青色申告制度見直しで10万円控除廃止へ?税理士が解説する個人事業主への影響
青色申告の「簡易な簿記・10万円控除」が廃止される可能性が浮上。個人事業主・フリーランス必読の制度見直し解説。
今回の青色申告制度見直しの概要
今回の内容は、政府の税制調査会の答申をもとにしたお話です。サラリーマン向けの見直しについてはすでに別途解説していますが、今回は個人事業主・フリーランスの方に影響が大きい「青色申告制度の見直し」について詳しく解説します。
税制調査会の答申には、具体的に次のような内容が書かれています。
📌 答申のポイント
- クラウド会計ソフトが発達している今、正規の簿記で帳簿を作るのは難しくないはず
- 正規の簿記で作った帳簿は、事業者自身の経営把握や取引先からの信頼性向上、控除にもつながる
- これをもっと推進すべきであり、これまで認めてきた「簡易な簿記」はもうやめた方がいいのではないか
つまり、簡易な簿記による10万円控除が廃止される可能性が非常に高いという状況です。なぜこのような話が出てきたのか、その背景には財務省がこの機会に大きく制度を変えてやろうという思惑があります。
📝 このセクションのまとめ
- 政府税制調査会が青色申告制度の見直しを検討中
- 簡易な簿記の廃止=10万円控除の廃止につながる可能性がある
- 個人事業主・フリーランスへの影響が特に大きい
青色申告制度の誕生と歴史
そもそも日本では、戦前は国が各人の税金を「あなたはこれくらい」と決めていました。戦後、GHQに占領されると、GHQは「国民は自主的に税金を申告してください」という方針のもと、確定申告制度がスタートします。民主的な制度という背景もありました。
しかし当時の人たちはそもそも帳簿をつけていない人が大半で、どうやら脱税し放題だったようです。これではいけないということで、GHQはアメリカから税金に詳しい学者たちを日本に呼んで調査させました。
その結果、「日本人に帳簿をつけさせるには何か特典をつけた方がいい」という結論に至り、特典がついた確定申告のことを「青色申告」と呼ぼうという経緯になりました。「青」という字が使われた理由は、日本人が青空など青にとてもいいイメージを持っているからだそうです。こうして「青色申告」と「白色申告」という言葉が生まれました。
📌 青色申告・白色申告の対象者
青色・白色の選択ができるのは、以下の所得がある方です。
- 不動産オーナー(不動産所得)
- 自営業者・業務委託を受けているフリーランス
- 副業の中でも「事業所得」に該当する方
制度スタート当初は、白色申告は帳簿をつけなくてよく、大雑把な売上・経費で確定申告ができました。青色申告を選択すると特典がつく代わりに帳簿が必要になる、という仕組みでした。
ただし、2014年以降は法律が変わり、白色申告でも帳簿が必要になりました。結果として現在は、白色・青色どちらを選んでも帳簿は必要です。青色を選択すると特典がもらえる、という制度になっています。
📝 このセクションのまとめ
- 青色申告はGHQの指導をきっかけに戦後スタートした制度
- 2014年以降は白色申告でも帳簿が必要になった
- 現在は「青色を選ぶと特典あり」という構造
帳簿とは何か?作成目的と税務調査での役割
「帳簿」と一言で言っていますが、正式には「会計帳簿」といい、「記帳」と呼んだりもします(記入帳簿の略)。今では「会計ソフト」と呼ぶことも多いです。
帳簿とは、日々の取引を記録する書類やデータのことです。帳簿として認められるためには、以下の要件が必要です。
- 年月日
- 取引の相手(誰なのか)
- 勘定科目(「消耗品費」など)
- 金額
- 取引の内容・詳細
これらの要件が揃っていれば、会計ソフトへの入力でも、ノートへの手書きでも帳簿として認められます。具体的な書き方については、税務署が「帳簿記入の仕方」という冊子を作っていたり、全国各地にある青色申告会で習うこともできます。
帳簿を作る目的の流れは次のとおりです。
- 仕事のやり取りで請求書を受け取ったり発行したりする
- 経費のためにレシートを集める
- それらを帳簿に記録する
- 帳簿のデータをもとに決算書を作成する
- 決算書を添付して確定申告書として提出する
