銀行員が尊敬する「数字に強い経営者」が把握すべき財務指標を専門家が解説

銀行員が尊敬する「数字に強い経営者」が把握すべき財務指標を専門家が解説
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銀行員が本当に確認する財務指標を把握するだけで、融資評価は大きく変わります。

「数字に強い経営者」とは何か?銀行員の視点から考える

「数字に強い経営者にならなければならない」とよく言われますが、銀行員の方が尊敬するのは、難しい財務分析ができる経営者ではありません。銀行員が「当たり前に把握しているはず」と思っている数字をきちんと把握できている経営者です。

実際には、そうでない経営者の方が多く、銀行員の方も困っているのが現状です。多くの経営者は数字が苦手で、押さえておくべき数字を把握できていないケースが少なくありません。

📌 ポイント

銀行員・信用金庫・信用保証協会が確認するポイントは決まっています。100も200もあるわけではなく、限られた指標を押さえるだけで印象は大きく変わります。逆に、流動比率や固定長期適合率を計算して並べても、銀行員からはほとんど尊敬されません。

また、決算書の読み方の本に出てくる「流動比率」「固定長期適合率」といった指標は、銀行員がほぼ聞いてくることはありません。それらは彼らが自分で計算するものです。銀行員が経営者に聞くのは、もっとシンプルな数字です。

💡 補足:動画では触れていませんが…

銀行員との面談では「BS(貸借対照表)」「PL(損益計算書)」という略称をさらっと使うだけで、経営者としての印象が大きく変わります。Profit and Loss Statementの正式名称を覚える必要はありません。

📝 このセクションのまとめ

  • 銀行員が尊敬するのは「難しい分析ができる経営者」ではなく「基本指標を即答できる経営者」
  • 流動比率・固定長期適合率は銀行員が自ら計算するため、経営者に聞かれることはほぼない
  • 「BS」「PL」という略称を使えるだけで印象が変わる

【BS①】現預金残高:資金繰りの要を即答できるか

BS(貸借対照表)の中で、銀行員・信用金庫・信用保証協会が最初に確認するのが現預金残高です。会社はキャッシュ(資金)が尽きることで倒産します。銀行員が最も恐れるのは取引先の倒産であり、そのリスクの源泉である現預金残高を経営者が把握しているかどうかを必ず確認します。

「そういえば社長、先月末の現預金はいくらぐらいですか?」とさらっと聞かれたときに即答できるレベルを目指してください。売上・利益は即答できても、現預金残高を即答できる経営者は意外と少なく、それだけで希少価値が高まります。

さらに「現預金はどれくらいあるべきだと思いますか?」と聞かれたときに、明確な目標を答えられると非常に印象が良くなります。

基準現預金の目安コメント
銀行員がよく言う最低ライン月商の1〜2ヶ月分倒産リスクを回避するための最低水準
財務コンサルタントが推奨月商の3ヶ月分余裕を持った経営のための目標水準
理想的な回答例月商の2ヶ月分を目標に、現在は1.5ヶ月分目標と現状の差を把握・説明できる状態

📌 ポイント

「合格ラインを月商2ヶ月分と設定していて、現在は1.5ヶ月分なので、もう少し手元の資金を厚くしたい」とさらっと言えると、常に数字を見ている経営者という印象を与えられます。

💡 補足:動画では触れていませんが…

現預金残高は毎月末だけでなく、月中の資金繰り表(週次・月次)と合わせて管理すると、銀行員への説明がさらに説得力を持ちます。試算表と資金繰り表をセットで提示できる経営者は非常に少なく、高い評価につながります。

📝 このセクションのまとめ

  • 先月末の現預金残高を即答できるようにする
  • 目標水準(月商の何ヶ月分)を自分で設定しておく
  • 目標と現状のギャップを説明できると尊敬される

【BS②】自己資本金額:比率より「金額」と「目標」が重要

銀行員が気にするのは自己資本比率ではなく、自己資本の金額です。彼らが最も警戒するのは債務超過(自己資本がマイナスになる状態)です。債務超過になると、基本的に融資ができなくなります。

