会社を閉める前に必読!みなし配当の税負担を税理士が徹底解説
会社を閉める際に発生する「みなし配当」を知らないと、多額の税負担を負う可能性があります。
今日の結論:自己資本が厚い会社はすぐに解散しない
業績悪化でいまだに苦しんでおられる企業さんは非常に多く、「もう会社を閉めよう」「会社を閉めて個人事業主に戻ります」といったご相談も非常に増えています。前向きなお話ではなく、どちらかと言えば後ろ向きなお話なので、実際に税理士もそのような話をしたがらないケースが多いです。
📌 今日の結論
自己資本が特に厚い会社は、すぐに解散するのではなく、ゆっくりかつ計画的に閉めた方がよいです。万年赤字で自己資本が全然たまっていないという会社の方は、この税金の問題はほとんど発生しませんのでご安心ください。ところが、そうでない方がすぐに会社を閉めてしまうと、多額の税負担を強いられる可能性があります。
「もう疲れ果てた、今すぐ辞めたい」という気持ちはよく分かります。ただ、会社を作った時と同様、辞める時もぜひ計画的に会社を閉めていただきたいと思います。
今日のコンテンツは以下の流れでお届けします。
- 会社を閉めた時に税金がかかる正体「みなし配当」とは何か
- みなし配当が実際いくらぐらいかかるのか
- 税負担を抑えながら会社をたたむ方法(対策)
📝 このセクションのまとめ
- 自己資本が厚い会社はすぐに解散すると多額の税負担が発生する可能性がある
- 万年赤字・債務超過の会社はこの問題はほぼ発生しない
- 会社を閉める際も「計画的に」進めることが重要
会社を清算・解散する手続きの流れ
まず、会社の解散・清算手続きについてざっくり解説しておきます。
- 株主総会で解散を決議する:1人会社の社長であれば1人で決議します。書面(総会議事録)を残すことが必要です。
- 財産目録・貸借対照表の作成:会社をやめる時点での財産状況を確定させます。
- 債権者保護手続き(官報広告):債権者が債権を取りっぱぐれないよう告知するとともに、官報広告を行います。
- 解散の最終事業年度の確定申告:法人税の申告を行います。
- 残余財産の分配:まず債権者に残った財産を分配し、それが済んだら会社を作ったオーナー(株主兼社長)に分配を戻します。
- 清算の確定申告(清算確定登記):これが終わってようやく会社を畳むことができます。
📌 ポイント
通常、こういった業務は税理士と司法書士あるいは弁護士がタッグを組んで行う形になります。
📝 このセクションのまとめ
- 会社の解散・清算には株主総会決議から清算確定登記まで複数のステップがある
- 残余財産は債権者への分配が先で、その後にオーナー(株主)への分配となる
- 税理士・司法書士・弁護士が連携して対応するのが一般的
貸借対照表(BS)と自己資本の基本を理解する
みなし配当の正体を理解するには、まず貸借対照表(BS)の構造を把握しておく必要があります。会社の決算書にはPL(損益計算書)とBS(貸借対照表)の2種類があります。今回はBSの方を見ていきます。
貸借対照表は「どんな財産があるか」を表したものです。
| 左側(資産) | 右側上(負債) | 右側下(自己資本・純資産) |
|---|---|---|
| 現金に近いものが上に並ぶ | 早く返さないといけないものが上に来る | 資本金+利益剰余金 |
| 現金・預金、売掛金、固定資産 など | 買掛金、借入金 など | 資産-負債の差額 |
自己資本(純資産)の内訳をもう少し掘り下げてみましょう。中小企業では主に以下の2つで構成されます。
- 資本金:会社を立ち上げる時に、株主兼社長が会社に入れたお金。途中で増資という形で追加することも可能。
- 利益剰余金:会社がスタートしてこれまで稼いできた利益から法人税などの税金を引いた残りの累計額。配当金の財源となる。
PLの最終利益(税引後)は、法人税率が約30%なので、残り7割がこの自己資本(利益剰余金)にどんどん加算されていきます。これを内部留保と言います。
⚠️ 注意
みなし配当の問題が起こるのは、資産が負債を上回っている「資産超過(正常な貸借対照表)」の場合のみです。資産よりも負債が大きい「債務超過」の状態では発生しません。債務超過の会社の方はご安心ください。
📝 このセクションのまとめ
- 貸借対照表の自己資本は「資本金」と「利益剰余金」で構成される
- 利益剰余金は毎期の税引後利益の累計額で、配当金の財源となる
- みなし配当の問題は資産超過の会社にのみ発生する
