銀行のお付き合い融資を利益で返そうとしていませんか?借入金の返済原資を専門家が解説
借入金は「利益+減価償却費」で返すものだという思い込みが、多くの社長を混乱させています。返済原資は資金使途によって決まるという、銀行員の常識を正しく理解しましょう。
「借金は利益で返す」という思い込みが招く混乱
銀行から借りたお金は「利益+減価償却費」で返すものだと、顧問税理士や公認会計士から教わっている社長様は多いと思います。一度は聞いたことがあるはずです。
この考え方をもとに、「御社は返済するのに20年以上かかります。目安は10年以下ですよ。つまり借金が重すぎる、破綻に近いですよ」といった指摘を受けた社長様もいらっしゃるのではないでしょうか。
あるいは、顧問税理士がキャッシュフロー計算書を作成してきて、「フリーキャッシュフローで財務キャッシュフローのマイナスを賄えていませんね。資金繰りが悪いです。もっとフリーキャッシュフローを増やしましょう」と言われ、「何を言っているんだろう…」ともやもやしながら受け答えしている方も多いのではないかと思います。
📌 キャッシュフロー用語の整理
- フリーキャッシュフロー:本業で稼いだお金から設備投資に使ったお金を引いた残りのお金
- 財務キャッシュフロー(マイナス):銀行・信用金庫への返済のこと
- フリーキャッシュフローで財務キャッシュフローのマイナスを賄えているかどうかを確認する
「フリーキャッシュフローで返済を賄えていなければ、資金繰りが悪化していて破綻に近づいているダメな会社だ」と言われてしまい、「うちの会社は借金も多いしダメな会社なんだ」と落ち込んでいる社長様が結構いらっしゃいます。
しかし、これは必ずしも正しい判断ではありません。顧問税理士がバランスシート(貸借対照表)を正確に読めていないことが原因だったりするケースも、実は多いのです。税理士の中にもバランスシートを苦手としている方はいますし、「借入金の返済は利益と減価償却費でやるものだ」という思い込みが強い方も少なくありません。
💡 補足:動画では触れていませんが…
キャッシュフロー計算書の財務キャッシュフローには、新規借入による収入も含まれます。返済だけでなく借入も混在しているため、単純に「マイナス=悪い」とは言い切れません。借入と返済の内訳を個別に確認することが重要です。
📝 このセクションのまとめ
- 「借金は利益+減価償却費で返す」という考え方は、すべての借入に当てはまるわけではない
- バランスシートを正確に読まずに判断すると、誤った経営指導につながる
- 税理士の見解が必ずしも銀行員の見方と一致するとは限らない
借入金の返済原資は「資金使途」で決まる――3つのパターン
借入金の返済原資(返済の元になるもの)は、何のためにお金を借りたか(資金使途)によって自然と決まります。これは銀行員の中では常識中の常識です。
主に以下の3つのパターンがあります。
| 借入の種類 | 資金使途 | 返済原資 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 運転資金借入 | 売掛金・在庫などの不足補填 | 売上代金 | 折り返し融資が基本。利益で返す必要なし |
| 設備資金借入 | 機械・設備の購入 | 利益+減価償却費 | 設備の使用期間にわたって分割返済 |
| お付き合い融資・余裕資金 | 手元預金の積み増し | その預金自体 | 借りた預金が少しずつ減るだけ。利益不要 |
💡 補足:動画では触れていませんが…
「資金使途」は融資審査の基本要素です。銀行は融資申込時に必ず資金使途を確認し、返済財源との整合性を審査します。資金使途が不明確な借入は審査が通りにくくなるため、借入目的を明確に説明できるようにしておくことが重要です。
📝 このセクションのまとめ
- 返済原資は資金使途によって決まる。すべての借金を「利益で返す」と考えるのは誤り
- 運転資金は売上代金で、設備資金は利益+減価償却費で、お付き合い融資は預金で返す
運転資金の借入は「売上代金」で返すもの――具体例で理解する
運転資金とは、バランスシート上の次の項目から計算されます。
- 受取手形・売掛金
- 棚卸資産(商品・製品・原材料・仕掛品など)
- 上記の合計から支払手形・買掛金を引いた残り
この不足を補うための借入金の返済原資は、利益ではなく売上代金です。ここが大きく誤解されているポイントです。
具体的な例で考えてみましょう。今手元に現金が0円だとします。10万円で仕入れて15万円で売れる商品があり、確実に売れるとわかっています。でも仕入れる現金がない。そこで銀行に「10万円貸してください」とお願いします。
銀行から10万円を借りて仕入先に支払い、商品を手に入れます。この時点でバランスシートは「借金10万円・在庫10万円」でバランスしています。
この商品を15万円で売ったとき、10万円の借金をどうやって返しますか?
