貸借対照表 利益剰余金の理想額とは?財務のプロが解説する経営の要

貸借対照表 利益剰余金の理想額とは?財務のプロが解説する経営の要
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利益剰余金の理想額を知らずに経営するのは極めて危険です。財務のプロが「売上の2割」という具体的な目安とその根拠を詳しく解説します。

貸借対照表の「利益剰余金」とは何か?

貸借対照表(バランスシート)は、箱型の構造をしています。左側が「資産の部」、右側の上半分が「負債の部」、右側の下半分が「純資産の部」です。中小企業の場合、この純資産の部にはおもに「資本金」「利益剰余金」の2つが記載されています。

利益剰余金とは、会社を設立した日から貸借対照表の作成日までの間に会社が稼いだ利益の累計金額のことです。毎年の損益計算書(PL)の一番下に記載される「税引き後の当期純利益」が、この貸借対照表の利益剰余金に少しずつ積み上がっていきます。

📌 ポイント:BSとPLの連動

損益計算書(PL)の一番下の当期純利益が、貸借対照表(BS)の利益剰余金に積み上がる仕組みになっています。この2つの財務諸表は密接に連動しています。

財務諸表役割利益剰余金との関係
損益計算書(PL)一定期間の収益・費用・利益を表示税引き後の当期純利益がBSへ積み上がる
貸借対照表(BS)一時点の資産・負債・純資産を表示利益剰余金として累積利益を記録

📝 このセクションのまとめ

  • 利益剰余金は純資産の部に記載される設立来の累積利益
  • PLの当期純利益(税引き後)がBSの利益剰余金に毎期積み上がる
  • 「内部留保」とはこの利益剰余金のことを指す

「内部留保をため込んでいる」は誤解である

「企業が内部留保をため込んでいる」というニュースや批判をよく耳にします。しかし、これは会計の仕組みを正確に理解していない方の発言であることがほとんどです。

例えば、会社が1,000万円の利益を稼いだとします。損益計算書の一番下の利益が1,000万円となり、この金額がバランスシートの利益剰余金に積み上がります。バランスシートは右と左が必ずバランスしますので、この時点では利益剰余金1,000万円に対応する資産として「現金1,000万円」が左側に計上されます。

ここまでは確かに「現金を持っている状態」です。しかし、その現金1,000万円を使って会社の将来を支える最新鋭の機械を購入したとします。この場合、バランスシートの左側では「現金が減り、機械(固定資産)が増える」という資産の組み替えが起きるだけで、右側の利益剰余金はそのまま変わりません。

💡 補足:動画では触れていませんが…

機械を購入した場合、その取得価額は損益計算書で一括経費にはならず、耐用年数に応じた「減価償却費」として毎期少しずつ費用計上されます。つまり投資した資産は時間をかけてPLに影響を与えます。

状況資産(左)利益剰余金(右下)
1,000万円の利益を計上した直後現金 +1,000万円+1,000万円
その現金で機械を購入した後現金 0円 → 機械 1,000万円+1,000万円(変わらず)

つまり、利益剰余金が大きくても、その対応資産が「現金」なのか「設備投資」なのかは、貸借対照表の左側(資産の部)を見なければわかりません。利益剰余金が多い=現金をたくさん持っているという理解は誤りです。会社の未来を考えた設備投資をしているだけで、決して「ため込んでいる」わけではないのです。

⚠️ 注意

経営幹部や従業員に貸借対照表を開示する際は、利益剰余金と現金の違いを事前に説明しておかないと「社長が現金をため込んでいる」という誤解が生じる可能性があります。必ず資産の部の内訳と合わせて説明しましょう。

📝 このセクションのまとめ

  • 利益剰余金が多い=現金をため込んでいる、は誤解
  • 利益で得た現金が設備などの資産に組み替わることが多い
  • 「内部留保批判」は貸借対照表を正確に読めていない場合に起きやすい

