キャリアアップ助成金が80万円に増額!社労士が解説する正社員化支援の全手順

キャリアアップ助成金が80万円に増額!社労士が解説する正社員化支援の全手順
e_zeirishi

有期雇用労働者を正社員化するだけで最大80万円もらえるキャリアアップ助成金。以前の57万円から増額された今、中小企業経営者が絶対に知っておくべき助成金の全貌を社会保険労務士が徹底解説します。

キャリアアップ助成金とは何か?その趣旨と背景

国の方針として、労働者の賃金アップは非常に重要な課題とされています。その解決策の一つとして、全国に2,000万人以上いると言われる非正規雇用労働者の待遇改善が挙げられています。

年々最低賃金が上がるなど、国としてさまざまな対策が取られていますが、非正規雇用労働者の待遇改善に真面目に取り組む企業にとっては、どうしても経済的な負担が生じます。特に人も資金も限られた中小企業にとっては大きな課題です。

こうした企業努力を国が補助しましょう、というのがキャリアアップ助成金の趣旨です。具体的には、以下の非正規雇用労働者の社員化や処遇改善の取り組みを実施した事業主に対して助成されます。

  • 有期雇用労働者
  • 短時間労働者
  • 派遣労働者

📌 ポイント

補助金は「物(設備投資など)」に対するもので経済産業省が管轄。助成金は「人」に対するもので厚生労働省が管轄。キャリアアップ助成金は雇用関係の助成金であり、労働法令を遵守しているホワイト企業でないと支給されないという特徴があります。

📝 このセクションのまとめ

  • キャリアアップ助成金は非正規雇用労働者の待遇改善に取り組む企業を国が補助する制度
  • 厚生労働省が管轄する「人に対する」助成金
  • 労働法令を守っていないブラック企業には支給されない

キャリアアップ助成金の2つの種類

キャリアアップ助成金には大きく2つの種類があります。

種類内容
①正社員化支援有期雇用労働者等を給料3%以上アップさせて正社員化する際にもらえる助成金
②処遇改善支援賃金規定の改定・共通化、賞与・退職金制度の導入、社会保険適用時の処遇改善などに取り組む企業への助成金

今回は特にメジャーで再現性が高いとされる①正社員化支援を中心に解説していきます。

📝 このセクションのまとめ

  • キャリアアップ助成金は「正社員化支援」と「処遇改善支援」の2種類
  • 中小企業経営者に特に関係が深いのは正社員化支援コース

正社員化コースの支給額と加算額の詳細

正社員化支援の「社員化コース」は、6ヶ月以上有期雇用として雇っている方を、給料を3%以上アップさせて正社員化することで申請できる助成金です。

申請は1期と2期に分かれており、合計で80万円受け取ることができます(以前は57万円でしたが増額されました)。

申請時期支給額
1期目40万円
2期目(1期から6ヶ月後)40万円
合計80万円

なお、無期雇用労働者(長年の契約更新により5年以上経過し無期雇用を選択した元契約社員)を正社員化する場合は、支給額が40万円となります。無期雇用は期限がなくなっただけで、中身は以前と同じ契約という方が対象です。

さらに、基本の支給額に上乗せされる加算額も用意されています。

加算の種類加算額
派遣社員を直接雇用(正社員)に切り替えた場合28万5,000円
母子家庭・父子家庭の方を正社員化した場合4万7,500円
人材開発支援助成金(企業内で教育訓練を実施した場合)9万5,000円 または 4万7,500円
正社員転換制度を初めて導入した企業(初回のみ)20万円
多様な正社員制度(短時間正社員など)を就業規則に規定した場合(初回のみ)40万円

📌 ポイント

障害者社員化コースも存在します。有期雇用の障害者を正規雇用に転換した場合、障害の種類・程度によって金額が異なりますが、最大120万円の支給が受けられます。障害者雇用に取り組んでいる企業はぜひ検討してください。