⚠️ 税務調査では帳簿が最重要
確定申告書と決算書は提出義務がありますが、税務調査が始まると調査官が最初に確認するのは帳簿です。帳簿を見ながら「これはおかしい、怪しい」という点があれば、「この消耗品費のレシートを見せてください」と言われます。山のようなレシートをまとめて渡して調査官がひたすら見る、というスタイルではなく、帳簿が軸になります。
📝 このセクションのまとめ
- 帳簿は「日々の取引を記録する書類・データ」のこと
- 年月日・相手・勘定科目・金額・内容の5要件が必要
- 税務調査では帳簿が最重要の確認対象になる
青色申告の5つの特典
青色申告を選択した場合に受けられる特典は以下の5つです。詳しくは過去の動画も参照してください。
| 特典 | 内容 | 補足 |
|---|---|---|
| ①青色申告特別控除 | 最高65万円の控除(経費が増えるのと同じ扱い) | 帳簿の種類・e-Taxの利用有無で65万・55万・10万円に変わる |
| ②青色事業専従者給与 | 家族に支払う給与を必要経費にできる | 初回のみ事前に届出が必要。労働の対価として妥当な金額であること |
| ③少額減価償却資産の特例 | 30万円未満の資産をその年に一括で経費計上できる | 白色申告は10万円未満まで。パソコン等も一括経費にできる |
| ④貸倒引当金の計上 | 貸倒引当金を計上できる | ― |
| ⑤純損失の繰越控除 | 事業所得・不動産所得が赤字の場合、3年間繰り越せる | ― |
⚠️ 青色申告の承認申請書の提出期限に注意
- すでに事業をしている方:その年の3月15日までに提出(例:2023年から適用したい場合は2023年3月15日まで)
- 今年から個人事業主としてスタートする方:開業から2ヶ月以内に提出
なお、白色申告の場合、家族への給与は「配偶者は年間86万円、その他の家族は年間50万円」と金額が法律で決められています。青色申告の専従者給与はこの制限がなく、実際の労働の対価として妥当な金額を支払うことができます。
📝 このセクションのまとめ
- 青色申告の最大のメリットは最高65万円の特別控除
- 家族への給与を経費にできる「青色事業専従者給与」も大きな節税効果
- 30万円未満の資産を一括経費にできる少額減価償却の特例も便利
- 承認申請書の提出期限を必ず守ること
青色申告特別控除額の違い:正規の簿記・簡易な簿記・白色申告
青色申告特別控除額は、帳簿の作り方によって65万円・55万円・10万円の3段階に分かれます。
| 控除額 | 条件 |
|---|---|
| 65万円 | 正規の簿記(複式簿記)+青色申告決算書の作成+e-Taxで提出 |
| 55万円 | 正規の簿記(複式簿記)+青色申告決算書の作成(e-Taxを使わない場合) |
| 10万円 | 簡易な簿記で帳簿を作成した場合/提出が3月15日に間に合わなかった場合/不動産所得で規模が小さい場合など |
なお、10万円控除には「現金主義」という方法もありますが、全体の0.1%の方しか使っていないため、実質的には上記の3パターンで考えると良いでしょう。
また、白色申告の場合は控除はありませんが、帳簿は「簿記ではない簡易な方法」が認められています。売上だけを記録した「売上帳」や経費だけを記録した「経費帳」をきちんとつければOKです。確定申告書への添付書類も、青色申告決算書(4面)の代わりに「収支内訳書」(枚数が少ない)を提出します。
📌 現状の選択状況(調査データ)
税制調査会でも取り上げられた調査によると、現在の選択状況は次のとおりです。
- 正規の簿記(複式簿記):全体の約3割
- 簡易な簿記:全体の約3割
- 白色申告:全体の約4割
正規の簿記を使っているのは全体の3割にとどまっており、これが今回の見直し議論の背景にもなっています。
📝 このセクションのまとめ
- 控除額は65万円・55万円・10万円の3段階で、帳簿の種類とe-Taxの利用有無で決まる
- 最大控除65万円にはe-Taxでの提出が必要
- 現在、正規の簿記を使っているのは全体の約3割のみ
正規の簿記(複式簿記)と簡易な簿記の違い
今回の見直しで核心となる「正規の簿記」と「簡易な簿記」の違いを整理します。
