賃貸物件(アパート)の贈与は相続税対策になる?メリット・デメリットを税理士が解説
賃貸物件の生前贈与にはメリット3つ・デメリット3つ。正しく理解して相続税対策に活かしましょう。
賃貸物件の贈与が相続税対策になる理由
今日のテーマは「徹底解説・不動産賃貸業と相続税対策 応用編」です。賃貸物件の贈与について解説していきます。
不動産賃貸業を営んでいる方が、アパートや貸家といった財産を早いうちから子供に贈与していくと、非常に大きな相続税対策になります。ただ、この対策にはデメリットも存在しますので、メリットとデメリットを比較した上で、この対策を行うかどうかを決めることが重要です。
今回の動画では、このメリットとデメリットをしっかりと解説していきます。
視聴者の方からいただいたご質問として、「私のアパートを娘に生前贈与しようと考えています。注意点などを教えてください」というリクエストがありました。この内容をもとに、メリット・デメリットをそれぞれ3つずつ紹介していきます。
メリット① 財産の増加を抑制できる
メリットの1つ目は、財産の増加の抑制効果です。
例えばアパートを持っている方の場合、家賃はそのアパートの所有権を持っている人のところに支払われます。ところが、このアパートを早い段階で子供に贈与してしまえば、贈与した後に払われる家賃は子供のところに払われることになります。
このお金の流れを図で考えると、贈与しなければ時の経過とともにどんどん家賃収入がお父さんのところに入っていきますので、将来の相続税の負担もどんどん大きくなっていきます。ところが、アパートを贈与することによって、贈与した後はもう家賃はお父さんのところにたまりません。そのため、将来の相続税の負担をそこで抑えることができるようになるのです。
本来増加していってしまう分と、贈与することによってストップした部分、ここの差が将来的な節税効果として現れてきます。この対策は、早いうちに贈与をすればするほど、時の経過とともに節税の効果が非常に大きくなっていく、そんな対策です。
この対策のいいところがもう1つあります。贈与を受けた後、お子さんにはそのお金をどんどん使ってしまうのではなく、貯めていただきます。この貯めたお金は、将来発生する相続税の納税資金に充てていきましょうということです。
この対策は基本的に、地主さんや不動産賃貸業を手広くやっている方々に使っていくことが非常に多いのですが、こういった方の場合は将来的に相続税の納税資金をどのように用意していくかということも大きな課題になります。相続税を払えるだけのキャッシュをちゃんと残しておくという意識も非常に大事になりますので、ぜひ意識していただければと思います。
メリット② 所得分散効果で所得税・住民税を節税できる
メリットの2つ目は、所得分散効果です。これは相続税の観点ではなく、所得税と住民税の観点からも効果があります。
所得税の計算について改めて整理すると、例えばマンションやアパートを経営している人が家賃(不動産収入)を受け取り、そこから固定資産税・管理費・修繕費といった必要経費を差し引いた金額が不動産所得と呼ばれるものです。この不動産所得に対して所得税と住民税がかかりますが、税率は累進課税となっており、最低15%から最高55%まで課税されていきます。
例えば不動産賃貸業を手広くやっている方が物件AとBを持っていたとすると、物件AとBの不動産所得を全て合算した上で最終的に所得税の税率を決めていくという形になります。これを総合課税と呼びます。
この状態からお父さんが娘さんにアパートの一部を贈与したとします。そうすると、お父さんが払う所得税の計算ベースが小さくなり、娘さんも別途所得税を払う形になります。所得というのは1人の人に集中させると累進税率が高くなって最終的な税負担も大きくなりますが、分散させることによってそれぞれが税率の低い部分を使うことができますので、結果として家族全体の所得税負担を抑えることが可能になります。所得の少ない人にアパートの贈与を行うと、毎年の所得税と住民税を減らすことができますので、これも1つの対策として覚えておいてください。
ただし、この点についてはデメリットも正直あります。配偶者控除や社会保険料に注意が必要です。例えば元々専業主婦の奥様だった方に不動産賃貸業を新たに始めていただくと、ご主人の配偶者控除が使えなくなったり、場合によっては社会保険や国民年金に新たに加入しなければいけないといったデメリットがありますので、所得税・住民税の負担だけで判断しないよう注意しましょう。
メリット③ 貸家の評価額で割安に贈与できる
メリットの3つ目は、貸家の評価で贈与できるという点です。
建物(貸家)の評価は実は非常に優遇されていて、固定資産税評価額で計算することが認められています。毎年届く固定資産税の通知書に評価額(価格)が記載されていますので、そこで評価額を確認してみてください。この固定資産税評価額は、売買価格の7割になるように大体設定されています。
