青色事業専従者給与の正しい節税方法を税理士が解説|税務調査で否認されない金額設定とは
家族への給与を経費にできる「青色事業専従者給与」、誤った使い方は税務調査で即アウトです。
そもそも家族への給与は原則として経費にならない
個人事業主・フリーランスや個人の大家さんが、妻や子供に給与を支払って節税できるのか? 実はこれ、所得税の原則では家族(同一生計親族)への給与は経費に落とせません。
厳密には、同一生計の親族への給与の支払いは経費に落ちないというルールがあります。別生計の親族であればOKというのが根本的なルールです。
📌 「同一生計」とは同居のことではない
同一生計イコール同居ではありません。イメージとしては「同じ財布で生活しているかどうか」です。
- 子どもが遠方で下宿していて仕送りをしている場合 → 住んでいなくても同一生計
- 同居していても、夫婦それぞれが独立した事業主として別々の財布で生活している場合 → 別生計
ただし、所得税には特例があります。同一生計であっても家族従業員に給与を支払って経費に落とす方法、それが青色事業専従者給与です。
なお、白色申告の方にも「専従者控除」という制度があり、経費計上とは若干意味合いが違いますが節税方法として存在しています。配偶者は最大86万円、それ以外(子どもなど)は50万円の控除が可能です。ただし上限があり、事業所得を専従者の数+事業主本人の数で割った金額と比較して、いずれか小さい方までしか計上できません。
📝 このセクションのまとめ
- 同一生計の親族への給与は原則として経費不可
- 「同一生計」は同居かどうかではなく「同じ財布かどうか」で判断
- 青色申告者には「青色事業専従者給与」という特例がある
- 白色申告者にも「専従者控除」(配偶者86万円・その他50万円上限)がある
青色申告とは?確定申告の全体像を理解しよう
税金計算の全体像を確認しておきましょう。個人事業主・大家さんの場合、まず売上の集計からスタートします。そこから売上獲得のためにかかった経費(仕入れ・人件費・通信費・水道光熱費など)を差し引いたものが事業所得(大家さんの場合は不動産所得)です。
そこからさらに所得控除(医療費控除・配偶者控除など個人の生活的事情を考慮した控除)を引いた後が課税所得で、これに超過累進税率をかけて所得税額を算出します。所得税に加え、復興特別所得税(所得税額の2.1%)・住民税(10%)・事業税もかかります。所得税と住民税を合わせた最低税率は約15%、最高税率はなんと55%です。
今回の青色事業専従者給与は、この必要経費に関する話です。課税所得を小さくするには、所得控除を増やすか、必要経費をできる限り大きく計上するかが節税の基本です。
青色申告とは、しっかり帳簿を作った人に節税の特典を認める制度です。申告のバージョンによって受けられる控除額が異なります。
| 申告区分 | 帳簿の種類 | 青色申告特別控除額 |
|---|---|---|
| 白色申告 | 簡便的な帳簿 | なし |
| 青色申告(簡易版) | 簡易帳簿 | 10万円 |
| 青色申告(複式簿記) | 複式簿記(PL・BS) | 55万円 |
| 青色申告(複式簿記+電子申告) | 複式簿記+e-Tax | 65万円 |
⚠️ 注意
青色申告をするには「所得税の青色申告承認申請書」の提出が必要です。原則としてその年の3月15日までに提出しなければなりません(1月16日以降に開業した場合は開業日から2ヶ月以内)。青色申告でなければ青色事業専従者給与は経費計上できません。
📝 このセクションのまとめ
- 所得税+住民税の最低税率は約15%、最高税率は55%
- 節税の基本は「所得控除を増やす」か「必要経費を大きくする」か
- 複式簿記+電子申告の青色申告なら最大65万円の特別控除が受けられる
- 青色申告承認申請書は原則3月15日までに提出が必要
青色事業専従者給与の定義と要件
青色事業専従者給与として給与を経費計上するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 対象者:同一生計の配偶者および15歳以上の親族(子どもなど)
- 原則として年間6ヶ月超の期間、その事業に専従していること
- 事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出していること
- 届出書に記載した金額の範囲内であること
- 労務の対価として妥当な金額であること
- 確定申告書・青色申告決算書に専従者給与に関する情報を記載していること
⚠️ 注意:専従要件の例外・注意点
- 年度途中の開業や入院があった場合は、その期間を除いた「従事可能期間の1/2超」専従していればOK
- 15歳以上であっても学生の場合は専従者給与の計上は不可(夜間学生は対象)
- 他に仕事(副業・他社への正社員勤務など)をしている場合はアウト
また、不動産所得(個人の大家さん)の場合は要注意です。不動産所得で青色事業専従者給与を使うには、事業的規模であることが必要です。事業的規模の形式基準は以下の通りです。
| 物件の種類 | 事業的規模の目安 |
|---|---|
| 一戸建てなど | 5棟以上 |
| アパート・マンションなど | 10室以上 |
