銀行融資 いくら借りられるか|決算書分析で最重要な借入余力の見方を専門家が解説
決算書分析の本質は「いくら稼げるか」より「いくら借りられるか」にあります。財務コンサルタントが実務で行う借入余力分析の全手順を公開します。
決算書分析の大前提:「現金さえあれば会社は倒産しない」
決算書を拝見するとき、大前提として常に考えていることがあります。それは「現金さえあれば会社は倒産しない」という、ある意味当たり前のことです。
これは数多くの会社の決算書を拝見してきた実体験から言えることで、資金繰りで苦しい状況に落ち込んでいらっしゃる社長様を延べ300人ほどご面談させていただいた中で、嫌になるほど目の当たりにしてきた原理原則です。
📌 ポイント
2期連続赤字でも、債務超過(負債が資産を上回る状態)でも、現金・預金さえあれば会社はそう簡単に倒産しません。現金があれば会社は成長できる、というのが財務の現場から得られた結論です。
💡 補足:動画では触れていませんが…
「債務超過=即倒産」というイメージは古い常識です。中小企業庁のデータでも、債務超過企業の多くが事業継続しており、資金繰り管理こそが存続の鍵とされています。
📝 このセクションのまとめ
- 現金があれば会社は倒産しない、というのが財務分析の大前提
- 赤字・債務超過でも資金繰りが回れば事業継続は可能
- 300人超の経営者との面談から得た実体験に基づく原則
リスケジュールの現実:100社に3社しか断られていない
「銀行に返済を待ってもらえず倒産する」というイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、実態は大きく変わっています。リスケジュール(返済猶予)は、もう10年以上前から非常にスムーズに受け付けてもらえる環境が整っています。
金融庁が公表しているデータを見ると、かつて(平成21年当時)はリスケジュール自体の件数が少なく、申し込んでも承認されたのは76%程度でした。4社に1社は断られていたわけです。
| 時期 | リスケ承認率 | 状況 |
|---|---|---|
| 平成21年(2009年)頃 | 約76% | 件数も少なく4社に1社は断られていた |
| その後(現在に至るまで) | 97〜97.9% | 申し込めばほぼ全社が承認される |
現在は、リスケを申し込んだ会社の97%以上が承認されています。つまり100社に3社程度しか断られていません。では、その3社はどんなケースでしょうか。
- 借りたばかりでのリスケ申請:「3〜5年かけて返します」と言って融資を受けた3ヶ月後に「やはり返せません」と言われると、銀行担当者が上司から叱責される。稟議を通した直後のリスケは承認されにくい
- まだ余裕があるのに申請するケース:銀行側から見て「預金残高がまだあるので大丈夫ですよ」と判断され、「もう少し様子を見ましょう」と返答されるケース
💡 補足:動画では触れていませんが…
リスケジュール中は原則として新規融資を受けにくくなります。リスケはあくまで「時間を買う手段」であり、その間に事業改善計画を策定・実行することが金融機関から求められます。
また、最近では経営者保証(個人保証)が外れるケースも増えています。「試しに外してほしいと言ってみたら簡単に外れた」という社長様の声も多く聞かれるようになりました。借入金のリスクは、20〜30年前と比べると格段に小さくなっています。
🔄 最新アップデート
2024年4月以降、「経営者保証に関するガイドライン」の運用が強化され、金融機関は経営者保証を求める場合にその理由を説明することが義務付けられました。保証なし融資の交渉はこれまで以上に行いやすくなっています。また、商工中金の民営化プロセスも進行中で、政府系金融機関の位置づけが変わりつつあります。
📝 このセクションのまとめ
- リスケ承認率は現在97%超。「断られる」は過去の話
- 断られるのは「借りたばかり」か「まだ余裕がある」ケースがほとんど
- 経営者保証も外れやすくなっており、借入リスクは低下している
決算書分析の実務:現在・過去・未来の三段階で見る
決算書を拝見するときは、まず現預金残高を確認します。この数字を見るだけで、社長が経営に専念できているかどうかがある程度わかります。
預金残高が極端に少ない状態では、頭の中が「明日の支払い」「来月の支払い」「3ヶ月後の支払い」「1年後の支払い」でいっぱいになってしまいます。そうなると、新しいサービスや製品を考える前向きな時間が取れなくなり、さらに業績が悪化するという悪循環に陥ります。
📌 ポイント
「預金残高と社長の経営能力は比例する」とよく言われます。預金残高が少なくなるほど、経営者としての判断力・行動力が格段に落ちていくという現象は、多くの現場で確認されています。
分析は以下の三段階で行います。
