決算書を銀行に提出する際に忘れてはいけない「融資依頼の一言」を専門家が解説
決算書を銀行に持参する際、最後に言うべき「一言」を伝えていますか?
「決算説明」とは何か?スケジュールと呼び方を整理する
銀行員の間では、決算書を持参して内容を説明する一連の流れを「決算説明」と呼ぶことが多いです。金融機関によっては「決算報告」という言い方をするところもありますが、社長側はどちらの言葉を使っても、銀行側の受け止め方が変わることはありませんので、気にしなくて構いません。
スケジュール的には以下の流れになります。
- 決算日を迎える
- 決算日から2ヶ月以内に税理士が税務署へ申告を行う
- 社長が申告書の控えを税理士から受け取る
- 3ヶ月目の上旬〜中旬に銀行へ決算書を持参して説明する
この「提出+説明」の一連の場が「決算説明」または「決算報告」と呼ばれています。
💡 補足:動画では触れていませんが…
決算日から申告期限は原則2ヶ月ですが、定款で定款総会の開催時期の関係から3ヶ月への延長申請が可能です。銀行への提出タイミングもそれに合わせてずれることがあります。
📝 このセクションのまとめ
- 「決算説明」「決算報告」どちらの呼び方でも問題ない
- 決算日の約3ヶ月後に銀行へ持参するのが一般的なスケジュール
銀行に提出すべき書類一式を正しく揃える
「決算書を提出してください」と言われたとき、決算報告書(貸借対照表・損益計算書)だけを持参する社長さんがいまだに多いです。しかしそれだけでは、銀行員から「銀行との付き合いに慣れていない社長さんだな」と思われてしまいます。
銀行員は貸借対照表・損益計算書だけで分析するわけではありません。むしろ法人税別表や勘定科目内訳明細書を穴が開くほど見つめていることが多いです。
提出すべき書類は以下の通りです。以前は税務署への紙提出時の「受付印」が証明になりましたが、現在は電子申告(e-Tax)が普及しているため「メール詳細(受信通知)」がその代わりになります。
| 書類名 | 備考 |
|---|---|
| メール詳細(受信通知) | e-Tax申告の受付証明。以前の受付印に相当 |
| 法人税別表 | 銀行員が重点的に確認する書類のひとつ |
| 固定資産台帳 | 設備投資状況の把握に使われる |
| 決算報告書 | 貸借対照表・損益計算書を含む |
| 勘定科目内訳明細書 | 銀行員が穴が開くほど見る重要書類 |
| 法人事業概況説明書 | 最近「提出してください」と求められるケースが増加中 |
⚠️ 注意
決算報告書(貸借対照表・損益計算書)だけを持参するのはNG。銀行員に「銀行付き合いに不慣れな社長」という印象を与えてしまいます。上記6点をセットで持参しましょう。
💡 補足:動画では触れていませんが…
金融機関によっては、直近の試算表や資金繰り表の提出を求めることもあります。事前に担当者へ「他に必要な書類はありますか?」と確認しておくと当日がスムーズです。
📝 このセクションのまとめ
- 提出書類は6点セットで揃えることが基本
- 法人税別表・勘定科目内訳明細書は銀行員が特に重視する
- 法人事業概況説明書も最近は求められることが多い
社長が直接訪問し、支店長の同席を依頼する
決算説明は、社長が自ら銀行の支店を訪問し、担当者と支店長に直接報告することが強く推奨されます。支店長と直接会う機会はそう多くありませんが、この「決算説明」の場はそのための絶好のチャンスです。
担当者に連絡する際は、次のように伝えてみてください。
📌 ポイント:支店長同席依頼の例文
「決算書ができあがりましたのでご説明に伺いたいのですが、ぜひ支店長さんにも同席いただけますでしょうか。」
この一言で断る支店長はまずいません。支店長は融資の決裁権限者であり、顔を覚えてもらうだけで融資の可否に大きく影響します。
なお、商工中金・信用金庫については、支店長よりも課長がキーマンになるケースが多いため、課長への同席依頼をおすすめします。
3月・4月は人事異動の季節でもあり、支店長や担当者が交代することもあります。新任の支店長であれば、その後約2年間その支店に在籍することになりますので、最初の決算説明で良い印象を与えておくことが特に重要です。
💡 補足:動画では触れていませんが…
支店長への同席依頼は、融資だけでなく金利交渉や返済条件の変更相談の際にも良好な関係が活きてきます。普段からトップ同士の接点を作っておくことが、長期的な銀行付き合いの基本です。
📝 このセクションのまとめ
- 社長が直接訪問し、支店長の同席を依頼するのが基本
- 商工中金・信用金庫は課長がキーマンになることが多い
- 新任支店長には特に好印象を与えておくことが重要
- 細かい数字を全て把握していなくても問題ない。その場で詰められることはない
「過去・現在・未来」のストーリーで会社を説明する
3つの銀行に「決算説明でどのような説明をされると理解が深まりますか?」と直接確認したところ、3行ともに共通して「まず改めて御社の紹介をしてほしい」という回答だったそうです。
