相続・贈与

新事業承継税制の特例措置を税理士が徹底解説【期限延長・デメリットも】

新事業承継税制の特例措置を税理士が徹底解説【期限延長・デメリットも】
e_zeirishi

令和6年税制改正で期限延長が決まった新事業承継税制の全ポイントを解説します。

事業承継税制とはどんな制度か

今回のテーマは「延長決定!新事業承継税制のポイント」です。中小企業の社長さんにとって大変重要度の高い特例になっていますので、ぜひ最後まで読んでいただければと思います。

YouTubeのリクエストとして、「令和6年税制改正で事業承継税制の期限が2年延長されたと聞きました。制度そのものが理解できていないので、わかりやすく解説してほしいです」というご相談をいただきました。今回はこの事業承継税制がそもそもどんな制度なのかという解説と、令和6年に2年間の延長が決まった点についても詳しく解説していきます。

事業承継税制とは、後継者が会社の事業を継続させることを条件に、相続税や贈与税の納税を猶予する制度です。さらに将来的に、後継者が次の後継者に承継させることができた場合には、猶予されている納税が免除になります。

イラストでイメージすると、現経営者がいて後継者がいます。本来であれば、会社の事業承継のバトンタッチは会社の株式を後継者に渡していくことになります。この渡し方には大きく3種類あります。贈与という方法、自分が亡くなって株式を承継させていく相続、そして譲渡(売買)です。今回見ていく事業承継税制の対象となるのは、この中の贈与と相続の2つです。

贈与なり相続で株式を渡すと、本来であれば多額の税金がかかります。相続税だったり贈与税だったりするわけですが、この事業承継税制を使った場合は、ここにかかってくる税金を一旦猶予します。つまり払わなくて良い状態になるのです。ただしこれはあくまで猶予であって、免除されたわけではありません。

この事業承継税制を使ってバトンタッチを受けた後継者さんが、さらに次の後継者にバトンタッチできた場合、これまで猶予されていた税金が免除になります。つまり事業承継税制とは、本来株式のバトンタッチをした時にかかるはずだった贈与税なり相続税を、次の後継者にもバトンタッチができるのであれば免除してあげましょうという制度です。

この制度は「新事業承継税制」と呼ばれる特例措置であり、2027年12月31日までの贈与または相続に適用することが可能です。これは期間限定の特例措置になっています。

税金免除までに必要な4つの条件

事業承継税制を使って最終的に相続税なり贈与税を免除していくためには、以下の4つの条件をクリアする必要があります。

1つ目:会社が満たすべき条件
2つ目:経営者が満たすべき条件
3つ目:5年間満たすべき条件
4つ目:最後に満たすべき条件

それでは1つずつ解説していきます。

会社が満たすべき条件

まず、この事業承継税制はどういった会社に使えるのかという点です。第1に中小企業者であることという条件があります。中小企業者とは、業種ごとに定められた要件を満たしている会社のことを言います。

例えば製造業その他の場合には、資本金3億円以下または従業員300人以下であれば中小企業者に該当します。ここでのポイントは、資本金基準と従業員数の基準という2つがありますが、これは「または」の関係なので、いずれか1つを満たしていれば中小企業者に該当します。

この表を見ながら業種を当てはめていただくと良いのですが、見方のポイントとして、資本金が5,000万円以下の会社であればどの業種であっても中小企業者に該当します。最も低いハードルが5,000万円ですので、言い換えると資本金5,000万円以下であればどの会社も中小企業者に該当します。また、今現在資本金が超えていたとしても、資本金を減らす「減資」をすれば中小企業者に該当することが可能です。

その他の条件としては、上場会社や風俗営業会社でないこと、総収入金額(売上高)が0円を超えていること、常時使用従業員数が1人以上であることなどの要件があります。

さらに重要なのが、資産保有型会社等に該当しないことという条件です。これは何かというと、個人事業で不動産賃貸業をやるよりも株式会社を作ってそこで不動産賃貸業をした方が税金のメリットが取れるため、そういった会社を作ることが結構あります。しかし、こういった会社にまで事業承継税制は使わせないということで、国が制限しています。資産保有型会社に該当すると事業承継税制は使えません。

ただし、この資産保有型会社に該当するかどうかの前に「事業実態基準」というものがあります。事業実態のある会社という認定が取れれば、資産保有型会社には該当しないことになります。事業実態があるとされるための3要件は以下の通りです。

