相続・贈与

新事業承継税制で自社株の相続税・贈与税をゼロにする方法を税理士が解説

新事業承継税制で自社株の相続税・贈与税をゼロにする方法を税理士が解説
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自社株の相続税・贈与税が重すぎて払えない?新事業承継税制なら税金をゼロにできる可能性があります。

そもそも事業承継とは?自社株が相続税の悩みになる理由

事業承継とは、後継者に会社のバトンタッチをすることです。主にお子さんや親族であることが多いですが、社内で働いてくれている第三者に引き継ぐケースもあります。そのためには、中長期の経営計画の作成、後継者の育成計画、そして自社株対策が必要になります。

自社株対策は相続税の計算とも深く絡んでくる部分です。相続税の計算では、個人の財産目録を作成し、現金・株式・不動産などのプラスの財産から借金などの負債を引いた「純財産」に対して課税されます。この純財産が大きければ大きいほど、相続税の負担も大きくなります。

📌 ポイント

会社を経営するオーナー社長にとって、自社が上場していなくても自社株は立派な相続財産です。ずっと黒字決算を続けて純資産がたくさん溜まっている会社では、株の評価が非常に高くなり、相続税の負担も非常に大きくなります。しかも上場企業の株と違って簡単に換金できないため、相続税の支払い原資に充てることもできないという問題があります。

📝 このセクションのまとめ

  • 事業承継には「自社株対策」が不可欠
  • 非上場の自社株も相続財産として評価される
  • 黒字経営が続くほど株の評価額が上がり、相続税負担が増大する
  • 自社株は換金しにくいため、相続税の支払いが困難になりやすい

新事業承継税制(特例措置)とは何か?制度の基本的な仕組み

新事業承継税制とは、会社を引き継いだ後継者が事業の継続などの様々な要件を満たすことを条件に、本来かかるはずの相続税や贈与税を全額猶予(一時保留)してもらえる制度です。正式名称は「非上場株式等の贈与税・相続税の納税猶予・免除の特例」といいます。

新事業承継税制には「一般措置」と「特例措置」がありますが、今回は特例措置に焦点を当てて解説します。

項目内容
制度の効果相続税・贈与税を全額猶予→次世代へのバトンタッチ完了で免除
特例承継計画の提出期限2024年3月31日までに都道府県へ提出
贈与等の実施期限2027年12月31日までに贈与等を実施
バトンタッチの方法贈与または相続のみ(株の売却・M&Aは不可)
後継者の親族要件親族以外でもOK
3代目の確定まだ未確定でもOK
渡す株数所有株数の3分の2以上

仕組みをわかりやすく説明すると、創業者(祖父)から子供・孫と3代続く会社をイメージしてください。先代経営者から後継者へ自社株を贈与または相続で渡す際、通常は贈与税や相続税が発生します。しかし要件を満たしていれば、この税金がまず猶予(一時保留)されます。そして次の世代へバトンタッチが完了して初めて免除になるという流れです。

⚠️ 注意

特例承継計画を提出してバトンタッチしても、すぐに税金が免除になるわけではありません。あくまでも「猶予」です。次の世代へのバトンタッチが完了して初めて免除されます。また、猶予される税額に見合った担保の提供も必要です。

具体的な手続きの流れは以下のとおりです。

  1. 中小企業が特例承継計画を都道府県に提出し、確認を受ける
  2. 株式の承継(贈与または相続)を行う
  3. 都道府県知事の認定を受ける
  4. 特例承継計画認定書の写しとともに、税務署へ贈与税または相続税の申告を行う

📝 このセクションのまとめ

  • 新事業承継税制(特例措置)は相続税・贈与税を全額猶予→免除できる制度
  • 特例承継計画の提出期限は2024年3月31日
  • 贈与等の実施期限は2027年12月31日
  • 猶予は「一時保留」であり、次世代への承継完了で初めて免除になる

4つの厳しい要件①〜② 先代経営者・後継者の条件

新事業承継税制は要件が非常に厳しく、対応している税理士事務所も非常に少ないのが現状です。要件は大きく4つに分かれます。まず先代経営者と後継者の要件から見ていきましょう。