これを下回る規模の場合、事業的規模とは言えず、青色事業専従者給与の計上はできません。
📝 このセクションのまとめ
- 対象は同一生計の配偶者・15歳以上の親族(学生は原則不可)
- 年間6ヶ月超の専従が必要(専業であること)
- 事前の届出書提出・届出金額の範囲内・妥当な金額設定が必須
- 不動産所得は事業的規模(5棟または10室以上)でなければ使えない
届出書の記載方法と確定申告書への記載箇所
青色事業専従者給与を経費計上するためには、「青色事業専従者給与に関する届出書」を、経費参入しようとする年の3月15日までに提出しなければなりません。1月16日以降に新たに開業した場合や専従者を雇い入れた場合は、その日から2ヶ月以内という特例があります。
⚠️ 注意
これから提出する令和6年分の確定申告で、今から届出書を出して給与計上するのは基本的に不可能です。青色事業専従者給与は来年分からの話と考えてください。
届出書には以下の情報を記載します。
- 専従者の氏名・年齢
- 仕事の経験年数・業務内容
- 保有資格(あれば)
- 月給と賞与の金額
- 昇給の基準
📌 届出書の金額はマックス金額でOK
届出書に記載する金額は、その金額通りにぴったり支払わなくてよいです。あくまでも「上限の金額」として記載すればよく、その金額以内であればOKです。金額を増額したい場合は「変更届出書」を提出することで対応できます。
また、届出書には家族でない一般従業員の給与情報(氏名・業務内容・月給など)も記載する欄があります。専従者給与の金額が世間相場通りかどうかを判断するための比較材料になりますので、同じ事業所内で同様の仕事をしている社員がいればその情報を細かく記載し、昇給基準も一般社員と合わせておく必要があります。
確定申告時には、なんと4箇所に専従者給与に関する情報を記載しなければなりません。
| 記載書類 | 記載箇所・内容 |
|---|---|
| 青色申告決算書(2ページ目) | 専従者給与の内訳(実際に支給した金額など) |
| 青色申告決算書(1ページ目) | 「専従者給与」勘定科目欄に総額を記載 |
| 確定申告書 第2票 | 専従者に関する情報 |
| 確定申告書 第1票 | 専従者給与に関する記載 |
📝 このセクションのまとめ
- 届出書は経費計上したい年の3月15日まで(開業・雇入れ時は2ヶ月以内)に提出
- 届出書の金額は「上限額」として記載すればよく、ぴったり合わせる必要はない
- 金額を増額する際は「変更届出書」を提出する
- 確定申告書・青色申告決算書の合計4箇所に記載が必要
青色事業専従者給与のメリット・デメリット
青色事業専従者給与を活用するかどうかは、メリットとデメリットを比較して判断しましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メリット① | 節税効果が大きい(必要経費として計上できる) |
| メリット② | 所得分散によって超過累進税率の緩和ができる |
| メリット③ | 配偶者への所得分散で相続税対策も可能(配偶者自身の財産形成) |
| デメリット① | 給与を受け取る専従者側にも税負担が発生する |
| デメリット② | 事前の届出書提出が必要(手続きが面倒) |
| デメリット③ | 毎月の源泉徴収事務・年末調整が発生する |
| デメリット④ | 配偶者控除・扶養控除との併用不可 |
| デメリット⑤ | 専業(副業不可)であることが条件 |
| デメリット⑥ | 小規模な不動産業(事業的規模以外)は使えない |
特に大きな節税効果をもたらすのが所得分散です。所得税は超過累進税率なので、課税所得が大きくなればなるほど税率が上がります。受け取り手を増やすことで税率を緩和できます。
具体的な数字で見てみましょう。課税所得が1,000万円の事業主1人の場合、所得税と住民税を合わせたトータルの税額は約280万円です。
| 所得の分散パターン | 事業主の課税所得 | 専従者の課税所得 | 合計税額(目安) | 節税効果 |
|---|---|---|---|---|
| 分散なし(1人で1,000万) | 1,000万円 | - | 約280万円 | - |
| 理想的な均等分散(各500万) | 500万円 | 500万円 | 約216万円 | 約64万円の節税 |
| 現実的な分散(800万/200万) | 800万円 | 200万円 | 約234万円 | 約46万円の節税 |
ただし、事業主と専従者が同額の所得水準というのは現実的にはおかしいです。事業主の補助者として働く専従者がそれだけの給与を取れるかというと、実態として難しいケースがほとんどです。現実的な分散(例:事業主800万円・専従者200万円)でも、約46万円の節税効果があります。
⚠️ 注意:130万円の壁に注意
専従者給与が年間130万円を超えると、国民健康保険の扶養から外れるという問題が生じます。扶養から外れることを気にする場合は、専従者給与を年間130万円未満に抑えることを検討しましょう。
配偶者控除と専従者給与、どちらが得か?
青色事業専従者給与を選択すると配偶者控除は使えなくなります。では、どちらを選んだ方が節税になるのでしょうか?