① 常時使用従業員が5人以上いること
② 事務所・店舗・工場などを所有または賃借していること
③ 3年以上商品販売等をしていること

この3つの条件を全て満たすと、事業実態のある会社という認定を受けることができます。従業員がいて、実際に働く場所(オフィス)があって、そのオフィスは自己所有でも賃貸でも構いません。そして実際にビジネスを3年以上継続して行っていれば、会社が満たすべき条件を満たすことになります。

経営者が満たすべき条件

続いて経営者が満たすべき条件です。これは先代経営者が満たすべき条件と後継者が満たすべき条件に分かれます。

先代経営者が満たすべき条件

・過去に会社の代表取締役を経験し、贈与直前にはすでに退任していること
・代表取締役在任期間中のいずれかの時と贈与直前に筆頭株主であったこと

先代経営者が筆頭株主であることが条件になります。実務上はここでつまずいてしまうケースが非常に多いです。

後継者が満たすべき条件

・贈与前3年以上役員であり、贈与直前までに代表取締役になること
・贈与を受けて筆頭株主になること

後継者さんは、この贈与を受ける前に3年以上役員を務めていただくことが条件です。今現在役員ではない後継者に株式を贈与しても、この特例は使えません。事業承継税制を使いたい方はまず後継者を役員にしていただく必要があり、3年経過してから贈与をしていただく必要がありますので、スケジュール感が大切になります。そして贈与を受けて筆頭株主になることが要件です。

なお、先代経営者の親族でなくてもOKです。血の繋がりのない方に対してもこの制度は使うことが可能です。ただし、あくまで株式の贈与に使うことができますので、株式の売却では使えません。血の繋がりのない従業員に株式を贈与することに抵抗を感じる方も多いので、その点についてはいろんな工夫が求められることになります。

相続で事業承継税制を使う場合の後継者の要件

事業承継税制は贈与か相続で使うことができます。先代経営者が亡くなって後継者が株の相続を受ける際に事業承継税制を使う場合は、相続開始の直前に役員であり、相続開始後5か月以内に代表取締役になることという要件があります。贈与の時と違って3年以上役員をしなければいけないというルールはありませんが、相続の直前までに役員になっていることが要件になります。そういった意味でも後継者を早めに役員にしていくことは非常に大事です。また、相続を受けて筆頭株主になることも要件です。

ここまで見てきた会社が満たすべき条件と経営者が満たすべき条件の2つを満たしていれば、まず事業承継税制をスタートさせることが可能です。

事業承継税制の流れと特例承継計画の期限延長

事業承継税制を使いたいと思った方は、まず最初に特例承継計画の策定・確認申請という手続きが必要になります。冒頭で申し上げた「期限が2年間延長された」というのが実はここです。

特例承継計画の確認申請という手続きは、本来2024年3月31日までが期限でしたが、ここで2年間の延長が決まり、2026年3月31日までにこの計画を提出すれば良いことに変わりました。

この特例承継計画はあくまで計画ですので、今後このように事業承継を進めていきたいという未来の予測のようなものを出していきます。必ずしもその通りにやらなくてはいけないというものではなく、変更も利きます。ただし、この計画書を出していないと事業承継税制が使えなくなってしまいますので、早め早めに出しておきましょう。

この計画を出したら、続いて事業承継として贈与なり相続を2027年12月31日までに行っていただきます。その後、都道府県に対して認定申請を行い、認定が取れたら税務署に対して贈与税の申告なり相続税の申告をしていただきます。

5年間満たすべき条件と取消し事由

事業承継税制はあくまで後継者が事業を継続させるのであれば株式にかかる税金を猶予・免除しますという特例ですので、5年間はしっかり守っていただく必要があります

以下の内容に該当してしまうと事業承継税制は途中で取り消されてしまいます。5年間は絶対にやってはいけないことです。数は多いですが、特に押さえるべきポイントを紹介します。

①後継者が代表取締役を退任した
事業承継税制を使うのであれば、5年間は後継者は代表取締役を続けていただくことになります。代表取締役を降りると事業承継税制は途中で取り消され、税金を払わなければいけなくなります。

②特例対象株式を譲渡等した
株式の贈与なり相続を受けて事業承継税制を使ったら、そこから5年間は一株たりとも手放してはいけません。誰かに贈与したり売却したりすると、一株でも納税猶予は打ち切られて税金を払わなければいけなくなります。

