- 収入金額(年商)は申告決算書の「売上金額」欄、または確定申告書第1表の収入金額欄
- 所得金額は申告決算書の末尾付近、または確定申告書第1表の所得金額欄
- 青色申告特別控除を含む・含まないで金額が変わるため、相手先の指示を確認すること
収入・所得の違いが影響する場面:配偶者控除・扶養の判断
収入金額と所得金額の違いが特に重要になるのが、配偶者控除・配偶者特別控除の判断です。控除を受けられるかどうかは「所得金額」で判断するため、「年収」の金額で判断してしまうと誤りになります。
配偶者控除・配偶者特別控除の判断基準は以下のとおりです。
| 控除の種類 | 配偶者の所得金額(基準) | 配偶者の給与収入金額(目安) |
|---|---|---|
| 配偶者控除 | 48万円以下 | 103万円以下 |
| 配偶者特別控除(最大) | 48万円超〜58万円以下 | 103万円超〜123万円以下 |
| 配偶者特別控除(段階的に減少) | 58万円超〜133万円以下 | 123万円超〜201万6,000円未満 |
たとえば、配偶者の所得金額が95万円以上100万円以下で、かつ所得者本人の合計所得金額が900万円以下の場合、配偶者特別控除として36万円の控除を受けることができます。
⚠️ 注意
配偶者の収入金額(年収)を所得金額と勘違いして「まだ配偶者特別控除の範囲内」と判断してしまうと、実際には控除対象外になっている可能性があります。必ず「所得金額」で判断しているかを確認してください。
なお、配偶者の収入が給与所得のみの場合は、給与の収入金額(年収)で判断する表も用意されています。どちらの数字で判断するのかを確認したうえで、正しい欄を参照するようにしましょう。
収入・所得の知識が必要になる場面まとめ
収入金額と所得金額の正しい把握が求められる場面は多岐にわたります。以下に主なケースをまとめます。
- 年末調整・確定申告:各種控除の計算に収入金額・所得金額が必要
- 配偶者控除・配偶者特別控除:配偶者の所得金額で控除額が決まる
- 扶養の判断:扶養に入れるかどうかの基準に所得金額が使われる
- 社会保険の加入判断:収入・所得金額が加入基準の判断に影響する
- パート・副業の稼ぎ方の検討:「いくらまで稼ぐと得か」の計算に必要
📌 ポイント
社会保険の加入ルールは、会社が運営する健康保険(組合健保)か、協会けんぽかによっても異なります。また、会社ごとの独自ルールが存在する場合もあります。収入・所得の数字を正しく把握したうえで、個別に確認することが重要です。
📝 まとめ:年収と所得、どこの数字を見ればいいか
- 会社員の年収 → 源泉徴収票の「支払金額」欄
- 会社員の所得 → 源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」欄
- 個人事業主の年商(収入)→ 申告決算書の「売上金額」欄 / 確定申告書第1表の収入金額欄
- 個人事業主の所得 → 申告決算書の「所得金額」欄 / 確定申告書第1表の所得金額欄
- 扶養・配偶者控除の判断は「所得金額」で行う(収入金額と混同しない)
- 収入と所得の認識のずれが、扶養・社会保険・税額計算のミスにつながる
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士河南のYouTubeチャンネル! の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 税理士河南のYouTubeチャンネル!を応援しています!
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