【先代経営者の要件】

  • 過去に会社の代表取締役を経験したことがある
  • 贈与または相続直前に会社の筆頭株主(株を最も多く持っていた)であること
  • 贈与後において代表取締役ではないこと(代表を降りること)

過去に代表取締役になった経験があれば、贈与の直前で代表を降りていてもOKです。また、代表取締役・社長から取締役会長や相談役になることは「代表を降りる」ことを意味するのでOKです。ただし、代表取締役会長のように「代表権」を持ったままの場合はアウトになりますのでご注意ください。

【後継者の要件】

要件内容
年齢18歳以上であること
役職(贈与の場合)贈与を受ける時点で代表取締役になっていること
株式保有(贈与・相続共通)贈与または相続を受けることで筆頭株主になること
役員歴(贈与の場合)贈与を受ける前に3年間継続してその会社の役員であること
役員歴(相続の場合)相続発生時に役員であること
代表就任(相続の場合)相続発生から5ヶ月以内に代表取締役に就任すること

⚠️ 注意

先に株式だけを後継者に移してから、後で代表権を移すのはアウトです。この順番には細心の注意が必要です。また、相続は緊急に発生するものなので、相続発生時に後継者が役員になっていないと手遅れになる場合があります。だからこそ、事業承継の計画を早めに練っておくことが重要です。とりあえずの後継者候補を先に登記しておくのも有効な対策です。

📝 このセクションのまとめ

  • 先代経営者は贈与後に代表権を手放す必要がある(「代表取締役会長」はNG)
  • 後継者は18歳以上で、贈与前に3年間役員歴が必要
  • 相続の場合は発生から5ヶ月以内に代表就任が必要
  • 株式移転と代表権移転の順番を間違えるとアウト

4つの厳しい要件③ 会社の条件(中小企業者の定義)

次に会社そのものの要件を見ていきましょう。以下のいずれかに該当する会社は、この制度を利用できません。

  • 上場会社(この制度はあくまでも中小企業向けの特例)
  • 中小企業者に該当しない会社
  • 風俗営業の会社
  • 資産管理会社(一定の例外あり)

「中小企業者」の定義は以下のとおりです。下記のいずれかを満たしていれば中小企業として該当します。

判定基準内容
資本金による基準業種によって異なるが、概ね5,000万円以下〜1億円以下
従業員数による基準業種によって50人・100人・300人以下(社会保険加入者数でカウント)

なお、「資産管理会社」とは、有価証券・自らが使用していない不動産・現金預金などの特定資産の割合が総資産の70%以上を占める会社などが該当します。不動産賃貸だけを行っている相続対策用の会社などはアウトです。

📌 ポイント:資産管理会社の例外規定

以下の3つを全て満たす場合は「事業実態のある会社」として制度を利用できます。

  • 血縁関係のない従業員が5人以上いること
  • 事務所・店舗・工場などがあること
  • 3年以上事業を継続していること

📝 このセクションのまとめ

  • 上場会社・風俗営業・資産管理会社は対象外
  • 中小企業者の判定は資本金または従業員数による
  • 資産管理会社でも事業実態があれば例外的に利用可能
  • 従業員数は社会保険加入者数でカウントする

4つの厳しい要件④ バトンタッチ後5年間守るべきルールと免除の条件

これが最も厳しいと言われる要件です。バトンタッチ後の5年間、後継者は以下のルールを守り続けなければなりません。

ルール内容
①代表者であり続けること後継者が会社の代表者を退任するとアウト
②株式を保有し続けること納税猶予対象の株式を売却・譲渡するとアウト
③雇用の8割を維持すること承継時の従業員数の80%以上を維持(ただし大幅に緩和済み)

①の「代表者であり続けること」については、身体障害者手帳1・2級や精神障害者福祉手帳の交付を受けているなど、代表を続けられない特別な理由がある場合は例外として認められます。

③の「雇用の8割維持」については、以前はこの要件の厳しさがこの制度の普及を妨げていると言われていました。例えば10人の会社で8人を解雇して7人体制になった時点でアウトになるため、「何が起こるか分からない経営環境の中でそれは無理」という社長が非常に多かったのです。

