借入金 適正額の判断方法|バランスシートの正しい見方を専門家が解説

借入金 適正額の判断方法|バランスシートの正しい見方を専門家が解説
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借入金の「借りすぎ」はバランスシートの右側だけ見ても判断できません。正しい指標と見方を解説します。

「いくらまで借りても大丈夫?」という疑問に答える2つの有名指標

中小企業の経営者からよく寄せられる相談に、「我が社は銀行からいくらまで借りても大丈夫でしょうか?」というものがあります。借入金には適正額というものがあって、これを超えると問題、これを下回っていれば問題なし、という基準があるのかというご質問です。

この借入金の適正額を測る指標として有名なのが、以下の2つです。

指標名計算式適正の目安
借入金月商倍率借入金 ÷ 平均月商(年間売上高 ÷ 12)3〜6倍(月商の3〜6ヶ月分)
自己資本比率純資産 ÷ 総資産 × 10030%以上(理想は50%)

借入金月商倍率とは、借入金を平均月商(損益計算書の年間売上高を12で割った金額)で割ることで、「平均月商の何ヶ月分の借入金を持っているか」を示す指標です。適正額の目安は月商の3〜6ヶ月分とよく言われます。

自己資本比率は、貸借対照表の右下にある純資産の金額を総資産で割った指標です。純資産(資本金+利益剰余金など過去の蓄積利益)が総資産に占める割合を示します。自己資本比率が高いということは、借入金の比率が低いということになります。適正の目安は30%、理想は50%と言われます。

💡 補足:動画では触れていませんが…

借入金月商倍率は業種によって大きく異なります。製造業・建設業のように売掛金や在庫が多い業種は倍率が高くなりやすく、一概に「6倍超=危険」とは言えません。業種特性を加味した上で判断することが重要です。

📝 このセクションのまとめ

  • 借入金の適正額を測る有名指標は「借入金月商倍率」と「自己資本比率」の2つ
  • 借入金月商倍率の目安は月商の3〜6ヶ月分
  • 自己資本比率の目安は30%以上、理想は50%

2つの指標が抱える「大きな弱点」とは

この2つの指標は有名ではありますが、1つ大きな弱点を抱えています。それは「バランスシートの右側しか見ていない」という点です。

貸借対照表(バランスシート)は、右側に「負債と純資産」、左側に「資産」が記載されており、右側と左側がイコールになるからこそ「バランスシート」と呼ばれます。

  • 借入金月商倍率 → バランスシート右側の借入金を月商で割るだけ
  • 自己資本比率 → バランスシート右側の純資産が何%を占めるかを見るだけ
  • どちらも左側の「資産」を全く見ていない

バランスシートを見る際に非常に大事なことは、「借入金(負債)に見合う資産がまずあるのか」という視点です。

ケース負債資産判断
問題なし100億円100億円負債に見合う資産がある
問題あり1億円5,000万円資産が負債を下回っている(債務超過)

つまり、借入金が多い・少ないが問題なのではなく、借入金に見合う資産があるかどうかが非常に重要な視点です。また、その資産が本当に記載されている金額どおりにちゃんと存在しているのか、その中身を検証することも大切です。資産は現金だけでなく、土地・建物・保険積立金・売掛金・在庫など様々なものに形を変えています。

📌 ポイント

純資産(資産と負債の差額)が大きいほど財務体質は強くなります。純資産が大きければ赤字に耐えられる余力が大きく、債務超過(負債が資産を上回る状態)に陥りにくくなります。

⚠️ 注意

多くの経営者がバランスシートの右側(借入金・自己資本比率)ばかりを見て、左側の資産分析をしていません。資産を見ない財務分析は片手落ちであり、誤った経営判断につながる危険があります。

💡 補足:動画では触れていませんが…

資産の「中身の検証」では、不良資産(回収不能な売掛金・売れない在庫・価値のない固定資産)を除いた「実態純資産」を把握することが実務上のポイントです。税務申告書上の純資産と実態純資産は乖離することがあります。

📝 このセクションのまとめ

  • 借入金月商倍率・自己資本比率はどちらもバランスシートの右側しか見ていない
  • 借入金の多寡ではなく「借入金に見合う資産があるか」が本質的な問い
  • 純資産が大きいほど赤字耐性が高く、債務超過になりにくい

「借金は悪だ」論に反論できますか?現預金とのセット論

「借金は悪だ」とおっしゃる方もいますし、そのようなイメージを植え付けられている経営者も多いかもしれません。しかし、「借りすぎだ」と指摘する方に「借りすぎの定義は何ですか?」と聞いて、明確に答えられる方は少ないのが実情です。