📝 このセクションのまとめ

  • 正社員化コースは1人あたり最大80万円(1期40万円+2期40万円)
  • 派遣社員の直接雇用切り替えや初回導入加算など、さらに上乗せできる加算額がある
  • 障害者社員化コースは最大120万円

処遇改善支援の4つのコース

もう一つの柱である処遇改善支援には、以下の4つのコースがあります。

コース名内容支給額の目安
①賃金規定等改定コース有期雇用労働者の賃金規定を作成し、基本給を3%以上増額改定した場合1人につき5万〜6万5,000円
②賃金規定等共通化コース賃金テーブルを設けて正社員と非正規社員の2区分以上で格差をなくす制度を新たに導入・運用した場合1事業所あたり1回60万円
③賞与・退職金制度導入コース全ての有期雇用労働者を対象に賞与または退職金の規定を導入した場合(両方導入で加算あり)1事業所あたり1回40万円(両方で加算あり
④社会保険適用時処遇改善コース2024年10月から社会保険適用が拡大された際、本人負担分を企業が補填する制度を導入した場合1人につき最大50万円(メニューにより異なる)

③の賞与・退職金制度導入コースは、賞与も退職金も両方の制度設計ができた場合にさらに加算があります。ただし、個人的にはハードルが高く、よほど余裕のある企業でないとなかなか難しいと感じます。

④の社会保険適用時処遇改善コースは、いわゆる「年収の壁」問題に対応するために設けられた比較的新しいコースです。従業員数51人以上の会社では、2024年10月から社会保険の適用範囲が拡大されており、今まで加入不要だった方に自己負担が生じることになります。その負担を企業が補填する制度を導入した場合に助成されます。

📝 このセクションのまとめ

  • 処遇改善支援には賃金改定・共通化・賞与退職金制度・社会保険適用の4コースがある
  • 賃金規定等共通化コースは1事業所60万円、社会保険適用時処遇改善コースは1人最大50万円
  • 賞与・退職金制度導入コースはハードルが高く、余裕のある企業向け

要注意!助成金がもらえないケース(事業主編)

キャリアアップ助成金は、一定の要件をクリアしなければ支給されません。ここからが本題です。まず、事業主側で対象外となるケースを確認しましょう。

  • 正社員化前後で給料が3%以上増額されていない事業主(2.9%などは切り上げ不可)
  • 雇用契約書・タイムカード・賃金台帳などが不完全な事業主(申請時の添付書類が揃わない場合は弾かれる)
  • 各種手当等が就業規則に記載されていない事業主(昔作った就業規則をほったらかしにして、新たな手当が増えているのに就業規則を更新していないケースは要注意)
  • 未払い賃金(サービス残業など)がある事業主
  • 正社員登用前後6ヶ月以内に会社都合で解雇した社員がいる事業主(対象者本人でなくても対象外になる)

⚠️ 注意

正社員登用の前後各6ヶ月間に、対象者以外の社員であっても会社都合で1人でも解雇した場合、その対象者への助成金は受けられません。自己都合による退職は問題ありませんが、会社都合解雇には十分ご注意ください。

中小企業で見ていると、就業規則をネットのテンプレートで作って古いまま放置しているケースが多く見られます。就業規則は非常に重要な書類ですので、定期的に見直すことを強くお勧めします。

📝 このセクションのまとめ

  • 給料3%未満アップ・書類不備・就業規則未更新・未払い賃金がある事業主は対象外
  • 正社員転換の前後6ヶ月以内に会社都合解雇があると対象外になる
  • 就業規則は定期的に見直し、手当等の変更を必ず反映させること

要注意!助成金がもらえないケース(労働者編)