📌 ポイント:雇用8割維持要件の大幅緩和

税制改正により、雇用の8割維持の判定が5年間の平均で行われるようになりました。さらに、経営状況の悪化など正当な理由があれば、要件を満たせなくても打ち切りにならない措置が設けられました。事実上、この雇用8割維持要件は撤廃されたと考えてもよいレベルに緩和されています。

最後に、猶予から完全免除にするための要件についてです。後継者が次の世代へさらに事業承継(相続または贈与)でバトンタッチすることで、初めて納税が免除されます。この「次の後継者」はまだ未確定でもOKです。

⚠️ 注意

会社を廃業したり、M&Aで売却したりすると、次世代へのバトンタッチができないため完全な税の免除にはなりません。廃業を検討している場合は、5年間の猶予期間経過後に廃業するかどうかも重要な判断ポイントになります。

📝 このセクションのまとめ

  • バトンタッチ後5年間は代表者であり続け、株式を保有し続けることが必要
  • 雇用8割維持要件は税制改正で事実上撤廃レベルに緩和された
  • 完全免除には次世代へのバトンタッチ(相続または贈与)が必要
  • 廃業・M&Aでは免除にならない

新事業承継税制のデメリット①〜② 利子税の発生とM&Aへの影響

新事業承継税制には様々なデメリットもあります。まず大きなデメリットの一つが、途中で諦めると利子税が発生することです。

事業の継続が困難になって廃業するとなると、猶予されていた贈与税や相続税を支払うことになります。それだけでなく、利子税(利息)も加算されます。ただし、現在の利率は年0.7%で計算されます。また、5年経過後はその5年分の利子税は完全に免除されます。

📌 ポイント

利率が年0.7%と低いため、途中で猶予できなくなったからといって大幅に税額が増えるわけではありません。むしろ、納税するタイミングを遅らせることができる点を考えると、可能性が少しでもあるなら申請しておくことをおすすめします。自社株の評価額が高ければ高いほど、最終的に免除してもらえる可能性を残しておくことは大きなメリットになります。

次に、M&Aができなくなるという点についてです。正確には「M&Aができなくなる」のではなく、M&Aをすると納税猶予がなくなるということです。M&Aで会社を売却すれば、その資金で相続税や贈与税を支払うことができる可能性が出てきます。

📝 このセクションのまとめ

  • 途中で諦めると猶予税額+利子税(年0.7%)の支払いが発生する
  • 5年経過後は5年分の利子税が免除される
  • M&Aは可能だが、実施すると納税猶予が打ち切られる
  • 自社株の評価額が高いほど申請のメリットは大きい

新事業承継税制のデメリット③〜④ 届出の手間と対応専門家の少なさ

新事業承継税制の大きなデメリットの一つが、毎年の届出書の作成と提出が非常に面倒なことです。この制度を自社だけで対応しているケースは見たことがなく、通常は税理士に依頼する形になります。

期間届出の頻度提出先
最初の5年間毎年継続の届出書を提出都道府県・税務署
5年経過後3年に1度の届出税務署

⚠️ 注意

5年経過後は3年に1度の届出になりますが、これが非常に危険です。毎年の届出なら忘れにくいですが、3年に1度となるとしっかり管理しておかないと失念する可能性が高くなります。届出を忘れると即座に猶予が打ち切りとなり、一切の救済措置はありません。

もう一つのデメリットが、対応可能な専門家が少なく、コストが高いことです。どの税理士事務所でも対応できるわけではなく、事業承継税制に対応している事務所となるとさらに数は絞られます。肌感覚では、対応可能な事務所は全体の1〜2割程度ではないかと感じています。

また、この税制を適用するとなると、自社株の評価額や削減額にもよりますが、100万〜200万円、あるいはそれ以上のコストがかかるのが一般的です。

📝 このセクションのまとめ

  • 最初の5年間は毎年、5年経過後は3年に1度の届出が必要
  • 届出を1日でも遅れると猶予が打ち切りになる(救済措置なし)
  • 対応できる税理士事務所は全体の1〜2割程度
  • 専門家費用は100万〜200万円以上が一般的

猶予打ち切りになる様々な事由(5年以内・5年経過後)