例えば、次のようなケースを考えてみましょう。

条件内容
借入金1億円
預金1億円
金利0.7%(年間70万円)
節税効果(法人税率約30%)▲21万円
実質の利息負担約49万円/年(月約4万円)

約4万円の利息支払いで1億円の現金を手元に持てている状態です。さらに利息は経費になりますので、法人税の節税効果(約3割)が働き、実質負担はさらに軽くなります。この状態のどこが「悪」なのか、明確に説明できる方はいないはずです。

📌 ポイント

「借金は悪だ」と言う方は決まってバランスシートの借入金しか見ていません。その借入金がどんな資産と見合っているかを見る習慣がないため、ただ「悪だ悪だ」と言い続けているだけです。借入金を見るときは必ず現預金・正常運転資金とセットで見る習慣をつけてください。

💡 補足:動画では触れていませんが…

手元に現金を厚く持つ「手元流動性」は、金融機関からの評価においても重要な指標です。月商の2〜3ヶ月分の現預金を確保しておくことが、財務安全性の目安とされています。

📝 このセクションのまとめ

  • 1億円の借入金+1億円の預金なら、実質の利息負担は月約4万円程度
  • 利息は経費計上でき、法人税の節税効果(約3割)も働く
  • 借入金を見るときは「現預金・正常運転資金」とセットで見ることが鉄則

正常運転資金とは何か?売掛金・在庫・買掛金の関係

現預金と同じくらい重要な資産が「正常運転資金」です。これは金融機関がよく使う言葉で、普段皆さんが使う「運転資金」とは少し異なります。

📌 正常運転資金の計算式

(売掛金 + 受取手形 + 棚卸資産)- 買掛金 = 正常運転資金

業種によって正常運転資金の大きさは大きく異なります。例えば飲食業の場合、売掛金はほぼなく(カード払いでも入金は早い)、在庫は日持ちしないためほとんど持たない一方で、買掛金が多くなります。そのため、正常運転資金がゼロまたはマイナスになる会社が多いです。

業種売掛金・在庫買掛金正常運転資金の傾向
製造業・卸売業多い多いプラスになりやすい
建設業多い(完成工事未収入金など)多いプラスになりやすい
飲食業少ない多いゼロまたはマイナス
小売業在庫多め・売掛少多い業態による

売掛金は翌月・翌々月には現金で入ってくるもの、つまり「現金みたいなものが今まだ現金になっていない状態」です。在庫も同様に、お客様に納品して売れたら売上が立ち、翌月には回収できるかもしれない、「現金化される一歩手前の資産」です。

ただし、不良売掛金(回収できないような売掛金)や不良在庫(その金額では売れない在庫)は除いて考える必要があります。不良資産を除いた上で、1億円の借金があるけれど1億円の売掛金・在庫もある、という状態は「現金を借りたお金で現金を持っている状態」と全く同じです。

💡 補足:動画では触れていませんが…

売掛金の回収サイト(入金までの日数)が長い業種ほど正常運転資金が膨らみます。回収サイトを短縮する交渉や、ファクタリングの活用も運転資金対策の選択肢です。

📝 このセクションのまとめ

  • 正常運転資金=(売掛金+受取手形+棚卸資産)-買掛金
  • 売掛金・在庫は「ほぼ現金」に近い資産として捉える
  • 不良売掛金・不良在庫は除いて正常運転資金を計算すること
  • 飲食業など業種によっては正常運転資金がゼロ・マイナスになるケースもある

「要償還債務」と「債務償還年数」で借りすぎを正確に判断する

借りすぎかどうかを正確に判断するには、「要償還債務(ようしょうかんさいむ)」という概念を使います。

📌 要償還債務の計算式

要償還債務 = 借入金(短期借入金+長期借入金+社債)- 現預金 - 正常運転資金

「手元の現金でも、売掛金・在庫というほぼ現金みたいな資産でも返せない借金」のことです。この借金だけが、将来稼ぐ利益で返さなければならない本当の意味での借金です。

預金と売掛金・在庫に見合っている借入金は、別にずっと借りっぱなしでも構いません。借りたお金がちゃんと現金にある、あるいは売掛金・在庫になっている、それは何の問題もないわけです。

