相続・贈与

事業承継対策 銀行提案のスキームを専門家が徹底解説

事業承継対策 銀行提案のスキームを専門家が徹底解説
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銀行から事業承継対策を提案されたら、食わず嫌いせずに冷静に検討しましょう。ホールディングス設立スキームの仕組みや、退職金との組み合わせ活用法を専門家が解説します。

銀行が持ってくる事業承継スキームとは?

銀行の担当者から事業承継対策として提案されるスキームの中で、特にポピュラーなのがホールディングス(持株会社)を活用した株式売却スキームです。図で示すと以下のような構造になります。

📌 ポイント:スキームの全体像

後継者(お子様)が新会社(HD=ホールディングス)を設立し、その新会社が銀行から融資を受けて現オーナーの株式を買い取る仕組みです。縦並びの持株会社構造が出来上がります。

具体的な流れは次のとおりです。

  1. 後継者(お子様)が資本金100万円程度の新会社(HD)を設立する
  2. 新会社が銀行から株式売却金額相当の融資(例:1億円〜3億円)を受ける
  3. 新会社がその資金で現オーナーの持つ既存会社(A社)の株式を全て買い取る
  4. A社は新会社の子会社となり、後継者は新会社を通じてA社を間接保有する形になる
  5. 新会社はA社からの配当金を受け取りながら銀行借入を返済していく

💡 補足:動画では触れていませんが…

新会社がA社から受け取る配当金には、持株割合が100%の場合、受取配当等の益金不算入制度が適用されるため、ほぼ非課税で配当を受け取れます。これが借入返済の原資として非常に効果的に機能します。

📝 このセクションのまとめ

  • 銀行が提案するスキームは「子が新会社を設立→銀行融資で親の株を買い取る」という構造
  • 資本金100万円の新会社でも1億円超の融資が可能
  • A社からの配当金で借入を返済していく仕組み

株式売却スキームのメリット:オーナーの税負担が軽い

このスキームを使ったとき、現オーナー(社長)にとって最大のメリットは株式売却益への課税が分離課税で完結する点です。

項目内容
売却金額(例)1億円
取得費(例:出資額)1,000万円
課税対象の譲渡益9,000万円
税率20.315%(分離課税)
税額概算約1,828万円
役員報酬・家賃収入との合算なし(分離課税のため)

株式の譲渡所得は分離課税であるため、すでに受け取っている役員報酬や家賃収入がいくら高くても、それらと合算されて税率が上がることはありません。売却益に対して一律約20%の税率で課税が完結します。

💡 補足:動画では触れていませんが…

株式の取得費が不明な場合は、売却価額の5%を概算取得費として使うことができます。取得費が低いほど譲渡益が大きくなるため、株価算定と合わせて事前に確認しておくことが重要です。

📝 このセクションのまとめ

  • 株式売却益は分離課税(約20.315%)で完結し、他の所得と合算されない
  • 役員報酬が高くても税率が上がらないのが大きなメリット

従来の「退職金+贈与」スキームの問題点

銀行スキームとは別に、従来から多く使われてきた事業承継対策として「退職金で株価を引き下げ→相続時精算課税で贈与」という手法があります。

流れは以下のとおりです。

  1. A社から現オーナーに退職金をまとめて支払う
  2. 退職金支払いによってA社の内部留保が減少し、株価が下がる
  3. 引き下げ後の低い株価のうちに、相続時精算課税制度を使って後継者に贈与する

📌 相続時精算課税制度のポイント

  • 2,500万円までは無税の特別控除枠がある
  • 超える部分は一律20%の贈与税(通常の累進課税より有利)
  • 相続発生時は贈与時の価額(退職金支払い後の低い株価)で相続財産に加算できる
  • 相続後に株価が上昇しても、贈与時の低い金額で計算されるため相続税が抑えられる

ただし、この従来スキームには兄弟間の相続トラブルというリスクが潜んでいます。

⚠️ 注意:相続時精算課税を使った贈与の落とし穴

相続時精算課税を利用すると、相続税申告書にその贈与の事実と金額が記載されます。後継者に兄弟姉妹がいる場合、「お兄ちゃんだけずるい」という感情的なトラブルに発展するリスクがあります。後継者にとっては、税負担よりも家族間の軋轢の方が大きな問題になるケースもあります。