債務超過は「倒産の始まり」ではなく「倒産スピードを上げる」

財務を考える上でよく言われるのが「債務超過は終わりの始まり」という言葉です。ただし、これは少し正確ではありません。

債務超過になったからといって、即座に倒産するわけではありません。資金繰りが続く限り、債務超過になってもお金を持っていることは十分あり得ます。お金が尽きなければ倒産は起きません。

しかし問題は、債務超過の状態が外部に知られることで起きる信用の喪失です。取引先・仕入先・銀行がそれぞれ以下のような行動をとるようになります。

  • 銀行:新たな融資を断る、または条件を厳しくする
  • 得意先:「本当に納品してもらえるか」と不安になり、別の業者を探し始める
  • 仕入先:「支払いが不安」として保証金の積み増しや現金先払いを要求する

このように、周囲からの対応が変わることでお金が減るスピードが加速し、債務超過になった瞬間は倒産しなくても、そこから倒産までの期間が急速に短くなることが起きます。

債務超過の原因は「借金」ではなく「赤字」

よく誤解されるのが「借金が増えたから債務超過になった」という認識です。しかし、これは正確ではありません。

借金を増やしても、その借金は資産(現金や設備)に変わります。問題は、その資産が赤字によって消えてしまうことです。赤字が続くことで資産が減り続け、負債を下回るほど減ってしまった状態が債務超過です。

📌 ポイント:債務超過の正しい理解

債務超過の原因は「借金の増加」ではなく「赤字の累積」です。赤字によって資産が減り、負債を下回った状態が債務超過です。貸借対照表の右下(純資産の部)がマイナス表示(三角)になっていれば、債務超過のサインです。

具体的には、資本金が1,000万円の会社で利益剰余金がマイナス2,000万円になった場合、純資産は「1,000万円 ー 2,000万円 = マイナス1,000万円」となり、債務超過の状態です。

💡 補足:動画では触れていませんが…

帝国データバンクや東京商工リサーチなどの信用調査機関は決算書の内容を評点に反映します。債務超過は評点を大きく下げる要因となり、取引先の与信審査に直接影響します。

📝 このセクションのまとめ

  • 債務超過=即倒産ではないが、倒産スピードを大幅に上げる
  • 銀行・取引先・仕入先からの信用喪失がキャッシュアウトを加速させる
  • 債務超過の原因は借金の増加ではなく赤字の累積
  • BSの純資産の部がマイナス(三角)になっていれば債務超過

自己資本比率より「利益剰余金の額」を重視せよ

多くの経営者が自己資本比率を意識しながら、肝心の利益剰余金の金額を把握していないケースがあります。「自己資本比率20%を目指しています」とおっしゃる社長に「では利益剰余金はおいくらですか?」と聞くと答えられないことがあるのです。

自己資本比率のパーセンテージより、利益剰余金の「額(金額)」を重視してください。経営は率ではなく額で考えるというのは、財務の世界では常識です。

自己資本比率を高めようとする「負の連鎖」

自己資本比率を高める方法はおよそ2つです。

  1. 資本金を増やす(増資):個人資産が豊富でなければ難しい
  2. 利益を増やすまたは負債を減らす

利益をなかなか増やせないと感じた経営者が「では借金を減らそう」と考えるのはよくあるパターンです。しかしここに大きな落とし穴があります。

行動BSへの影響経営への影響
借金を返済する負債↓ → 資産(現金)も↓手元資金が減る
手元資金が減る投資余力が低下設備投資・人材採用が消極的になる
投資が減る利益を生む基盤が弱体化利益が稼ぎにくくなる
利益が減る利益剰余金が積み上がらない1年の赤字で利益剰余金が吹き飛ぶリスク

バランスシートは右と左が必ずバランスしますので、借金(負債)を減らせば対応する資産も減ります。つまり預金が減り、使えるお金が少なくなります。

現金100万円を持つ会社と、1,000万円を持つ会社と、1億円を持つ会社。利益を増やすために選択できる手段の幅は、明らかに手元資金が多い会社の方が広くなります。100万円の広告費をかけるにも、1,000万円の預金があれば「やってみよう」と動けますが、100万円しかない会社には命がけの判断になります。人材採用も同様です。