③年次報告書や継続届出書の未提出、または虚偽の報告等
事業承継税制を使った場合、そこから5年間の間、毎年「継続届出書」というものを提出しなければなりません。これを忘れると取り消しになってしまいますので注意が必要です。

また合わせて押さえていただきたいのが、雇用平均8割維持要件を満たせない場合に実績報告を行わなかった場合です。事業承継税制を使った場合、本来は事業承継税制を使った時から従業員の雇用を8割守らなければいけないというルールがありました。例えば従業員が100人いる会社であれば、従業員が80人未満(79人)になってしまうと事業承継税制が途中で取り消されてしまうことが過去にありました。

10人の会社だったら7人になっただけで取り消しになってしまいますので、非常にハードルが高く、多くの企業が事業承継税制を踏みとどまってしまう理由でした。しかし税制改正がありまして、現在は8割を切ってしまったとしても実績報告を行えば事業承継税制は継続してもらえることになっています。実質的にこの雇用の8割基準は撤廃されていますので、中小企業のオーナーさんはこの点についてはご安心ください。

これらの取消し事由に該当してしまった場合はどうなるのかというと、税金を払わなければいけません。そしてここに対して利息もつけて払わなくてはいけません。

この話をすると「利息をつけて税金を払わなくちゃいけないなら怖くてできない」とおっしゃる方が非常に多いのですが、実はそうとも言い切れません。なぜかというと、利息は年利0.4%、しかも5年経過後なら5年分は無利息だからです。2024年現在、年利0.4%の利息しかかかりません。しかも払うべき税金は本来払うはずだった税額から増えることはありません。利息はかかってしまうものの、0.4%というのはある意味銀行から借りるよりも利息が低いかもしれませんので、ここを極端にデメリットとして怖がる必要はないと思います。

さらに、事業承継税制を使って5年経った後にやはり税金を納税しなければいけない事態に陥ってしまった時は、5年間分の利息は無利息にしてくれます。そういった意味でも、事業承継税制に利息はかかってしまうものの、そこについてはあまり大きなデメリットではないと思います。

最後に満たすべき条件と税金免除の仕組み

5年間しっかり守ったとしても、その後すぐ税金免除になるわけではありません。最後に満たすべき条件というものがあります。

今見てきているのは、現経営者から後継者に株式の贈与なり相続をする時に本来相続税なり贈与税がかかるところを、事業承継税制を使って納税が一旦猶予されている状態です。この猶予されている税金を免除するためには、この後継者が次の後継者に株式のバトンタッチをして、もう一度事業承継税制を使ってバトンタッチをしていただく必要があります

この話をすると「代々続く呪いみたいですね」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、事業承継税制を一度使った場合は基本的には代々事業承継税制を使い続けてバトンタッチをしていただくことで税金が免除になっていくという形です。

猶予税額が免除される事由は以下の通りです。

① 後継者自身が死亡した場合(税金は免除になります)
② 経営承継期間5年以内においてやむを得ない理由により会社の代表権を有しなくなった後に事業承継税制の贈与を行った場合
③ 5年経過後に事業承継税制の贈与を行った場合
④ 5年経過後に会社について破産手続開始などの決定があった場合
⑤ 5年経過後に事業継続が困難な事由が生じたため会社を譲渡・解散した場合

②のやむを得ない理由としては、精神障害者保健福祉手帳(障害等級1級に限る)の交付を受けたこと、身体障害者手帳(障害の程度が1級または2級に限る)の交付を受けたこと、要介護認定(要介護5に限る)を受けたことなどが挙げられます。

ここまで事業承継税制の概要をお話ししてきましたが、この内容をお伝えすると、中小企業のオーナーさんの大体半分くらいの方は「この条件だったらうちの会社では何とかできそうなのでチャレンジしてみたい」とおっしゃいます。一方で「次の次の後継者のことなんて今分かるはずがないじゃないか、こんな制度は使いたくない」とおっしゃる方も大体半分くらいいらっしゃいます。

ただ、次の次の後継者というのは今の時点で決めていただく必要は全くありません。あくまで今の経営者さんから次の後継者さんへのバトンタッチが決まっていれば事業承継税制をスタートさせることができますので、ぜひ積極的にご検討いただければと思います。