担当者が交代している場合はもちろん、長年の取引先であっても、銀行員は「改めて聞きたいけれど、今さら聞くと怒られるかもしれない」と遠慮していることが多いです。ですから、社長の側から積極的に会社の概要を説明することが重要です。
説明のイメージとしては、税務調査の初日に税務署職員が会社概況を確認するときの説明に近いものです。「どこから仕入れて、どのような付加価値をつけて、どこに販売し、いつ代金が入金されるか」というヒト・モノ・カネの流れを説明することで、銀行員の頭の中で「この会社のどこにお金が必要か」が自然と見えてきます。
📌 ポイント:決算説明の3ステップ構成
- 【過去】決算書の内容を説明する。銀行員は事前に前期の数字を頭に入れているため、重要ポイント(機械の増加=設備投資、人件費の増加=採用など)は向こうから質問してくれることが多い
- 【現在】決算説明の時点ですでに2〜3ヶ月が経過している。「足元の業績は前期と同水準です」「前期より上向きです」など、口頭または試算表で最近の状況を説明する
- 【未来】今期の着地予想を伝える。「前年対比100%を超えているので前回の決算書より改善していく見込みです」など、おおまかな見通しで構わない
過去(決算書)については、銀行員が事前に数字を確認していることが多いため、2期比較の資料を作り込んで増減理由を細かく書く必要はありません。むしろ現在・未来の情報こそ銀行員が最も知りたがっている情報です。
なお、業績が前期より下降している場合に、あえてその内容に触れたり試算表を提出したりする必要はありません。銀行側が慎重になる材料を自ら提供することになるためです。
事業計画書があればベストですが、なくても問題ありません。社長自らが言葉でストーリーを語ることの方が、銀行員には響きます。
| 時間軸 | 伝えるべき内容 | 使用する資料 |
|---|---|---|
| 過去 | 前期の決算内容。設備投資・採用など主要な変化の理由 | 決算書一式(6点セット) |
| 現在 | 決算説明時点での足元の業績状況(前年比較) | 試算表(なければ口頭でも可) |
| 未来 | 今期の着地見込み。前年比・改善傾向などを簡潔に | 事業計画書(なければ口頭でも可) |
💡 補足:動画では触れていませんが…
試算表は月次で作成している会社であれば直近月のものを持参すると説得力が増します。税理士に依頼して月次試算表を整備する習慣をつけておくと、銀行対応全般がスムーズになります。
📝 このセクションのまとめ
- まず会社概要(仕入れ〜販売〜入金の流れ)を積極的に説明する
- 「過去(決算書)→現在(足元業績)→未来(今期見込み)」の流れで説明する
- 2期比較の細かい資料を作り込む必要はない
- 業績が下降している場合は試算表を自ら提出しなくてよい
決算説明で最後に必ず言うべき「一言」とは
多くの社長さんが、決算書の説明をして足元の業績を報告し、「今年1年もよろしくお願いします」と言って帰ってしまいます。しかし、これでは決算説明の場が非常にもったいない使い方になってしまいます。
銀行員が本当に聞きたいのは「この社長はいつ、いくら借りるつもりなのか」という一点です。彼らは営業目標を持っており、決算説明を聞きながら「いつ自分の営業目標に貢献してもらえるか」を考えています。
📌 ポイント:決算説明の最後に必ず伝える「一言」
「今期は年間返済額相当の資金調達を考えております。ぜひ融資のご提案をお願いします。」
この一言を支店長の前で伝えることが、決算説明に社長が直接出向く最大の目的です。
社長も「借りたい」と思っており、銀行員も「貸したい」と思っている。それなのにお互い言わずに「ありがとうございました」で終わってしまうケースが非常に多いです。100社中20社もできていないのが現実だそうです。
こうした話ができる社長は銀行員から一目置かれます。特に支店長に対して良い印象を与えることができれば、その後の融資審査にも大きく好影響をもたらします。
⚠️ 注意
「ありがとうございました。今年もよろしくお願いします」だけで帰ってはいけません。決算説明の場に支店長がいるうちに、融資依頼を明確に伝えることが最重要です。
📝 このセクションのまとめ
- 銀行員が知りたいのは「いつ、いくら借りるか」という一点
- 最後に「融資のご提案をお願いします」と明確に伝えることが必須
- 支店長の前で言えるのが決算説明の最大のメリット
借入金残高一覧表を作成して調達計画を立てる
決算説明の場で「いくら借りたいか」を明確に伝えるために、事前に借入金残高一覧表を作成しておくことをおすすめします。Excelで簡単に作成できる表で構いません。
| 金融機関名 | 前期末借入金残高 | 年間返済額(確定) | 期末借入金残高(返済後) |
|---|---|---|---|
| A銀行 | 4,000万円 | 800万円 | 3,200万円 |
| B銀行 | 3,500万円 | 700万円 | 2,800万円 |
| C信用金庫 | 2,500万円 | 500万円 | 2,000万円 |