⚠️ 注意
「5万円の利益があるから、その利益で返せばいい」と考えるのは間違いです。5万円の利益で10万円の借金は返せません。利益は返済原資になりません。
正しい考え方はこうです。15万円の売上代金をお客様から受け取り、その中の10万円を銀行に返済して、残りの5万円が自分の利益としてポケットに残る。つまり売上代金で返済するのです。
ここで重要な点があります。15万円入ってきて10万円を返してしまったら、また手元が5万円になってしまいます。利益の5万円は生活費に使ってしまうと、また商売できなくなります。そこで再び銀行から10万円借りて、また15万円で売って、また返して……これを繰り返すことになります。
これが非常に手間なので、「もう10万円はずっと貸しっぱなしでいいですよ」というのが折り返し融資の本質です。15万円入ってきても10万円を返済に回さず、10万円でまたこの商品を1個買って売り続ける。これが運転資金融資の本質的な考え方です。
だから銀行が「返済がだいぶ進んでいらっしゃいますね、返した分ぐらいまた借りませんか」と言ってきたり、「売掛金が増えてらっしゃいますね、売上が伸びてらっしゃって素晴らしいですね、もっとお手元の運転資金を増やしませんか」と言ってきたりするのです。
📌 ポイント:なぜ利益が少ないのに銀行は貸し続けるのか
税理士が「借金が重すぎる」と言いながら、銀行・信用金庫は貸し続けようとする。これは銀行員が運転資金の借入は利益で返すものではないと正しく理解しているからです。利益が少なくても、売上代金が回収できていれば運転資金融資の返済は問題ないと判断します。
最近では、長期借入金(証書貸付)の毎月返済という形ではなく、手形貸付や当座貸し越しといった貸しっぱなしの形で運転資金相当を支える方式が主流になってきています。つまり「利益が出ても返さなくていいですよ」という考え方が広まっているのです。
💡 補足:動画では触れていませんが…
運転資金の「必要額」は「売掛金+在庫-買掛金」で計算できます。この金額を超えた借入は過剰借入になります。売上が拡大すれば必要運転資金も増えるため、事業成長に合わせて運転資金枠を見直すことが大切です。
📝 このセクションのまとめ
- 運転資金の借入返済原資は「売上代金」であり、利益ではない
- 折り返し融資とは、売上代金で返済せずに運転資金を維持し続ける仕組み
- 最近は手形貸付・当座貸し越しで貸しっぱなしにする方式が主流になっている
設備資金の借入だけが「利益+減価償却費」で返すもの
「利益+減価償却費で返す借金」というのは、ほとんどのケースで設備投資のための借入金のことです。
例えば100万円の機械を購入するために借りたとします。銀行から「どうやって返しますか?」と聞かれたとき、「この機械を売ったお金で返します」とは言いませんよね。
正しい説明はこうなります。「この100万円の機械を使うことで売上が伸び、利益が稼げます。ただし1〜2年で簡単に儲かるものではなく、この機械は5年ぐらい使えますので、5年にわたって返させてください」。
これが設備資金の返済の考え方です。機械を使い続けることで生み出される利益と、機械の減価償却費(現金支出を伴わないコスト)の合計が返済原資になります。
📌 なぜ「利益+減価償却費」なのか
減価償却費は帳簿上のコストですが、実際には現金が出ていきません。そのため、利益だけでなく減価償却費も返済に充てられるお金として計算します。設備の耐用年数の範囲内で返済期間を設定するのが基本です。
💡 補足:動画では触れていませんが…
設備資金の借入期間は、その設備の法定耐用年数以内に設定するのが一般的です。例えば耐用年数5年の機械なら、返済期間も5年以内が望ましいとされます。耐用年数を大幅に超える返済期間は銀行審査で問題になる場合があります。
📝 このセクションのまとめ
- 「利益+減価償却費で返す」のは設備資金の借入が中心