さらに、貸家(人に貸している建物)の場合については、この固定資産税評価額からさらに30%オフすることが認められています。イメージとして、例えば1億円で家を建築した場合、建築した時点で固定資産税評価額に基づく相続税評価額が7,000万円になり、これをさらに人に貸していれば貸家の評価として30%引きされて4,900万円で評価されていきます。
非常に割安な評価額で贈与することが可能なのです。元々1億円という大金を贈与しようとするとすごい税金になってしまいますが、実質的に1億円かけたものが4,900万円で評価されますので、非常に割安な価格で贈与を行うことができます。
ただ、4,900万円といっても高額な贈与になってしまいますが、ここで使うのが相続時精算課税制度です。2024年以降はこの相続時精算課税制度の使い勝手が非常に良くなっていますので、これを有効活用していく手段として、不動産の贈与にもこの精算課税がお勧めになっています。
デメリット① 土地の評価額が上昇してしまう
ここからはデメリットの紹介に移ります。デメリットの1つ目は、土地評価額の上昇です。アパートの贈与をすると、その敷地である土地の評価額が上昇してしまいます。
なぜこのような現象が起きるのかというと、お父様が土地を持っていてお父様が貸家を持っているという状態の場合、その土地の評価は貸家建付地評価が取れており、自用地評価(本来の評価額)から20%オフされている状態になっています。
この状態から上物のアパートを子供に贈与すると、お父さんが土地を持っていてその上に子供がアパートを持っているという形になります。この場合の土地の評価は、貸家建付地評価ではなく自用地評価で計算しなければいけないというルールがあります。「親から土地を無償で借りて(使用貸借)、子が貸家を所有する場合は自用地評価をする」というのが相続税の財産評価のルールです。
結果として、土地の評価額が約20%上昇してしまうことが起きてしまいます。
ただし、例外的な取り扱いがあります。貸家の贈与があった場合でも、贈与前と借家人が変わらなければ、贈与後も貸家建付地評価を維持できるという論点があります。例えばお父さんが不動産賃貸業(アパート経営)をしていて、その時に住んでいる入居者(借家人)がいたとします。この状態で子供にアパートを贈与し、贈与した後も同じ借家人が住み続けている場合については、特別に貸家建付地評価を維持できるというルールがあります。
ただし、借家人は頻繁に入れ替わってしまいますよね。贈与した時には入居者が変わらなかったとしても、その後に引っ越しをされて新たに入居者が入った場合には、やはり自用地評価になってしまいます。借家人にずっと住み続けてくれとお願いすることはできませんので、どうしようもないのかと思われるかもしれません。
そこで、ワンポイントアドバイスとして次のようなやり方があります。例えばアパートの所有者と入居者がいる状況で、管理会社にサブリース契約(一括借り上げ)をしてもらいます。管理会社に一括で借り上げてもらい、空室が出ようが出まいが一定の家賃を払ってもらうという契約です。管理会社がさらに転貸しして入居者を募集していく、いわゆる又貸しの形です。
この契約にしている場合、貸家の贈与があった後に入居者が変わったとしても、貸家建付地評価を維持することができます。なぜなら、確かに入居者は変わるのですが、借家人(その家を借りている人)は管理会社のままだからです。サブリース契約そのものを変更しない限りは貸家建付地評価を維持することができます。
つまり、贈与前にサブリース契約をしておけば、贈与後に入居者が変わっても貸家建付地評価を維持できるというテクニックがあります。管理会社とサブリース契約をする形もありますが、自分で不動産管理会社を1つ作って、自分が主催している法人と契約を結ぶ形でも問題ありません。不動産賃貸業を営んでいる方があえて株式会社や合同会社を作ることによって節税できるという対策もありますが、これはまた別の動画で紹介します。
デメリット② 小規模宅地等の特例(貸付事業用)が使えなくなる可能性がある
デメリットの2つ目も土地に関する話で、小規模宅地等の特例(貸付事業用)についてです。
亡くなった方が不動産賃貸業をしていた土地を相続した人がその貸付事業を継続させた場合には、その土地の評価額を200平米まで50%引きにしてくれる特例があります。不動産賃貸業を営んでいた方が亡くなって、相続した人がその不動産賃貸業を継続させるのであれば、200平米まで50%引きが取れるというのがこの特例です。
貸家(アパート)の贈与をすると、この特例が使えなくなってしまう可能性があります。例えばお父さんが不動産賃貸業を営んでいて、そこからアパートの贈与を行いました。そうすると子供が不動産賃貸業を始めることになります。その後にお父さんが亡くなって、その敷地である土地を子供が相続した場合、相続時点で亡くなった人の不動産賃貸業を引き継いだわけではないので、特例は使えないということになります。