この要償還債務を使って「債務償還年数」を計算します。

計算項目内容
①実態経常利益損益計算書の経常利益から、保険金解約金など一時的な利益を除き、役員退職金など一時的な損失を足し戻した利益
②税引後利益①×0.6(法人税等約40%を控除)
③キャッシュフロー(CF)②+減価償却費(お金の出ていかない費用)
④債務償還年数要償還債務 ÷ ③

減価償却費は損益計算書上では費用として計上されますが、実際にはお金が出ていきません。そのため、税引後利益に減価償却費を足すことで「現金ベースで年間いくら儲かったか」=キャッシュフローが算出できます。

この債務償還年数の目安は以下の通りです。

業種・状況目安となる債務償還年数
一般的な事業会社(製造業・サービス業等)10年以内
機械・車両などの設備投資(耐用年数5〜6年)5〜6年以内が理想
不動産賃貸業20年以内

⚠️ 注意

債務償還年数が10年を超えた場合、問題は「借金が多すぎること」ではありません。本当の問題は「投資した機械や車両が当初見込んでいたほどの利益を生んでいないこと」です。借金を減らそうとして預金を取り崩すと資金不足に陥る危険があります。まず収益改善策を考えることが先決です。

債務償還年数が10年を超えてしまったとき、「借金を減らせば債務償還年数が改善される」と考える経営者がいます。しかし、利益が変わらないまま借入金を減らそうとすると、手元の預金を取り崩すことになり、資金不足に陥る危険性があります。正しい対処法は、なぜ利益が見込み通り出ていないかを現状把握し、収益改善策を考えることです。

💡 補足:動画では触れていませんが…

金融機関(特にメガバンク・地銀)は融資審査において債務償還年数を重要指標として使います。一般的に10年以内が「正常先」の目安とされており、これを超えると「要注意先」に分類されるリスクがあります。自社の債務償還年数を把握しておくことは、銀行交渉においても非常に重要です。

📝 このセクションのまとめ

  • 要償還債務=借入金-現預金-正常運転資金
  • 債務償還年数=要償還債務 ÷(税引後利益+減価償却費)
  • 一般企業の目安は10年以内、不動産賃貸業は20年以内
  • 10年超の場合は借金を減らすのではなく、収益改善策を検討すること

インタレストカバレッジレシオ|利息の支払い能力を確認する

借りすぎかどうかを判断するもう一つの視点が、「インタレストカバレッジレシオ」です。これは借金を返せるかどうかではなく、借入金の利息支払い能力を測るための指標です。

📌 インタレストカバレッジレシオの計算式

インタレストカバレッジレシオ =(営業利益 + 受取利息・配当金)÷ 支払利息

中小企業では受取利息・配当金はほぼゼロのため、実質的に「営業利益 ÷ 支払利息」で計算します。

インタレストカバレッジレシオ状態判断
2倍以上営業利益が支払利息の2倍以上理想的な状態
1倍以上2倍未満営業利益で支払利息を賄えている最低限クリア
1倍未満営業利益で支払利息を賄えない経常赤字になる危険あり・借りすぎのサイン

損益計算書では、営業利益の下に営業外費用として支払利息が計上されます。この支払利息が営業利益を超えてしまうと(1倍未満)、経常利益が赤字になってしまいます。本業で稼いだ利益で利息を賄えていない状態は本末転倒ですので、これは借りすぎのサインです。

損益計算書を作成する際には、経常利益だけでなく営業利益と支払利息のバランスにも必ず注目してください。目安は最低1倍以上、できれば2倍以上です。

💡 補足:動画では触れていませんが…

インタレストカバレッジレシオは上場企業の財務分析でも広く使われる指標です。一般的に1倍を割り込むと「利払い困難」と見なされ、銀行の格付けにも影響します。試算表の段階から定期的にこの比率をチェックする習慣が、早期の財務改善につながります。

📝 このセクションのまとめ

  • インタレストカバレッジレシオ=(営業利益+受取利息)÷ 支払利息
  • 最低1倍以上、理想は2倍以上
  • 1倍を下回ると経常赤字になり、借りすぎのサインと判断できる
  • 経常利益だけでなく、営業利益と支払利息のバランスに注目すること

金利水準によって変わる「借入金月商倍率」の意味

以前から「借入金が年間売上高(年商)を超えてはいけない」とよく言われてきました。借入金月商倍率の考え方ですが、これは実は借金を返せるかどうかを測る指標ではなく、利息を負担できるかどうかの問題です。