M&Aはできなくなるのか?デメリットの真実

事業承継税制のデメリットとしてよく言われるのが、「事業承継税制を使うとM&Aができなくなる」というものです。これは大変多くの方から聞くご相談です。

先ほど紹介した通り、事業承継税制を使うと株式の贈与を受けてこれを一株でも売却してしまうと事業承継税制は途中で取り消されて税金を払わなくてはいけなくなります。そのため実質的にM&Aができなくなってしまうのではないかというお話です。

確かに事業承継税制を受けて取得した株式を売却したら税金は払わなくてはいけません。ただそもそも事業承継税制というのは、株式の贈与・相続を受けた人は税金はかかってしまうものの、キャッシュを相続したわけではないので納税が大変ですよね、ということでこういった特例制度が設けられています。M&Aで会社の売却をしてキャッシュを手にしているのであれば、そこから税金はちゃんと払えますよね、ということです。

ただ、これがデメリットなのかというと実はそうではありません。M&Aをした時、例えば会社の業績が悪くなってしまって今後の先行きが見通せないからM&Aをする、といったような場合については、税金の一部を免除してくれるという制度があります

例えば、事業承継税制を使った時の株式の評価額が2億円で、納税猶予されている金額は1億円だったとします。そこから時が経ち25年後に会社をM&Aしたところ、1.2億円でしか売却できなかったとします。当時は2億円あったわけですが、そういった場合は猶予されている税金1億円を全額払わなくてはいけないのかというとそうではなく、この1.2億円という売却する時の価格でもう一度株式の評価額を再計算することが認められています。結果として税額は6,000万円払わなくてはいけない、つまり4,000万円分は免除してあげるというこんな制度があります。

逆パターンとして、事業承継税制を使った時よりも株式の評価額がぐんと高くなっていた場合、税金も高くなってしまうのかというとそういうわけではありません。高くなる分については事業承継税制を始めた時の税額だけ払えば良いこととされていますので、ある意味いいとこ取りをすることができます。

つまり、M&Aができなくなるわけでは決してありません。法律的に禁止されるわけでもありませんのでM&Aは法律的にもできますし、場合によっては税金のメリットも受けることができます。将来M&Aしようかなと思っている中小企業の社長さんにとっても、事業承継税制は有効な手法だと思います。

税理士の本音とワンポイントアドバイス

実は事業承継税制についてはあまり積極的ではない税理士が多いのが、この業界の一つの風潮としてあると感じます。「事業承継税制はデメリットもたくさんあるから使わない方がいいですよ」という税理士が結構多いのですが、これは本音としては「途中で取消し事由に該当したら私が訴えられるかもしれない、そんなリスクは負いたくない」という気持ちが結構あるかと思います。

ただ、先ほど申し上げた通り、事業承継税制はしっかりポイントさえ押さえていれば取消し事由はそんなに恐れる必要もありません。そして何よりも、猶予されて免除される金額が大きくなればこの制度を使わない手はありません。

ワンポイントアドバイスとして、まずは事業承継税制でどれだけの税効果があるのか試算してみましょう。使う使わないはさておき、この事業承継税制を使ったら一体どれくらいの税金が猶予されて、将来的に免除される可能性があるのかといったことをまずは計算してみることをお勧めします。

正直そんなに大きな金額が変わらないという方については、事業承継税制はなんだかんだで手続きが色々あるというデメリットもありますので、そこまで使う必要もないかもしれません。しかし、猶予されて免除される金額が1億円を超えてくる会社さんは結構ざらにあります。そういった会社さんについてはこの特例制度を使わないのはもったいないので、ぜひまずは金額から見ていただくことをお勧めします。

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 円満相続ちゃんねる の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
本サイトは 円満相続ちゃんねるを応援しています!

     

東京エリア

千代田・中央・港区から副都心各区まで、東京の優良税理士法人ランキング

関西エリア

大阪・京都・兵庫・岡山など関西圏の信頼できる税理士法人ランキング

関東エリア

首都圏の神奈川・埼玉・千葉・北関東で実績のある税理士法人ランキング

中部エリア

製造業の集積地、中部・北陸圏で企業支援に強い税理士法人ランキング

九州・沖縄

九州・沖縄地域で地域密着型サービスに定評のある税理士法人ランキング

その他地域

北海道・東北・中国・四国地方の地域に根ざした税理士法人ランキング

記事URLをコピーしました
税理士紹介はこちら
税理士紹介はこちら