⚠️ 注意:自己資本比率重視の落とし穴

自己資本比率が30%になったとしても、利益剰余金の「額」が小さければ、1年間の業績悪化で利益剰余金が吹き飛び、一気に債務超過に転落するリスクがあります。比率(パーセンテージ)はボリュームの小ささを隠してしまうため、額で考えることが非常に重要です。

また、利益剰余金がマイナスになった瞬間(債務超過でなくても)に取引を見合わせる取引先が出てくることもあります。利益剰余金がマイナスになるということは、設立以来の累積赤字があるということを意味するからです。

💡 補足:動画では触れていませんが…

金融機関が融資審査で重視する指標の一つが「自己資本比率」ですが、近年は「実質的な返済能力(キャッシュフロー)」や「利益剰余金の絶対額」も重視する傾向があります。比率だけでなく額の把握が融資交渉にも有利に働きます。

📝 このセクションのまとめ

  • 自己資本比率のパーセンテージより利益剰余金の「額」を重視する
  • 借金を減らすと手元資金も減り、投資余力が低下して利益を稼ぎにくくなる
  • 手元資金が豊富なほど経営の選択肢(広告・採用・設備投資)が広がる
  • 自己資本比率が高くても利益剰余金の額が小さければ、1年の赤字で債務超過になりうる

利益剰余金の理想額は「年間売上の2割」

では、利益剰余金はいくらを目標にすればよいのでしょうか。

まず、売上が減少して赤字になりそうな局面では、多くの経営者が経費削減に取り組みます。自分の役員報酬を減らし、配偶者の給与も減らし、社員にも緊縮財政をお願いして、赤字をできる限り抑えようとします。

過去に数多くの会社を見てきた経験則として、残念ながら赤字決算になってしまった会社の多くは、赤字額を年間売上の5〜10%程度に抑えられているケースが多かったです。売上の50%もの赤字が一気に出るような会社はほとんど見たことがありません。

状況目安となる赤字額必要な利益剰余金
業績悪化時の典型的な赤字幅年間売上の5〜10%最低でも売上の10%以上
1期赤字が出ても利益剰余金がマイナスにならない水準売上の10%超
1期赤字後も半分以上残り翌期に回復できる水準(理想)売上の20%(2割)

📌 ポイント:利益剰余金の理想額

利益剰余金の理想は年間売上高の2割(20%)です。売上の1割程度の赤字が出たとしても、利益剰余金が今の半分程度プラスで残っていれば、翌年に持ちこたえて回復できる可能性が高まります。自己資本比率20%ではなく、利益剰余金の「額」が売上の2割であることが目標です。

この目標水準に達すると、銀行からの融資も受けやすくなり、手元の預金も増え、好循環に入りやすくなります。不思議なことに、資金繰りが厳しい時ほど節税を考えたがる経営者が多いのですが、預金が売上の3〜5か月分ある会社の社長は「法人税くらい払ってしまっていい」という感覚になり、節税意識が薄れていきます。そうなるとさらに内部留保が積み上がりやすくなり、銀行との関係も強化されて好循環が続きます。

💡 補足:動画では触れていませんが…

利益剰余金が売上の2割を超えた段階で、役員退職金の積み立てや小規模企業共済の活用など、出口戦略を伴う節税を検討するのが合理的なタイミングです。ただし、これらも顧問税理士と相談の上で計画的に行うことが重要です。

📝 このセクションのまとめ

  • 業績悪化時の赤字は年間売上の5〜10%程度に収まるケースが多い
  • 利益剰余金の理想は「年間売上の2割(20%)」
  • この水準に達すると銀行融資が受けやすくなり好循環が生まれる
  • 自己資本比率20%ではなく、利益剰余金の額が売上の20%を目指す

節税は「利益剰余金が売上の2割を超えてから」

利益剰余金は、損益計算書の一番下の法人税を支払った後の当期純利益が積み上がることで増えていきます。法人税を支払わなければ、利益剰余金が積み上がることは絶対にありません。