この小規模宅地等の特例はあくまで「亡くなった時に不動産賃貸業を引き継ぐのであれば50%引きを認める」という特例ですので、すでに贈与で先に不動産賃貸業を承継している方については特例の対象外になってしまいます。結果として、相続の時まで待てば50%引きが取れたのに、生前贈与で先にもらってしまったことによってこの50%引きが使えなくなってしまう、ということが起こり得ます。
ただし、例外があります。生計が同じ親族が相続した場合には小規模宅地特例が適用可能です。例えば相続が発生した時にお父さんと子供が同居して生計が同じという場合については、今紹介したシチュエーションであったとしても小規模宅地特例(50%引き)を使うことが可能になります。お父さんと子供が同居しているかどうかが実はここに影響してきますので、非常に大切な論点です。
ただし、この小規模宅地等の特例の論点については、元々特例を使わないのであればデメリットにはならないということも言えます。小規模宅地特例は自宅については80%引き、賃貸物件については50%引きが使えますが、全ての土地に漏れなく使えるわけではなく、基本的に最も有利になるところから順番に使っていく形になります。そうすると、今贈与しようとしている不動産については特例を使う予定がないというケースも十分想定されます。その場合にはこの論点はデメリットになりませんので、ご安心ください。
繰り返しになりますが、相続対策は順番が大切です。まず遺産分割対策をしっかり考えていくと、おのずとどの土地に小規模宅地特例を使えばいいかということも検討することになります。そうすると「この土地については小規模宅地特例はどっちにしろ使わないよね」ということが明確になっていきますので、そういった物件に対してアパートの贈与をしていくことが有効な一手となります。
デメリット③ 不動産取得税・登録免許税などのコストがかかる
デメリットの3つ目は、流通税等のコストです。不動産の贈与をする時には、不動産取得税と登録免許税という税金がかかります。これが結構馬鹿にならないくらい大きな金額になっていきますので、まずどのくらいかかるのかを確認しなければなりません。
また、不動産の贈与をするにあたっては、贈与契約書の作成や不動産の名義変更といった手続きで司法書士に手伝っていただくことになりますので、司法書士に支払う費用の見積もりも事前に取っておくとよいでしょう。
実行前に税効果のシミュレーションを行うことが重要
メリットとデメリットをご紹介してきましたが、まず税効果のシミュレーションを行うことをお勧めします。
例えば贈与しなかった場合の相続税の推移として、今のまま不動産賃貸業をずっと続けていった場合、どんどんお金が溜まっていったりローンが減っていったりしますので、時間の経過とともに相続税の負担もじわじわと増えていきます。
一方、アパートの贈与をすると、一旦は貸家建付地評価が自用地評価になること、もしくは小規模宅地特例が使えなくなることを加味すると、相続税の負担は一旦グンと高くなります。ところがその後に発生する家賃は、本来お父さんのところに溜まるはずだったのが子供のところに溜まり始めますので、それ以上相続税の負担が上昇することはなくなります。
つまり、一回グンと上がるのですが、それ以降はフラットな状態になっていきます。贈与しなかった場合と贈与した場合とで、何年で税効果が出てくるのかをシミュレーションしていく必要があります。
特に注意が必要なのは、贈与実行後にすぐに相続が発生すると逆効果になる可能性があるという点です。高齢の方がこのやり方をしてしまうと、貸家建付地評価が自用地評価になってしまって、その後すぐに相続が発生した場合、土地の評価額の上昇分だけ逆に相続税を多く払わなければいけなくなってしまうことも想定されます。
何年でこの効果が取れるのか、そして不動産取得税や登録免許税を払ってでもこの効果を取った方がいいのかといったことを、厳密に一度シミュレーションを組んでいただくことをお勧めします。
アパートの贈与は一見シンプルに見える対策ですが、メリットが3つ、デメリットが3つあります。このメリットとデメリットを比較した上で、最終的に実行するかどうかを決めていきましょう。
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 円満相続ちゃんねる の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 円満相続ちゃんねるを応援しています!
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