| D信用金庫 | 2,000万円 | 300万円 | 1,700万円 |
| 合計 | 1億2,000万円 | 2,300万円 | 9,700万円 |
この表のポイントは、年間返済額(約定弁済額)は100%確定しているという事実です。一切融資を受けなければ、期末の借入金残高は必ず減少します。
この表を使いながら、どの銀行・信用金庫から何円を調達するかという調達計画を立てていきます。また、各金融機関との取引シェアのバランスが崩れないよう、または強化したい金融機関を選んで調達先を決めていくことも重要な視点です。
💡 補足:動画では触れていませんが…
金融機関ごとのシェアバランスを意識することは、特定の銀行への依存リスクを避ける上でも重要です。メインバンクとサブバンクの役割分担を意識しながら調達先を分散させておくと、万一の際のリスクヘッジになります。
📝 このセクションのまとめ
- 金融機関名・前期末残高・年間返済額・期末残高をExcelで一覧化する
- 年間返済額は100%確定している事実として計画に組み込む
- どの銀行から何円調達するかの調達計画を事前に立てておく
「利益で返済を考える」発想から「返済額を丸ごと借りる」発想へ
多くの社長さんが陥りがちな資金計画の考え方があります。それは「利益が出るから、その利益で返済に充てよう。足りない分だけ借りよう」という発想です。
たとえば年間返済額が2,300万円で、今期の利益予想が1,000万円の場合、差額の1,300万円だけ借りようと考えるケースです。しかし利益はあくまで「予想」であり、実際には下回ることも十分あります。
⚠️ 注意:利益ベースの返済計画の危険性
「1,000万円の利益が出る予定だったが、結果は0円だった」という状況で、追加融資の申請をすることになった場合、業績が悪化した状態の試算表・決算書を持参することになります。このタイミングでの融資審査は非常に不安定になります。
そこで推奨されるのが、「返済額を丸ごと借りる」という発想の転換です。
📌 ポイント:安全な資金計画の考え方
- 年間返済額(例:2,300万円)を全額借りる
- 予想通り利益(例:1,000万円)が出たら、手元に余剰現金が生まれる
- その余剰現金をもとに、翌期の返済計画を見ながら繰上返済を検討する
利益が出なかった場合でも、すでに2,300万円の手元資金があるため、返済に困ることがありません。
この考え方は銀行側も同様です。「減債反復(げんさいはんぷく)」または「折り返し融資」と呼ばれる考え方で、「返済した分を再度貸す」という発想です。商工中金ではこの「減債反復」という用語がよく使われます。
| 資金計画の考え方 | 内容 | リスク |
|---|---|---|
| 利益ベースの計画(非推奨) | 利益予想1,000万円を見込み、返済額2,300万円との差額1,300万円だけ借りる | 利益が出なかった場合、悪化した業績で追加融資申請が必要になる |
| 返済額ベースの計画(推奨) | 返済額2,300万円を全額借りる。利益が出たら翌期に余剰分を返済に充てる | リスクが低く、預金残高の安定を保てる |
この資金計画の考え方を常に持ち、借入金のバランスを見ながら必要な調達を考えている社長さんは、100社中20社にも満たないのが現実です。だからこそ、こうした話ができる社長は銀行員から強く信頼されます。
💡 補足:動画では触れていませんが…
「借りすぎでは?」と感じる社長さんも多いですが、手元資金(現預金)が厚い状態は銀行からの信用評価にもプラスに働きます。現預金が潤沢な会社は「安全な融資先」と判断されやすくなります。
📝 このセクションのまとめ
- 「利益で返済を賄う」発想は不確実性が高くリスクがある
- 「年間返済額を丸ごと借りる」発想が安全性の高い資金計画
- 利益が出たら翌期に余剰分を返済に充てる流れを繰り返す
- この考え方は「減債反復(折り返し融資)」として銀行側も共通認識を持っている
📋 この記事を読んだら次にやること
- 提出書類6点(メール詳細・法人税別表・固定資産台帳・決算報告書・勘定科目内訳明細書・法人事業概況説明書)が揃っているか確認する
- 各金融機関の借入金残高一覧表(前期末残高・年間返済額・期末残高)をExcelで作成する
- 担当銀行員に連絡し、支店長(または課長)の同席を依頼して決算説明のアポイントを取る
- 「過去(決算書)→現在(足元業績)→未来(今期見込み)」の説明ストーリーを頭の中で整理しておく
- 決算説明の最後に「年間返済額相当の融資のご提案をお願いします」と明確に伝える
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 中小企業の財務チャンネル の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 中小企業の財務チャンネルを応援しています!
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