次に、労働者側で対象外となるケースを確認します。

  • 非正規雇用の期間が6ヶ月未満の方
  • 最初から正社員になることを約束されていた方
  • 関連会社・子会社に所属している方(いきなり正社員化してもNG)
  • 外注(業務委託)として仕事を発注していた方(そのまま正社員化してもNG)
  • 役員の三親等以内の親族(同族会社で夫婦が役員の場合、その子どもは対象外)
  • 申請日までに退職してしまった方(申請後の退職は要件を満たせば問題なし)
  • 学生アルバイトとしての期間(非正規雇用の期間にカウントされない)
  • 外国人技能実習生(技能実習制度自体が帰国後に技術を活用するための制度のため対象外)

📌 キャリアアップ助成金における「正社員」の定義

キャリアアップ助成金では、正社員の定義が明確に定められています。以下の両方を満たす必要があります。

  • 賞与または退職金の制度に該当していること(どちらか一方でも可)
  • 昇給が適用されていること(「昇給する場合がある」という規定でも可)

この定義を満たさない「正社員」への転換では、助成金を受け取ることができません。

⚠️ 試用期間に関する注意

アルバイトから正社員になった後に試用期間(例:6ヶ月)を設けている場合、その試用期間は正社員としての期間にカウントされません。試用期間の扱いには十分注意してください。

⚠️ みなし固定残業制度に関する注意

みなし固定残業制度を導入している会社では要注意です。総額では給料が3%以上アップしていても、固定残業代部分はキャリアアップ助成金の計算に含まれません。基本給ベースで時間単価を計算すると、アルバイト時代より単価が下がっているケースがあり、その場合は対象外となります。

📝 このセクションのまとめ

  • 非正規期間6ヶ月未満・最初から正社員約束・親族・技能実習生などは対象外
  • 「正社員」には賞与または退職金制度+昇給の両方が必要
  • みなし固定残業制度の会社は基本給ベースで時間単価を必ず確認すること
  • 学生アルバイト期間・試用期間は非正規雇用期間にカウントされない

申請から給付までの流れ(長期戦を覚悟しよう)

「半年と3%の要件を満たせばすぐ40万もらえる」と思われがちですが、実際にはかなりの長期戦になります。申請から給付までの流れを順番に確認しましょう。

  1. キャリアアップ計画書の作成・提出
    管轄のハローワーク・助成金センターに提出し、承認を得る。A4用紙3枚程度のもので電子申請も可能。承認後に「計画番号」が付与される(申請書への添付が必要なので大切に保管すること)。
  2. 就業規則の整備
    計画書の承認後、正社員化のルールを就業規則に定める。計画書提出時点で就業規則が完全に整備されている必要はなく、計画書提出後に整えていけばOK。
  3. 有期雇用で6ヶ月以上雇用
    就業規則のルールに基づいて、実際に対象者を有期雇用で6ヶ月以上雇用する。
  4. 正社員化(給料3%以上アップ)
    6ヶ月以上経過後、給料を3%以上アップさせて正社員化する。
  5. 経過観察期間(6ヶ月)
    正社員化後、さらに6ヶ月間の経過観察期間がある。この時点でトータル1年以上が経過。
  6. 1期目の申請(40万円)
    経過観察期間終了後、初回の40万円を申請できる。
  7. さらに6ヶ月経過後、2期目の申請(40万円)
    1期目申請からさらに6ヶ月後に残りの40万円を申請できる。正社員化から合計1年半かかる。

📌 ポイント:80万円を全額受け取るまでの期間

有期雇用開始から計算すると、最短でも約2年半かかります。正社員化から数えても1年半は必要です。「すぐもらえる」というイメージは持たず、長期計画で取り組みましょう。

📝 このセクションのまとめ

  • 計画書提出→就業規則整備→6ヶ月雇用→正社員化→6ヶ月経過→1期申請→さらに6ヶ月→2期申請の流れ
  • 80万円全額受け取りまで正社員化から1年半かかる
  • キャリアアップ計画書はA4・3枚程度で電子申請も可能。計画番号は必ず保管する