例えば、事業主の課税所得が1,000万円のケースで比較します。この場合、事業主の風所得がすでに900万円を超えているため、配偶者控除は縮小されて13万円しか受けられません。
| 選択肢 | 税負担の合計(目安) |
|---|---|
| 配偶者控除を選択(課税所得1,000万円) | 約274万円 |
| 専従者給与を選択(800万円+200万円に分散) | 約234万円 |
| 差額(専従者給与の方が有利) | 約40万円の節税 |
📌 ポイント:専従者給与が絶対有利とは限らない
専従者給与を活用した方が必ず税金が安くなるわけではありません。事業全体の利益と専従者給与の金額によって変わります。また、事業主の風所得が1,000万円以下であれば配偶者控除も段階的に受けられます(1,000万円超で0円)。事前にシミュレーションをしてから判断することをお勧めします。一般的には、年間100万〜200万円程度の専従者給与を計上できるケースでは、配偶者控除(基本38万円)よりも節税の幅が広がることが多いです。
📝 このセクションのまとめ
- 所得分散により超過累進税率を緩和でき、大きな節税効果がある
- 専従者給与130万円超で国民健康保険の扶養から外れる可能性がある
- 配偶者控除との比較は事業所得の規模と給与額によって異なるため事前シミュレーションが必須
- 一般的に年間100〜200万円の専従者給与を計上できるなら配偶者控除より節税幅が広がりやすい
実際いくらまでなら経費計上OK?税務調査の実例から学ぶ
では実際のところ、専従者給与はいくらまでなら経費に落とせるのでしょうか。正直に言うと、「いくらまでならOK」という明確な金額の答えはありません。ただし、その考え方については明確な基準があります。
届出書の裏面には、必要経費となる青色事業専従者給与額について、次の状況から見て「相当と認められるもの」でなければならないと書かれています。
- 専従者が労務に従事した期間・労務の性質・その程度
- 事業に従事する他の使用人の給与、および同種・同規模の事業に従事する者の状況
- 事業の種類・規模・収益の状況
つまり、「世間相場通りかどうか」がポイントです。全然仕事をしていないのにむちゃくちゃ高い給与をもらっているとか、他の社員と比べて圧倒的に高すぎるというのは問題になります。
⚠️ 実際の税務調査事例
大規模な大家さん(年間家賃収入が数千万円超)で、専従者が月給60万円を受け取っていたケースがありました。しかし話を聞くと、物件にはちゃんと管理会社がついて管理をしており、専従者は家賃の管理程度しかしていませんでした。実態が非常に乏しいということで、税務調査官から大量のヒアリングを受けました。
税務当局は「妥当な金額は月20万円程度」という見解を示し、翌年度からは専従者給与を切り下げて再スタートすることになりました。
なお、税務当局も基本的には「専従者給与のいくらが妥当なのか」を立証する責任があります。そのため、金額設定の根拠をしっかり説明できるように準備しておくことが重要です。
税務調査で否認されやすい4つのNG行為
以下のような状況は、税務調査で専従者給与を否認されやすい典型的なケースです。
| NG行為 | 詳細・注意点 |
|---|---|
| ①給与が不相当に高い | 実態に比べて給与が高すぎる場合。管理会社がいるのに高額給与など |
| ②実際に働いていない(名前だけ) | 法人の役員報酬と同様、名前だけの専従者はアウト。実態がなければ全額否認 |
| ③支払いの証拠がない | 帳簿上だけで実際に渡していない、現金で渡したが証拠がないケースは徹底的に追及される。銀行振込で支払うのが最善 |
| ④専業でない(副業あり) | 他にも仕事をしていると専従要件を満たさない。ごく短時間のパートなら認められることもあるが、正社員として2か所勤務はアウト |
| ⑤届出金額を超えて支払っている | 届出書の金額を超えた分は経費として認められない。増額する場合は必ず変更届出書を提出すること |
⚠️ 注意
個人事業主・フリーランス・個人の大家さんだからといって税務調査に入られないわけではありません。実際に税務調査が入った事例があります。家族の名前を使えばとりあえず簡単に節税ができるというのは大きな誤りです。
📝 このセクションのまとめ
- 専従者給与の妥当額は「世間相場通りかどうか」が判断基準
- 実際に働いていない・支払証拠がない・副業あり・届出超過はすべてNG
- 支払いは銀行振込で証拠を残すのが最善
- 金額設定の根拠をいつでも説明できるように準備しておく
安全に経費計上するための5つの条件まとめ
青色事業専従者給与を安全に・正しく経費計上するために、以下の条件をすべて守ることが重要です。
- 本当に働いていること(実態がある)
- 専従要件を満たすこと(年間6ヶ月超・専業・学生でない)
- 事前に届出書を提出していること(3月15日まで)
- 妥当な給与額であること(世間相場・他社員との比較)
- 確定申告書・決算書に記載していること(4箇所すべて)
📌 個人事業主 vs 法人の役員報酬
個人事業主の専従者給与と比較すると、法人の役員報酬の方が融通が利きます(役員登記が必要とはいえ)。事業規模の拡大や法人化を目指している方は、法人化も視野に入れて検討することをお勧めします。
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!
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