銀行員が自己資本を意識しているのに、経営者が意識していなければ、当然一目置かれません。以下の3点を把握・説明できるようにしておきましょう。

  • 現在の自己資本金額はいくらか
  • 前期末の自己資本金額はいくらだったか
  • 将来的にいくらにしていきたいか(経営目標)

📌 ポイント

「自己資本比率30%を目指します」より、「自己資本が今1億円なので、5年後に2億円にしたい」と金額で語る方が、銀行員には刺さります。比率より金額・目標で話すことが重要です。

💡 補足:動画では触れていませんが…

自己資本は毎期の当期純利益の積み上げで増加します。「利益を出し続けること=自己資本を増やすこと」と理解しておくと、銀行員との会話でも自然に繋がります。赤字が続くと自己資本が削られ、最終的に債務超過に至ることを常に意識しておきましょう。

📝 このセクションのまとめ

  • 自己資本は「比率」ではなく「金額」で把握・説明する
  • 債務超過(自己資本マイナス)になると融資が受けられなくなる
  • 「5年後に○億円にしたい」という目標金額を持つことが重要

【BS③】売掛金・在庫・貸付金:増加したら即説明できる準備を

BS上で銀行員が特に注目するのが売掛金・在庫・貸付金の3科目です。これらが前期比・前々期比で膨らんでいると、すぐに問い合わせが来ます。

売掛金・在庫の増加は「粉飾決算の疑い」を持たれる

⚠️ 注意

売掛金・在庫が増加した決算書を持参すると、銀行員は粉飾決算を疑います。これは銀行員の常識です。増加した理由を説明できない経営者は、信頼関係を大きく損ないます。

売掛金が増えた場合は、「例年になく期末近くに大型売上が計上されたため」など、具体的な理由を即答できるよう準備しておきましょう。

在庫については、より丁寧な説明が必要です。例えば、「3月決算の会社で、4月・5月納品予定のお客様から注文があり、3月に仕入れたため在庫が一時的に増えた」という事実を用意しておきましょう。

📌 ポイント

在庫増加の理由を説明した後、銀行員は4月・5月の試算表を必ず確認してきます。「3月の在庫が一時的に増えた」という説明が正しければ、4月・5月の売上は例年より増えているはずです。試算表と整合性が取れているかどうかまで意識しておきましょう。

銀行員・信用金庫・信用保証協会が最も嫌いな勘定科目貸付金です。貸付金が増えていると必ず見られます。

  • 貸付金の増加理由を説明できない → 信頼関係が大きく損なわれる
  • 貸付金の増加理由を説明できる → 「数字を同じレベルで把握している経営者」と認識される
  • そもそも貸付金は極力増やさないことが原則
科目増加時の銀行員の反応対策
売掛金粉飾決算を疑う・増加理由を問い合わせ期末近くの大型売上など具体的理由を即答できるようにする
在庫粉飾決算を強く疑う納品予定の受注内容と、翌月以降の試算表との整合性を準備する
貸付金最も嫌いな科目として徹底確認発生原因を説明できるようにする・極力増やさない

💡 補足:動画では触れていませんが…

売掛金の「実質」を把握するには、回収サイト(売上から入金までの日数)も重要です。業界平均より回収サイトが長い場合、銀行員は資金繰りリスクとして捉えます。売掛金の回収状況も定期的に確認しておきましょう。

📝 このセクションのまとめ

  • 売掛金・在庫が増えたら粉飾決算を疑われる。具体的な理由を即答できる準備を
  • 在庫増加の説明は翌月の試算表との整合性まで意識する
  • 貸付金は銀行員が最も嫌う科目。極力増やさず、理由を説明できるようにしておく