みなし配当とは何か?その正体と発生するケース
利益剰余金は本来、配当金の財源です。ところが、「本来は配当金ではないけれども、この利益剰余金を財源としてお金を配らないといけないような場合」に、法人税法上は「配当とみなす」という考え方が生まれました。これがみなし配当です。
みなし配当が発生する代表的なケースは以下の4つです。
- 合併・会社分割
- 自社株の買い取り(上場会社がよく行うもの)
- 有償減資・無償減資(株主に資本金の出資金を返す場合)
- 会社の解散による残余財産の分配(今回のテーマ)
今回のテーマである会社の解散では、残余財産を分配した際に、株主に「元々入れてもらったお金(資本金)+α」を返したとき、このαの部分にみなし配当の問題が発生します。
📌 みなし配当の計算イメージ
例えば、自己資本が1,000万円たまっていて、もともと会社を立ち上げた時に入れた資本金が100万円だけだったとします。残りの900万円はこれまで稼いできた利益(利益剰余金)という状態の場合、この差額900万円がみなし配当となり、株主個人の配当所得として所得税・住民税が課税されることになります。
📝 このセクションのまとめ
- みなし配当とは、実際の配当ではないが法人税法上「配当とみなして課税する」仕組み
- 会社解散時は「残余財産-資本金」の差額がみなし配当の課税対象となる
- 自己資本が厚いほど、みなし配当の金額も大きくなる
みなし配当の税負担はいくらになるか?具体的な計算例
みなし配当は結構な曲者で、税負担が重たいです。「配当金なら税率2割ぐらいじゃないの?」と思われる方が非常に多いのですが、非上場会社の配当金に関しては総合課税となります。つまり、超過累進税率が適用されます。皆さんの給与や他の収入があればそれら全部を合算して、その金額が大きくなればなるほど高い税率が適用されてしまいます。
所得税の超過累進税率は以下の通りです(住民税は一律10%が別途かかります)。
| 課税所得の金額 | 所得税率 |
|---|---|
| 195万円以下の部分 | 5% |
| 195万円超〜330万円以下の部分 | 10% |
| 330万円超〜695万円以下の部分 | 20% |
| 695万円超〜900万円以下の部分 | 23% |
| 900万円超〜1,800万円以下の部分 | 33% |
| 1,800万円超〜4,000万円以下の部分 | 40% |
| 4,000万円超の部分 | 45% |
先ほどのみなし配当900万円の場合、他の所得がなければ、超過累進税率を当てはめると以下のようになります。
| 税目 | 税額(配当控除前) |
|---|---|
| 所得税 | 約146万円 |
| 住民税 | 約90万円 |
| 合計 | 約240万円 |
⚠️ 注意
これはあくまで他の所得がない場合の試算です。役員報酬を多額に取っておられる場合は、合算されるためこれよりも税負担がさらに上がります。
配当控除で二重課税を排除できる
ただし、実は配当控除という税額控除があります。配当の原資についてよく考えてみてください。一度法人税を払った残りを株主に分配しているわけです。そこにまた所得税・住民税をかけるのは二重課税ですよね。この二重課税を排除する制度として配当控除が設けられています。
配当控除をフルで活用できる場合の税負担は以下のようになります。
| 税目 | 配当控除後の税額 |
|---|---|
| 所得税 | 約56万円 |
| 住民税 | 約65万円 |
| 合計 | 約121万円 |
配当控除によって税負担がおよそ半分程度に下がります。とはいえ、会社を辞めようというタイミングでこの約120万円の税負担はなかなかつらいものがあります。
📝 このセクションのまとめ
- 非上場会社のみなし配当は総合課税(超過累進税率)が適用される
- みなし配当900万円の場合、配当控除前は約240万円、配当控除後でも約121万円の税負担
- 他の所得(役員報酬など)があれば税負担はさらに増加する
- 配当控除は二重課税排除のための制度で、活用すれば税負担を約半分に抑えられる
税負担を抑えながら会社をたたむ3つの対策
ご安心ください。ちゃんとした対策があります。
① M&Aなどで外部に売却する