- 設備の使用期間にわたって分割返済するのが基本的な考え方
- すべての借入をこの方式で考えるのは誤り
お付き合い融資・余裕資金の借入は「その預金」で返す
皆さんが最も忘れがちなのが、銀行とのお付き合いのために借りたお金や、「手元資金に余裕を持っておきたいのでとりあえず借りておこう」という目的で借りたお金の扱いです。
銀行から「社長、もっと手元資金を多くしておかれたらどうですか」と言われて借りたお金は、当然ながらそのお金で返していきます。
例えば1,000万円を借りたとします。バランスシートには借金1,000万円・預金1,000万円が計上されます。この1,000万円の借金をどうやって返すかというと、この1,000万円の預金が少しずつ減っていくだけです。
⚠️ 注意:誤解が生まれるパターン
バランスシートを正確に読まずに「借入金の合計」と「毎月の返済額」だけを見て、「利益と比較して返済を賄えるほどの利益が出ていない、もっと利益を上げましょう」と指導するケースがあります。しかし、それに見合う預金が手元にある場合は、利益を上げる必要はありません。預金を見落としているのが問題です。
ここを誤解すると、「借金は何でもかんでも利益+減価償却費で返さなきゃいけない」という世界に入ってしまい、「御社は借金を利益+減価償却費で割ると20年・30年・40年もかかる、もうダメですよ」という話になってしまいます。でも税理士がダメと言いながらなぜか銀行・信用金庫が貸し続けようとする、という不思議な状況が生まれます。
どちらが正解かといえば、銀行員の見方の方が正確です。
💡 補足:動画では触れていませんが…
手元預金の目安として、一般的には「月商の2〜3ヶ月分」が適切とされています。それを超える預金は過剰流動性とみなされる場合があり、逆に借入コスト(利息)だけがかさむリスクもあります。お付き合い融資の金額が適切かどうかも定期的に見直しましょう。
📝 このセクションのまとめ
- お付き合い融資・余裕資金の借入は、借りた預金が返済原資になる
- 利益を上げる必要はなく、預金が少しずつ減っていくだけ
- バランスシート上の預金を見落とすと、誤った財務判断につながる
「利益で返す借入金」の正確な計算方法――債務償還年数の本質
借入金全体を「利益+減価償却費」で割って年数を出すのではなく、本当に利益で返す必要がある借入金だけを正確に算出することが重要です。
計算の手順は以下の通りです。
- 借入金の合計を出す:短期借入金+長期借入金+銀行が引き受けている社債(社債も借入金と同様に扱う)
- 現金・預金を引く:今すぐ返せば減らせる借金は利益で返す必要がないため控除する
- 運転資金を引く:売掛金+在庫-買掛金の金額。これは売上代金で返せばよく、事業継続中は現金化されないため控除する
- 残った金額が「利益で返す借入金」:これを利益+減価償却費で割ったものが真の債務償還年数
| 項目 | 内容 | 理由 |
|---|---|---|
| 借入金合計 | 短期借入金+長期借入金+社債 | 出発点 |
| ▲ 現金・預金 | 手元の現預金 | すぐに返済できる=利益不要 |
| ▲ 運転資金 | 売掛金+在庫-買掛金 | 売上代金で回収できる=利益不要 |
| = 利益で返す借入金 | 上記を差し引いた残額 | これだけが「利益+減価償却費」で返す対象 |
| ÷ 利益+減価償却費 | 年間キャッシュフロー | 何年で返せるかを計算 |
この最終的な年数が債務償還年数です。最近では非常に重要な財務指標として注目されています。
📌 ポイント:運転資金を引く理由
運転資金に見合う借入金は、事業を継続している限り返済する必要がありません。売掛金が回収されて在庫が現金になるのは、事業をやめたときです。廃業時に在庫を売って売掛金を回収し、そのお金で返済すればよい借金であるため、利益で返す必要がないのです。
💡 補足:動画では触れていませんが…
