中退共より企業型DCが断然お得?退職金制度を税理士が徹底比較
中退共は本当にお得?企業型DCとの違いを6テーマで徹底比較し、最適な退職金制度を解説します。
退職金制度を持つ企業はどれくらいある?
節税対策の「出口」としてよく活用されるのが退職金制度です。厚生労働省の調査によると、退職一時金制度がある企業の割合は全体の約73%にのぼります。
中小企業の場合、退職金の積み立てに「中退共(中小企業退職金共済)」を活用している会社が多く見られます。一方で、「企業型DC(確定拠出年金)」と比較すると、中退共にはいくつかのデメリットがあります。今回は中退共と企業型DC、さらに近年注目されている「はぐくみ基金」の3つを詳しく解説します。
📌 ポイント
退職金制度は単なる福利厚生ではなく、法人から個人へ資産を税務上有利に移す「節税の出口」として機能します。どの制度を選ぶかで、会社・社長双方の手取りが大きく変わります。
📝 このセクションのまとめ
- 退職一時金制度がある企業は全体の約73%
- 中小企業では中退共を使っているケースが多い
- 中退共と企業型DCを比較すると、中退共にはデメリットが多い
中退共と企業型DCの基本的な仕組み
まず、それぞれの制度の概要を整理しておきましょう。
| 項目 | 中退共 | 企業型DC |
|---|---|---|
| 対象企業 | 従業員300人以下の中小企業 | 従業員1名の企業から大企業まで |
| 掛金負担者 | 全額事業主負担 | 会社が積み立て(従業員の自己拠出も可) |
| 運用者 | 国が運用(固定) | 従業員が自分で運用 |
| 税務上の扱い | 掛金は給与扱いせず全額損金計上 | 掛金は給与扱いせず全額損金計上 |
| 社会保険料 | 掛金分は社会保険料対象外 | 掛金分は社会保険料対象外 |
税金面では両制度とも非課税で法人から個人に資産を移せる退職金制度という点は共通しています。では、税金以外の面ではどう違うのでしょうか。以下では6つのテーマで比較します。
📝 このセクションのまとめ
- 中退共は中小企業(従業員300人以下)限定の制度
- 企業型DCは規模を問わず加入できる
- どちらも掛金は損金計上・社会保険料対象外という共通点がある
6テーマ徹底比較:中退共 vs 企業型DC
第1ラウンド:掛金の上限
| 制度 | 掛金の範囲 | 年間上限 |
|---|---|---|
| 中退共 | 月5,000円〜3万円(16種類) | 約36万円 |
| 企業型DC | 月3,000円以上・1,000円刻みで5万5,000円まで | 最大66万円 |
社長が企業型DCに満額月5万5,000円で加入した場合、年間最大66万円を全額非課税で個人資産に移すことができます。掛金の上限額は企業型DCが倍近く大きく、この点は明確に企業型DCが優位です。
第1ラウンドの勝者:企業型DC
第2ラウンド:助成金制度
中退共には国の助成制度があります。具体的には以下の2種類です。
- 新規加入助成:新たに中退共に加入した事業主に対し、掛金月額の1/2(従業員ごとに上限5,000円)を加入後4ヶ月目から1年間助成
- 増額助成:掛金月額が1万8,000円以下の従業員の掛金を増額する事業主に、増額分の1/3を増額後1年間助成
⚠️ 注意
月2万円以上の掛金からの増額は助成の対象外となります。企業型DCには助成制度がありません。
第2ラウンドの勝者:中退共
第3ラウンド:早期退職者への返還義務
中退共では、早期退職者への返還義務を設定することができません。中途採用した人材が入社してすぐ辞めた場合でも、在籍期間の長短にかかわらず、中退共から従業員の口座に直接振り込まれます。つまり、積み立てたお金は会社に戻ってこないのです。
一方、企業型DCでは、3年以内の早期退職者に対して在職中に積み立てた掛金を返還してもらうことを、制度の規約で定めることが可能です。本当に資産を渡したい大切な社員にのみ退職金を渡せる仕組みにアレンジできるため、特にベンチャー企業など離職率が高い環境では大きなメリットになります。