| 項目 | 正規の簿記(複式簿記) | 簡易な簿記(単式簿記) |
|---|---|---|
| 簿記の種類 | 複式簿記(簿記3級で習うもの) | 単式簿記 |
| 必要な帳簿 | 仕訳帳・総勘定元帳など(借方・貸方の知識が必要) | 現金出納帳・経費帳・固定資産台帳・売掛帳・買掛帳など |
| 決算書 | 青色申告決算書1面〜4面(PL損益計算書+BS貸借対照表) | 青色申告決算書1面〜3面(PL損益計算書のみ。BS不要) |
| 難易度 | 簿記の知識が必要。税理士や青色申告会のサポートが望ましい | 家計簿レベル。手書きでも対応可能 |
| 青色申告特別控除 | 65万円(e-Tax利用時)または55万円 | 10万円 |
⚠️ クラウド会計ソフトだけで正規の簿記は難しい
「クラウド会計で簿記の知識がなくても正規の簿記・65万円控除が取れますよ」と宣伝している会計ソフトもありますが、実際に帳簿を見ると9割型間違っています。銀行口座やクレジットカードを自動取り込みすると簡単に見えますが、銀行間の資金移動・カードの取り込み漏れ・返金処理などが発生すると途端に帳簿がぐちゃぐちゃになります。税理士や青色申告会のサポートなしで正規の簿記が正確にできている方は、全体の1割いるかいないか、というのが実感です。
一方、簡易な簿記は家計簿レベルの難易度なので、そこまで難しくなく、手書きでも十分対応できます。
📝 このセクションのまとめ
- 正規の簿記は複式簿記で、BS(貸借対照表)の作成まで必要
- 簡易な簿記は単式簿記で、PL(損益計算書)のみでよい
- クラウド会計ソフトだけで正規の簿記を正確に作れている人は少ない
財務省の思惑:デジタル化・AI税務調査への布石
今回の青色申告制度見直し、つまり「正規の簿記で帳簿を作らせたい」理由の背景には、財務省の大きな思惑があります。
そもそも税務調査において、課税の立証責任は税務署側にあります。例えば、税務調査官が「この人に税金100万円課したい」と思ったら、その証拠は税務署側が出さなければなりません。ただし、自営業者側の帳簿が適当で、ちゃんとした帳簿がない場合は証拠データがないため、裁判に持ち込むことも難しく、適切に課税できないという問題が以前からありました。
財務省はこの機会に、全部デジタル化してしまおうという方針を打ち出しています。その根拠として挙げられているのが次の点です。
- 国の調べによると、現在でも帳簿の半数の人は手書きであり、税務調査が非常に大変
- 最近の会計ソフトは優秀なので、正規の帳簿も作れるはず
- 国税庁の資料では、事業者の業務のデジタル化や税務調査でのAI・データ分析活用、税務署システムのコード化が明記されている
📌 財務省が目指す未来の税務調査
みんながデジタルで帳簿を作ってくれれば、税務署のシステムがそれを取り込んでAIでチェックし、不正を自動的に見つけることができます。これが実現すれば税務調査が格段に効率化されます。そのために「簡易な簿記をやめさせる」「手書きをやめさせる」という2つの方向で制度が動いています。
この流れを後押しするのが「電子帳簿保存法」です(詳細は別の動画で解説しています)。また、マイナンバーカードへの保険証統合のように、行政のデジタル化は非常に急ピッチで進んでいます。帳簿のデジタル化も、あっという間に決まってしまう可能性があります。
📝 このセクションのまとめ
- 課税の立証責任は税務署側にあるが、帳簿が不備だと適切な課税ができないという問題があった
- 財務省は「簡易な簿記の廃止」「手書きの廃止」でデジタル化・AI税務調査を推進しようとしている
- マイナンバー同様、制度変更は想像より早く実現する可能性がある
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル オタク会計士ch【山田真哉】 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは オタク会計士ch【山田真哉】を応援しています!
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