💡 補足:動画では触れていませんが…

2024年の税制改正により、相続時精算課税制度に年110万円の基礎控除が新設されました。この改正により、毎年110万円以内の贈与であれば相続財産への加算も不要となり、使い勝手が大幅に向上しています。

🔄 最新アップデート

2024年1月以降、相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除が追加されました。この基礎控除内の贈与は相続財産への持ち戻しが不要となり、従来より柔軟な活用が可能になっています。事業承継における株式の段階的移転にも活用できます。

📝 このセクションのまとめ

  • 退職金で株価を下げてから相続時精算課税で贈与する手法は広く使われてきた
  • 贈与の事実と金額が相続申告書に記載されるため、兄弟間トラブルのリスクがある
  • 2024年の改正で相続時精算課税に年110万円の基礎控除が追加された

「退職金+株式売却」の組み合わせで両方のメリットを取る

ここで注目したいのが、退職金と株式売却を組み合わせる手法です。食わず嫌いせずに銀行スキームを活用することで、オーナーの手取り額を変えずに後継者の相続トラブルリスクを大幅に下げられます。

比較項目従来:退職金+贈与新手法:退職金+株式売却
オーナーの手取り(例)退職金2億円退職金1億円+株売却1億円=合計2億円
後継者の取得方法贈与(もらう)購入(自分で買う)
贈与の事実の開示相続申告書に記載される記載されない
兄弟間トラブルリスク高い低い
後継者の借入負担なしあり(ただし会社の利益で返済)
後継者の連帯保証不要最近は不要になってきている

具体的な考え方として、「退職金で2億円もらう」という当初の目標を変えずに、退職金1億円+株式売却代金1億円に分ける方法があります。

  • オーナーの手取りは合計2億円で変わらない
  • 株式売却の1億円分は分離課税約20%で済む
  • 後継者は「ただでもらった」ではなく「自分で買った」と主張できる
  • 後継者が直接借金を返すわけではなく、A社の利益から配当として返済できる

📌 相続トラブル防止の活用例

オーナーが手元に残った2億円を活用して、兄弟姉妹への遺産分配を検討することもできます。例えば「遺言書で後継者に1億円の負担軽減を図る」「他の兄弟姉妹に現金で公平に分配する」など、柔軟な対応が可能になります。

💡 補足:動画では触れていませんが…

退職金の損金算入には「功績倍率法」による適正額の算定が必要です。過大な退職金は税務調査で否認されるリスクがあるため、在職年数・役職・最終報酬月額をもとに適正額を事前に試算しておくことが重要です。

📝 このセクションのまとめ

  • 退職金と株式売却を組み合わせることで、オーナーの手取りを変えずに後継者の立場を守れる
  • 後継者は「買った」事実があるため兄弟姉妹への説明がしやすい
  • 手元に残った現金を遺言等で兄弟姉妹に分配する柔軟な対応も可能

日本政策金融公庫「事業承継資金」を活用する

銀行からの提案では融資期間が10年程度と短めに設定されることが多く、返済負担が重くなりがちです。そこで注目したいのが日本政策金融公庫の事業承継資金です。

比較項目民間銀行日本政策金融公庫(事業承継資金)
融資期間10年前後最大20年
担保必要な場合あり無担保
保証人(後継者)以前は必要、最近は不要傾向保証なし
返済負担感比較的重い比較的軽い

日本政策金融公庫の事業承継資金を使うと、最大20年という長期返済が可能になります。返済期間が長くなれば毎月の返済額が下がり、A社からの配当金で無理なく返済を続けられます。

  • 融資期間:最大20年
  • 担保:無担保
  • 後継者の連帯保証:不要
  • 新会社(HD)名義での借入が可能

💡 補足:動画では触れていませんが…

日本政策金融公庫の事業承継資金は、中小企業経営承継円滑化法に基づく認定を受けることで、より有利な条件での融資が受けられる場合があります。認定支援機関(税理士・中小企業診断士等)と連携して申請を進めると審査がスムーズです。

📝 このセクションのまとめ

  • 日本政策金融公庫の事業承継資金は最大20年・無担保・保証なしで利用可能
  • 民間銀行より返済期間が長く、月々の返済負担を抑えられる
  • A社からの配当金を原資に長期間かけて返済できる