第3ラウンドの勝者:企業型DC
第4ラウンド:企業ごとの制度設計
中退共は「企業から従業員への退職金」という設計に固定されており、一定額を積み立てていくことしかできません。
一方、企業型DCは以下のような柔軟な制度設計が可能です。
- 選択制:加入者が給与の一部を掛金にするか、給与として受け取るかを選べる
- マッチング拠出:事業主掛金とは別に、加入者自身が掛金を上乗せ拠出できる
この高度な制度設計により、加入者の希望に添えるだけでなく、企業側も社会保険料の負担を軽減できるメリットがあります。
第4ラウンドの勝者:企業型DC
第5ラウンド:役員の加入可否
| 制度 | 役員の加入 |
|---|---|
| 中退共 | 加入不可 |
| 企業型DC | 従業員と同じ条件で加入可能 |
企業型DCでは役員も従業員と同じ条件で加入でき、月5万5,000円までの掛金が全額損金計上・給与所得の計算対象外となります。役員報酬とは別に将来の資金を確実に確保したい経営者や、会社で上げた利益をできるだけお得に個人に移したい経営者にとって、非常に有利な制度です。
第5ラウンドの勝者:企業型DC
第6ラウンド:退職金の受取額(運用利回り)
中退共の退職金は「基本退職金」と「付加退職金」の合計で決まります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 基本退職金の利率 | 予定運用利回り1%固定(掛金月額と納付月数で決定) |
| 付加退職金の利率 | 年度ごとに変化。令和3年度はわずか0.012% |
| 0%の年 | あり(その年は全く増えない) |
⚠️ 注意
中退共の付加退職金利率は令和3年度でわずか0.012%。銀行の金利水準と同程度で、実質的にほとんど増えません。インフレが進む現在、長期間資金を拘束されながらほとんど増えないのは大きなリスクです。
一方、企業型DCでは会社が積み立てた掛金を加入者が自分で運用します。掛金が同じでも、積み立て投資の効果によってより多くの退職金を受け取れる可能性が高くなります。また、運用中の利益にかかる税金も非課税のため、通常の投資信託を使って運用するよりも効率よく資産運用が可能です。
第6ラウンドの勝者:企業型DC
📌 総合結果:5対1で企業型DCの勝利
6つのテーマ中、企業型DCが5勝・中退共が1勝(助成金制度のみ)という結果になりました。特に最近の働き方(終身雇用ではない雇用形態・インフレへの対応)を考えると、企業型DCの方が現代に適した制度と言えます。
📝 このセクションのまとめ
- 掛金上限・早期退職対応・制度設計・役員加入・運用利回りの5テーマで企業型DCが優位
- 中退共が勝るのは助成金制度のみ
- 中退共の付加退職金利率は令和3年度でわずか0.012%と極めて低水準
見落としがちな中退共のデメリット:掛金の減額が難しい
比較で挙げた6テーマ以外にも、中退共には重大な注意点があります。それが「掛金の減額の難しさ」です。
中退共では掛金の増額自体は問題ありませんが、減額するには従業員の同意が必要です。従業員の同意が得られない場合は、「現在の掛金月額を継続することが著しく困難である」と厚生労働大臣が認めた認定書が必要になります。
⚠️ 注意
中小企業は経営状態が変動しやすいにもかかわらず、中退共の掛金を減額するには従業員同意または厚生労働大臣の認定が必要です。手間もかかり、資金繰りが厳しい時期に柔軟な対応が取りにくい点は重大なデメリットです。
また、中退共は加入1年未満で退職した場合、退職金が支給されません。掛けた分がそのまま損になってしまいます。終身雇用ではない現代では、1年未満の退職者も多く、損するリスクが大きい制度と言えます。
📝 このセクションのまとめ
- 中退共の掛金減額には従業員同意または厚労大臣の認定が必要
- 加入1年未満の退職では退職金が支給されず、掛金が全額損になる
- 経営状況の変化に柔軟に対応しにくい制度設計になっている
注目の新制度「はぐくみ基金」とは?
