出張手当で無税で会社から社長へお金を移転する方法を税理士が解説
出張手当制度を活用すれば、法人・個人の双方で節税でき、年100万円超の非課税移転も可能です。
出張手当とは何か
出張手当とは、会社が出張旅費規定というルールを作成し、これに基づいて出張手当を支給する制度です。法人・個人ともに節税効果があり、なおかつ経費精算の処理も実費精算よりも楽になるという側面もあります。ただし、適正な金額での支給であることが必要です。
個人事業主は残念ながら利用できず、法人のみが使える制度です。従業員がいなくても使えますので、一人社長や小規模な会社の方がむしろ使いやすく、節税効果も高いと言えます。
📌 ポイント
出張手当制度は法人専用の節税手段です。一人社長や小規模法人でも導入でき、従業員がいない会社でも活用できます。
実際にどのくらいの企業が導入しているのか、2019年のデータを見てみましょう。
| 出張の種別 | 導入企業の割合 |
|---|---|
| 日帰り出張 | 8割以上 |
| 宿泊を伴う出張 | 9割以上 |
このように、かなりの企業がすでに導入している制度です。まだ導入していない会社は、ぜひ検討する価値があります。
📝 このセクションのまとめ
- 出張手当は出張旅費規定に基づいて支給する制度
- 法人のみ利用可能(個人事業主は不可)
- 宿泊を伴う出張がある会社の9割以上が導入済み
- 一人社長・小規模法人でも活用できる
出張手当の3つのメリット
出張手当を導入することで得られるメリットは、大きく次の3つに分けられます。
- 法人の節税(法人税・消費税)
- 役員・従業員(個人)の節税(所得税・住民税・社会保険料)
- 経費精算の簡略化
それぞれ詳しく見ていきましょう。
メリット①:法人の節税(法人税・消費税)
出張旅費規定に基づいて出張手当を支払うと、出張手当の全額が損金、つまり会社の経費になります。これによって課税所得を減らし、結果的に法人税の節税につながります。
さらに、出張手当は消費税における課税仕入れにも該当します。消費税の計算のイメージは次の通りです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 課税売上 | 物やサービスをお客様に売って受け取った消費税の総額 |
| 課税仕入れ | 仕入れや経費で支払った消費税の総額 |
| 納税額 | 課税売上 − 課税仕入れ = 差額を納付 |
出張手当は、会社にとって交通費・宿泊費・食事代といった物やサービスを外部から購入する必要とみなされるため、課税仕入れに当たります。そのため、出張手当を支給するとそこに含まれる消費税分だけ消費税の節税にもなります。
📌 ポイント
出張手当は法人税と消費税の両方を節税できます。法人税の損金算入に加え、消費税の課税仕入れとしても処理できる点が大きなメリットです。
📝 このセクションのまとめ
- 出張手当の全額が損金(会社の経費)になり、法人税が減る
- 出張手当は課税仕入れに該当し、消費税も節税できる
メリット②:役員・従業員(個人)の節税
受け取る側である役員や従業員が会社から出張手当をもらっても、妥当な金額で支給されているのであれば所得税・住民税がかかりません。
例えば、社長が宿泊を伴う出張に行った際に日当と宿泊費を合わせて2万円支給し、実際の出費が1万円であれば、差額の1万円は非課税の臨時収入のようなものになります。この差額分を会社に返す必要はなく、社会通念上妥当な支給額であれば全額受け取ることができます。
業種によっては出張が年間に多くある場合もあり、そうなると年間100万円程度を非課税で移転できるケースも出てきます。
さらに重要なのが社会保険料の扱いです。出張手当の支給額には社会保険料もかかりません。これまで出張手当を規定せず、業務手当などの形で給料に上乗せして支給していた場合は、出張旅費規定を整備して出張手当に切り替えることで、その分を非課税で受け取れるうえ、社会保険料の負担も軽減され、手残りを増やすことができます。
| 比較項目 | 給与として支給 | 出張手当として支給 |
|---|---|---|
| 所得税・住民税 | 課税される | 非課税 |
| 社会保険料 | 課税される | 非課税 |
| 会社の経費 | 損金算入できる | 損金算入できる |
📌 ポイント
出張手当は所得税・住民税・社会保険料がいずれも非課税です。給与として支給するよりも手残りが大幅に増えます。業種によっては年間100万円超を非課税で受け取れるケースもあります。
📝 このセクションのまとめ
- 妥当な金額の出張手当には所得税・住民税がかからない
- 社会保険料の対象にもならない
- 実費との差額分が実質的な非課税収入になる
- 業務手当として給与に上乗せしていた分を出張手当に切り替えると節税効果が高い
メリット③:経費精算の簡略化
出張手当は主に日当・宿泊費・交通費に分かれます。大部分を定額で支給するように規定すると、精算処理を簡単かつスピーディーに行うことができます。
- 日当・宿泊費:社会通念上妥当な金額を規定していれば定額支給が可能
- 交通費:基本的には実費精算の会社が多いが、飛行機や新幹線に限っては正規運賃で支給するようにルール付けすることも可能
定額支給にすることで、毎回の領収書確認や金額計算の手間が省け、経理業務の効率化にもつながります。
📝 このセクションのまとめ
- 日当・宿泊費は定額支給にすることで精算処理が大幅に簡略化できる
- 新幹線・飛行機は正規運賃での支給とルール付けすることも可能
出張旅費規定の作り方:5つの重要ポイント