スキームは100社100通り:ケース別の最適解

事業承継対策に「すべての会社に当てはまる唯一の正解」はありません。100社あれば100通りの答えがあります。銀行スキームが向いているケースと、従来の贈与スキームが向いているケースをそれぞれ整理します。

ケース向いているスキーム理由
後継者が一人っ子退職金+贈与(相続時精算課税)兄弟間トラブルのリスクがなく、贈与の方がシンプル
後継者に兄弟姉妹がいる退職金+株式売却(銀行スキーム)「買った」事実で公平感を保てる
オーナーがまとまった現金を希望退職金+株式売却の組み合わせ手取り総額を変えずに分離課税メリットを享受
株価が高く贈与税が重い銀行スキーム(株式売却)売却益は分離課税20%で完結し贈与税より有利
後継者の借入負担を最小化したい退職金+贈与(相続時精算課税)後継者に借金が生じない

📌 「食わず嫌い」をやめることが大切

銀行からの提案に対して「銀行が持ってくる提案はまともなものを見たことがない」と最初から拒否してしまう経営者も多いです。しかし、このスキームは多くの会社で実際に使い勝手があります。まずは内容を理解した上で、自社の状況に合うかどうかを冷静に判断することが重要です。

💡 補足:動画では触れていませんが…

スキームを選ぶ際には、後継者の経営能力・会社への関与度も重要な判断軸です。まだ経営に慣れていない後継者に多額の借入責任を負わせることが精神的負担になる場合もあるため、承継のタイミングと合わせて検討しましょう。

📝 このセクションのまとめ

  • 事業承継の最適解は会社の状況・家族構成・オーナーの希望によって異なる
  • 後継者が一人っ子なら贈与スキーム、兄弟姉妹がいるなら売却スキームが向いていることが多い
  • 銀行スキームを食わず嫌いせず、まず内容を理解することが重要

銀行が事業承継を提案してくる本当の理由

銀行の担当者が事業承継スキームを持ってくる背景には、融資をしたいという思いだけでなく、複数の理由があります。

  • 株価の上昇が懸念される:業績が良い優良企業ほど株価が上がり、放置すると承継コストが膨らむ。業績悪化企業にはこの提案はしない
  • 相続トラブル(争族)のリスク:後継者間の争いが経営に支障をきたすことを銀行は懸念している
  • 経営承継の不安:次世代への経営移行がスムーズに進まないと、融資先としての信頼性が下がる
  • 将来の融資関係への影響:承継問題が未解決のまま放置されると、今後の融資審査に影響が出る可能性がある

📌 銀行からの提案はサインと受け取る

銀行が事業承継の提案を持ってきたということは、「御社は優良企業であり、今こそ承継を考えるべきタイミングだ」というサインです。2〜3年以内に一つの目処をつけることで銀行を安心させ、良好な融資関係を維持することにもつながります。

銀行から電話が来たタイミングを「そろそろ事業承継を考えるきっかけ」として受け取り、家族会議を開いたり、税理士などの専門家に相談したりする機会にすることが大切です。

💡 補足:動画では触れていませんが…

事業承継は早めに着手するほど選択肢が広がります。株価が低い時期・業績が安定している時期に動き始めることで、税負担を抑えながら円滑な承継が実現しやすくなります。「まだ早い」と先送りにしていると、株価上昇・健康問題・税制改正などで選択肢が狭まるリスクがあります。

📝 このセクションのまとめ

  • 銀行が事業承継を提案するのは「優良企業だからこそ早めに動くべき」というサイン
  • 相続トラブルや承継の失敗は銀行との関係にも影響する
  • 銀行からの提案を「家族会議・専門家相談」のきっかけにすることが大切

📋 この記事を読んだら次にやること

  1. 自社の株価(非上場株式の評価額)を税理士に試算してもらい、現状の承継コストを把握する
  2. 後継者候補・兄弟姉妹の状況を整理し、家族会議で承継の方向性を話し合う
  3. 事業承継に詳しい税理士または認定支援機関に相談し、退職金額・株価・スキームの組み合わせを検討する
  4. 日本政策金融公庫の事業承継資金の条件を確認し、民間銀行との条件比較を行う
  5. 承継完了までの2〜3年のロードマップを作成し、銀行・税理士と共有する

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 中小企業の財務チャンネル の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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