退職金制度の中で近年ホットキーワードになっているのが「はぐくみ基金」です。従業員が自身の給与から毎月お金を積み立て、自分で退職金を作っていく制度で、従業員は給与の一部をはぐくみ基金の掛金にして将来退職金で受け取るか、これまで通り給与として受け取るかを選ぶことができます。
資産運用は大手保険会社に委託されるため、管理の手間がかからず投資の知識も不要です。企業型DCは自分で運用する必要があり、ある程度の投資知識が求められますが、はぐくみ基金はそのハードルをスキップできます。
はぐくみ基金の基本スペック
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 加入できる年齢 | 70歳未満(企業型DCと同じ) |
| 掛金の範囲 | 最小1,000円〜給与の20%(上限100万円) |
| 掛金の変更 | 年2回可能 |
| 他制度との併用 | 企業型DC・個人型iDeCoとの併用可能(ただし他制度の上限が減少) |
| 併用時の企業型DC上限 | 月2万7,500円 |
| 役員の加入 | 可能 |
| 加入の任意性 | 任意(積み立てするかどうかは従業員が選択) |
📌 ポイント
給与が100万円の場合、上限は20%で20万円まで掛金として積み立て可能です。企業型DCの月上限5万5,000円(年66万円)と比べても、高収入の方には大きな積立枠になります。
はぐくみ基金の3つのメリット
- 社会保険料・税金を減らせる:6万円積み立てた場合、社会保険料は月約9,000円、所得税・住民税は約5,000円の削減が可能。社会保険料の負担は労使折半のため、同額分だけ会社側の社会保険料も減少する。
- 企業の負担が少ない:掛金は従業員自身の給与から積み立てるため、退職金の積み立てで会社が負担する部分がない。実質的に従業員が自分で積み立てる形になるため、会社側のコストを抑えられる。
- 退職時・休職時にも受け取れる:老後や定年退職時だけでなく、通常の退職・休職時にも積み立てたお金を受け取ることができる。他の制度では引き出し年齢に制限があったり一定期間加入しないと元本割れするケースもあるが、はぐくみ基金は加入1ヶ月以上で退職した場合でも積立額の全額を受け取れる。
📝 このセクションのまとめ
- はぐくみ基金は従業員が自分の給与から積み立てる退職金制度
- 運用は大手保険会社に委託されるため投資知識不要
- 役員も加入可能で、社会保険料・税金の削減効果もある
- 加入1ヶ月以上で退職した場合でも積立額の全額を受け取れる柔軟性が魅力
- 企業型DCやiDeCoとの併用も可能(ただし他制度の上限が減少)
どの退職金制度が自社に合っているか?
中退共と企業型DCを比較してきた結果、終身雇用ではない雇用形態が主流となっている現代において、またインフレにきちんと対応するためには、企業型DCの方が今の時代に合った制度と言えます。
ただし、自社の状況に合う制度がどれかをしっかりシミュレーションして選ぶことが最も大切です。たとえば、助成金を活用したい・従業員規模が小さい・運用の手間をかけたくないといった場合は中退共が選択肢になることもあります。また、会社側の負担を抑えながら従業員の退職金を整備したい場合は、はぐくみ基金も有力な選択肢です。
📌 ポイント
最新の節税商品の情報や、どの制度が自社に合っているかの相談は、専門家への問い合わせを活用しましょう。制度の選択を誤ると、長期にわたって不利な条件で積み立てを続けることになりかねません。
📝 このセクションのまとめ
- 現代の働き方・インフレ対応を考えると企業型DCが最も優位
- 会社側の負担を抑えたい場合ははぐくみ基金も有力な選択肢
- 自社の状況に合わせてシミュレーションし、最適な制度を選ぶことが重要
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 社長の資産防衛チャンネル の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 社長の資産防衛チャンネルを応援しています!
関連記事
節税しながら退職金を貯める方法6選!法人・個人事業主向けに税理士が解説
節税しながら退職金を貯める方法6選|税理士が法人向けに徹底解説
中小企業の法人保険で失敗しない!よくある失敗事例3選と正しい活用法を税理士が解説
東京エリア
千代田・中央・港区から副都心各区まで、東京の優良税理士法人ランキング
関西エリア
大阪・京都・兵庫・岡山など関西圏の信頼できる税理士法人ランキング
関東エリア
首都圏の神奈川・埼玉・千葉・北関東で実績のある税理士法人ランキング
中部エリア
製造業の集積地、中部・北陸圏で企業支援に強い税理士法人ランキング
九州・沖縄
九州・沖縄地域で地域密着型サービスに定評のある税理士法人ランキング
その他地域
北海道・東北・中国・四国地方の地域に根ざした税理士法人ランキング