債務償還年数の目安として、一般的に10年以内が健全とされています。ただし業種によって異なり、不動産業・建設業など設備投資が多い業種では15〜20年でも問題ないと判断する金融機関もあります。自社の業種特性を踏まえて判断することが大切です。
📝 このセクションのまとめ
- 債務償還年数は「借入金全体÷利益+減価償却費」ではなく、現預金と運転資金を差し引いた後の金額で計算する
- 社債も借入金と同様に含めて計算する
- 運転資金は事業継続中は現金化されないため、利益で返す必要がない
銀行員に「債務償還年数の計算式」を直接聞くべき理由
金融機関によって、債務償還年数の計算式は異なります。
- 借入金から預金だけを引いて利益+減価償却費で割る金融機関
- 現金・預金を引かずに運転資金だけを引いて利益+減価償却費で割る金融機関
- 引かない分、年数の目安を15年・20年に伸ばして計算する金融機関
「10年以内に返さなきゃいけない」とよく言われますが、金融機関によって計算式が違うため、目安の年数も変わってきます。
銀行員と仲良くなれたら、ぜひ聞いていただきたいのが「御社では債務償還年数をどうやって計算しているんですか?」という質問です。「債務償還年数」という言葉は銀行員にとって常識中の常識の言葉ですので、そのまま使って大丈夫です。計算式を聞き出すことで、その銀行の目線・見方がよくわかってきます。
📌 不動産投資がある場合の注意点
不動産投資をされている方は、不動産投資の借入金が債務償還年数の計算に含まれると年数が悪化しやすくなります。不動産投資の収益は利益としてそれほど大きな金額にならない一方、借入金は大きくなるからです。ただし、不動産だけを切り離して考える金融機関も多いため、担当者に確認することをお勧めします。
何か計算式があってそれに当てはめて「いい・悪い」と判断するような銀行員ばかりではなく、実態を把握していく作業をきちんとしてくれる銀行員も多くいます。税理士は実態把握がやや苦手な方もいて、算式に当てはめて両極端な評価をしようとする方もいますが、それが必ずしも正解ではないことも多々あります。
皆さんが自社の財務状況を正確に理解し、銀行からどう見られているかを把握するためには、税理士だけでなく銀行員にも相談することが非常に重要です。財務を教わるのに銀行員は非常に頼りになる存在です。
💡 補足:動画では触れていませんが…
メインバンクとサブバンクでは同じ会社を見ても評価が異なる場合があります。メインバンクは情報量が多いため実態に近い評価をしやすく、サブバンクは財務指標に頼りがちになる傾向があります。複数の銀行担当者と関係を築くことで、多角的な財務評価を得られます。
📝 このセクションのまとめ
- 金融機関によって債務償還年数の計算式は異なる。担当者に直接確認することが重要
- 不動産投資の借入金は切り離して考える金融機関も多い
- 税理士だけでなく銀行員にも財務の相談をすることが大切
📋 この記事を読んだら次にやること
- 自社の借入金を「運転資金・設備資金・お付き合い融資」の3種類に分類してみる
- バランスシートで「現預金」「売掛金+在庫-買掛金(運転資金)」を計算し、借入金から差し引いて「本当に利益で返す借入金」を算出する
- メインバンクの担当者に「御社では債務償還年数をどのように計算していますか?」と質問し、銀行の見方を把握する
- 顧問税理士の財務アドバイスと銀行員の見方を比較し、乖離がある場合はその理由を確認する
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 中小企業の財務チャンネル の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 中小企業の財務チャンネルを応援しています!
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