そのため、節税はできるだけ控えることをお勧めしています。経費を使って利益を減らす節税は、同時に利益剰余金の積み上げを妨げることになります。

利益剰余金の水準節税への対応方針理由
売上の2割未満節税は極力控える赤字1期で利益剰余金が吹き飛ぶリスクがある
売上の2割以上節税を検討してよい1期の赤字に耐えられる体力がついた状態

⚠️ 注意:資金繰りが苦しい時ほど節税したくなる心理に注意

資金繰りが厳しい時ほど「法人税を払いたくない」という気持ちが強くなります。しかし、節税で法人税を減らすと利益剰余金も増えず、財務体質の改善が遅れます。苦しい時こそ利益を出して税金を払い、利益剰余金を積み上げることが会社を守る道です。

節税をいつまで我慢すればよいかの目安は、利益剰余金が売上の2割に達するまでです。そこに達するまでは極力節税を控え、法人税を払いながら内部留保を積み上げることが、会社を守ることにつながります。

💡 補足:動画では触れていませんが…

節税の手段には「支出を伴う節税(経費を使う)」と「支出を伴わない節税(決算書の組み替えなど)」があります。前者は手元資金を減らすため特に注意が必要です。後者の代表例である「青色申告の欠損金の繰越控除」などは積極的に活用しましょう。

📝 このセクションのまとめ

  • 利益剰余金は法人税を払った後の利益が積み上がる仕組み
  • 節税は利益剰余金が売上の2割を超えるまで極力控える
  • 資金繰りが苦しい時こそ節税を我慢して内部留保を積み上げることが重要
  • 利益剰余金が売上の2割を超えたら好循環に入りやすくなる

利益剰余金を経営判断に活かすための実践ポイント

以上の内容を踏まえ、日々の経営において利益剰余金をどう活用すべきかを整理します。

📌 経営者が常に把握すべき3つの数字

  • ①年間売上高:基準となる数字
  • ②利益剰余金の額:①の何割に相当するか常に確認する
  • ③あと何円の赤字で利益剰余金がゼロになるか:リスク管理の基本
チェック項目判断基準対応策
利益剰余金がマイナス累積赤字あり・信用リスク高早急に黒字化・赤字縮小に取り組む
利益剰余金がプラスだが売上の10%未満1期の赤字で吹き飛ぶリスク節税を控え、利益剰余金の積み上げを優先
利益剰余金が売上の10〜20%一定の体力はあるが油断は禁物引き続き利益剰余金の積み上げを継続
利益剰余金が売上の20%以上理想水準・好循環に入りやすい節税・設備投資・人材採用を積極検討

利益剰余金の金額を知ることは、「あと何円の赤字を出したら利益剰余金がゼロになるか」を把握することでもあります。この金額を知っている経営者と知らない経営者では、お金のかけ方や経営判断が大きく変わってきます。

💡 補足:動画では触れていませんが…

利益剰余金の内訳は「利益準備金」「その他利益剰余金(任意積立金・繰越利益剰余金)」に分かれます。中小企業では多くの場合「繰越利益剰余金」として一括計上されています。配当を支払った場合はこの繰越利益剰余金が減少するため、配当政策も利益剰余金の管理と合わせて検討しましょう。

📝 このセクションのまとめ

  • 利益剰余金の額・売上比・あと何円で危険水域かを常に把握する
  • 利益剰余金が売上の20%未満の段階では節税より積み上げを優先
  • 利益剰余金が売上の20%以上になれば設備投資・採用・節税を積極検討できる

📋 この記事を読んだら次にやること

  1. 直近の貸借対照表を手元に用意し、純資産の部の「利益剰余金」の金額を確認する
  2. 直近の年間売上高に対して利益剰余金が何割にあたるかを計算し、売上の2割(20%)との差額を把握する
  3. 利益剰余金が売上の2割未満であれば、顧問税理士と「節税を控えて利益剰余金を積み上げる計画」を相談する
  4. 経営幹部や従業員に貸借対照表を開示する際は、利益剰余金と現金の違いを事前に説明する機会を設ける

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 中小企業の財務チャンネル の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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