社員さんをたくさん抱えていたり、顧客をたくさん抱えていたりする場合、会社を閉めてしまうとお客さんも社員さんも路頭に迷ってしまいます。できればちゃんとしたところに買収してもらう方が安心です。この場合、通常はオーナー社長が持っている株式を売ることになります。非上場会社であっても株式の売却は分離課税で約20%の税負担で済みます。会社の株価にもよりますが、みなし配当よりも税負担が下がる可能性があります。
② 休眠などしながら残余財産の確定を急がない
会社を休ませることも可能です。休みながら役員報酬を取っていくイメージです。ただし、完全に休んでしまうと事業活動をしていないため役員報酬が非常に取りにくくなります。「半休眠」のような形で縮小を徐々に時間をかけてやっていくのが理想です。
本当に会社が完全に休眠しているのであれば、都道府県・市区町村に異動届を出すことによって均等割(最低でも年間7〜8万円かかります)の支払いをストップすることができます。ところが、自己資本が厚いままずっと休眠していても自己資本は減りませんので、みなし配当から逃れることはできません。最低限の事業活動を続けることをお勧めします。
③ 事業を縮小しつつ、数年かけて役員報酬・退職金で自己資本を減らす
事業を縮小しながら数年に分けて役員報酬を取り続けて利益剰余金を減らしていき、みなし配当がかからないところまで減らしていきます。あるいは、まだ退職金を取っていない方は退職金をしっかり取ることも有効です。
⚠️ 注意:退職金には事前準備が必要
退職金に関しては、事前準備が必要です。役員退職金の一般的な算出式は以下の通りです。
役員退職金 = 最終報酬月額 × 在籍年数 × 功績倍率
功績倍率は代表取締役社長の場合、一般的に3倍前後と言われています(法律で決まっているわけではありません)。
例えばマイクロ法人で最終月額報酬が5万円しかない場合、30年社長をやっていたとしても、功績倍率3倍をかけても450万円しか退職金を取れません。だからこそ、事前にベースとなる役員報酬を上げておくなど、計画的な準備が必要なのです。
「直前に役員報酬を上げればいいのでは?」と思われるかもしれませんが、相当に高額な役員退職金は税務署に否認されるリスクがあります。売上が全くないのに役員報酬を急激に上げて退職金を取ろうとすると、税務署は同じ管轄の同業種・同規模の法人の社長の退職金と比較して乖離がないかを見ていきます。あまり無茶な設定はできません。
このような算式などを退職金規定で明記しておくことが、事前準備として必要になります。
📝 このセクションのまとめ
- M&Aで株式売却すれば非上場でも分離課税約20%で済む場合がある
- 半休眠状態で事業を縮小しながら数年かけて自己資本を減らすのが理想
- 役員退職金は「最終報酬月額×在籍年数×功績倍率」で計算し、退職金規定への明記が必要
- 直前に役員報酬を急激に引き上げての退職金取得は税務署に否認されるリスクがある
会社を閉める際も事業承継と同じく綿密な計画が必要
以上のことを考えると、会社の解散・清算も事業承継と同様に綿密な計画が必要です。子供さんに後継をさせるのであれば「いつ頃会社に入ってもらって、いつ頃社長に就任してもらうか、自社株はどのタイミングで渡していくか」を決めなければなりませんよね。それと同じくらいの密度で、以下のことを計画的に決めていただきたいと思います。
- 役員報酬の設定をどのようにするか
- どのタイミングで退職金を取るか
- 自己資本をどれぐらいまで減らしてから会社をやめるか
これらを計画的に決めないと、みなし配当でとんでもない税負担を食らってしまう可能性があるという点を覚えておいていただきたいと思います。
📌 役員退職金増税に関する注意
特に役員退職金については、「退職金増税」の議論が現在話題になっています(最終確定ではありません)。iDeCoと絡めた影響についても最新情報を確認しておくことをお勧めします。
📝 最終まとめ
- 債務超過などの会社は気にしなくてよいが、自己資本が厚い会社はすぐに解散せずゆっくり計画的に縮小しながら閉めていくことが重要
- みなし配当は総合課税で税負担が重く、配当控除を使っても自己資本900万円のケースで約121万円かかる
- M&A売却・半休眠での縮小・役員報酬と退職金の活用という3つの対策が有効
- 役員退職金は退職金規定への事前明記と報酬水準の準備が必要
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!
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