新事業承継税制を使うと、様々な打ち切り事由によって自由が大きく制限されます。これが「ガチガチに縛られる」と言われる理由です。

【納税猶予開始後5年間の打ち切り事由】

  • 後継者が代表者でなくなった(例外:身体障害者手帳1・2級、精神障害者福祉手帳の交付を受けている場合など)
  • 平均従業員数が承継時の80%を下回った(経営環境悪化などの正当な理由があり、都道府県に報告すれば回避可能)
  • 後継者と同族関係者の議決権が総議決権数の50%以下になった
  • 後継者以外の親族などが後継者より多くの株を保有するようになった
  • 納税猶予の対象になっている株式を一部でも売却した
  • 組織変更や会社の解散をした
  • 資産管理会社になった
  • 売上(収入金額)が0円になった
  • 資本金や準備金の額を減少させた(減資)
  • 納税猶予をやめるという届出を提出した
  • 上場会社になった
  • 風俗営業会社になった
  • 都道府県・税務署への毎年の届出書を1日でも遅れて提出した

⚠️ 注意:株式会社の「みなし解散」に注意

株式会社では役員の変更登記をせずに12年間放置すると、強制的に「登記上解散したとみなされる」制度があります。当然、この場合も納税猶予が打ち切りになります。登記の更新を忘れないよう注意してください。

【5年経過後の打ち切り事由】

5年を経過すると、いくつかの制限が緩和されます。例えば後継者が代表者を退任することや、筆頭株主でなくなることはOKになります。ただし以下の事由は引き続き打ち切り対象です。

  • 納税猶予対象株式の一部を譲渡・売却(この場合は全額打ち切りではなく、譲渡した株に対応する税額分のみ打ち切り)
  • 資産管理会社に該当することになった(ただし6ヶ月以内に資産管理会社以外に戻ればOK)
  • 本業の収入が0円になった(利息や配当のみの収入もNG)
  • 税務署への届出を怠った(3年に1度の届出)
  • 減資をした

📌 ポイント

5年を経過すると要件が徐々に緩和されますが、それでも完全に次の後継者へバトンタッチしなければ納税免除には至りません。5年経過はあくまで「少し自由になる」だけで、最終的な免除には次世代への承継完了が必要です。

📝 このセクションのまとめ

  • 5年間は代表退任・株式売却・解散など多数の打ち切り事由がある
  • 5年経過後は一部の要件が緩和されるが、完全免除には次世代への承継が必要
  • 株式会社のみなし解散(12年間登記放置)にも注意が必要
  • 5年経過後の株式一部譲渡は全額ではなく対応する税額分のみ打ち切り

新事業承継税制を使うべきか?判断のポイント

納税が免除になるという画期的な制度である新事業承継税制ですが、誰もが使うべきとは限りません。まずは自社株の評価額と相続税の試算を行い、税額がどれくらいになるかを確認することが重要です。

状況判断の目安
相続税が普通に払える税額コストと時間をかけてまで申請する必要はないかもしれない
自社株の評価額が数億〜数十億円規模ガチガチに縛られるデメリットはあるが、検討する価値が大いにある
歴史が長く企業規模が大きい非上場会社自社株の評価で悩むことが多く、特に有効な制度

一度この事業承継税制を選択するとガチガチに縛られることになりますが、必要性があれば検討するメリットは十分にあります。自社株の評価額が高ければ高いほど、最終的に免除してもらえる可能性を残しておくことは大きな価値を持ちます。

📌 まとめ:新事業承継税制を検討すべき会社の特徴

  • 非上場で歴史が長く、純資産が多い会社
  • 自社株の評価額が数億円以上になる会社
  • 後継者候補がいて、長期的な事業継続の意思がある会社
  • 気まぐれではなく、計画的に事業承継を進められる会社

📝 このセクションのまとめ

  • まず自社株の評価額と相続税の試算を行うことが最初のステップ
  • 税額が普通に払える範囲なら、コストをかけてまで申請する必要はない
  • 自社株評価が高額な非上場会社ほど検討価値が高い
  • この制度は計画的に進めることが不可欠。気まぐれでできる制度ではない

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!

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