【PL】5段階利益と減価償却費・実質経常利益を正確に把握する

PL(損益計算書)については、銀行員と「利益」の話をするときに、どの利益の話をしているのかが噛み合わないと、「決算書をまともに見ていない経営者」という印象を与えてしまいます。

PLには5段階の利益があります。それぞれの違いを把握しておきましょう。

利益の種類意味銀行員が使う場面
売上総利益(粗利)売上から売上原価を引いた利益「利幅が落ちましたね」→ 粗利率のこと
営業利益粗利から販管費を引いた利益本業の稼ぐ力を示す指標
経常利益営業利益に営業外収益・費用を加減した利益融資審査で最も重視される指標
税引前当期純利益経常利益に特別損益を加減した利益法人税を引く前の利益
当期純利益法人税等を引いた最終利益自己資本の増減に直結する

⚠️ 注意

銀行員が「利幅が落ちましたね」と言っているのは粗利(売上総利益率)のことです。それに対して経営者が「経常利益率は5%ありました」と答えると話が噛み合いません。銀行員が話している利益がどの段階なのかを確認する習慣をつけましょう。

次に重要なのが減価償却費です。減価償却費はお金が出ていかないコストです。つまり、キャッシュフロー(資金繰り)上は利益にプラスして考えることができます。

  • 減価償却費が多くて利益が少ない → 実態としては問題ない可能性が高い
  • 減価償却費が少なくて利益も少ない → 資金繰りが厳しい可能性がある
  • 減価償却費を調整して利益を操作している → 銀行員はすぐに見抜く

⚠️ 注意

「減価償却費を調整して黒字決算にしました」と報告しても、銀行員はそれを把握しています。減価償却費を調整して利益を操作していることは銀行員にはバレています。「自分たちにわかっていないと思っている経営者」という評価になってしまうので注意が必要です。

そして実質経常利益の概念も重要です。営業利益の下にある「雑収入」に、保険解約益などの一過性の臨時収入を計上して経常利益を良く見せようとしても、銀行員は内訳明細書で瞬時に把握します。

📌 ポイント

本来「特別利益」として経常利益の下に表示すべきものを雑収入に計上して経常利益を膨らませた決算書を持参し、「経常利益率5%を超えました」と報告しても、銀行員が見ているのは実質経常利益です。実質で数字を見ていない経営者は尊敬されません。

💡 補足:動画では触れていませんが…

減価償却費は顧問の会計事務所に確認すれば年間金額・来期の見込み額を教えてもらえます。設備投資の計画と合わせて把握しておくと、将来の資金繰り予測にも役立ちます。

📝 このセクションのまとめ

  • 5段階利益(売上総利益・営業利益・経常利益・税引前利益・当期純利益)を区別して把握する
  • 銀行員が「利幅」と言ったら粗利率のこと。どの利益の話かを確認する習慣をつける
  • 減価償却費はお金が出ていかないコスト。年間いくらかを把握しておく
  • 一過性の収入を雑収入に計上して経常利益を膨らませても銀行員には見抜かれる

【最重要指標】債務償還年数:「実質借入金」で計算する

債務償還年数とは、現在の借入金を何年で返済できるかを示す指標です。銀行員が最も重視する指標の一つであり、経営者がこれを意識しているかどうかを必ず確認してきます。

ただし、計算に使う「借入金」は表面上の数字ではありません。実質借入金で計算することが重要です。

実質借入金の計算式は以下の通りです。

計算ステップ内容
① 借入金(総額)銀行等からの借入金合計
② 運転資金を引く(受取手形+売掛金+在庫)-(支払手形+買掛金)
③ 現預金を引く手元にある現預金(※金融機関によって異なる)
④ 実質借入金①-②-③ = 真水の借入金