| 分析の視点 | 確認内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 現在 | 現預金残高・各銀行の支援姿勢 | 今の資金状況を把握する |
| 過去 | 預金残高の増減推移・借入履歴 | 銀行との取引実績を掴む |
| 未来 | 返済ペース+売上利益予測から半年〜1年後の預金残高を試算 | 資金調達タイミングを予測する |
そして、この三段階の中で最も重点を置くのが「いくら借りる力があるか(借入余力)」の分析です。
「いくら稼げるか」は社長ご自身でも分析できます。しかし、「金融機関との交渉の中で自社がいくら借りられるのか」が見えていない経営者が非常に多い。そこをサポートするのが財務コンサルタントの役割です。
将来の借入余力を見るには、過去の取引実績と資金調達余力を把握することが鍵になります。そのために欠かせないのが、決算書(BS・PL)に加えた返済予定表の精読です。
💡 補足:動画では触れていませんが…
無料の個別相談では「2期分の決算書・申告書一式」「直近の試算表」「返済予定表」の3点セットを必ず事前に提出してもらうとのこと。試算表は直近の資金状況を把握するために不可欠で、決算書だけでは半年〜1年のタイムラグが生じます。
📝 このセクションのまとめ
- 現預金残高の確認が決算書分析の出発点
- 現在・過去・未来の三段階で資金状況を分析する
- 最重要は「いくら借りられるか」の借入余力分析
- 分析には決算書+返済予定表がセットで必要
返済予定表の読み方:「どこへ・いくら・いつ申し込むか」を導き出す
返済予定表は1本ずつ丁寧に分析します。ここから読み取れる情報は非常に多く、「次にどの銀行へいくら申し込むべきか」というアドバイスに直結します。
まず確認するのは、各銀行が何年何月にいくら貸しているかという履歴です。
- 前回の融資から1年以上間隔が空いている銀行・信用金庫があれば、「そろそろ借りられるかも」と判断できる
- 前回と同程度の金額で申し込むと稟議が通りやすい(例:前回3,000万円なら今回も3,000万円)
- 銀行員もサラリーマンであり、前任者が承認した金額・スキームを踏襲しやすい
📌 ポイント:プロパー融資と保証協会融資の使い分け
銀行は保証協会の保証付き融資とプロパー融資(保証なし)を組み合わせたがります。過去にプロパー融資の実績があり、残高が減っている場合は、同額または増額でプロパー融資を申し込む好機です。
- 例:過去に2,000万円のプロパー融資実績があり、現在の残高が500万円なら、1,500〜2,000万円、場合によっては3,000万円でチャレンジできる
- 「保証協会の枠を使っているのだからプロパーと協調でお願いします」と社長側から切り出すことが重要
次に、保証協会の利用枠を把握します。保証協会には融資保証の上限枠があります。現在どの銀行・信用金庫でいくら使っているかを常に把握しておくことで、業績が予測を下回った場合でも慌てずに「協会枠を使ってここの信用金庫に申し込もう」というアドバイスがすぐにできます。
📌 ポイント:保証協会枠は「ゼロ」にしない
業績が好調な時こそ保証協会の利用をゼロにせず、どこかの金融機関で少額でも利用し続けることを推奨します。保証協会には毎年決算書が届くため、常に保証残高がある状態の方が、いざという時の審査がスムーズになります。
また、複数の証書貸付(長期借入金)が積み重なって毎月の返済額が増えている場合は、一本化(借り換え)を検討します。その際のポイントは次の通りです。
- 金利の引き下げより返済額の圧縮を優先する:金利交渉(例:1.0%→0.8%)を同時に持ち出すと銀行が動きにくくなる
- 「返済額を緩めることで半年後・1年後の預金残高がこれだけ改善します」という数字を示して交渉する
- 金利は多少高くても(1.0〜1.1%)、まず返済ペースを落とすことを最優先にする
💡 補足:動画では触れていませんが…
一本化(借り換え)は既存の融資を完済して新規融資を組む形になるため、保証協会枠の再利用や担保の再設定が必要になる場合があります。手続きコストと返済額削減効果を比較してから進めることが重要です。
📝 このセクションのまとめ
- 返済予定表から「いつ・どこへ・いくら」申し込むかを導き出す
- 前回融資から1年以上空いている金融機関が次の申込先候補
- 前回と同程度の金額で申し込むと稟議が通りやすい
- 保証協会枠は常に一定額使い続けておく
- 一本化は金利より返済額圧縮を優先して交渉する
当座貸越枠(コミットメントライン)の活用と維持戦略
当座貸越(コミットメントライン)は、いざという時の強力な資金調達手段です。実績として、信用金庫よりも地方銀行の方が積極的に対応してくれる傾向があります(信用金庫でも対応可能です)。
当座貸越枠を管理する際に把握すべき情報は以下の通りです。
| 確認項目 | 内容・対応策 |