出張手当を導入するには、まず出張旅費規定という社内ルールを作成する必要があります。規定の内容は会社によってある程度自由に決めることができます。インターネットで検索すると雛形がダウンロードできますので、参考にしながら自社に合わせて作成することが可能です。作成した出張旅費規定は株主総会で承認を得る必要があります。
規定を作る際に落としてはいけない重要ポイントは以下の5つです。
- 目的
- 定義
- 適用範囲
- 支給額
- 手続き方法
それぞれ詳しく説明します。
① 目的
文字通り、規定の目的として「役員または従業員が業務のために出張する場合の旅費に関する規定である」ということを明確に記載します。
② 定義
そもそも「出張とは何か」を定義します。一般的には移動距離が100キロを超える場合や、宿泊が必要な場合などと記載します。
③ 適用範囲
原則として役員を含む全従業員を対象とします。
⚠️ 注意
社長やそのご家族だけに支払うような規定は、税務署に経費として認められません。むしろ役員への報酬とみなされる可能性があります。必ず役員を含む全従業員を対象とした規定にしてください。
④ 支給額
日当・宿泊費・交通費などの支給額を決めます。出張手当は原則として全社員を対象としますが、役職によって金額に差をつけることは可能です。例えば次のような形で規定できます。
| 役職 | 新幹線移動 | 日当(日帰り) | 日当(宿泊) |
|---|---|---|---|
| 社長・役員 | グリーン車利用可 | 高め設定 | さらに高め設定 |
| 従業員 | 普通車利用 | 標準設定 | やや高め設定 |
現状、社長一人だけの会社や従業員を雇っていない会社の場合でも、役職ごとに分けて規定しておくことをおすすめします。また、日当については日帰り出張と宿泊出張に分けて定めることがポイントです。宿泊出張の方が食事など余計にかかるため、きちんと分けておくほうが適切です。
⑤ 手続き方法
出張の申請フロー、支給の方法(経費精算にするのか定額支給にするのか)、出張後に出張報告書と旅費精算書を提出して精算することなどを定めておく必要があります。
📌 ポイント
規定の作成が苦手な経営者の方は、税理士に依頼して作成してもらうのも一つの手です。苦手なことはプロに任せて、自分が得意な営業やマーケティングに力を入れた方が、結果的にコストパフォーマンスが良いケースも多いです。
📝 このセクションのまとめ
- 出張旅費規定は雛形を参考に自社向けに作成できる
- 作成後は株主総会での承認が必要
- 目的・定義・適用範囲・支給額・手続き方法の5点を必ず盛り込む
- 適用範囲は役員を含む全従業員とすること(社長・家族限定はNG)
- 日当は日帰りと宿泊で分けて規定する
導入時の3つの注意点
出張手当制度には多くのメリットがありますが、実際に導入・運用する際には次の3点に注意が必要です。
- 個人カードで決済すること
- 二重精算に注意すること
- 記録を必ず残すこと
① 個人カードで決済すること
出張手当の支払いは個人カードで決済することが重要です。出張手当とは、出張のために個人が支払った経費について、後から企業が出張旅費規定に従って定額支給するものです。そのため、法人払いにしてしまうと定額支給ができなくなります。必ず個人払いにしてください。
⚠️ 注意
法人カードで出張費を決済してしまうと、出張手当の定額支給ができなくなります。出張に関する費用は必ず個人払い(個人カード)で行ってください。
② 二重精算に注意すること
実務上でよくあるミスが二重精算です。例えば、宿泊費を定額支給しているのに、さらにホテルの領収書があるからといって経費精算させてしまうと二重精算になります。
税務調査が入った際に二重精算が発覚して否認されると、その否認された金額は経費として認められず税金に跳ね返ります。役員の場合は役員賞与として扱われ、所得税・住民税が増加するだけでなく、消費税を納める会社では消費税が増え、さらに社会保険料の負担も増える可能性があります。
⚠️ 注意
定額支給した宿泊費と、ホテルの領収書による実費精算を同時に行う二重精算はNGです。税務調査で否認されると、法人税・所得税・消費税・社会保険料と複数の税負担が一気に増加します。領収書の整理と精算ルールの徹底が重要です。
③ 記録を必ず残すこと
出張手当は有効な節税手段である一方、頻繁な出張がある場合は税務調査でもよく調べられます。出張報告書と旅費精算書を残しておくことが重要で、領収書等も必ず保管してください。
毎回支給する日当の金額が違ったりすると、「利益調整に使ったのでは」と疑われることもあります。また、例えば「競艇(地方都市)に出張した記録があるのに、同じ日の同じ時間に東京の飲食店のレシートがある」といった矛盾があると、税務調査で問題になります。客観的に納得できる証拠を残しておくことが大切です。
税務調査で出張手当が争点になるケースとして最も多いのは、手当の金額が高額な場合と、エビデンス(証拠)が不十分な場合です。旅費規定に従って支給しているという記録を残すことが、最も重要なポイントです。
📝 このセクションのまとめ
- 出張費は必ず個人払い(個人カード)で行う。法人カードはNG
- 定額支給と実費精算の二重精算は厳禁
- 出張報告書・旅費精算書・領収書は必ず保管する
- 支給額は規定通りに一貫して支給し、恣意的な変更をしない
- 出張の事実と日時が客観的に証明できる記録を残す
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 社長の資産防衛チャンネル の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 社長の資産防衛チャンネルを応援しています!
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