よくある落とし穴と申請時の注意点

実際に申請を進める際によくある落とし穴をまとめます。

  • 計画書をなくしてしまった:キャリアアップ助成金は昔からある助成金のため、4〜5年前に計画書を提出してそのままにしているケースがある。コピーでも構わないので、計画書はPDF化して電子保存しておくことを推奨。
  • 計画期間が終了している:計画書は通常3〜5年の範囲で計画期間を設定する。初期に取り組んだ方は計画期間がすでに終了している場合があるので、更新が必要。
  • 正社員化した方が社会保険に未加入:正社員は社会保険の強制加入対象。未加入の場合は申請できない。
  • 時間単価がアルバイト時代より下がっている:みなし固定残業制度を導入している会社に多い。総額では3%アップでも、基本給ベースの時間単価が下がっている場合は対象外。
  • 学生アルバイト期間を非正規雇用期間に含めてしまっている:飲食業などで「卒業したら正社員にする」というパターンに多い。学生アルバイト期間はカウント対象外。
  • 外国人技能実習生を対象にしようとしている:技能実習制度は帰国後に技術を活用するための制度のため、完全に対象外。建築業・製造業でよく見られるケース。

⚠️ 最重要注意事項

助成金をもらうことが目的になって、事実関係を歪めて申請しようとするのは絶対にNGです。大事な考え方は「良い会社を作るために人の採用・教育をしていく、その流れの中でついでに助成金を取りに行く」というスタンスです。無理やり事実を曲げて申請することは絶対に避けてください。

📝 このセクションのまとめ

  • 計画書の紛失・計画期間終了・社会保険未加入・時間単価の低下・学生期間のカウントミス・技能実習生の誤認など落とし穴が多い
  • 計画書はPDF化して電子保存しておくと安心
  • 事実関係を歪めた申請は絶対にNG。助成金はあくまで「おまけ」というスタンスで

専門家への相談について

キャリアアップ助成金の申請書類自体は、頑張れば自社でも作成できます。しかし、申請書類を作る以前の段階、特に就業規則の整備雇用実態の確認などは、専門家のサポートが重要です。

社会保険労務士への依頼について、単発での受付は基本的に難しいとされています。その理由は、会社の実態をよく知らないと適切な対応ができないためです。事実関係を正確に把握せずに申請すると、申請が通らなかったり、不正申請につながるリスクがあります。

また、給与計算だけを依頼するのではなく、就業規則周りや労務関係のリスクを整備するための労務顧問という形での契約が、これからの時代にますます重要性を増していきます。人の採用がますます難しくなる中で、労働環境の整備は経営の根幹に関わる問題です。ホワイトな企業であれば、ぜひキャリアアップ助成金を積極的に活用していただきたいと思います。

📌 キャリアアップ助成金(正社員化コース)の全体まとめ

  • 中小企業の場合、有期雇用労働者を正規雇用にすれば1人あたり最大80万円受け取れる
  • 条件は「6ヶ月以上の有期雇用」「正社員化時に給料3%以上アップ」「就業規則の整備」など
  • 80万円全額受け取りまで正社員化から1年半かかる長期戦
  • ブラック企業・書類不備・対象外労働者への適用などは受給不可
  • 「助成金をもらうために正社員化する」ではなく「良い会社を作る流れの中でもらう」というスタンスが重要

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!

関連記事

106万円の壁が撤廃へ!週20時間で社会保険強制加入の新ルールを税理士が解説
     

東京エリア

千代田・中央・港区から副都心各区まで、東京の優良税理士法人ランキング

関西エリア

大阪・京都・兵庫・岡山など関西圏の信頼できる税理士法人ランキング

関東エリア

首都圏の神奈川・埼玉・千葉・北関東で実績のある税理士法人ランキング

中部エリア

製造業の集積地、中部・北陸圏で企業支援に強い税理士法人ランキング

九州・沖縄

九州・沖縄地域で地域密着型サービスに定評のある税理士法人ランキング

その他地域

北海道・東北・中国・四国地方の地域に根ざした税理士法人ランキング

記事URLをコピーしました
税理士紹介はこちら
税理士紹介はこちら