|---|---|
| 極度枠(上限額) | 設定されている上限額を把握する |
| 現在の利用額 | 普段いくら使っているかを把握する |
| メインバンクの枠の有無 | 不動産担保を提供しているのに枠がない場合は申し込む |
| 利用頻度 | 低すぎると「枠を減らしませんか」と言われるリスクがある |
特に重要なのが利用実績の積み方です。銀行は3月・6月・9月・12月の四半期末に融資残高を把握しています。この月末をまたいで3週間〜1ヶ月程度は実績として借入残高を積み上げておくことをお勧めします。
📌 ポイント:枠いっぱいまで使う時期を作る
例えば極度枠が5,000万円で普段2,000万円しか使っていない場合、仕入れがかさむ月などに5,000万円まで引き出す時期を意図的に作ることをお勧めします。これにより「もう枠はいらないですか?」と言われるリスクを回避でき、いざという時に枠を最大限活用できます。
また、メインバンクが不動産担保を提供しているにもかかわらず当座貸越枠を設定していないケースがあります。これは銀行担当者が「もうお腹いっぱいかな」と思って提案しないだけのことが多く、社長から声をかければ設定してもらえることがほとんどです。
💡 補足:動画では触れていませんが…
当座貸越には「コミットメント型」と「非コミットメント型」があります。コミットメント型は枠の確保に対してコミットメントフィー(手数料)が発生しますが、枠の保証が強固です。中小企業では非コミットメント型が多いですが、銀行との交渉でどちらを設定するか確認しておくことが重要です。
📝 このセクションのまとめ
- 当座貸越は地方銀行の方が積極的に対応してくれる傾向がある
- 3・6・9・12月の四半期末をまたいで借入残高を積み上げておく
- 枠の上限まで使う時期を意図的に作り、枠縮小リスクを防ぐ
- メインバンクに枠がない場合は社長から積極的に申し出る
日本政策金融公庫と民間金融機関のバランス管理
日本政策金融公庫(公庫)の借入金については、現在の残高と過去の最大借入実績を把握しておくことが重要です。公庫の特徴は以下の通りです。
- 過去に動かした金額(最大借入額)程度までは業績が悪くても貸してくれる傾向がある
- 返済実績を非常に重視する:きちんと返し続けている会社には継続して融資してくれる
- 半年先に預金が減りそうな時のタイミングで申し込むと効果的
さらに重要なのが、民間金融機関(銀行・信用金庫)と政府系金融機関(公庫・商工中金)の残高バランスです。
⚠️ 注意:民間残高が政府系を下回ってはいけない
公庫・商工中金は「民業補完」の原則があります。民間金融機関が貸せるお金を、政府系が安い金利で先に貸してしまう「民業圧迫」は避けるべきとされています。コロナ禍が落ち着いた現在、この点についての目線は今後さらに厳しくなると予想されます。公庫・商工中金をうまく活用するためには、民間からの借入残高を一定以上維持しておくことが前提となります。
民間金融機関からの借入は、今の低金利環境では利息負担もそれほど大きくありません。余分に借りているように見えても、政府系金融機関の枠を確保するための「布石」として機能します。民間と政府系の残高バランスを意識的にコントロールすることが、長期的な資金調達余力の維持につながります。
💡 補足:動画では触れていませんが…
商工中金は段階的に民営化が進む予定です(2〜3年かけて移行)。民営化後は金利水準や審査基準が民間銀行に近づく可能性があり、現在の有利な条件での借入は今のうちに活用しておくことが得策と言えます。
📝 このセクションのまとめ
- 公庫は過去の最大借入額・返済実績を重視する
- 民間金融機関の残高が政府系を下回らないよう管理する
- 公庫・商工中金を活用するには民間借入の維持が前提
- 商工中金の民営化に伴い、早めの活用が有利になる可能性がある
不動産登記簿謄本で「三重縛り」を暴き出す
返済予定表だけでは見えてこない情報があります。それが不動産担保の設定状況です。不動産の登記簿謄本は、現在ではインターネットから1通300円程度で取得できます。
担保評価額は路線価を使って土地の価値を概算します。その評価額の範囲内でしか融資しない金融機関も多く、例えば土地建物の評価が1億円であれば、過去の貸付実績も1億円を超えないケースが多く見られます。
ここで問題になるのが、一部の銀行・信用金庫が行う「三重縛り」とも言える融資構造です。
| 縛りの種類 | 具体例 | 銀行側のメリット |
|---|---|---|
| ①不動産担保 | 1億円の土地建物に根抵当権設定 | 万が一の回収手段を確保 |
| ②保証協会保証 | 1億円中8,000万円に保証協会の保証付き | 貸し倒れリスクをほぼゼロにできる |
| ③定期預金の拘束 | 残り2,000万円相当を定期預金として積ませる | 実質的な担保として機能させる |