金利水準によって、この指標の意味は大きく変わります。

金利水準借入金=年商の場合の利息負担必要な営業利益率判断
高金利時代(3〜5%)年商の3〜5%3〜5%以上必要借りすぎになりやすい
低金利時代(1%前後)年商の1%1%以上あれば賄える年商を超えても問題になりにくい

金利が3〜5%の時代には、借入金と年商が同じような金額になると、売上高の3〜5%以上の営業利益がなければ支払利息を賄えず、経常赤字になってしまうことがありました。だから「年商を超えないように」と言われていたわけです。

しかし昨今のように金利が1%前後またはそれを切る水準であれば、仮に借入金が年商を超えたとしても、年商の3%の営業利益があれば支払利息の3倍のインタレストカバレッジレシオになります。時代によって財務指標の捉え方は異なるのです。

⚠️ 注意

昨今の低金利環境に慣れすぎると、今後の金利上昇局面で一気に利息負担が増大するリスクがあります。変動金利で多額の借入れをしている場合は、金利上昇シナリオでのシミュレーションも行っておくことが重要です。

🔄 最新アップデート

2024年以降、日本銀行のマイナス金利政策解除により、国内の金利水準は緩やかな上昇局面に入っています。変動金利型の借入れを多く抱える企業は、インタレストカバレッジレシオの悪化リスクに注意が必要です。固定金利への借り換えや、金利上昇を踏まえた収益計画の見直しを検討してください。

📝 このセクションのまとめ

  • 「借入金が年商を超えてはいけない」は高金利時代の考え方
  • 低金利時代には借入金月商倍率にとらわれすぎず、債務償還年数とインタレストカバレッジレシオで判断する
  • ただし金利上昇局面では注意が必要

数字の見方を間違えると経営判断も間違える

経営者が数字に強くないと、借入金だけを見て目標利益を跳ね上げてしまい、社員を苦しめたり、自らも高いノルマを課して毎晩眠れないという状況に陥ることがあります。しかし本来は、要償還債務という「正味の借金」を利益で返せばいいだけです。

例えば、2億円の借入金があって毎年500万円の利益しか出ていない会社でも、1億5,000万円の現金があれば、要償還債務は5,000万円です。売掛金・在庫だってあるかもしれません。表面上の借入金だけを利益で割って「大変だ、倒産する」と慌てるのは早計です。

📌 正しい借入金の見方:3点セット

借入金を確認したら、必ず以下の3つをセットで確認する習慣をつけてください。

  1. 借入金(短期借入金+長期借入金+社債)
  2. 現預金(手元にいくらあるか)
  3. 正常運転資金(売掛金+在庫-買掛金)

この3つを見て、要償還債務を算出し、それを年間キャッシュフローで割った債務償還年数で借りすぎかどうかを判断する。これが正しいアプローチです。

この数字の見方ができないと、他の専門家の話を鵜呑みにしてしまうことで、会社が思わぬ悪い方向へ進んでしまうこともあります。正しい数字の理解は、経営者として身につけておくべき必須スキルです。

借入金に対する恐怖感がなくなれば、枕を高くして眠れますし、明日の経営に集中することも可能になります。余計なことを考えなくて済むようになるのです。

💡 補足:動画では触れていませんが…

税理士や顧問先が決算書を作成する際、役員退職金など一時的な損失が経常利益に混入していると、債務償還年数の計算が歪みます。実態を正確に反映した「正常収益力」の把握が、正しい財務判断の前提条件です。顧問税理士に一時的損益の内訳を必ず確認しましょう。

📝 このセクションのまとめ

  • 表面上の借入金だけを利益で割って一喜一憂するのは間違い
  • 借入金・現預金・正常運転資金の3点セットで見ることが鉄則
  • 要償還債務を年間キャッシュフローで割った債務償還年数が10年以内なら問題なし
  • 数字の正しい見方が、正しい経営判断と社員・経営者の安心につながる

📋 この記事を読んだら次にやること

  1. 直近の決算書(貸借対照表)を開き、借入金・現預金・売掛金・在庫・買掛金の金額を書き出す
  2. 要償還債務(借入金-現預金-正常運転資金)を計算し、実態の借金額を把握する
  3. 損益計算書から実態経常利益を算出し、減価償却費を足してキャッシュフローを計算する
  4. 要償還債務 ÷ キャッシュフローで債務償還年数を算出し、10年以内かどうかを確認する
  5. 営業利益 ÷ 支払利息でインタレストカバレッジレシオを計算し、2倍以上かどうかを確認する

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 中小企業の財務チャンネル の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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