📌 ポイント

運転資金(売掛金・在庫などから買掛金等を引いた金額)と手元の現預金は、事業を回すために必要なお金・すでに手元にあるお金です。これらは「実質的な借入金」とはいえません。借入金から運転資金と現預金を引いた「真水の借入金」がいくらかを把握することが重要です。

次に、実質借入金を何年で返せるかを計算します。分母となる「返済原資」の計算方法は金融機関によって異なりますが、代表的な考え方は以下の通りです。

返済原資の計算方法内容目安
方法①(最も一般的)経常利益の50%+減価償却費10年以内がOKの目安
方法②当期純利益+減価償却費特別損益を加味した最終利益ベース
方法③過去3年の当期純利益の平均+減価償却費単年度のブレを平準化

📌 ポイント

計算方法は金融機関によって異なりますが、まず自分の中で「直近の経常利益の50%+減価償却費」で計算し、実質借入金を10年以内に返せるかどうかを意識した経営をすることが重要です。

また、お付き合いで借り入れている場合、その借入金に見合う預金が手元に残っているケースがあります。そのようなお付き合いの借入金は実質的な借入金とはいえないため、除いて計算しても構いません。

💡 補足:動画では触れていませんが…

債務償還年数が10年を超えると、金融機関によっては「要注意先」として分類されるリスクがあります。新規融資の審査が厳しくなるため、毎期決算後に必ず計算し、目標年数(例:7年以内)を設定して経営計画に組み込むことをお勧めします。

📝 このセクションのまとめ

  • 債務償還年数=実質借入金 ÷ 返済原資(経常利益の50%+減価償却費)
  • 実質借入金=借入金合計-運転資金-現預金
  • 10年以内が多くの金融機関のOKライン
  • お付き合いの借入金は除いて計算してもよい

「実質」で見る習慣が、銀行員からの尊敬につながる

銀行員が経営者に対して「数字に強い」と感じる最大のポイントは、「実質」で数字を見ているかどうかです。表面上の数字ではなく、本当の自社の姿を把握しているかどうかを見ています。

指標「実質」とは何か
実質売掛金回収可能な売掛金の実態(不良債権を除く)
実質在庫換金可能な在庫の実態(不良在庫・陳腐化在庫を除く)
実質自己資本貸付金・不良資産等を除いた真の自己資本
実質現預金お付き合い預金を除いた自由に使える現預金
実質貸付金回収見込みのない貸付金の実態
実質経常利益一過性の臨時収入を除いた本業ベースの経常利益
実質借入金運転資金・現預金を除いた真水の借入金

銀行員は常に「実質」で数字を見ています。そして、その「実質」を自分でも把握している経営者を尊敬します。数字の数は多くありません。これらを「実質」で把握することを意識するだけで、銀行員からの評価は大きく変わります。

💡 補足:動画では触れていませんが…

「実質」で数字を把握するためには、顧問の会計事務所と定期的な面談(月次決算報告)を行うことが有効です。毎月の試算表を見ながら「実質」の数字を一緒に確認する習慣をつけると、銀行員との面談でも自信を持って答えられるようになります。

📝 このセクションのまとめ

  • 銀行員は常に「実質」で数字を見ている
  • 実質売掛金・実質在庫・実質自己資本・実質現預金・実質貸付金・実質経常利益・実質借入金の7つが核心
  • 「実質」で把握している経営者を銀行員は尊敬する

📋 この記事を読んだら次にやること

  1. 直近の決算書を手元に用意し、現預金残高・自己資本金額・借入金総額を確認する
  2. 現預金の目標ライン(月商の何ヶ月分か)と自己資本の5年後目標金額を自分で設定する
  3. 顧問の会計事務所に「実質借入金」と「債務償還年数」を計算してもらい、10年以内かどうかを確認する
  4. 年間の減価償却費と来期の見込み額を会計事務所に確認しておく
  5. 次回の銀行・信用金庫との面談前に、売掛金・在庫・貸付金の増減理由を整理しておく

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 中小企業の財務チャンネル の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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