⚠️ 注意:三重縛りの実態を把握する
1億円の融資に対して、①不動産担保1億円+②保証協会保証8,000万円+③定期預金2,000万円(使えない)という構造は、銀行・信用金庫にとっては極めてリスクの低い融資です。一方で借り手(社長)は不動産・保証協会・個人保証・定期預金という四重の人質を取られた状態になっています。この状態に気づかずにいる社長が非常に多いのが現実です。
このような状況に対して、担当者に直接「おかしくないですか」と言っても改善されないことがほとんどです。「おかしくはないと思います」と言われて終わりになります。
最も効果的な対処法は、新規の銀行・信用金庫を活用して競争原理を働かせることです。
- 新規の銀行・信用金庫から「お取引しませんか」と声がかかった際に、現在の取引状況(三重縛りの実態)を率直に相談する
- 新規行から魅力的な提案書(プロパー融資・当座貸越枠・保証なし等)をもらう
- その提案書をメインバンクの担当者に見せ、「こんな提案をもらったのですが…」と相談する
- メインバンクが危機感を持ち、条件改善の提案をしてくる
📌 ポイント:銀行は「刺激」がないと動かない
メインバンクを急に変えることは推奨しません。しかし、競合行の存在を知らせることでメインバンクに緊張感を持たせることは非常に有効です。1ヶ月前には「できません」と言っていた条件が、競合行の提案書を見せた途端に「うちでもやれます」に変わることは珍しくありません。
💡 補足:動画では触れていませんが…
拘束性定期預金(担保として積まされている定期預金)は、金融庁の指導により「融資の条件として強制することは不適切」とされています。担当者に「これは拘束性預金ですか」と確認し、不当な場合は金融機関の相談窓口や金融庁への相談も選択肢になります。
📝 このセクションのまとめ
- 不動産登記簿謄本(300円)で担保設定状況を必ず確認する
- 不動産担保+保証協会+定期預金の「三重縛り」に気づかない社長が多い
- 担当者への直接交渉より、新規行の提案書を活用した競争原理が効果的
- メインバンクは変えなくてよい。競合行の存在で緊張感を持たせる
借入余力分析のまとめ:社長が今日からできること
BS・PLをいくら細かく分析しても、「どうすれば銀行からお金が借りやすくなるか」のヒントは一つも出てきません。重要なのは返済予定表・不動産登記簿謄本・保証協会の利用状況を組み合わせた実態把握です。
多くの社長は、売上を作ること・利益を作ることで頭がいっぱいで、銀行との取引状況の把握が後回しになりがちです。そして、その「見落とし」を銀行・信用金庫に付け込まれてがんじがらめにされているケースが非常に多いのが実態です。
| 分析対象 | 確認内容 | 活用方法 |
|---|---|---|
| 返済予定表 | 各行の融資日・金額・残高 | 次の申込先・申込金額の決定 |
| 保証協会利用状況 | どの行でいくら使っているか・残枠 | 業績悪化時の緊急調達先の確保 |
| 当座貸越枠 | 極度額・現在の利用額・利用頻度 | 四半期末の実績積み上げ・枠維持 |
| 不動産登記簿謄本 | 抵当権・根抵当権の設定状況 | 三重縛りの発見・交渉材料の把握 |
| 民間vs政府系残高 | 公庫・商工中金と民間のバランス | 公庫・商工中金の活用余地の確保 |
| プロパー融資実績 | 過去のプロパー融資額・残高 | 次回プロパー申込額の目安設定 |
📋 この記事を読んだら次にやること
- 全金融機関の返済予定表を一覧で並べ、各行の融資日・金額・現在残高・前回融資からの経過期間を整理する
- 取引のある不動産の登記簿謄本をネットで取得し(1通300円)、どの金融機関が抵当権・根抵当権を設定しているか確認する
- 保証協会の現在の利用額と残枠を各金融機関の担当者に確認し、いざという時の調達余力を把握する
- 当座貸越枠が設定されていない金融機関(特にメインバンク)があれば、社長から設定を申し出る
- 民間金融機関と公庫・商工中金の借入残高のバランスを確認し、政府系が民間を上回っていないかチェックする
- 経営者保証(個人保証)が付いている融資について、「外してほしい」と一度申し出てみる
📝 このセクションのまとめ
- BS・PLだけでは「いくら借りられるか」は見えてこない
- 返済予定表・登記簿謄本・保証協会枠の三点セットが借入余力分析の基本
- 取引状況の「見落とし」が銀行に付け込まれる原因になる
- 今日からできる具体的なアクションを一つずつ実行することが重要
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 中小企業の財務チャンネル の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 中小企業の財務チャンネルを応援しています!
